当方はこのコラム欄で「驚くべき現実」というタイトルで、アルプスの小国オーストリアで昨年度、離婚率が48・9%となり、ほぼ2組に1組の夫婦が離婚し、音楽の都ウィーンでは状況はもっと深刻で、3組に2組の夫婦(65・85%)が離婚した、という同国統計局のショッキングな情報を紹介したが、今度は結婚件数が減少してきた、というニュースが飛び込んできた。
 同国日刊紙オーストライヒは今月21日付で、「どん底の結婚式」という見出しを付け、同国で今年上半期の結婚件数は1万5384組で、前年度同期比で11・2%減を記録したと伝え、「結婚という社会的儀式がもはや流行しなくなった」と報じている。
 オーストリアは特別州のウィーン市を含めて9州から構成されているが、結婚件数が前年度同期比で最も減少した州はブルゲンランド州で24・2%減。それを追って、ウィーン市が3636件で前年度同期比でマイナス13・1%だった。他州もいずれも前年度同期比で減少を記録している。
 ここで想起してほしいことは、同国の昨年度合計特殊出生率は1・41だったという事実だ。オーストリアの女性は昔、子供を沢山生んだ。多産の代表はハプスブルク王朝時代、国母と呼ばれたマリア・テレジア女王(1717〜1780年)だ。女王は7年戦争をプロイセンのフリードリヒ2世と戦いながらも16人の子供を産んだ。そのテレジア女王が現代に生きていたならば、ビックリするような社会状況が生まれているのだ。すなわち、結婚件数は年々少なくなり、それに呼応して出産件数も減少。その一方、離婚件数は急上昇しているのだ。
 社会学者は「なぜ、現代人は結婚を希望しないのか」「結婚した場合でも、どうして長続きしないのか」「なぜ、子供を産まないのか」といった問題に必死に取り組まなければならないだろう。大げさに言うならば、これらの問題は人類の未来と密接に関るテーマだからだ。
 結婚を夢み、立派な子供を生み、育てたいという、半世紀前までは当然であった人間の願望を再び蘇らせることができるだろうか。それとも、「結婚」という一種の社会契約はもはや時代遅れなのだろうか。読者と共に考えていきたい。