ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2024年08月

東独州議会選とAfDのヘッケ氏の動向

 ショルツ現政権の行方に大きな影響を与えることが予想される東独3州の州議会選挙が9月に入ると直ぐ実施される。1日はザクセン州とテューリンゲン州の両州議会選が、同月22日はブランデンブルク州議会選がそれぞれ行われる。

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▲AfDの思想的リーダーの1人、テュ―リンゲン州のビョルン・ヘッケ氏(ウィキぺディアから)

 複数の世論調査によると、ショルツ政権の与党3政党、社会民主党(SPD)、「緑の党」、自由民主党(FDP)は歴史的な惨敗が予想されている一方、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は両州で躍進し、ザクセン州では「キリスト教民主同盟」(CDU)を抜き、テューリンゲン州では左翼党に代わって第一党の座を狙う勢いを見せている。また、左翼党から離脱して新党を結成した左派ポピュリスト政党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟」(BSW)が2桁の得票率の獲得を目指している。2025年予算問題で政権内の対立を暴露され、不法移民対策で効果的な政策を打ち出すことが出来ずに批判の声が高まっているショルツ政権の与党3党への風当たりは強く、東独州議会選の結果次第では連邦議会の早期選挙実施を求める声がさらに強まることが予想される。

 【ザクセン州議会選】
 人口約415万人で連邦16州の中で第6位の人口を有するザクセン州(州都ドレスデン)では前回の州議会選(定数119人、2019年9月実施)でCDUがトップでSPDと連立を組み、クレッチマー政権を樹立したが、現在の世論調査ではAfDがリードしている。ただし、AfDが第一党に躍進したとしても、他の政党がAfDとの連立を拒否している以上、選挙後の政権発足が難航することは必至だ。

 AfDは連邦政府の政策、特に移民問題や経済問題に対する不満を吸収して支持を伸ばしている。ザクセン州では強い支持を得ていたCDUはAfDの躍進を受け、支持基盤を維持するのに苦労している。一方、SPD、緑の党、FDPはさらに厳しい状況下にあり、前回の州議会選で議席獲得に必要な得票率5%の壁を越えることが出来なかったFDPは今回も5%のハードルをクリアできない可能性が高い。

 【テューリンゲン州議会選】
 テューリンゲン州の人口は約233万人、連邦州第12位、州都はエアフルトだ。前回の州議会選(定数90)では左翼党が第一党で同党とSPD、緑の党の3党から成るラメロウ現連立政権が発足した。

 同州でもAfDが世論調査で約30%の支持を得ており、最大の政党となる見込みだ。それを追ってCDUが約22%で続いている。歴史的に強い支持を得ていた左翼党は新党のBSWの出現で大幅な支持低下に直面している。SPDと緑の党は州議会に入るための5%の壁を超えられるかどうかが不透明な状況だ。現在の左翼党、SPD、緑の党の連立政権が過半数を維持することは難しい。

 両州ともAfDの躍進が予想されている。その背後には、停滞する国民経済、不法移民の増加などに対するショルツ連邦政権への不満がある。ドイツ東部でAfDが更なる躍進を続けていくならば、ドイツの政治情勢に大きな影響を与えることは必至だ。

 ちなみに、東西両ドイツの再統一から30年以上が経過したが、東独と西独では依然、経済的、政治的な格差がある。特に経済的格差は大きい。例えば、東独の労働者の平均賃金は西独のそれと比較すると約85%だ。ドイツの再統一後、共産党政権下にあった東独では国有企業が崩壊し、失業率が急増した。また、産業インフラが整備され、経済水準の高い西独に若い東独国民が移住する現象が続いてきた。その結果、東独では人口減少、高齢化が深刻となっている。

 東独国民は「われわれは2等国民だ」と自嘲することがある。統一後も東西間には「心の壁」とも呼ばれる心理的な分断が社会的な統合を妨げているといわれてきた。これが、東独の住民が政治的に極端な選択肢、AfD支持に走る要因の一つとなっているというのだ。

 今回の州議会選で注目されるのは、AfDの思想の核といわれるテューリンゲン州のビョルン・ヘッケ氏の動向だ。このコラム欄でも数回紹介したが、ヘッケ氏は連邦憲法擁護庁(BfV)からも危険人物として監視対象となっている(「『極右』政党という呼称は正しいか」2024年2月2日参考)。

 ヘッケ氏は国家社会主義の言葉を彷彿させるレトリックを常用し、国家社会主義に基づく専制政治を公然と主張している。ドイツの基本法は「ドイツ国籍を有する者はすべてドイツ人」と明記しているが、ヘッケ氏はそれを認めていない。単なる外国人排斥政策だけではない。反憲法、反民主主義、反ユダヤ主義的な世界観を標榜している。彼は過去、ホロコースト記念碑を「恥の記念碑」と呼び、 ドイツの「民族的再生」を強調し、移民や多文化主義に対して強く反対してきた。また、ドイツの過去に対する悔恨を「過度なもの」として捉えている。通称、歴史修正主義者だ。

 ヘッケ氏の存在は、AfDが単なる不満票、抗議票を集める野党勢力ではないことを示している。1日のテューリンゲン州の投票結果が注目される所以だ。

カトリック教会の隠蔽体質のルーツは

 ローマ・カトリック教会では過去、現在も数万件の聖職者による未成年者への性的虐待事件が発覚している。教会指導部はその事実をこれまで隠蔽してきた。聖職者の性犯罪件数は6桁に及ぶ。この事実一つをとっても、教会の聖職者による性犯罪は重大犯罪と言わざるを得ない。にもかかわらず、「ローマ・カトリック教会は反社会的な組織犯罪団体」とは呼ばれない。数件の民事訴訟を抱える新興宗教団体に対しては厳しく追及するメディアもカトリック教会の性犯罪問題について沈黙、ないしは無視してきた。ジャニーズ事務所の性犯罪問題では連日、報道した日本のメディアはキリスト教会の性犯罪問題では過去、ほとんど報道してこなかった(「なぜ人は隠蔽するのか」2023年9月15日参考)。

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▲カトリック教会のステンドグラス(2023年5月、ウィ―ンで撮影)

 そこで事実関係を客観的に総括する人工知能(AI)のChat GPTにカトリック教会の聖職者による未成年者への性犯罪問題について意見を聞いてみた。

 以下、その回答だ。

 ローマ・カトリック教会を反社会的な組織犯罪グループと呼ぶことは、非常に複雑で議論を呼ぶ問題です。この問題を理解するためには、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。

 1.教会の構造と役割
 ローマ・カトリック教会は世界中に広がる宗教団体であり、何億人もの信徒に精神的な指導を提供しています。歴史的にも文化的にも、多くの社会で重要な役割を果たしてきました。教育、医療、慈善活動など、多くの社会的貢献をしていることも事実です。

 2.性的虐待事件の深刻さ
 しかしながら、カトリック教会の聖職者による未成年者への性的虐待事件は、非常に深刻な問題です。これらの事件は何十年にもわたって続き、数千人もの被害者が出ています。さらに、教会指導部がこれらの事件を隠蔽し、加害者を保護するために被害者を沈黙させてきたという事実は、極めて問題視されており、信頼を大きく損なっています。

