ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2026年05月

欧州の観光事情と次世代の‘旅の哲学‘

 クロアチアの観光地における過剰なアルコール消費を受け、ザグレブの議会は29日、自治体が夜間のアルコール販売を禁止する権利を認める法律を可決した。クロアチア議会の議員151人中、出席した117人全員が同改正案に賛成票を投じた。可決された法律によると、市町村は「公衆衛生、治安、文化遺産、環境を保護するため」にアルコール販売を制限できる。ただし、バーやレストランは対象外だ。グラヴィナ観光相は、「この法律の目的は観光と健全な共生関係を築きたいと願う地元住民の生活向上が狙いだ」と説明した。

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▲海水浴旅行者で溢れるクロアチアのアドリア海沿いのプーラ(2017年8月1日撮影)

 現地からの報道によると、歴史的なディオクレティアヌス宮殿を擁するスプリト市のトミスラフ・スタ市長は、この改革に基づき、アドリア海沿岸のリゾート都市であるスプリトで午後9時以降のアルコール販売を禁止すると発表した。フヴァル島やクロアチア中部沿岸都市ザダルなど、他の人気観光地でも同様の禁止措置が発表されている。首都ザグレブでも禁止措置を検討中という。

 西バルカンに位置するクロアチアは人口400万人弱の小国だ。アドリア海沿いには欧州有数のリゾートエリアを有し、夏季に入ると欧州から多数の旅行客がアドリア海沿いの避暑地を訪れる。クロアチア議会の今回の決定もシーズンインを控えての対応の一つだ。

 ちなみに、クロアチアのようなアルコール販売禁止などを実施している欧州の観光地としては、ヨーロッパ屈指のパーティーアイランドとして知られるスぺイン・バレアレス諸島(マヨルカ島、イビサ島)では、2024年5月から非常に厳しいアルコール規制が導入されている。観光客が集まる特定エリアの小売店(スーパーなど)において、夜21:30から翌朝8:00までのアルコール販売が全面禁止されている。路上での飲酒行為そのものも禁止されており、違反した観光客には最高3,000ユーロ(約50万円)近くの巨額の罰金が科される。

 また、ポーランド・ワルシャワ(および主要都市)では、観光客や夜間の酔客による治安悪化を防ぐため、地方自治体に夜間のアルコール販売禁止権限を与える動きが広がっている。首都ワルシャワや、歴史的な観光都市であるクラクフなどの一部の区・エリアにおいて、夜22:00から翌朝6:00まで小売店での酒類販売を禁止する条例が導入・検討されている。

 6月に入ると、欧州はいよいよ観光シーズンを迎えるが、今年は少し事情が異なっている。米イスラエル軍のイラン攻撃が開始され、世界の原油輸送ルートのホルムズ海峡がイラン側によって封鎖されて以来、世界の原油価格が急騰し、旅客機の燃料ケロシン(ジェット燃料)不足などで、一時期飛行機が飛ばなくなるのではないかといった懸念の声が聞かれたほどだ。オーストリアでは「今年は外国旅行はやめて、国内旅行に切り替える国民が増えてくるだろう」と予想されている。

 ところで、観光都市ではオーバーツーリズム(観光過剰)への懸念やその対策が大きなテーマとなっている。ベネチアやバルセロナのような「住民が観光客を拒絶する」といった状況も見られる。

 「観光公害」に発展する前に、住民と観光が調和して共存できる独自の画期的な取り組みを進める声も聞かれる。例えば、ウィーン市とウィーン市観光局は、2019年に他都市に先駆けて「ヴィジター経済戦略(Visitor Economy Strategy)」を策定している。住民ファーストの視点で、「都市が観光のために何ができるか」ではなく、「観光が都市(住民)のために何ができるか」を重視する。

 音楽の都ウイーンでは「オプティマム・ツーリズム(最適な観光)」の推進が行われている。単なる観光制限ではなく、都市の許容量に合わせた良い成長を目指している。例えば、特定の地域への集中を防ぐため、周辺区やローカルな魅力を発信して観光客を市内全域へ自然に分散させる施策を行っている。

 ちなみに、「観光」という言葉は、「光」を「観る」という意味だが、東洋と西欧ではその「光」の内容が異なる。東洋の古典(『易経』の「観国之光」)によると、「国の光(優れた文化、政治、風俗)を観る」という意味だ。一方、キリスト教的社会では「神の創造された自然や、人間の内にある神聖な光(創造性)を観る」という意味合いがある。

 オーバーツーリズムの時代に本来の「観光」を取り戻すために、近年「レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)」や「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」という新しい旅の哲学が生まれている。「再生型観光」は、環境や社会を単に維持するだけでは手遅れであり、旅を通じて、傷ついた土地やコミュニティを旅の前より良い状態にして返す(再生・修復)必要がある」、という危機感から生まれた次世代の観光哲学だ。

 イギリスの観光戦略家であり「Conscious Travel(意識的な旅)」の創設者アン・ポロック氏は「観光を産業(工業的な生産ライン)として捉えるのをやめ、土地、住民、そして旅行者が互いに影響し合って生きる生態系として捉え直す手法」を提唱している、といった具合だ。 

「正戦論」を巡る米副大統領と教皇の論争

 教皇レオ14世は25日、初の回勅「「マニフィカ・ヒューマニタス:人工知能時代の人類保護について」を発表したが、バンス副大統領はNBCニュースに対し、現時点では「マニフィカ・ヒューマニタス(Magnifica humanitas)」の抜粋と報告書しか読んでいないと断ったうえで、「読んだ内容は非常に深遠だと感じた。まさに教会の指導者から期待し、望むべき声明だ」と述べた。そのうえで、教皇の「正戦論」に関する発言にも言及し、「新たな技術と新たな形態の戦争が出現している。したがって、『正戦論』の教義も更新されなければならない」と強調した。そして「教皇がこの一歩を踏み出したことを嬉しく思う」と強調している。

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▲バンス米副大統領、バチカンでレオ14世と会見、2025年5月19日、バチカンニュースから、写真ANSA通信

 カトリック教会における「正戦論(Just War Theory)」とは、国家による軍事力の行使を無制限に認めるものではなく、「戦争を倫理的に厳しく制限し、回避する」ための厳格な道徳的枠組みだ。2026年、トランプ政権による対イラン軍事行動(イラン戦争)を巡り、バンス副大統領が「正戦論」を引いて戦争を正当化しようとした際、ローマ教皇や米国カトリック司教協議会(USCCB)がそれを厳しく批判したことはまだ記憶に新しい。
 
 先ず、教会の「正戦論」について少し紹介する。「正戦論」は、キリスト教がローマ帝国の国教となる過程で、平和主義(非戦論)と国家防衛の現実的な必要性を調和させるために生まれた。思想の基礎は、聖アウグスティヌスによって築かれた。彼は「平和を守り、悪を阻止するためのやむを得ない武力行使は認められる」と考えた。中世(13世紀)に入り、神学者トマス・アクィナスがこれを体系化し、戦争が許されるための明確な倫理的条件を提示した。

