「国連と『テロ』の関係」というタイトルをみて、「国連のテロ対策」か「テロの襲撃を恐れる国連」といったテーマを考えられるかもしれないが、ここでは「テロリストたちの潜伏拠点」としての国連について、当方がこれまで目撃し、聞いてきた情報を少し紹介する。
 ニューヨークの国連本部、欧州本部のジュネーブに次いで、音楽の都ウィーンは第3の国連都市だ。ウィーン市には冷戦時代、東西両陣営の窓口とし世界のスパイたちが暗躍していたものだ。当方が常駐する国連報道室には、米中央情報局(CIA)からソ連国家保安委員会(KGB)まで、世界の情報機関の工作員がジャーナリストという名目で情報収集活動をしていた。冷戦終焉後、報道室にはCIAや英情報局秘密情報部(MI6)などの米英情報工作員は姿を消していったが、旧ソ連連邦関係の情報エージェントは依然、ジャーナリストとして屯している。
 ところで、ウィーンの国連には情報機関員だけではない。テロ問題専門家によれば、イスラム系過激テログループの潜伏拠点となっているというのだ。例えば、米国内多発テロ事件直後だと思う。30歳前後のパキスタン出身の青年がウィーンの国連で働き出した。職種は文献などを職員に手渡す簡単な仕事だ。青年は米国でパイロット・ライセンスを取得している。
 問題は、米国帰りの青年がどうして直ぐに国連内の仕事を手に入れることが出来たのかだ。テロ問題専門家によれば、「国連内に仕事を斡旋するテログループ関係者がいるからだ。仲間が逃げてきた場合、仕事を与えて身を隠させる。身を隠すのに国連ほど最適な場所はない」という。確かに、国連は一種の治外法権があるから、外部の監視を受けることは少ない。
 当方は偶然だが、その青年を知っている。彼は同棲中の女性に「自分はウサマ・ビンラディンを支持している」と堂々と話している。国連のホスト国・オーストリア内務省は青年がアルカイダの一員の可能性があるとしてマーク、国連側と連携して監視していたほどだ。
 国連は地域紛争の解決、貧困対策、開発支援などに取り組み、世界の平和実現に寄与すべき責務を担う機関だが、ウィーンの国連が「テロリストたちの潜伏拠点」として悪用されている可能性が考えられるのだ。