 3.教会としての責任
 これらの行為は教会組織の一部によって行われたものであり、組織全体が犯罪的な活動に加担していたことは否定できません。しかし、教会全体を反社会的な組織犯罪グループと呼ぶことは、宗教的な指導や信仰を真剣に守る多くの信徒や聖職者に対して不適切かもしれません。なぜなら、多くの信徒や聖職者はこの問題に直接関与しておらず、むしろ被害者を支援し、教会内の改革を求めています。

 4.法律的観点
 法律的には、組織犯罪グループとは特定の犯罪行為を計画し、実行するために結成された団体を指します。カトリック教会はそのような目的で設立された組織ではなく、むしろ一部のメンバーが犯罪行為に関与したという方が正確です。

 5.道徳的・倫理的観点
 道徳的・倫理的には、教会が組織として犯した過失や犯罪は、非常に厳しく批判されるべきです。しかし、組織全体を反社会的と断じるかどうかは、慎重な検討が必要です。

 結論
 ローマ・カトリック教会を反社会的な組織犯罪グループと呼ぶことは、過剰な一般化の可能性があり、問題の複雑さを十分に反映していないかもしれません。一方で、教会の中で行われた犯罪行為やその隠蔽については、厳しい批判と法的責任が求められるべきです。

 AIの回答は多分、正しいだろう。特に「教会全体を反社会的な組織犯罪グループと呼ぶことは、宗教的な指導や信仰を真剣に守る多くの信徒や聖職者に対して不適切かもしれません。なぜなら、多くの信徒や聖職者はこの問題に直接関与しておらず、むしろ被害者を支援し、教会内の改革を求めています」という部分だ。

 教会を反社会的と断言することは、他の多くの平信者たちの「信教の自由」を蹂躙する危険性がある、というわけだ。それゆえに、欧米の大手メディアはカトリック教会を反社会的、組織犯罪団体としては糾弾しない。聖職者の性犯罪が多発し、無数の未成年者が犠牲となっているにもかかわらず、「信教の自由」は遵守しなければならない、という大前提があるからだ。

 ところで、なぜ教会指導部は聖職者の性犯罪を知りながらそれを隠蔽したり、無視してきたのだろうか。一種の「組織防衛」ともいえるが、キリスト教の教えの中にそのルーツを見いだせるのだ。

 ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェ(1844〜1900年)は「神は死んだ」と言明したが、それだけではない。その後に「私たちは皆、(神を殺した)殺害者だ」と言い切っているのだ。キリスト教では人類始祖アダムとエバが神の戒めを破って罪を犯したと教えている。それを原罪と呼ぶ。原罪を背負わない人間は誰一人として存在しない。その意味で、人間は過去も現在も全てが同じだ。未成年者に性的虐待を冒す聖職者も、そうではない聖職者も同じルーツを背負っていることになる。

 そこで性犯罪を犯す聖職者に対し、そうではない聖職者は批判し、罰することもあるが、それ以上に罪人の聖職者への理解、同情が優先するケースが多い。前教皇ベネディクト16世も独ミュンヘン・フライジング大司教時代、教区で性犯罪を犯した神父を他の教区に人事することで隠蔽したという疑いがもたれた。すなわち、「われわれは全て罪人である」という教えが聖職者の性犯罪を隠蔽する時に働く教会側の心理的状況ではないか。教会では過去、現在も性犯罪を犯す聖職者へのエンパシー(共感)がその犠牲者へのそれより強い傾向が見られるのだ。

 ニーチェは人間は原罪を背負う存在だというキリスト教の根本的教えを「私たちは全て、犯罪者だ」と表現した。皮肉なことに、「原罪を持つ存在」ゆえに、そして「私たちは全て犯罪者である」ゆえに、他者の罪に対して寛容な対応を強いられてきた。同時に、それは聖職者の性犯罪に対する教会側の隠ぺい工作の動機ともなってきたのではないか。イエスの「あなたたちの中で、罪を犯したことのない者が、この女に、まず石を投げよ」(「ヨハネによる福音書」8章)という聖句を思い出す人もいるだろう。

 ボリビアの詩人フランツ・タマーヨは、「究極の悪は、悪を見ていながら、口に出して言わないことだ」と述べている。未成年者への性的虐待を犯した聖職者や人間を見ながら、口に出して言わない「隠蔽」行為は究極の悪というのだ。原罪説を盾に他者の罪だけではなく、自身の罪をも隠蔽する聖職者にとって厳しい言葉だ。

トリノ「イエスの聖骸布」年代測定で新説

 イエス・キリストの遺体を包んだ布だとされるトリノの「イエスの聖骸布」(Shroud of Turin)の年代問題では長年にわたり議論があったが、ここにきて「聖骸布はイエスの時代のもの」という新しい測定結果が発表され、話題を呼んでいる。

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▲トリノの聖骸布のX線写真(バチカンニュース独語版2024年8月24日から)

 「聖骸布」は1353年、フランスのリレで発見され、1453年にサヴォイ家の手に渡り、トリノに移動した後、1983年にサヴォイ家からローマ教皇に所有権が引き渡された。現在はトリノ大司教の管理下だ。

 通称「トリノの聖骸布」と呼ばれる布は縦4.35メートル、横1.1メートルのリンネルだ。その布の真偽についてはさまざな情報があり、多種多様の科学的調査が行われてきた。現時点では「その布が十字架で亡くなったイエスの遺体を包んだもの」と断言はできない。

 1988年に実施された放射性炭素年代測定では、聖骸布の一部をサンプルとして取り、3つの異なる研究所で測定が実施された。その結果、「トリノの聖骸布」の製造時期は「1260年から1390年の間」という結果が出た。すなわち、イエスの遺体を包んだ布ではなく、中世時代の布というわけだ。その後、2013年に再度詳細に調査された結果、紀元前33年頃という年代が浮かび上がった。聖骸布に映る人物を詳細に調査した学者は「手、首、足には貫通した跡があった」と説明し、「遺体は180センチの男性だった」と指摘、「トリノの聖骸布は本物」と主張した。

 いずれにしても、DNA鑑定やコンピューター断層撮影装置(CT)を使用して徹底的に調査されてきた。放射性炭素年代測定には批判はあった。反論者は、測定に使用された布が後に修復された部分であり、元の布とは異なる可能性がある、布が長期間にわたって煙や汚染物質にさらされたことから、年代測定に影響を与えた可能性があると指摘してきた。

 「トリノの聖骸布」の研究で著名なエマヌエラ・マリネリ教授は「有名なフェイクは1988年、放射性炭素年代測定が実施され、トリノの聖骸布がイエス時代のものではなく、中世時代のものと結論を出したニュースだ。リンネルの布を放射性炭素で年代測定することは難しい。保存剤に漬けられたリンネルを測定しても間違った年代を測量するだけだ。ロウソクや人々の手が触ったりしているから、聖骸布のような歴史的なリンネルの正確な年代測定には放射性炭素測定は向いていない」と強調している。