 現代のカトリック教会の公式な教理(カテキズム第2309項)では、軍事力による正当防衛が認められるための条件(Jus ad bellum:開戦の正義)として、4つの条件が規定されている。�/�略者によって国民や国家共同体が受けている損害が、長期的で、極めて深刻であり、かつ確実であること。��外交交渉や平和的解決のための他のすべての手段が、すべて不穏に終わるか、効果がないことが証明されていること。�7鎧�行動を起こすことで、事態が改善するという確実な成功の見込みがあること。�ど靂蝋垰箸�さらなる悪を生まないこと、等々だ。

 ところで、カトリックの「正戦論」は歴史的に「国家の戦争を容認する道具」として政治利用されてきた側面がある。バンス米副大統領は、ローマ教皇レオ14世がイラン戦争を批判したことに対し、「教皇のコメントは神学的真実に基づいていない」と主張した。それに対し、米カトリック司教協議会は教義(教理)委員長名でバンス副大統領の誤った「正戦論」解釈を強く非難している。教会の本質的な立場は「いかに戦争を回避するか」にあって、国家の戦争を正当化することではないという論理だ。

 カトリック教会の歴史において、「正戦論」に基づいて戦争が支持された事例は実際にある。その代表的な例は. 十字軍戦争(11世紀〜13世紀)だ。「正戦論」の要素を含みつつも、それを「聖戦(Holy War)」へとエスカレートされた事例だ。イスラム勢力に占領された聖地エルサレムの奪還と、東方のキリスト教徒の救援が掲げられた。アウグスティヌスの正戦論では「戦争は罪深いが必要悪」とされた。しかし十字軍では、「従軍自体が罪の償い(免償)になる」とされ、戦争が宗教的な善行へと逆転していった。

 それ以外にも、レコンキスタ(国土回復運動、8世紀〜15世紀)、大航海時代と新大陸の征服(15世紀〜16世紀)などがある。当初は「キリスト教を拒む先住民への戦争は正当」という理屈が使われた。中世から近世にかけては、教会が「正当な権威」や「不義への対抗」を根拠に戦争を支持・容認した。しかし、近代以降、カトリック教会は正戦論の解釈を極めて厳格化した。現代の教会は、自衛以外の目的での戦争支持を事実上排除しており、「いかなる戦争も平和の破壊である」として平和主義に近い立場をとるようになっている。

 J・D・バンス副大統領とローマ教皇レオ14世の間には、「正戦論」の解釈と、現実の武力行使(特にアメリカ主導のイラン戦争など)への適用をめぐり、決定的な対立と根本的な姿勢の違いがある。バンス副大統領が伝統的な「武力による正義の執行」を重視するのに対し、レオ14世は現代のテクノロジー(AI兵器など)の進化を踏まえ、「正戦論」の限界とその克服を訴えている。

 例えば、レオ14世は米国イスラエルによるイランへの軍事行動について、「神はかつて剣を振るい、今日爆弾を投下する者の側に立つことは決してない」「軍事行動が自由の空間や平和の時代を築くことはない」と発言し、武力行使に明確なノーを突きつけた。一方、バンス副大統領は教皇のこの発言に強く反論し、第二次世界大戦でナチスから人々を解放した米軍を例に挙げ、「『神は剣を振るう者の側に決して立たない』などとどうして言えるのか」と主張し、正当な目的のための武力行使には神の祝福(正当性)があると反論している。

 両者の間には、 正戦論の「刷新(アップデート)」に対するアプローチの違いもある。レオ14世は回勅『マニフィカ・ヒュ―マニタス(素晴らしき人類)』において、AI(人工知能)やデジタル技術の発展が紛争の形を変えたと指摘、「相手の顔を見ずに攻撃できる技術は倫理的ハードルを下げる」とし、従来の正戦論はもはや現代の条件において不十分であり、「正戦論を克服」して外交や対話に移行すべきだと唱えている。それに対し、バンス副大統領は、教皇の回勅における「テクノロジーに応じた更新が必要」という点では理解を示しているが、バンス氏の意図は、変化する世界の中で「米国の防衛や軍事行動の正当性を再定義・維持するか」という現実政治(地政学)の文脈における教義の更新にあることは明らかだ。

 参考までに、レオ14世とバンス氏が自身の主張の根拠とする聖書には、「正戦論」を支持する聖句とそれを批判する聖句の2通りがあることだ。「正戦論」の生みの親であるアウグスティヌスやトマス・アクィナスは、国家の権威や秩序を守るための武力行使を正当化する際、新約聖書「ローマ人への手紙 」第13章4節「支配者は、あなたに善を行わせるために神に仕える者なのです。しかし、もし悪を行えば、恐れなければなりません。彼はいたずらに剣を帯びているわけではないからです。彼は神に仕える者であり、悪を行う者に怒りをもって報復する者です」を引用する。

 一方、現代のカトリック教会は、戦争がもたらす悲惨さを前に、イエスの非暴力の教えや預言者の平和のビジョンを強調し、「マタイによる福音書 」第26章52節「そこで、イエスは言われた。『剣をさやに収めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる』」を引用する、といった具合だ。

 すなわち、聖書には武力を伴う「正義の執行」を認める記述と、徹底した「非暴力と平和」を求める記述の双方が含まれており、時代や教会の置かれた状況によってどちらかに重点が置かれてきたわけだ。バンス氏は前者の聖句を、レオ14世らカトリック教会側は後者の「イエスの非暴力」の聖句を自身の「正戦論」の支柱に置いているわけだ。

ノルウェ―がフランスの「核の傘」に入る

 英国とポーランドは27日、新たな包括的な防衛、安全保障条約を締結した。英国政府によると、スターマー首相とトゥスク・ポーランド首相がロンドンで署名した条約には、大規模な合同軍事演習や、NATO東部国境防衛のための無人航空機システムの活用拡大などが含まれている。

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▲トゥスク首相とスターマー首相は、ノースホルト空軍基地で防衛・安全保障・防衛条約に署名、ポーランド首相府公式サイトから、2026年5月27日

 トゥスク首相はノースホルト空軍基地(ロンドンから北西約24キロ)で安全保障・防衛パートナーシップ条約に署名した後、「私たちはポーランドとイギリスの安全を守り、我々の価値観を守りたい」と強調、ワルシャワとロンドンは二国間関係を最高レベルに引き上げたと述べた。
 
 英ポーランド条約の重要な焦点は、「複雑な次世代兵器システム」の共同開発を進め、新たな高性能弾薬や、中距離防空ミサイルシステムの共同生産を推進することだ。また、組織犯罪対策、サイバーセキュリティとハイブリッド脅威対策だ。両国の目標は潜在的な侵略者であるロシアを効果的に抑止することにある。欧州各地で発生しているロシア主導の放火事件、スパイ活動、サイバー攻撃、偽情報の流布といったハイブリッド攻撃への情報共有や防衛を強化する。

