音楽の都ウィーンを訪問する日本人旅行者は相変わらず多い。特に、今年はモーツァルト生誕250周年ということもあって、特に目立つ。
 同時に、ホテル内や路上で置き引きやスリにあう日本人旅行者も増えている。駐オーストリアの日本大使館領事部に通報された被害件数だけでも9月は置き引きとスリの総件数は10件あった。
 置き引きの内容をみると、ホテルのレストランで食事中、足元に置いていたバックが盗まれたとか、ビュッフェ式の朝食時に、食事を取りに行っている間に、バックを盗まれたといったものだ。ある日本人旅行者は駅のコインロッカーで鍵を忘れ、大型リュックサックを盗まれたり、駅構内で電話中、バックを盗まれたケースも報告されている。
 一方、スリの場合、9月は4件報告されている。市内観光中にバックやリュックサックから貴重品を盗まれている。日本領事部に届け出のないスリ件数は報告されたものの数倍はあると推測されている。
 好奇心の強い当方は先日、日本人旅行者が置き引きに頻繁にあうというウィーン市のホテルを視察した。ホテル名はここでは公表できないが、日本人団体旅行客が利用する一流ホテルだ。ベット数309の同ホテルでの日本人ベット占有率は16%。すなわち、このホテルにとっては、日本人旅行者は文字通り、ホテルの経営を支えてくれるお得意さんだ。その日本人旅行者がこのホテルで置き引きの餌食となっているというから、深刻だ。最近も1人の日本人旅行者が同ホテル内でラップトップを盗まれている。
 当方は記者証を提示して訪問理由を説明し、マネージャーにホテル内の安全管理について質問した。1年半前からホテルの要所に監視カメラを設置する一方、3人のセキュリテイーが24時間体制で安全管理しているという。置き引き犯人は外部から侵入した者で、複数と見られているが、犯人は逮捕されていない、と丁寧に説明してくれた。
 若いマネージャーは「われわれは旅行者の安全と快適な旅行のために最善を尽くしているが、旅行者も自分の持ち物ぐらいは気をつけなければならない」と強調した。その通りだろう。ラップトップを失った日本人旅行者はロビーにラップトップを置いて別の所に行ってしまっている間に盗まれている。置き引きは犠牲者とグループ引率者の責任というホテル側の主張は当たっている。「日本人の安全感覚に問題がある」という印象を受けた。
 日本の旅行者の皆さん、日本を一歩外に出られたならば、あなたは置き引きとスリに狙われていることをお忘れなく。