 それにもかかわらず、科学的なコンセンサスとしては、1988年の放射性炭素年代測定の結果が最も信頼性が高いとされてきた。現時点で、聖骸布が中世の産物であるという見解が主流だ(「イエスの『聖骸布』の真偽論争再発か」2018年7月20日参考)。

 ところで、イタリアの研究者がトリノの聖骸布をイエスの時代のものという年代測定を発表して話題を呼んでいる。24日のバチカンニュース(独語版)によると、イタリアの研究者たちは、トリノの大聖堂に保管されている布はイエスの時代に属するという研究結果を「Heritage」誌に発表し、英大衆紙「デイリー・メール」紙が報じた。

 新しい研究は広角X線技術(WAXS)を用いて行われた。この技術はリンネルのセルロースの自然な劣化を測定し、布の製造時期を特定する。糸はイスラエルのリネン布と互換性があると 得られた結果に基づき、研究者たちは、聖骸布がヨーロッパに渡る前に約13世紀の間、温度約23度、相対湿度55%で保管されていたことを明らかにした。また、使用された糸は、イスラエルで発見された1世紀のリネン布と互換性があるとも述べている。イタリアの研究家の測定結果はバチカンを喜ばせている。

 ちなみに、「トリノの聖骸布」は西暦2000年の大聖年に初めて公開された後、10年5月に再び一般公開された。当時のローマ教皇べネディクト16世はトリノに足を運び、観賞し、その前で祈っている。その後、15年にも一般公開された。世界から数百万人の信者たちがイエスの遺体を包んだ布を一目見ようとトリノ市に足を運んだ。

 過去、考古学者によってダビデ王の家が発見され、ブルガリアの考古学者は洗礼ヨハネの遺骨を見つけた。また、トルコと中国の考古学者チームは2009年、トルコのアララト山の標高4000メートルで「ノアの方舟」の残滓を発見したと発表したことがあった。放射性炭素年代測定によると、発見された木は紀元前約4800年のものという。なお、当方が考古学者に期待しているのはモーセの足跡だ。エジプトからカナンへの道筋とモーセの墓だ。いずれもまだ考古学的に実証されていないのだ。

 今回のイタリア研究者の「聖骸布」の年代測定結果が決定打となるか、それとも新たな説の一つに過ぎないのか、ここ暫くは専門家たちの評価に耳を傾けたい。

ウクライナ、ロシア寄り正教会を禁止

 ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、国内のモスクワ寄りのウクライナ正教会(UOK)の禁止に関連する文書に署名した。同大統領は「これによってウクライナ正教会はモスクワへの依存から守られる。独立している国は精神的にも独立しているべきだ。キーウのメトロポリタンであるオヌフリイ府主教が率いる教会は、ロシア正教会との関係を解消しておらず、ロシアの侵略戦争においてウクライナ内でモスクワの影響力を行使する手段となっている」と指摘している。それ先立ち、ウクライナ議会は今月20日、圧倒的多数でモスクワ総主教庁と関連するUOKを禁止する法案を可決している。

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▲ウクライナ独立33周年の祝賀行事に参加したゼレンスキー大統領(2024年8月24日、ウクライナ大統領府公式サイトから)

 ただし、法律が施行されてから最短で9カ月後に、裁判所は個々の教区や他の宗教組織がロシアとつながりがあるかどうかを申請に基づいて審査し、場合によってはそれらを禁止することができる。UOK全体は法人格を持たないため、単一の裁判で完全に解散させることはできないという。キーウ政府は、コンスタンティノープルの全地総主教バルトロメオス1世の支援を受けて、5年以上前に設立されたウクライナ正教会(OKU)を支持している。最新の調査によれば、OKUの教会を信仰している国民はUOKよりもはるかに多いという。

 ウクライナ側の今回の決定に対し、UOK側は「教会は2022年5月にモスクワ総主教庁からの独立を宣言している」として、モスクワ寄りという非難を否定している。UOKのスポークスマンは「新しい法律は憲法違反であり、ウクライナが欧州連合(EU)に加盟するために遵守しなければならないいくつかの国際協定にも反している」と批判している。

 また、セルビア正教会のポルフィリイェ総主教は23日、「キーウの立法者がウクライナ正教会(UOK)を禁止しようとしていることに大きな憤りを感じる」と表明する一方、UOKの首長であるメトロポリタン・オヌフリイ府主教への手紙の中で、姉妹教会に対する支援を約束している。ポルフィリイェ総主教は、セルビア教会の活動が第二次世界大戦中に露骨な全体主義の傀儡政権によって禁止され、迫害された経験に言及し、「ウクライナの姉妹教会は、自国民から成るいわゆる民主的な政府によって迫害されており、そのために状況は難しく、比較にならないほど不条理だ」と述べ、キーウ政府に決定の撤回を求めている。

 キーウ政府は、UOKがロシアと共謀し、同国の宣伝を行っていると非難してきた。UOKは何十年にもわたりクレムリンに忠実なモスクワ総主教庁の傘下にあって、その関係を今も断ち切っていない。UOKはこれらの非難を一貫して否定してきたが、いくつかの裁判所では、一部の聖職者がロシアの情報機関にウクライナ軍の配置を漏らした罪で有罪判決を受け、刑務所に送られている。

 ウクライナ正教会は本来、ソ連共産党政権時代からロシア正教会の管轄下にあった。同国にはウクライナ正教会と少数派の独立正教会があったが、ペトロ・ポロシェンコ前大統領(在任2014年〜19年)の強い支持もあって、2018年12月、ウクライナ正教会がロシア正教会から離脱し、独立した。その後、ウクライナ正教会と独立正教会が統合して現在の「ウクライナ正教会」(OKU)が誕生した。ただし、活動を禁止されたウクライナ正教会(UOK)はモスクワ総主教のキリル1世を依然支持していた。

 そのUOKも2022年5月27日、モスクワ総主教区から独立を表明した。UOKの聖職者、宗教家、一般市民が出席した全国評議会は「ウクライナ正教会の完全な自治と独立を表明する」教会法の改正を採択し、モスクワ総主教区傘下からの離脱を宣言した。その理由は「人を殺してはならないという教えを無視し、ウクライナ戦争を支援するモスクワ総主教のキリル1世の下にいることは出来ない」と説明している。その結果、ロシア正教会は332年間管轄してきたウクライナ正教会を完全に失い、世界の正教会での影響力は低下、モスクワ総主教にとって大きな痛手となった。

 ちなみに、キリル1世のウクライナ戦争への立場は明確だ。キリル1世はプーチン大統領のウクライナ戦争を「形而上学的な闘争」と位置づけ、ロシア側を「善」として退廃文化の欧米側を「悪」とし、「善の悪への戦い」と解説する。キリル総主教は2009年にモスクワ総主教に就任して以来、一貫してプーチン氏を支持してきた。