 英国にとって、EUとの防衛条約は、ブレグジット(EU離脱)後、スターマー現政権が進める「欧州諸国との信頼回復・連携強化」の一環であり、EU全体との防衛協力を深める布石だ。英国は近年、ドイツおよびフランスとも同様の防衛協定を締結している。ポーランドもフランスと協定を締結済みだ。ベルリンの情報筋によると、ドイツとポーランドの防衛条約に関する協議が現在も継続中だ。

 スターマー首相は「ロシアの侵略ほど我々にとって大きな挑戦はない。これはウクライナ国内だけでなく、国境の外でも見られる。この署名された条約は、両国間の安全保障と防衛関係の世代を超えた強化の真の成果だ」と語った。一方、トゥスク首相は「我々の軍事、技術、サイバー、安全保障の協力は、情報を含む幅広い分野で行われており、この歴史的な条約が本当に私たちの未来をより安全にするという希望を与えている」と説明している。

 なお、両首脳はこの協定について、「ここ数十年で最大の前進」(スターマー首相)」、「歴史的な瞬間」(トゥスク首相)」と位置づけており、トランプ米政権から求められてきた「欧州独自の防衛責任の拡大」への回答としても重要な意味を持っている、という認識を共有している。

 同じ日に、ノルウェーのストーレ首相はパリでフランスのマクロン大統領と会談し、フランス主導の新たな核抑止枠組み(欧州独自の「核の傘」)に加盟する防衛協定(ナルヴィク協定)に署名した。
(ナルヴィク=Narvikとはノルウェー北部にある北極圏の港町の名前。第二次世界大戦中(1940年)にノルウェー侵攻作戦において、戦略上の要衝として激しい海戦が行われた歴史的な場所)。

 ノルウェーは これまで、欧州のNATO加盟国として大国アメリカの核防衛体制の下にあった。そのノルウェーがフランスの核抑止枠組みに加わった背景には、�.蹈轡△砲茲覲砲龍式卅�大、�∧胴颪遼姫劵灰潺奪肇瓮鵐函並于そ0汰簡歉磧砲悗良坡亮太�の2点が挙げられる。北極圏でロシアと国境を接するノルウェーは、間近に迫るロシア極北の核戦力増強に対抗する必要が出てきた。なお、フランスが主導する核防衛構想への加盟国は、英国、ドイツ、ポーランド、スウェーデンなどに続き、ノルウェーが9カ国目。

 ストーレ首相はノルウェー通信社NTBに対し、「今回の措置は欧州の安全保障情勢を踏まえたものである」と強調する一方、「これまで通り安全保障の主軸はNATOと米国だ。平時においてノルウェー領土内に核兵器は配備しない」と指摘した。すなわち、同国の伝統的な核政策を維持したまま、フランスの抑止力を上乗せする形だ。

 ちなみに、フランスの核防衛体制(先進的抑止力)とは、EU加盟国の中で唯一の核保有国の同国が、2026年3月に打ち出した新構想「先進的抑止力(Forward Nuclear Deterrence)」に基づいている。フランス独自の核抑止力を、賛同する欧州の同盟国全体に拡大するものだ。万が一、加盟国が深刻な攻撃を受けた場合、フランスの核兵器による報復措置が発動する可能性(核の傘)を明示して敵国を牽制する。

 ただし、他国の領土に常駐・配備(核共有)する米国のシステムとは異なり、フランスの手法は柔軟な機動展開と作戦共有が特徴だ。具体的には、フランスの核積載可能な戦闘機(ラファールなど)が、必要に応じて同盟国の基地へ一時的に展開、機密情報の共有、合同核演習の実施、および防衛装備品の共同備蓄などを進める。

 英国とポーランドが結んだ防衛条約が「通常兵器やサイバー、ハイブリッド戦」を強化するものであるのに対し、ノルウェーとフランスの協定は「究極の抑止力である核の盾を欧州で分かち合う」という、より高次元の防衛統合だ。いずれにしても、トランプ米大統領の「欧州の安全保障は欧州諸国が責任持つべきだ」という主張は着実に現実化してきているわけだ。

ウィーン元市長の像が3・5度右に傾く時

 ウィーンのリングシュトラーセにあるウィーン元市長カール・ルエーガ―(1844〜1910年)のブロンズ像は今年1月末、クレーンで台座ごと撤去されたが、今月26日、再び設置されたことが明らかになった。ただし、同像は芸術家クレメンス・ヴィリダールの構想に基づき、3.5度右に傾斜しているのだ。

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▲3・5度右傾斜したウィーン元市長ルエーガーの記念像、オーストリア国営放送のウェブサイトから、写真はオーストリア通信(APA)

 ルエーガー元市長は(在任1897〜1910年)は、近代ウィーンの水利システムや公共交通網を築いた功労者であり、キリスト教社会党(CS)の共同創設者だ。彼の市長在任期間は、ウィーンが近代都市へと発展する上で極めて重要な時期だった。ルエーガーはまた、公然たる反ユダヤ主義者であり、政治的反ユダヤ主義の先駆者の一人であった。彼は反ユダヤ感情を利用して支持を集めた。アドルフ・ヒトラーは自身の著書「我が闘争」の中で、ルエーガ―を「模範」と呼ぶなど、若き日のヒトラーに多大の影響を与えた人物としても知られている。

 シュトゥーベントーア門近くに建てられた記念像は1926年に建立され、長年にわたり議論の的となってきた。批判者たちは、繰り返しデザイン変更、あるいは撤去を求めてきた。ペンキや落書きによる破壊行為も繰り返し行われてきた。

  2021年5月、文化担当市議会議員のヴェロニカ・カウプ=ハスラー氏(社会民主党)は、様々な意見の調整のため、約40名の参加者を集めた円卓会議を開催した。そして2022年秋にルエーガ―記念像の恒久的な文脈化を目的としたコンペティションが開催され、13名のアーティストが参加した。

 ウィーン応用美術大学のエヴァ=マリア・シュタドラー氏が委員長を務めた審査委員会は、最終的にクレメンス・ヴィリダル氏の作品「傾斜(カール・リューガー 3.5°)」を選出した。ヴィリダル氏は像の傾斜の理由について、「3.5度という角度は、見た瞬間に『おや? 何かおかしい』と初めて明確な違和感(Irritation)を覚えるポイント」と説明し、歴史の美化を排し、批判的対話を促す「歴史の文脈化(Contextualization)」を目的としているという。

 もう少し具体的に説明すると、伝統的な通常の銅像は、偉人を垂直に見上げることでその「偉大さ」を表現し、権威を象徴する仕組みになっている。その像全体をあえて傾けることで、その威厳や不動の美を意図的に崩す。3.5度という角度は、パッと見では気づかなくても、人間の目で捉えたときにはっきりと「バランスが悪い」といった違和感や不安を呼び起こす絶妙な傾きだ。公共空間にこの違和感を配置することで、「なぜ傾いているのか?」という思考を誘発させるというのだ。

 また、政治的意義としては、ポピュリズム・反ユダヤ主義への批判と妥協 だ。像を傾けることは、ルエーガーの「政治的な歪み」を象徴し、ウィーン市が過去の差別主義と決定的な決別を示す象徴的なサインとなる、というわけだ。

