中東諸国ではイスラム根本主義勢力、国際テロリスト、そしてトルコ系過激愛国主義者によるキリスト教徒への迫害が拡大してきている。イラクではフセイン政権時代、政府高官に多数のキリスト教徒が占めていたが、ここにきてキリスト教徒を狙ったテロや拉致が頻繁に発生し、キリスト教建物が爆破されている。イラク戦争前に約120万人いたキリスト系住民の半数が隣国などに亡命していったという情報もあるほどだ。
 カルデア典礼カトリック教会バクダッド教区関係者は「信者の亡命は現在でも続いている。このままいくと、キリスト教会自体が存続できなくなる」といった懸念を抱いているほどだ。カルデア典礼教会だけでも80万人から50万人に信者が減少したという。彼らの一部は隣国トルコに逃げている。
 エジプトではコプト典礼カトリック信者がさまざまな弾圧や不公平な扱われ方をしているという。今年4月には、エジプト第2の都市であるアレクサンドリアでイスラム教徒が3カ所のコプト教会を襲撃、1人を殺害し、少なくとも12人に重傷を負わした。エジプトではイスラム教徒が主流だが、コプト系キリスト教徒も人口の約1割いる。ここにきてイスラム教徒とコプト系教徒間の衝突が絶えない。
 ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ガザでも9月、キリスト教関連施設とギリシャ正教の建物に爆弾が仕掛けられるという事件が起きている。パレスチナ自治区のキリスト教会襲撃事件は、ローマ法王べネディクト16世のイスラム教中傷発言に怒ったイスラム教側の抗議行動という様相が濃厚だ。
 イラク出身の友人は「中東ではキリスト者はハイ・ソサエティに属する者が多かった。イラクのフセイン政権時代のタレク・アジズ副首相もカルデア典礼のカトリック信者だったし、シリアのバース党創設者ミシェル・アフラク氏はギリシャ正教徒だった。キリスト教会は独自の教育システムを構築して信者たちに高等教育を施した。イスラム教は子弟の教育体制では遅れを取っていた。しかし、イラク戦争後、状況は変わってきた。中東では少数宗派のキリスト教徒も攻撃対象となってきたのだ」と説明した。