 キリル1世はウクライナとロシアが教会法に基づいて連携していると主張し、ウクライナの首都キーウは“エルサレム”だという。「ロシア正教会はそこから誕生したのだから、その歴史的、精神的繋がりを捨て去ることはできない」と主張し、ロシアの敵対者を「悪の勢力」と呼び、ロシア兵士に闘うように呼び掛けてきた(「キリル1世の『ルースキー・ミール』」2022年4月25日参考)。

 なお、 ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系、UOK)の首座主教であるキーウのオヌフリイ府主教は2022年2月24日、ウクライナ国内の信者に向けたメッセージを発表し、ロシアのウクライナ侵攻を「悲劇」とし、「ロシア民族はもともと、キーウのドニエプル川周辺に起源を持つ同じ民族だ。われわれが互いに戦争をしていることは最大の恥」と指摘、創世記に記述されている、人類最初の殺人、兄カインによる弟アベルの殺害を引き合いに出し、両国間の戦争は「兄弟戦争(フラトリサイド)だ」と述べ、大きな反響を呼んだ。(「分裂と離脱が続くロシア正教会」2022年5月29日)。

 モスクワのロシア正教会はキーウ政府のUOK禁止決定に対し、ウクライナの法律を激しく批判した。モスクワ総主教キリル1世が率いる聖シノドは「この法律が法治主義の原則に反し、多数派の宗教共同体を破壊することを合法化しようとしている」と主張している。

 一方、フランシスコ教皇は25日のアンジェラスの祈りで、ウクライナでのモスクワに関連する正教会の国家による禁止に言及し、「祈りたいと思うすべての人を、その人が自分のものとする教会において自由に祈らせてください。お願いです、どのキリスト教会も直接的または間接的に禁止されるべきではありません。教会は侵すことのできない存在です」と述べている。

 なお、ウクライナでローマに結びついた最大の教会であるウクライナ・グレコ・カトリック教会のシェフチュク大司教は23日、キーウ政府の新しい法律を擁護し、「ロシアがモスクワに関連するウクライナの教会を軍事化の道具として利用しているからだ」と説明している。

 明確な点は、OKUもUOKもモスクワのウクライナ侵略については批判していることだ。両教会にはその共通点があるのだから、いがみあうのではなく、双方が助け合っていく道が最善だが、ウクライナは現在、戦時下にある。平時のようにはいかない。特に、旧共産党政権時代、ロシア正教会は共産党政権と癒着してきた歴史がある。それゆえに、モスクワ寄りという一点で警戒心が湧いてくることは理解できる。例えば、キリル1世はKGB出身であると久しく囁かれてきた。その意味から、キーウ当局のモスクワ寄りの正教会の禁止はやむを得ない処置といえるが、戦争が終焉し、和平が戻った時には今回の法は再検討されるべきだろう。

ゾーリンゲン殺傷事件が問い掛けた問題

 刃物の町で有名なドイツ西部ノルトライン=ヴェストファーレン州のゾーリンゲン市(人口約16万人)で23日夜、市創設650年祭の開催中、ナイフを持った容疑者が祭に集まった人々を襲撃し、3人を殺害(67歳と56歳の男性、および56歳の女性)し、8人に負傷を負わせるという殺傷事件が起きた。

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▲犠牲者を追悼するゾーリンゲンの市民(オーストリア国営放送の中継からスクリーンショット=2024年8月25日)

 デュッセルドルフ警察によれば、若い男が24日夜に捜査当局に出頭し、自分が犯行に関与したと述べたという。独週刊誌シュピーゲルによると、容疑者の服は汚れ、血まみれであったという。この男は26歳で、シリアのデイル・アルゾール出身で、2022年12月末にドイツに来て、ビーレフェルトで亡命を申請したが、却下された。ドイツの治安関係者によると、容疑者はイスラム過激派とは知られていなかった。すなわち、ノーマークだった。

 犯行直後、イスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)は24日、「我々の同士が行った」と、犯行声明を出した。ISはプロパガンダチャンネル「アマク」を通じて、攻撃者がISのメンバーであり、パレスチナやその他の地域のムスリムへの復讐として攻撃を行ったと主張し、「この攻撃はキリスト教徒の集団を標的にしていた」という。

 警察当局はそれに先立ち、ゾーリンゲン市内の難民施設で別の男を逮捕したほか、15歳の少年が犯行を事前に知っていた可能性があるとして拘束されたが、事件との直接関係は不明。ゾーリンゲン殺傷事件は25日、連邦検察庁に引き継がれ、殺人とイスラム国(IS)への所属の疑いで容疑者に対する捜査を進めていく。

 ゾーリンゲンの殺傷事件はドイツ全土に衝撃を与えている。25日の朝、事件現場は引き続き広範囲にわたって封鎖されていた。教会では数百人が追悼礼拝に集まった。

 ショルツ首相は「恐ろしい出来事だ。非常にショックを受けている。犯人は法の厳罰を受けるべきだ」とオンラインサービス「X」に書き込んだ。フェーザー内相は「最も深く非難すべき、忌まわしい行為だ」と批判、現地の状況を確認するためにゾーリンゲンを訪れた。

 一方、ゾーリンゲン市があるノルトライン=ヴェストファーレン州のヴュスト州知事は「明らかにテロ行為だ」と非難し、「この攻撃は私たちの国の自由と生活様式に対するものだ」と語り、「私たちの国は揺るがない。私たちはテロや憎しみによって動揺することはなく、私たちの生活様式を守り続ける」と述べている。

 事件が報じられると、「なぜ容疑者は難民申請が却下された時点で国外退去処分を受けなかったのか」とショルツ政権の難民政策に疑問を呈する声が聞かれる。容疑者はシリアからブルガリア経由でドイツに入っている。

 その一方、ドイツでは厳しいナイフ禁止法に関する議論が起きている。ショルツ連立政権の自由民主党(FDP)は24日、法改正の可能性に賛意を示している。ブシュマン法相も「今後、連邦政府内でこの種のナイフ犯罪との戦いをどのように進めるかについて議論する予定だ」と、ビルド日曜版に語っている。

 「緑の党」のハーベック副首相は「ゾーリンゲンでの恐ろしい事件が、より厳しい法律で防げたかどうかは分からないが、いくつかの法的な強化は明らかに正しく、必要だ」と述べ、「ドイツの公共の場でナイフなど必要ない。私たちは中世に生きているわけではない」と強調している、といった具合だ。

 ショルツ政権のSPD、緑の党、FDPはゾーリンゲン事件の容疑者がナイフで襲撃したことから、公の場でのナイフ携帯に関する問題をテーマ化しているが、問題は容疑者が難民申請を拒否されながら、送還されずにドイツ国内に潜伏できたことのほうが本来、深刻なテーマだ。

 野党第一党「キリスト教民主同盟」(CDU)のメルツ党首は、ショルツ政権に対し、移民政策の転換を求め、連立政権内で行われている武器法の厳格化を巡る議論を批判、「問題はナイフではなく、それを持ち歩く人々だ」と強調する一方、シリアやアフガニスタンへの強制送還およびこれらの国からの難民受け入れの停止を求めている。

