海外駐在の外交官は任期を終えて帰国する際、赴任中に知り合った他国の外交官を招いてお別れ会を開く。当方も過去、何度か知人の外交官の離任パーティに招かれたことがある。帰国をする外交官の間にも、「十分仕事をやり遂げた」という満足組から、「もう少し海外で仕事をしたかった」といった残念組まで、いろいろある。
 外交官の任期は国によって多少異なるが、通常3年前後だ。中東諸国の外交官には、4年、5年、それ以上といった長期滞在組も結構多い。駐オーストリアの北朝鮮大使を努める金光燮氏(金正日労働党総書記の義弟)のように、1993年3月から赴任し続けている外交官は例外中の例外だ。ただし、北朝鮮外交官では決して珍しいケースではない。駐スイス大使の李哲氏(金総書記の海外資産管理人)は金光燮大使より長期間、海外滞在している。多分、金正日政権が継続する限り、両大使は海外に滞在し続けるだろう。
 外交官人事でも、「上がり人事」で退職前の最後のご奉公として大使、ないしは公使に赴任する場合と、「上へステップするための肩鳴らし」的な人事がある。前者の場合、海外滞在をエンジョイする傾向が強い一方、後者の場合、滞在期間は一般的に短く、赴任中は仕事に没頭する外交官が多い。
 例えば、国連事務総長に選出された潘基文氏(前韓国外交通商相)は駐オーストリア大使時代、深夜の2時、3時まで執務室で働くのが日常茶飯事だった。そのため、大使専属運転手はいつ呼び出されるか分からない為、家に帰ることも出来なかった、という話が伝わっているほど、職務没頭型外交官だった。新国連事務総長にとって、駐オーストリア大使はあくまで「更なる上へ」のステップに過ぎなかったわけだ。
 米国の大使人事も特長がある。米大統領が大統領選で資金を提供してくれた富豪実業家を大使として任命することが多いことだ。駐オーストリアの歴代米国大使は、富豪ビジネスマン出身者で占められてきた。「大使としてしばらく『音楽の都ウィーン』を満喫して下さい」といった典型的な「論功行賞人事」だ。この場合、外交官としての能力やキャリアは問われない。
 ところで、北朝鮮外交官は帰国する時、帰任パーティを開かないし、挨拶もなく、突然姿を消す事が多い。そのため、他国の外交官が後日、北朝鮮外交官の帰国を知る、といったケースが少なくない。南・北外交官間の相違は、韓国外交官が任期が終われば、親族が待っている祖国に帰国できる事を「喜ぶ」のに対し、北朝鮮外交官は外国滞在という特権を失いたくない為、「出来れば帰国したくない」といった思いが強いことだ。