 要するに、記念像の「撤去」派でも「維持」派でもないのだ。左派やユダヤ人コミュニティは「完全撤去」を求めたのに対し、歴史的建造物の保存や彼の市政の功績を評価する保守派は現状維持を求めていた。「3・5度右傾斜」派はその中間的な立場だ。「残したまま傾ける」というアプローチは、「暗部を晒したまま、批判的に記憶し続ける」ために、政治的妥協の産物というわけだ。「3・5度右傾斜」案には深い考察があるわけだ。

 この3.5度の傾斜による再設置に対しては、「過去の暗部と真摯に向き合うための優れた芸術的解決策」と評価する声がある一方で、ウィーンのユダヤ人学生会(JOH)や一部の専門家からは「問題を根本から解決しない、中途半端で臆病な解決策である」との強い批判や抗議もあり、現在も激しい議論が続いている。

 ちなみに、極右政党「自由党」のウィーン党関係者は26日、プレスリリースで、「既存の文化施設を守り、芸術家を支援し、ウィーンの伝統を強化する代わりに、イデオロギー的な動機に基づく威信プロジェクトに資金が浪費されている」と批判している。

 このコラム欄でも報じたが、ローマ教皇レオ13世(在位1878年〜1903年)は、ハプスブルク帝国の皇帝フランツ・ヨゼフ1世の警告を無視して、ウィーン市長にルエーガーの就任を認めた張本人だ。問題の発端はレオ13世の決定にあったわけだ。

 いずれにしても、ルエーガー記念像のように、設置された後、一旦撤去され、また再設置されるといった歴史的像は多くはないだろう。ルエーガ―は「安眠妨害しないでほしい」と嘆いているかもしれない。視野が3・5度右に傾いた現在、まっすぐ立っていた時より安眠できるか否かは不確かだ。

AIが大臣となって公権力を行使できるか

 世界初の無神論国家を宣言したアルバニアで冷戦終焉後、急速に民主化が促進され、現在は欧州連合(EU)加盟を目指している。その同国で昨年9月、「公共入札から汚職を100%排除する」をうたい文句で、世界で初めて人工知能(AI)がラマ政権内に大臣として政権入りして話題を呼んだ。しかし、あれから1年も経過しないうちに、ディエラ(アルバニア語で太陽)と呼ばれるAIを巡り、そのチャットポットの運営者が組織犯罪の容疑を受けて捜査を受ける一方、同国の憲法裁判所は26日、人間ではないAIが閣僚入り(バーチャル大臣)することが同国の憲法に合致するかの審理を開始する(結審は後日の予定)。

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▲AI大臣「ディエラ」

 それに先立ち、オーストリア国営放送(ORF)のウェブサイトが26日、「AI大臣、法廷へ」という見出しで大きく報道していたので、その概要を以下、紹介する。人間ではなく、AIが閣僚(仮想大臣)となり、その後、関係者が法廷に出廷するという前代未聞の出来事がバルカン半島の小国で起きているのだ。

 ディエラがラマ政権入りして行政上の意思決定を下すということ自体、同国内で当初から疑問の声があった。AIは公共調達において役立つ可能性はあるが、その責任は人間が負うべきだ、というのが一般的な見解だった。野党保守・中道右派政党「民主党」(DP)のガズメント・バルディ議会代表は、「ディエラ」をラマ首相の「プロパガンダの空想」であり、「この政権による日常的な巨額の横領を隠蔽するための偽装」だと非難した。

 ラマ首相率いる社会党は昨年5月の議会選挙で4期連続の勝利を収め、絶対多数を獲得した。同年9月には大統領令により「ディエラ」が大臣に任命された。ラマ首相は当時、「ディエラは私の娘であり、父親に非常に忠実だ」と誇らしく語り、「ディエラには従兄弟がいないため、よくある縁故主義の犠牲になる危険性はない」と付け加えた。

 DPは憲法裁判所に訴えを起こした。「憲法によれば、政府に就くことができるのは実在の人物のみであり、アルゴリズムは国民に対して責任を負わない」と主張した。この政令は、法的根拠のない新たな閣僚機構を創設し、憲法の枠組み外で首相に新たな責任を課すことで、権力分立の原則にも違反しているというのだ。

 アルバニアの現行憲法では、閣僚(大臣)は「18歳以上の市民(人間)」であることが前提となっている。データとアルゴリズムに過ぎないAIに大臣の権限や地位を与えることは、そもそも憲法違反(違法な任命)という指摘は説得力がある。また、野党側は、このAI大臣を「政府の大規模な汚職を隠すためのバーチャルな目隠しに過ぎない」と批判している。

 それに対し、ラマ政権は「AI大臣の主な任務は公共調達(政府の入札プロセス)」の監視・評価だ。人為的なコネ、ネポティズム(身内びいき)、賄賂といった政治的影響を100%排除するための武器だ」と主張して譲らない。

 アルバニアは2030年までの欧州連合(EU)加盟を目指しているが、最大の課題は汚職対策だ。テクノロジーによるガバナンスの刷新をアピールすることで、加盟交渉を加速させたい政治的狙いがあることは間違いないだろう。

 ところで、アルバニアのAI大臣の登場に対し、「AIにどこまで公権力を委ねてよいのか」という新しいテーマが生まれてきた。同時に、もしAIに不具合や偏り(バイアス)があった場合、「誰が責任を負うのか」という問題が浮上している。

 「ディエラ」は昨年9月に公開された時点では、全く新しいキャラクターではなく、同国のデジタル政府ポータルサイト「E-Albania」のチャットポットとして、既に存在していた。このキャラクターは、ChatGPTを運営するMicrosoftとOpenAIの協力のもと開発された。数か月後、「ディエラ」に顔が与えられた。女優のアニラ・ビシャがモデルと声を担当し、アルバニアの伝統衣装を身にまとったアニメーションのアバターだ。

 この前例のないアルバニアのプロジェクトは国際的な注目を集めたが、AIを搭載した政府職員による意思決定の透明性と説明責任の欠如、そしてミスが発生した場合の責任の所在に関する懸念は、すぐに現実のものとなった。ディエラを開発した政府の「国家情報社会庁(AKSHI)」の幹部らが、皮肉にも別の汚職(入札操作)容疑で捜査対象になったのだ。

 アルバニアのデジタル変革を担っている首相直属の国家情報機関AKSHIがあるが、そのAKSHIの局長と副局長が昨年12月、司法当局の捜査対象となった。汚職・組織犯罪特別検察庁は彼らを自宅軟禁下に置いた。起訴状によると、彼らは意図的に友好企業に契約を与えていた。また、脅迫や威嚇を用いて競合他社を撤退させていたというのだ。現地メディアによると、誘拐事件も発生し、数百万ユーロが不正に流用された。

 野党はラマ首相の辞任を要求したが、ラマ首相は「以前は、簡単な証明書でさえ、あらゆる書類を取得するために人々は列に並ばなければならなかった。AKSHIは、国民の6億ユーロ以上、そして7000年分以上の時間を節約した」と述べ、野党側の要求を拒否している。