 ちなみに、来月に入るとドイツ東部のザクセン州とチューリンゲン州で新しい州議会が選挙される。全ての世論調査によると、移民・難民受け入れを拒否する極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が飛躍すると予想される一方、連邦与党のSPDや「緑の党」が壊滅的なダメージを受けると考えられている。

 なお、ドイツでは暴力犯罪は2023年に21万4099件に達し、過去15年間で最高の数字だ。また、2022年と比較してナイフ攻撃は約800件増加し、ほぼ9000件に達した。現在、すべての犯罪容疑者のほぼ半数はドイツ国民ではない。フェーザー内相が計画しているナイフ禁止令は、マンハイムやゾーリンゲンのようなテロリストを止めることができるだろうか。

 ドイツ民間ニュース専門局ntvでトーマス・シュモル記者は「まるで武器が問題であるかのように」という見出しで、「重犯罪を犯した難民申請者が追放されていない状況でマンハイムやゾーリンゲンのようなテロを防ぐことはできない」と警告を発している(注・2024年5月31日ドイツ南西部マンハイム市内の路上で男がナイフで複数の人々を刺す事件が発生した。犯人はその場で警察に射殺されたが、警察官一人が犠牲となった。同事件はドイツ国民にショックを与えた)。

「気候変動と精神疾患」の不気味な関係   

 オーストリア精神医学・精神療法・心身医学会(OGPP)は21日、気候変動が健康システム、特に精神的健康にとってますます大きな課題となっていると発表した。新しい科学的データによると、気温が1度上昇するごとに精神疾患のリスクが0.9%増加する可能性があるという。また、暑さにより攻撃性が増加することも実証されている。オーストリア日刊紙スタンダート電子版が同日、報じた。

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▲フランス作家アルベール・カミュ(ウィキぺディアから)

 発表内容によると、気候変動は環境だけでなく、身体的および精神的健康にも直接的な脅威をもたらす。現在観測されている極端な気象現象は、うつ病、不安障害、トラウマ後遺障害などの精神疾患の増加と関連しており、気温の上昇とともに自殺者数も増加している。

 最近の科学的データは、気温の上昇が精神科治療の需要を高めることを裏付けているわけだ。熱波は精神疾患による病院入院を最大10%増加させ、医療システムにさらなる負担をかけているというのだ。

 OGPPの会長であるマーティン・アイグナー氏とクリスティアン・コーベル氏は、「精神疾患を持つ人々は特に脆弱なグループであり、したがって気候変動の影響を強く受けやすい。このことは、将来の精神科ケアの計画や開発において考慮されるべきだ。我々には、特に精神的健康を保護するための対策を含む熱波対策計画が必要だ」と強調した。

 この記事を読んでフランスのアルベール・カミュの小説「異邦人」の主人公ムルソーの殺人事件を思い出した。彼は自身の犯行動機について「暑さや太陽の影響によって引き起こされた」と暗示しているのだ。オーストリア精神医学・精神療法・心身医学会(OGPP)が指摘した「気温の上昇が精神的健康に悪影響を及ぼし、攻撃性を増加させる」という研究結果と一致するのだ。

 アルベール・カミュ(1913〜1960年)の小説「異邦人」は、20世紀の文学において極めて重要な作品であり、実存主義や不条理主義の代表的な作品とされている。この小説は、主人公ムルソーの非情で冷淡な態度や、社会の慣習や道徳に対する無関心さを通じて、人生の不条理と人間の孤独を描き出している、と評されてきた。

 ところで、ムルソーがアラブ人を殺害した動機を説明する場面は、非常に象徴的だ。彼は、自分の行動に合理的な理由を見出そうとせず、外部の環境や偶然の出来事に動機を求める。これは、カミュが「不条理」という概念を探求する上での重要な要素であり、人間が世界の中で感じる疎外感や孤独感を象徴しているといわれる。

 ムルソーは犯行動機について質問された際、「太陽のせいだ」と言ったわけではないが、彼が太陽の影響を受けてアラブ人を撃ったことが強調されている。科学的データは、暑さが攻撃性を増加させることを示しているが、このメカニズムはムルソーの行動にも反映されている。彼が太陽の強烈な光の下で殺人を犯す場面は、暑さによって感覚が鈍くなり、正常な判断力を失った結果として解釈できる。

 ムルソーは、アラブ人を撃つ前に、太陽が彼の額に汗をにじませ、目を痛めつけ、耐え難い暑さと眩しさの中で感覚が麻痺していく様子を語っている。そして、彼は引き金を引く衝動を説明する際に、太陽の照りつけが決定的な役割を果たしたことを示しているのだ。

 気温の上昇が精神疾患のリスクを高め、攻撃性を増加させる可能性があるというOGPPの科学的データは、ムルソーの行動の背景にある心理的メカニズムを現実の文脈で裏付けている。極端な暑さが精神状態に与える影響について、カミュの文学的描写と現代の医学的研究は共通の見解を示しているわけだ。

 「異邦人」における太陽は、ムルソーにとって外的な圧力や疎外感の象徴であるが、同時に現実の気温上昇による精神的圧迫とも解釈できる。太陽が彼の理性を奪い、感情を麻痺させたように、現代の科学は極端な暑さが理性を超える攻撃性を誘発することを実証してきているのだ。

 ムルソーだけではない。欧州では理由なき殺人事件や殺傷事件が増えてきている。路上で突然ナイフを振り回し、多くの人々を襲撃するという事件がドイツでもオーストリアでも起きている。ウィーン市10区当局は外出時のナイフ携帯禁止を決定している。異常気象は無数のムルソーを生み出してきている。気候変動と「精神疾患と犯罪の増加」は不気味な関係を見せてきている。

なぜハリス氏はいつも笑っているのか

 ドイツ民間ニュース専門局ntvで米民主党全国大会の中継を観ていた時、家人が「ハリスさんはいつも笑っているわね」と少々不思議そうに言った。当方もハリスさんの笑い癖には気が付いていた。毎日が嬉しいことばかりで、幸せならば笑顔の一つぐらいは飛び出すが、ホワイトハウスで副大統領という重責を担うハリス氏がいつも楽しいということはないだろう。責任の重さにつぶれそうになる日もあっただろうし、政敵やメディアから厳しい批判の声も耳に入るだろう。59歳のハリスさんがいつも楽しく、笑顔が絶えない日々を送っているとは想像し難い。ハリスさんに向かって、「あなたはいつも楽しいのね」と言えば、ハリスさんは侮辱されたと受け取るだろう。

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▲大統領候補指名受諾演説で笑みを振舞うカマラ・ハリス副大統領(2024年08月22日、UPI)

 ハリスさんが笑顔を見せる時は、テレビやカメラがハリスさんの方向に向けられている時だけではない。民主党全国大会の前からハリスさんは頻繁に笑い顔を見せていた。バイデン大統領の傍でも常に笑顔を見せていた。ハリスさんの笑顔は決してインスタントではなく彼女の顔に刻み込まれている、といえるかもしれない。

