旧ソ連・東欧諸国の経済分析で世界的に評価の高い「ウィーン国際比較経済研究所」(WIIW)は22日、2007年度・08年度両年の旧ソ連・東欧諸国の経済予測を公表した。概要を説明すると、内需の拡大、輸出の拡大などでポーランド、スロバキア、チェコなど東欧諸国の国民経済は今後2年間、高成長が期待できる。
 例外は緊縮政策を実施中のハンガリーだ。同国は冷戦時代のカダル政権時代から民主改革直後までは旧ソ連・東欧諸国の経済改革の優等生を誇示してきたが、他の東欧諸国がその国民経済を回復してきたのとは好対照的に、劣等生に落ちてしまったわけだ。同国の07年度GDPは2・7%、08年度3・1%に留まっている。ちなみに、チェコは07年、08年度はいずれも5%の成長率が予想されている。
 一方、バルカン諸国でも欧州連合加盟候補国クロアチア、マケドニア、アルバニア、モンテネグロ、セルビアの国民経済も順調に伸びてきた。ロシア、ウクライナでも5%以上の高成長が予測される。旧ソ連・東欧の労働市場は改善され、外国投資も増加している。
 WIIWの予測によれば、今年1月から欧州連合(EU)に加盟したルーマニア、ブルガリア両国の経済成長はルーマニアが07年度6・5%、08年度6%、ブルガリアがそれぞれ6%、5・5%と、いずれも高成長率が予測されている。ちなみに、ブルガリアの国民平均所得はEU平均値の32%、ルーマニアが36%に留まっている。参考までに紹介すると、EU27カ国の総GDPは旧加盟国15カ国が全体の88%を占め、04年度加盟した10カ国が9%、そしてブルガリア、ルーマニア2カ国が全体の3%を占めているのに過ぎない。
 国民経済の発展で懸念される点は、国内の政情だ。特にハンガリー、ポーランド、チェコの3国は政情の安定化が経済成長の前提条件だ。また、コソボ自治州(セルビア共和国帰属)の最終地位交渉がいよいよ最終局面を迎えてきたが、その行方次第ではバルカンの政情が急速に悪化することが十分考えられる。一方、労働力不足(例ポーランド、チェコ)も問題化してきている。ポーランドでは若い技術士が雇用市場をオープンとした英国に大量流出したことで、国内で専門技師の不足が深刻化している。