ウィーン14区の北朝鮮大使館の庭にスモモ(李)が植えられている。いつ頃、植樹されたかは知らないが、暖冬の影響もあって、小さな薄白色の花びらが垣根を越えて路上までその可憐な姿を見せている。
 東京では20日、桜の開花宣言が発表されたが、桜は日本で最もポピュラーな花で、菊と共に日本の「国花」だが、スモモはオオヤマレンゲ(木蓮の一種)らと共に北朝鮮の代表的な花だ(それとは別に「金日成花」や「金正日花」が存在する)。花びらは桜の花びらに似ている。木蓮のように強い存在感はないが、その清爽感がとてもいい。梅が終わり、桜が咲き出す頃、桜と同じような白色の花びらを開く。
 植物に精通していない当方は初めてスモモを見た時、「あ、桜だ」と思ったりしたものだ。それほど、当方の目には桜とスモモは良く似ている。植物辞典をみると、両方とも中国原産で「バラ科」、サクラ属だ。サクラの学名「プラナス」はラテン語「Plum」(スモモ)が語源というから、当方がスモモとサクラを間違ったのも当然かもしれない。(当方も最近は弁明がうまくなったものだ)
 先日、取材目的で北朝鮮大使館に行った時、庭にスモモを見つけた。これまで何度も北朝鮮大使館を訪れたことがあるが、大使館の庭の木々をゆっくりと見たことがなかった。もちろん、北朝鮮外交官とのんびりと花話をしたこともない。
 当方が「スモモは桜に似ていますね」といえば、北朝鮮外交官たちはどう思うだろうか。「日本人は朝鮮半島の占領時代、漢民族の国花・無窮花を伐採し、桜を植林した」と批判する声を聞いたことがあるからだ。
 北朝鮮大使館の李書記官は家族が日本軍兵士によって殺されたといっていた。金書記官は会う度に、「日本人は過去の蛮行について謝罪すべきだ」と批判する。北朝鮮外交官の激しい反日批判を聞き続けていると、当方もスモモと桜の話を簡単には言い出せなくなったが、「われわれも本来、スモモと桜のように、親戚関係かもしれませんね」と言ってみたい衝動を感じたのは一度や二度ではない。