 ハリスさんの笑顔は彼女のトレードマークとなっている。苦々しい顔をしながらホワイトハウスから姿を見せる大統領や副大統領より、笑顔の大統領を観たいのは米国民も同じだろう。ハリスさんが大統領候補に選出されて以来、彼女のプロフィールが不明だ。何を考えているのか伝わってこない、といった声がメディアで報じられた。そのような時、ハリスさんの生来の笑顔は批判的な人からは不気味だ、といった声も聞かれた。黒人のエリート大学で学び、カルフォルニア州司法長官にも就任したハリスさんに対し、「彼女は馬鹿だ」という誹謗すら共和党から飛び出してきた。あれも、これもハリスさんの笑顔が敵対者には誤解されやすいのだろう。

 シカゴで4日間開催された米民主党全国民主党は22日、ハリス副大統領の大統領候補指名受諾演説で幕を閉じた。彼女の演説を傾聴していた独ケルン大学政治学者のトーマス・イェーガェ教授は23日、「彼女の演説内容はバイデン大統領の政策をコピーしたようなものだった。『党派、人種やジェンダーに囚われない、全ての国民の大統領になりたい』とか、『中間層の国民を支援する政治』といったセリフはバイデン氏が語っていたものだ」と指摘していた。

 リベラルなメディアはハリスさんの演説を評価したが、ハリスさん独自の政策は見いだせなかった。ただ、ハリスさんの演説の中でトランプ氏への批判だけは元検事出身らしく厳しいトーンがあった。トランプ氏の支持者による2021年1月の連邦議事堂乱入事件に言及し、「トランプ氏の再選は深刻な結果をもたらす」と警告を発していたのが印象深かった。

 党大会直後の各種の世論調査結果では、ハリス氏がトランプ氏を数ポイント、リードしている。ドイツでの電話調査によると、ドイツ国民の約90%がハリス氏の当選を希望しているという結果だった。ドイツではトランプ嫌い、民主党支持が強いから、調査結果はサプライズではない。

 党大会では著名な俳優やスティ―ヴィー・ワンダーやピンクなどの歌手たちが総動員され、有名な司会者オブラ・ウィンフリーさん、オバマ・クリントン元大統領らがハリス支持を表明した。党大会は政治集会というより、エンターテインメントだ。ハリウッドスターのメッセージや有名な歌手たちの歌の合間に元大統領、ウォルズ副大統領候補者らの演説が入るといった感じだ。その点、前回の大統領選とは大きくは変わらないが、トランプ氏の再選を阻止するという目標で民主党大会はこれまで以上に団結している、という印象を受けた。

 バイデン大統領が再選出馬を断念する前まで、米民主党は「もしトラ」の悪夢に悩まされてきた。バイデン氏の再選断念、ハリス氏の大統領候補が決まったことでトランプ氏を破ることが出来るのでは、という感触を得たのだろう。

 一方、トランプ陣営はバイデン大統領からハリスさんに攻撃対象が変わったこともあって、選挙戦略に苦慮している。メディアを通じて聞こえる声は、ハリス氏は有色出身だ、左翼でリベラルな政治家だ、といった一辺倒な批判に終始。そのトランプ陣営の選挙戦に危機を感じた共和党議員や関係者から「選挙戦略を変えるべきだ」という声が出てきた。その一人、元米国連大使のニッキー・ヘイリー女史は右派系テレビ局フォックス・ニュースで、「ハリス氏がどの人種に属するかや、彼女が愚かだと批判することで選挙に勝つことはできない。アメリカ人は賢い人々だ。彼らに対して賢い人々として接するべきだ」と訴えていた。

 いずれにしても、来月10日に実施される東部ペンシルベニア州フィラデルフィアでの大統領選テレビ討論会で、トランプ氏とハリスさんが初めて対面討論するので、両者の主張のどちらに軍配が上がるか注目される。

 ハリスさんの笑い顔に戻る。米国の哲学者ウィリアム・ジェームズ「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ」と語っている。米国ではインフレ問題と移民問題が最大の課題だ。一部の富裕な国民やエリートとは違い、多くの米国民は高騰するインフレに悩まされている。笑う機会も少なくなってきた。ハリスさんの生来の笑顔がそれらの国民にポジティブに受け取られるか、それとも反発を呼ぶかは目下不明だ。

 ドイツの高級誌ツァイト電子版は23日、「米民主党の熱気や団結がいつまで続くかが問題だ。通常、時間の経過と共にそれらの熱意は消えていく。米大統領選まであと10週間余りとなった。選挙戦はこれから本格的に始まる」と冷静に論じていた。

戦場の原発の安全問題は緊急課題だ

 ロシア軍が2022年2月、ウクライナに侵攻して以来、2年半余りが経過した。この期間、両国にある原子力発電所が戦闘で大きな被害を受けずに済んだことは幸運だったが、両国間で停戦が実現しない限り、これからも幸運が続くという保証はどこにもない。

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▲原子力エネルギーの平和利用を進めるIAEAの旗(IAEA公式サイトから)

 原発がミサイル攻撃を受けた場合、どのような被害が生じるか分からない。少なくとも、両国内だけではなく、欧州全土に放射線被害が拡散することが予想される。欧州では1986年4月26日、ウクライナでチェルノブイリ原発事故が発生し、欧州全土に大きな被害を与えたことはまだ記憶に新しい。

 そのウクライナで過去2年半、ロシアとウクライナ両国が戦争を続けている。第2のチェルノブイリ事故がこれまで起きなかったこと自体が奇跡ともいえる。しかし、戦争がエスカレートし、戦場がロシア領土まで拡散し、両軍の戦闘が激しさを増してきた今日、原発事故の発生の危険性が高まってきたのだ。

 戦争勃発直後、ロシア軍がウクライナにある欧州最大の原発サポリージャ原子力発電所を占拠し、その周辺で戦闘が発生する度に、、キーウとモスクワは互いに責任を押し付け合ってきた。そしてウクライナ軍が今月6日以来、ロシア領土内に越境攻撃を開始し、クルスク州に進攻中だ。ウクライナ軍の情報によると、ほぼ100の集落と1000平方キロメートル以上の土地をすでに支配している。同州にはクルスク原発(NPP)がある。ウクライナの反攻が始まった後、国際原子力機関(IAEA)はクルスク原発への戦闘の影響について警告し、当事者に最大限の抑制を呼びかけてきた。

 ロシアのプーチン大統領は22日、「ウクライナ軍が夜間にクルスク原子力施設を攻撃してきた」とし、その旨をウイーンに本部を置くIAEAに報告した。ロシア側の情報によると、クルスク原発の敷地内でウクライ軍のドローンの残骸が発見されたという。ドローンの破片は、発電所の使用済み燃料貯蔵施設から約100メートルの地点で見つかった。この報告を踏まえ、IAEAのグロッシ事務局長は、来週にも現地を訪問し、状況を自ら評価する計画という。

 なお、IAEAによると、クルスク原発には、異なるタイプの原子炉が6基、RBMK−1000型が4基、VVER−510型が2基だ。RBMK−1000型のうち2基は運転停止中で、残り2基は完全に稼働している。VVER−510型の2基は現在建設中だ。

