「神は第7日にその作業を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終って第7日に休まれた。神はその第7日を祝福して、これを聖別された」
 これは天地創造を記述した旧約聖書創世記の一節だ。キリスト教会が日曜日を聖日として尊び、同日午前、教会でミサを挙行して神へ賛美を返す根拠ともなっている聖句だ。
 しかし、21世紀の今日、キリスト教文化圏の欧州では聖なる日曜日が危機に陥っているのだ。数年前までは日曜日に店を開くのはせいぜい食堂か喫茶店だけだったが、消費文化の影響を受け今日、一般の商店も次第に日曜日にオープンし、顧客を集めてきたからだ。
 このような話は24時間、年中無休の店が普通の日本からみたら、「何を寝ぼけたことを」と思われるかもしれない。しかし、キリスト教圏の欧州ではこれまで日曜日は聖なる日として受けとられてきたのだ。神を賛美する以外、日曜日に他の労働をしてはならなかったのだ。
 当方は土曜日の午前、スーパーに行って週末用のパン、野菜、ライス、飲み物などを買い込むのが、ここ10年間の習慣だ。日曜日にはスーパーが閉まるからだ。週末に買物ができなかったため、日曜日にライスがなく、月曜日までご飯を食べることができなかった苦い経験をしたことがある。
 ところが、前述したように、日曜日にも店を開く所が出てきたのだ。それに対し、カトリック教国のオーストリアでは教会が中心になって「日曜日を守れ」といったキャンペーンがスタートしたばかりだ。
  教会関係者が懸念しているのは、来年6月オーストリアとスイス両国で共催されるサッカー欧州選手権(ユーロ2008)の期間だ。多くの商店はサッカー・ファンが殺到するユーロ2008の期間は日曜日も店を開くことを早々と決めている。商店関係者は「日曜日開業はユーロ2008の期間だけで、あくまで例外的処置に過ぎない」と説明しているが、教会関係者は「日曜日の聖なる日が一度崩れると、もはやその流れを止めることができなくなる」といった危惧感を抱いている。
 ちなみに、オーストリアを訪問したローマ・カトリック教会最高指導者ローマ法王ベネディクト16世はシュテファン大寺院での礼拝で日曜日の重要性を強調している。教会は必死になって日曜日を守ろうとしているのだ。