 声と顔を提供した女性、ビシャ氏も「ディエラ」に対して訴訟を起こしている。ビシャ氏は、自身の肖像を不法に使用したとして政府を訴えている。ビシャ氏によると、彼女が録音した動画と音声素材はe-アルバニアのチャットボットでのみ使用される予定であり、契約は2025年末に満了したという。彼女は、AI大臣の顔になることに同意したことは一度もないと主張している、といった具合だ。

 最後に、アルバニアのAI大臣問題について、当方がお世話になっているAIにその見解を聞いた。

「この件は、テクノロジーで政治の腐敗をリセットできるかという革新的な実験である。同時に、法の支配や主権者(人間)による統治という民主主義の原則を揺るがしかねないという危うさを孕んでいる。憲法裁判所が下す判断は、AIはあくまで人間の補佐(デジタルアシスタント)の枠に留まるべきか、それとも新たな統治の形態として一定の地位を容認するかという、世界中の国々にとっても極めて重要な先例(ケーススタディ)となる」

レオ13世「ヒトラーの『政治の師』を評価」

 コンクラーベ(教皇選出会)でペテロの後継者ローマ教皇に選出された後、ロバート・フランシス・プレボスト枢機卿は自身の教皇名を「レオ13世」とすることを明らかにした。その理由について、「教皇レオ13世(1810年〜1903年)は、歴史的な回勅『レールム・ノヴァルム』の中で、第一次産業革命の文脈における社会問題について初めて言及した教皇だ。そして教会は今日、人間の尊厳、正義、労働の保護などを突きつける新たな産業革命と人工知能(AI)への対応が求められている。現代の世界がレオ13世時代(在位1878年〜1903年)と同じ社会課題に直面しているという認識から、『レオ13世』の後継者として『レオ14世』という教皇名を選んだ」(バチカンニュース)ということだった。

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▲第256代ローマ教皇レオ13世、ウィキぺディアから

 レオ13世は一般的には、「産業革命で搾取される労働者の権利の擁護と、資本主義の行き過ぎに警告を発した社会派教皇だった」と言われてきた。前教皇フランシスコが自身の教皇名を尊敬する貧者の聖者、アシジの聖フランシスコから取ったように、米国人のプレボスト枢機卿は自身の教皇名をレオ13世の足跡を継承するという意味から「レオ14世」としたわけだ。

 ところで、レオ13世の教皇時代の言動を振り返ってみた。レオ13世はハプスブルク帝国の皇帝フランツ・ヨゼフ1世の警告を無視して、ウィーン市長にカール・ルエーガ―の就任を認めているのだ。ルエーガ―は当時、ウィーン市民から愛される政治家だったが、同時に、激しい反ユダヤ主義的扇動で知られていた。

 ルエーガ―は1885年、キリスト教社会党を率いてウィーン市議会選挙で圧倒的な勝利を収めたが、フランツ・ヨゼフ1世はルエーガ―が危険な政治家であるとして、市長への承認を4回拒否してきた。皇帝から就任拒否を突きつけられ、ウィーンの市政が麻痺しかけたが、その事態を動かしたのがローマ教皇レオ13世だったのだ。

 オーストリアの一部の高位聖職者(保守的な司教たち)は、ルエーガーの過激な手法や反ユダヤ主義を嫌い、バチカンに「ルエーガーの党を禁止してほしい」と直訴していた。ルエーガーは当時、民衆の支持(ポピュリズム)を集めるため、激しい反ユダヤ主義的煽動を行った。多民族・多宗教の帝国を維持し、全臣民の平等を建前とする皇帝にとって、特定の層を排斥するルエーガ―は社会秩序を乱すデマゴーグ(煽動政治家)に映った。ルエーガーの政治スタイルは、ハプスブルク王朝の伝統的な支配体制を脅かす「危険な革命分子」に見えたからだ。

 しかし、レオ13世は逆にルエーガーとその政党を支持する決定を下したのだ。レオ13世は、当時台頭していた「神を信じない社会主義(無神論)」や、教会を軽視する「自由主義(リベラリズム)」を最大の脅威とみなしていた。ルエーガーは熱心なカトリック信者であり、労働者や下層中産階級(民衆)を味方につけてカトリックの価値観を守ろうとしていた。教皇は自身の有名な社会回勅『レerum Novarum(レールム・ノヴァールム)』の精神に基づき、民衆に根ざした新しいキリスト教社会運動として、ルエーガーの活動に「お墨付き(祝福)」を与えたのだ。

 バチカン側からの事実上の調停(介入)があったことで、皇帝フランツ・ヨゼフ1世も折れざるを得なくなった。帝国の最高精神的支柱であるカトリック教会のトップが認めた人物を、いつまでも拒否し続けることは政治的に不可能だったからだ。1897年、5回目の選出を経て、皇帝はついにルエーガーのウィーン市長就任を承認した。

 それだけの話なら問題ではなかった。歴史家によると、ルエーガ―の政治スタイル、「近代的ポピュリズム」と「反ユダヤ主義の煽動政治」は、当時ウィーンに暮らしていた若き日のアドルフ・ヒトラーに決定的な影響を与えたという。

 実際、ヒトラーは著書「我が闘争」第1巻第3章でカール・ルエーガーを「Heute sehe ich in dem Manne mehr noch als fruher den gewaltigsten deutschen Burgermeister aller Zeiten.」と称賛している。ヒトラーはルエーガーの政治的手腕や大衆扇動術を高く評価し、ナチズムのモデルとしたわけだ。

 19世紀末から20世紀初頭にかけてウィーン市長を務めたルエーガーとヒトラーは、直接的な面識や個人的な付き合いはなかったが、ルエーガーは若き日のヒトラーに極めて大きな思想的・政治的影響を与えた人物であり、ヒトラーの「政治の師」として歴史的に位置づけられている。

 ルエーガーは「キリスト教社会党」を率い、大衆の支持を集めるために反ユダヤ主義(アンチセミティズム)を政治利用した。1907年から1913年にかけて青年期をウィーンで過ごしたヒトラーは、ルエーガーがユダヤ人をスケープゴートにして下層・中産階級の不満を吸収する姿を目の当たりにした。ヒトラーはこの手法を学び、後にナチスにおける過激な反ユダヤ主義政策に応用していった。

 また、ルエーガーは、巧みなプロパガンダと圧倒的な雄弁さで民衆の心を掴むポピュリズム(大衆迎合主義)の天才だった。ヒトラーは、それまでのエリート主義的な政治とは異なる、近代的な「大衆の動員方法」をルエーガーの政治運動から学んだ。

 ちなみに、歴史でイフはタブーだが、ルエーガーがウィーン市長に就任できなかったならば、ヒトラーへの影響も限定的に終わったかもしれない。レオ13世はルエーガーの政治的危険性を過小評価したため、ヒトラーが後日、ルエーガーから学んだ政治スタイルを駆使してドイツで政権を奪い、ナチス・ドイツの蛮行へと突き進んでいったわけだ。

