日本政府は今月、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)に本年度分担金を全額支払った。これで財政危機にあったCTBTOはようやく一息つける。加盟国の分担金拠出率は今月20日現在、70%を越えた。日本が支払うまでは50%台だったから、CTBTO財政の中で日本の分担金(約960万ドル+約930万ユーロ)が占める割合(約20%)がいかに大きいか、改めて明らかになったわけだ。
 CTBTO担当の日本外交官の説明によると、日本政府の会計年度は毎年、3月締め切りで4月から新会計年度が開始され、その時に国連関連機関の分担金などが支払われてきたが、今年からそのやり方が変更された。そのため、国連機関への分担金支払い時期が8月まで大きくずれたわけだ。
 当方のコラムの読者ならばご存知のように、CTBTO最大分担金拠出国の米国が分担金(約1050万ドル+約1080万ユーロ)を滞納し、議決権を失ってしまって以来、CTBTOの台所は火の車の状況が続いてきた。その上、日本の支払いが今夏まで延びたことで、CTBTO関係者は文字通り、青息吐息といった状況にあった。
 CTBTOのホームページは新しい情報が少なく、1カ月間以上、更新されないまま、といったことが少なくなかった。それが財政危機が明らかになって以来、加盟国に分担金支払いを呼びかけるPR活動を展開させる一方、加盟国への情報サービスを進めるなど、積極的な広報活動に乗り出してきた。生きのびていく為の努力だ。
 なお、CTBTOは来月17日、ウィーンのホフブルク宮殿で第5回条約発効促進会議(通称・第14条会議)を開催する。昨年10月の北朝鮮の核実験後、CTBTOが構築中の国際監視システム(IMS)の早期完成を求める声も高まってきている。条約の早期発効は国際社会の願いと一致する。ただし、条約発効への最大の障害は今日、1996年の条約成立の原動力となった米国だ。米国は96年9月、CTBT条約に署名したが、米上院本会議は99年、批准を否決した。ブッシュ米政権はテロ対策の一環として使用可能な小型核兵器の開発を検討している。