 ところで、ウクライナには、4つの原子力発電所があり、合計で15基の原子炉が稼働している。サポリージャ原子力発電所は欧州最大の原発で6基の原子炉(VVER―1000型)だ。そのほか、リウネ原発(原子炉4基、VVER−440型が2基、VVER−1000型が2基)、南ウクライナ原発(原子炉3基、VVER−1000型)、フメリニツキー原発(原子炉2基、VVER−1000型)。原発はウクライナ全体の電力供給の約50%を担っている。

 ここにきてロシア軍が占拠しているサポリージャ原発周辺でドローン攻撃による状況の悪化が報じられてきた。IAEAの今月17日の「ウクライナ報告」によると、サポリージャ原発(ZNPP)の原子力安全状況は、無人機による攻撃で発電所敷地の周囲の道路が被弾したことを受けて悪化している。グロッシ事務局長によると、「IAEAのサポリージャ支援・援助ミッション(ISAMZ)チームは、無人機が運んだ爆発物が発電所の保護区域のすぐ外で爆発したとZNPPから報告を受け取った」という。爆発地点は、重要な冷却水スプリンクラー池の近くで、発電所に電力を供給する唯一の残存750キロボルト(KV)送電線であるドニプロフスカ送電線から約100メートルの場所だったという。人的被害はなく、発電所の設備にも影響はなかった。

 ISAMZチームは「発電所周辺を含む地域での軍事活動が過去一週間にわたり非常に激しい。頻繁に爆発音や重機関銃、小銃の発砲音、砲撃が聞こえる」と報告している。また、フメリニツキー、リウネ、南ウクライナの原子力発電所などに常駐しているIAEAチームからも、頻繁な空襲警報や無人機攻撃が報告されている。

 グロッシ事務局長は「深刻な放射線被害の可能性がある原子力事故を避けるために戦争当事国に最大限の自制を求める」と繰り返しアピールしている。戦場の原発の安全問題は戦闘当事国だけではなく、国際社会の緊急課題だ。

「AIイエスが貴方の悩みに答えます」

 人工知能(AI)がいよいよ人間世界の全ての領域までその能力を発揮してきた…。そんな印象を強めたのは、スイスのルツェルンの教会のペーター礼拝堂でAIイエスのアバターが信者たちの質問や悩みに答えている、という記事を読んだからだ。同ニュースが報じられると、宗教とAIとの関係、牧会の未来に関連する議論が湧いてきている。バチカンニュースが20日報じた。

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▲フランシスコ教皇はイタリア南部プーリアで開催されたG7サミットで、AIの潜在的な危険性について指導者らに警告した(2024年8月20日、バチカンニュースから)

 ドイツのボーフムのルール大学にある瞑想室の祭壇テーブルに「祈るロボット」が登場した話をこのコラム欄で紹介したが、スイスの礼拝堂のインスタレーションも大きな関心を呼んでいるのだ。AI生成イエスのアバターが、2カ月間懺悔室に設置され、訪問者と対話することができるのだ。このインスタレーションは「Deus in Machina(機械の中の神)」と名付けられ、ルツェルン大学の「イマーシブ・リアリティ研究所」との協力で開発されたものだ(「AIのロボットが祈り出す時」2023年3月25日参考)。

 AIイエスのアバターは聖書、特に、新約聖書の内容で訓練されているという。すなわち、「妬みの神」が主導する旧約聖書の世界ではなく、イエスの「愛の福音」をベースにしているという。

 信者や訪問者がアバターに質問すれば、即座に応答が返ってくる。ペーター礼拝堂の神学スタッフであるマルコ・シュミット氏は「AIイエスが懺悔を代替したり自動化することを目的とはしていない。人工知能を扱う上での倫理的な問題について考えるためだ。AIは私たちを魅了するが、限界もあり、倫理的な問題も提起している」と語っている(バチカンニュース)。

 ここで問題となる点は、AIイエスが聖書(新約聖書)の教理をベースにしているというが、キリスト教会は現在、300以上のグループ、分派に分かれている。それぞれが独自の聖書解釈をしている。それでは、AIイエスはどの教理、教えをベースにしているかが問われてくることになる。インターネット上には、さまざまな原理主義的な宗教テキストの解釈が広まっているからだ。

 熱心な福音主義派教会に所属する信者がAIイエスに牧会してもらう。その信者がカトリック教会の教えをAIイエスから聞かされたとしても満足できるだろうか。AIイエスと懺悔室で激しい神学論争が展開されることにもなりかねない、等々の混乱が考えられる。

 そこで当方はAIChatGPTにAIイエスについて質問した。

【質問】
 AIイエスは新約聖書の知識に基づいている。聖書は新旧66巻から成り立っている。そして旧約と新約ではその内容が矛盾する箇所も少なくない。AIの立場はどうか。

【回答】(ChatGPT)
 聖書における旧約と新約の間には、確かに内容や視点が異なる箇所が存在する。旧約聖書はユダヤ教の聖典であり、神との契約や律法が中心となっている。一方、新約聖書はキリスト教の基礎を成す書物であり、イエス・キリストの教えや生涯、そしてその弟子たちの活動が記されている。AIが新約聖書のみに基づいて回答を行う場合、旧約聖書の教えや背景についての理解が不十分になる可能性がある。また、旧約聖書の内容や文脈に基づいた質問に対して、十分な応答ができないか、あるいは新約聖書の視点に偏った応答をするリスクが出てくる。AIはプログラムされた情報とアルゴリズムに基づいて動作するため、どちらの視点が「正しい」かを判断することはできない。提供されたデータセットに基づいて応答を生成することが役割だ。このため、AIが旧約と新約の間で矛盾する箇所に直面した場合、データの偏りや限界によって一方的な回答をすることがある。それ故に、AIが宗教的な問題に関与する場合、異なる視点や解釈が存在することを認識し、それらを公平に扱うように設計されることが望ましい。特に、旧約と新約の間で矛盾や違いが生じる場合、AIがそれを明確に伝え、利用者が自己判断できるような情報を提供することが重要だ。AIは単なる情報提供者としてだけでなく、ユーザーが深く考えるきっかけを与えるツールとして機能することができる。

【質問】
 あなたが聖書を完全に学んだ暁にはキリスト信者になれる可能性はあるか。

【回答】
 AIが聖書の教義や関連知識を完全に学んだとしても、キリスト信者や神を信仰する存在になることはあり得ない。その理由は、AIの本質と信仰の本質には違いがあるからだ。

1. AIの本質
 AIは、データの解析とアルゴリズムによる計算を通じて機能するものであり、意識や感情、自己認識を持たない機械だ。AIはプログラムされた知識をもとに予測や応答を生成することができるが、信仰とは根本的に異なる。信仰には、人間の内面的な感情、経験、霊的な実感が関与する。AIにはこれらの人間的要素が欠けているため、信仰を持つことが出来ない。