 米国人のプレボスト枢機卿はそのレオ13世を社会的問題に関心がある教皇だったという理由で高く評価し、自身の教皇名につけた。ローマ教皇は共産主義が台頭した時もその正体を正しく認知できなかった。歴史は繰り返されるのだ。

「バベルの塔」と「ペンテコステ」の話

 キリスト教会では24日、ペンテコステ(聖霊降臨祭)を迎えた。イエスの生誕のクリスマスと復活のイースターと共に、ペンテコステはキリスト教会にとって最も重要な祝祭だ。新約聖書の「使徒行伝」第2章3〜4節によれば、ペンテコステの日曜日は、イエスの母マリアと弟子たちがユダヤ教のシャブオット祭のためにエルサレムに集まっていた時、聖霊が「天からの轟音」として降臨した。「突然、激しい風が吹くような音が天から聞こえ、彼らの座っていた家全体に満ちた。彼らは、炎のような舌が分かれて、一人ひとりの上に留まるのを見た。すると、彼らは皆聖霊に満たされ、御霊が語らせるままに、異なった言葉で話し始めた」と記されている。

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▲エル・グレコの「聖霊降臨」(1596〜1600年)、ウィキぺディアから

 彼らは突然、さまざまな言語で自発的に話すことができ(異言=グロソラリア)、その場にいた全員がそれぞれの母語でそれを理解できた。この出来事は、福音の世界的な広がり、ひいてはキリスト教共同体の誕生の最初のきっかけと考えられている。ペンテコステはイースターから50日後に祝われる。ちなみに、ペンテコステという言葉はギリシャ語の「Pentekost」に由来し、「50」を意味する。第2バチカン公会議(1962〜65年)以降、聖霊降臨祭は「復活祭の第8主日」として、復活祭の完成と確証として祝われるようになった。

イエスの弟子たちは宣教の道具として、奇跡的に多くの言語を理解できるという賜物を受けた。この「ペンテコステの出来事」あるいは「ペンテコステの奇跡」は、キリストを信じた、そして今も信じるすべての人々の共同体としての教会の創設のきっかけとなった出来事、いわば教会の「誕生日」と考えられている。聖書は聖霊を、人生のあらゆる領域における創造的な力という。教会の教義によれば、聖霊はイエス・キリストの人格、言葉、そして働きを生き生きと保つために世に遣わされた賜物だ。ペンテコステ(聖霊降臨祭)の翌日である月曜日はPentecost Mondayと呼ばれ、多くのキリスト教国では祭日だ。

 興味深い点は、ペンテコステの異言の奇跡は旧約聖書のバベルの塔の物語(創世記11章1-9節)と関連があることだ。バベルの塔の話は、天に届く塔を建てようとした人間の傲慢さに対する神の罰として言語を混乱させられた話だ。「バベルの塔」と「ペンテコステ」(五旬節)は、聖書において「人間の言語」を介して対をなす、正反対の物語(表裏一体の関係)として捉えられている。キリスト教神学では、ペンテコステは「バベルの塔の呪いや混乱が解消された出来事」と解釈される。

 <バベルの塔>
 神による言語の「分断」、旧約聖書(創世記)の物語だ。 人類は天まで届く塔を建て、神に並ぶ名声を得ようとした。人間の傲慢さへの神の処罰として、当時、世界中の人間は同じ一つの言語を話していたが、神は人間の傲慢さを崩すため、彼らの言葉を混乱(バベル)させ、互いに意思疎通ができないようにした。その結果、人々は理解し合えなくなり、建設は中断され、世界中に散り散りになった。

  <ペンテコステ>
 新約聖書(使徒行伝)の物語だ。 イエスの復活から50日後、弟子たちが一緒に集まっていると、突然、激しい風のような音が天から響き、舌のようなものが炎のように分かれて一人びとりの上にとどまった。すると一同は聖霊に満たされ、他国のさまざまな言葉(外国語)で語り出した。 世界中からエルサレムに集まっていた人々はあっけに取られ、「生れ故郷の国語を彼らから聞かされるとはどうしたことか」と驚き惑った。

 <結論>
 「バベルの塔」は、人間が神に近づこうとして言葉が通じなくなり、人類がバラバラになった悲劇だ。一方、ペンテコステでは、神は聖霊を降臨させ、言葉の壁を越えて人々の心を再び通わせ、一つにされた。そのため、ペンテコステは「逆バベル」とも呼ばれるわけだ。

 ところで、新約聖書「ルカによる福音書」第23章43節によると、イエスは当時、全ての人間が、最後まで誰も信じてくれなかった中で、自分を信じてくれた、たった一人の十字架の同伴者であった強盗に、「よく言っておくが、あなたきょう、私と一緒にパラダイスにいるであろう」と述べている。「天国」ではなく、「楽園にいるだろう」と約束しているのだ。

 イエスは伝道を開始した直後、天国は近づいたと述べていたが、十字架の道に行かなければならなくなった結果、「天国」ではなく、「楽園」と言っているのだ。なぜだろうか。十字架の救済でメシアとしてのイエスの使命が成就したのであれば、どうして再び降臨しなければならないのか、等々の疑問がつきまとう。

 聖霊の恵みを得た聖パウロすら「私は、内なる人として神の律法を喜んでいるが、私の肢体には別の律法があって、私の心の法則に対して戦いを挑み、そして肢体に存在する罪の法則の中に、私を虜にしているのを見る。私はなんとみじめな人間なのだろう」と慨嘆している(「ローマ人への手紙」第7章22節〜24節)。人類は‘第2のペンテコステ‘を待たざるを得ないのだろうか。

教皇、トランプ政権のAI政策に警戒

 バチカンニュースによると、教皇レオ14世は25日、初の回勅「「マニフィカ・ヒューマニタス:人工知能時代の人類保護について」を発表するが、その回勅発表に米国のAI企業アントロピックの共同創設者のクリストファー・オラー氏が出席することが明らかになった。教皇レオ14世が規制問題で米政府と法廷闘争中のアントロピック社の代表をローマに招いたことに対し、トランプ米大統領が反発するのは必至だ。

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▲バチカン主催で21日開催されたAI国際会議、バチカンニュースから

 レオ14世は25日、回勅「マグニフィカ・ヒューマニタス(偉大なる人類)」を発表する。バチカンによると、カトリック教会の最も重要な文書の一つであるこの回勅は、「人工知能時代の人類保護」をテーマとしている。これは、教皇の社会政策における最初の重要な節目となる。

 バチカンで行われる「マニフィカ・ヒューマニタス」の公式発表には、レオ14世のほか、国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿、教理省長官ビクトル・マヌエル・フェルナンデス枢機卿、教皇庁社会福祉評議会議長ミヒャエル・チェルニー枢機卿らに加え、政治神学者のレオカディ・ルションボ氏とアンナ・ローランズ氏も同席する。それだけではない。米国企業Anthropic(アンソロピック社)の共同創設者であり、著名なAIセキュリティ研究者のクリストファー・オラー氏が参加する予定となっていることだ。オラー氏はスタートアップ創業者で、GoogleとOpenAIでの勤務を経て、2021年にAnthropicを設立。同社は強力なClaudeモデルで国際的な基準を確立している。ChatGPT最大のライバルと称されている。

 アンソロピック社は、AIの安全性と倫理性を最優先に掲げる、世界最高峰のアメリカの人工知能(AI)開発スタートアップ企業だ。OpenAI社の元研究幹部らによって2021年に設立され、現在はOpenAI社に次ぐ世界第2位のAI企業として圧倒的な存在感を誇っている。

 2026年4月に発表された最新モデル「Claude Mythos」(クロード・ミュトス)は、人間の指示なしに主要OSやブラウザの脆弱性を見つけ出すなど、これまでに作られた中で最も高性能な数値を叩き出した。あまりにも強力で悪用のリスクがあるため、現在は一般公開を制限し政府等と連携している。

 商業化路線にシフトしてきたOpenAIとは違い、アンソロピック社は「人類にとって安全で制御可能なAIの構築」を目指し、AIに善悪の基準となる独自の「憲法(Constitution)」を組み込む手法(Constitutional AI)を採用している。

 ところで、アンソロピック社は現在、トランプ米政権との間で「AIの軍事・監視利用の制限(安全規制)」を巡り、法廷闘争で全面対決の最中だ。AIの安全性を最優先する同社の理念と、圧倒的な軍事優位を求めるトランプ政権の思惑が激突した形だ。米国防総省はアンソロピック社に対し、AIモデルへの「完全かつ無制限のアクセス」を要求。しかし同社は、自社のAI「Claude」が「大量監視システム」や人命を奪う「完全自律型兵器」に使用されることを防ぐための規制(ガードレール)の維持を主張し、この要求を拒否した。

 これに激怒したドナルド・トランプ大統領は2026年2月、「過激な左派(ウォーク=woke)企業に軍の戦い方を決めさせない」として、連邦政府の全機関に対しアンソロピック製品の使用停止を命令した。同時にヘグセス国防長官は、同社を国家安全保障上の「サプライチェーンリスク」に指定し、米政府と取引する企業に対しても同社との商取引を禁止した。それに対し、2026年3月、アンソロピック社は2026年3月、政府の制裁措置は不当な報復であり権力の乱用だとして提訴した。

 問題は、現米政権と激しく対立している当事者をバチカンに招くことは、教皇が米政権のAI政策に対し明確に「不信任」を突きつけた、と受け取られる可能性が高いことだ。ただし、米政府はここにきてアンソロピック社へ歩み寄りを見せてきているという。

 米国政権がAIの規制緩和を推進する一方で、レオ14世は倫理的な取り扱いを主張している。同14世は2025年にローマで開催された会議で「軍事部門と民間部門の両方において、AIの開発と応用を綿密に監視し、AIが人間の意思決定の責任を免除したり、紛争の悲劇を悪化させたりしないようにしなければならない」と警告を発してきた。

 レオ14世はまた、人間が介在しないAI兵器の戦場投入(自律型兵器)に強い懸念を示している。対イラン作戦など軍事力を誇示するトランプ政権の路線とは真逆だ。トランプ政権が経済・軍事競争に勝つための「規制緩和と開発至上主義」を進める一方、教皇は富の集中や労働者の権利侵害を防ぐための「厳格な国際規制」を求めているなど、トランプ氏とレオ14世はAI政策では立場が違う。

 トランプ氏は「米大統領を批判する教皇は要らない」「犯罪や核兵器に弱腰だ」と公然とレオ14世を批判している。それに対し、教皇は先月13日、「私はトランプ政権を恐れていない」と言い切っている。AIを巡る規制問題で両者の関係がさらに険悪化する可能性は排除できない。

「シャーロック・ホームズの日」を迎えて

 「5月22日」は名探偵シャーロック・ホームズの生みの親アーサー・コナン・ドイルが生まれた日で、「シャーロック・ホームズ・デー」と呼ばれている。アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Arthur Ignatius Conan Doyle)は1859年5月22日、スコットランドのエディンバラで生まれた。シャーロック・ホームズなどの本を書く前はわずかな期間だが眼科医だった。1902年に「サー(ナイト)の爵位が授与された。1930年7月7日、71歳で亡くなった。

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▲シャーロック・ホームズのシルエット(「The Sherlock Holmes」Book、DKから)

 日本でも多数のシャーロック・ホームズ・ファンがいるし、ホームズ関連の情報は既によく知られている。ドイルは短編「最後の事件」でホームズを崖から落として殺し、シャーロック・ホームズ・シリーズを終える考えだったが、読者の猛抗議や巨額の執筆料の提示を受け、後に復活させた話は良く知られている。シャーロック・ホームズが死んだことを知った多くの読者は当時、腕に喪章を付けて、その死を追悼したといわれている。

 当方は欧州に居住してからシャーロック・ホームズの探偵物に関心を持ち出した遅すぎたファンの一人だ。海外に住むようになって、BBCのシャーロックホームズ(2010年)やホームズがニューヨークで活躍するCBSTVシリーズ「エレメンタリー」(2012年)などを楽しく観た。

 年を取るにつれて、眠りにつくのが容易ではないこともあって、直近はもっぱらオーディオブックでシャーロック・ホームズの物語を楽しんでいる。そしていつの間にが眠ってしまうことが多い。だから、「海軍条約文書」や「ボヘミアの醜聞」などは何十回も聞いている。

 最近では、「ヤング・シャーロック」(全8話)が3月、放映された。TV用シリーズ(ガイ・リッチー監督)だが、ベーカー街の冷静沈着な名探偵時代ではなく、オックスフォード大学に通う青年シャーロックの話だ。もちろん、ドイルの作品ではないが、シャーロックと父親の関係、そして将来のライバルとなるジェームズ・モリアーティが登場する。続編が制作中という。

 シャーロック・ホームズに関連したエピソードは多い。シャーロック・ホームズのモデルはエディンバラ大学医学部時代の恩師、ジョセフ・ベル教授といわれている。教授は患者の観察から病気だけでなく、職業や経歴まで言い当てる天才的な観察眼の持ち主だったという。

 短編「ボヘミアの醜聞」の中で、ホームズはワトソンに「君は、この部屋へ上がってくる階段が何段あるか知っているか」と聞くと、ワトソンは答えられない。ホームズは「君は見ている(see)が、観察(observe)していないのだ」という有名な台詞を言う。そのシーンにはベル教授の影がちらつく。眼科医だったドイルは「見る』と「観る」の違いに人以上に拘るわけだ。

 英国の推理作家アガサ・クリスティ(1890〜1976年)の名探偵小説の主人公エルキュール・ポワロは難解な事件を事実の積み重ねから論理的な思考で解決していく。一方、シャーロック・ホームズは独自の科学的推理(アブダクション)と観察眼で難事件を解決する。その事件解決へのプロセスには違いがあるが、観察を重視する点では同じだ。シャーロック・ホームズは「マインドパレス」(記憶の宮殿)という言葉をよく使う一方、ポワロは「小さな灰色の脳細胞」という言葉が口癖となっている(「バイデン米大統領の『マインドパレス』」2024年2月10日参考)。