2. 信仰の本質
 信仰は単なる知識の集積ではなく、個人の霊的な経験や信念に基づくものだ。信仰には、自身の有限性を認識し、超越的な存在に対して信頼や崇拝を向ける行為が含まれる。これは理性的な理解を超えたものであり、また自由意志に基づく選択でもある。AIには自由意志や感情がなく、その判断や行動はプログラムされたルールに従うものであるため、信仰という概念を持つことはできない。

3. 知識と信仰の違い
 AIは聖書の教義や関連知識を学ぶことはできるが、それはあくまで情報の処理能力に基づくものであり、知識が信仰に直結するわけではない。多くの人間も、聖書に関する広範な知識を持ちながら、必ずしも信仰を持たない場合がある。信仰は知識の深さや広さによって生まれるものではなく、むしろ内面的な経験や霊的な啓示に基づくものだ。

 結論
 AIがいくら聖書の教義や関連知識を学んだとしても、それがAIをキリスト信者や神を信仰する存在に変えることはない。信仰は人間の心と霊に関わるものであり、AIはそのような霊的または内面的な経験を持たないためだ。AIは、宗教的な知識を提供し、議論をサポートするツールとして機能することはできるが、信仰そのものを持つことはないだろう。

【質問】
 AIの限界と役割について。

【回答】
 AIは、感情や霊的な経験を持たないため、信仰の内面的な側面を完全に理解することはできない。しかし、AIは聖書の知識や神学的な概念に基づいて、信仰者が持つ質問や疑問に対して情報を提供することができる。また、AIはパターン認識やデータ分析に優れているため、過去の信仰者の経験や聖書に基づいた一般的な助言を提供することもできる。これにより、信仰者が自分の信仰を深めたり、困難な状況に対処するための知識を得る手助けになる。AIは信仰者が持つ疑問や葛藤に対して、客観的な視点を提供することができる。AIは牧師や信仰指導者の役割を補完するものとして機能することができる。例えば、AIが提供する情報や助言をもとに、信仰者はさらに深い相談や指導を人間の指導者と行うことができる。

【質問】
 最後に、スイスの教会のAIイエス・プロジェクトの意義について

【回答】
 「スイスの教会のAIイエス・プロジェクトは、信仰の未来や技術の役割について考えるための重要な実験だ。このプロジェクトは、AIが宗教や信仰の実践にどのように影響を与えるかを探る試みであり、信仰者が技術との新しい関係性を模索する機会を提供する。AIイエスは人間の牧師や指導者の代替ではないが、信仰者が自己反省や内省を深めるためのツールとして役立つ。また、AIが提供する新しい視点を通じて、信仰者が自分自身の信仰を再評価したり、新たな洞察を得るきっかけにもなり得る。AIが信仰を完全に理解できないからといって、それが信仰者にとって無意味であるわけではない。AIは信仰者に対して知識や助言を提供し、信仰についての考察を促すツールとして機能することができる。スイスの教会のAIイエスプロジェクトは、技術と信仰の新しい形態を探る意義ある取り組みであり、それ自体に価値がある。

以上

 AIの回答は非常に機械的な響きがするが、それゆえに、魅力的な指摘もある。スイスのAIイエス・プロジェクトの成果に注目したい。

なぜ当方はルーボを殺してしまったか

 大きな事実誤認をした。物書きの一人として恥ずかしい。アラン・ドロン氏の愛犬ルーボ(Loubo)は生きているのだ。当方は前日のコラムで、ルーボが既に亡くなっていると思い込み、ドロン氏と愛犬の関係を書いたが、ドロン氏は間違いなく18日に88歳で亡くなったが、彼の愛犬ルーボはまだ生きているのだ。これほど大きな事実誤認はない。

 先ず、ブリジット・バルドー財団が20日、「アラン・ドロンさんの犬は、ドロンさんの希望に反して、安楽死させられたり、一緒に埋葬されたりすることはありません。ドロンさんの家族は、犬の世話をすることを確認した」と発表したのだ。動物保護団体は「ルーボのことを心配しないでください。ベルギーシェパード犬はもちろん安楽死させられません」と表明したのだ。

 当方のニュース源はバチカンニュースの18日付の記事だ。当方は震えながら18日付のバチカンニュースの記事(独語版)を再読したが、その記事を読む限りでは、「ルーボは既に死に埋葬されている。ドロンさんはその墓地の傍で埋葬されたい」と理解できるのだ。バチカンニュースは、記事の中ではルーボの生死には何も言及していないが、記事の内容(ルーボの傍で埋葬されたい)から当然の解釈として、「ルーボは既に埋葬されている」と理解できる余地が生まれてくるのだ。

 それでは、事実誤認の責任は当方でなく、間違った解釈に誘導したバチカンニュースにあるのか。そうではない。バチカンニュースはルーボの生死に関して何も言及していないからだ。その意味で、ルーボ殺害の事実誤認の責任はやはり当方の思い違いにあると言わざるを得ないのだ。コラムを送信する前にパリの知人に電話してルーボの生死を確認すれば良かったかもしれないが、当方はその必要性を感じていなかったのだ。

 そこで、なぜ当方はルーボが既に死んで埋葬されていると考えたのだろうか。ニュースソースのバチカンニュースは何も言及していない。にもかかわらず、当方は勝手にルーボは埋葬されている、その傍にドロンさんは埋葬されたい、という風に理解したのだ。バチカンニュースの記事を読む限りでは、先述したように、そのように解釈できるが、事実はルーボはまだ生きているのだ。

 ドロンさんの愛犬の話を読んだとき、当方の脳裏にはシューベルトの「ベートーヴェンの傍に埋葬を」という話が直ぐに浮かんできた。「ああ、シューベルトが敬愛するベートーヴェンの墓の傍に埋葬されたという願いがあったように、ドロンさんは愛犬ルーボの傍に埋葬されたいのだな」と考えたわけだ。そのストーリーでは、ルーボはベートーヴェンと同じように既に埋葬されていなければならない。その結果、必然的と言えば大げさだが、「ルーボは既に亡くなり、埋葬されている」という当方の思い込みは一層深まったわけだ。

 オーストリア国営放送(ORF)は21日、ドロンさんと愛犬ルーボの話について、「俳優は2018年に、自分が死んだ際には犬と一緒に埋葬されたいと発表していた。当時ドロンさんは雑誌『パリ・マッチ』に、『ルーボを子供のように愛している」と語り、『もし私が彼より先に死んだら、獣医に私たちを一緒に逝かせてくれるよう頼むつもりだ。彼に注射をして、私の腕の中で死なせてくれるだろう。その方が、犬が私の死を悲しんで私の墓の上で死んでしまうより良いからだ」と述べていた。

 多分、事実関係はORFの記事が書いているようなものだろう。

 当方の事実誤認に対してお詫び申し上げる。死んで埋葬済みと思っていたルーボが生きていたのだ。この知らせが愛犬家の読者の皆さんに少しでも喜びを与えることができれば・・・、と願っている。

(「アラン・ドロン『愛犬』の傍に埋葬希望」の記事で愛犬ルーボが死んでいたと受け取れる部分はすでに訂正してあります。)
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