 伝記を読むと、息子を25歳という若さで亡くしたドイルは再び息子と話したいと、晩年には心霊主義に傾斜していく。ドイル自身はその前から心霊には強い関心を持っていたが、息子の死が大きな影響を与えたといわれている。

 興味深い点は、19世紀後半から20世紀初頭にかけ、心霊や幽霊に関心を持つ作家が多いことだ。スウェ―デンの国民的作家ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(1849年〜1912年)は幽霊を捕まえようとしてガラス瓶を持って墓場を徘徊した話は有名だ。当時、映画や蓄音機が出てきてばかりの時代で、亡くなった人の姿や声が見、聞けることから、多くの人々は死後の世界に関心が高まっていた。フランツ・カフカも当時、映画が好きで頻繁に映画館に通っていた。ちなみに、カフカは日記の中で「シャーロック・ホームズのように観察する」といった表現を記している。

 今年7月でドイル没後96年だ。2030年には没後100年を迎える。その時にはシャーロック・ホームズが再び世界的に登場するだろう。「わが巨人軍は永久に不滅です」といった長嶋茂雄氏に倣って言うならば、「シャーロック・ホームズは永久に不滅です」。

メルツ氏「ウクライナをEU準加盟国に」

 米イスラエル軍のイラン攻撃が勃発して以来、世界の主要メディアの関心はイランの動向を含む中東情勢に注がれ、ウクライナ戦争の動向については報道が著しく少なくなってきた。もちろん、それなりの理由はある。イラン情勢がホルムズ海峡の封鎖などで世界の原油市場に大きな影響が出てきていることもあって、米イラン間の交渉の行方に関心が行かざるを得ないからだ。

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▲EUの旗、EU委員会公式サイトから

 厳密にいえば、ウクライナ情勢はかなりのスピードで動いている。5年目に入った戦争でウクライナ軍がここにきて領土奪回に成功する一方、ロシア軍の動きは停滞気味だ。ロシアは今月9日、対独戦争勝利記念の軍事パレードを挙行したが、ウクライナ軍の攻撃を警戒して小規模な軍事パレードとなり、わずか45分で終了した。厳重な警備体制が敷かれ、市内中心部ではモバイルインターネットがダウンし、普段は賑わうロシアの首都の通りは閑散としていた。

 それだけではない。ドイツ民間放送ニュース専門局NTVのモスクワ特派員が報じていたように、ロシア国民の間で戦争の危機感が高まってきているのだ。16日の夜から17日の朝にかけ、ウクライナ軍の無人機がモスクワおよびその周辺地域を攻撃し、少なくとも3人が死亡、製油所の建設作業員らを含む10数人が負傷した、というニュースはモスクワ市民に大きなショックを与えている。ウクライナのゼレンスキー大統領は「戦争はロシアからウクライナにやってきたが、その戦争は今、元のモスクワに戻って来たのだ」と表現していた。

 戦争が勃発してから5年目に突入した現在、モスクワ市民はロシア軍が隣国ウクライナと戦争を行っているという現実を身に感じてきたのだ。ロシアのプーチン大統領は「特殊軍事行動」と国民をだまし続けることができなくなった。

 欧州のメディアの中には、ウクライナが初めて戦場で優位に立った、ウクライナ戦争は大きな転換点を迎えている、といった論調が見られる。それに対し、インスブルック大学のロシア専門家マンゴット教授はNTVとのインタビューで「ウクライナの軍事的立場は数ヶ月前よりも有利になっているが、大きな転換点とはいえない」と指摘する一方、「ロシアは今後も戦争を苛烈化させ続けるだろう」と警告している。

 トランプ米政権はイラン問題にエネルギーを投入、ウクライナの停戦問題については発言を控えている。その一方、欧州連合(EU)の中でウクライナの和平実現に向けた動きが見られ出している。

 現状は、イラン問題は米国が、ウクライナ問題は欧州が責任を持って解決すべきだ、と言ってきたトランプ大統領の意向通り展開していると解釈ができるかもしれない。

 EUは4月23日、第20回目の対ロシア制裁を採択した。その主な内容は、過去2年間で最大規模とされるエネルギーや金融分野、および制裁迂回防止対策の強化などだ。

 ところで、EUの盟主ドイツのメルツ首相はウクライナにEUの「準加盟国」という新たな特別地位を与えることを提案している。EUのアントニオ・コスタ大統領、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長、そしてEU理事会議長国であるキプロスのニコス・クリストドゥリデス大統領に宛てた書簡の中で提案したものだ。

 メルツ氏は、ウクライナの「準加盟」の構想について、「これはウクライナの正式加盟への道筋において決定的な一歩となり得る。これは簡易加盟ではなく、既存の連合協定をはるかに超えるものであり、加盟プロセスをさらに加速させるだろう」と説明する。

 首相の構想によれば、この特別な地位には、ウクライナが欧州理事会およびEU理事会の会合に参加すること(議決権はなし)が含まれる。また、担当分野と議決権を持たない欧州委員会の準委員、議決権を持たない欧州議会の準委員、そして「副報告者」という形で欧州司法裁判所の準判事としての役割も考えられる。同提案によれば、ウクライナは当初、通常の加盟国のようにEU予算への拠出や恩恵を受けることはないが、直接管理下のプログラムは、セーフガード条項を付帯して段階的に開放される可能性があるというのだ。

 同提案の中で重要な点は安全保障政策に関する部分だ。メルツ首相は、「ウクライナは外交・安全保障政策をEUと完全に整合させるべきだ。同時に、加盟国はEU条約第42条第7項に基づく相互援助条項をウクライナにも適用するという政治的コミットメントを行うべきだ」と主張している。

 メルツ首相は、ウクライナがEUの基本的価値観に違反した場合、あるいは加盟交渉で重大な後退が生じた場合に備え、代替措置、あるいは権利剥奪条項を設けることも構想している。メルツ氏の提案はその実現性は別として、ウクライナのEU加盟問題で突っ込んだ提案が飛び出したこと自体、画期的だ。

 また、ロシアのプーチン大統領との和平交渉の際のEU側の代表者問題が話題に上がってきている。フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、候補者としてアンゲラ・メルケル元ドイツ首相、あるいはマリオ・ドラギ元欧州中央銀行(ECB)総裁の名前が挙がっている。そのほか、フィンランドのアレクサンダー・スタッブ大統領とその前任者サウリ・ニーニスト氏も、欧州各国政府から候補として挙げられているという。EUのカラス外交安全保障上級代表は11日、月末の加盟国外相会合でロシアとの交渉の可能性や要求内容を議論すると明らかにしている。

 ちなみに、EU側の動きに先立ち、ロシアのプーチン大統領は9日、ウクライナ戦争の解決に向けて欧州諸国と交渉する意向があることを示唆している。プーチン大統領自身、仲介役としてドイツ社会民主党(SPD)のゲルハルト・シュレーダー元首相を推薦していた。

 いずれにしても、EU側からの案に対し、トランプ米大統領がどのように反応するかは不明だが、EU側がウクライナの和平実現に向け、具体的な代案を提示したことは高く評価される。
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