ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2024年06月

米大統領選「もしトラ」から「もしバイ」に

 今年11月の米大統領選挙を占う第1回大統領候補者TV討論会が27日夜(日本時間28日)、南部ジョージア州アトランタで行われた。当方は6時間の時差の関係で28日未明、CNN放送の中継を観た。81歳のジョー・バイデン現大統領と78歳のドナルド・トランプ前大統領間の直接討論は4年ぶりだ。両者は経済、人口妊娠中絶、不法移民問題、外交政策をめぐって論戦を交わした。

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▲バイデン・トランプ両者の第1回TV討論会風景(2024年6月27日、CNN中継からスクリーンショット)

 事前に予想されたことだが、両者間で激しい罵倒・中傷する場面があった。特筆はバイデン氏がトランプ氏に「お前は路上の猫(ストリートキャッツ)だ」と誹謗したことだ。現職の大統領が討論会で相手をそのような表現で中傷したのだ。バイデン氏は明らかにレッドラインを超えていた。

 バイデン氏がトランプ氏に対し、「あなたは有罪判決を受けた重罪犯罪者だ」と呼べば、トランプ氏は「お前の息子こそ重犯罪者だ」といった類の言葉が飛び出した。予想された範囲の中傷合戦だが、世界の指導国家を自負する米国の大統領職を目指す政治家は最低限度の品位を守るべきだろう。ちなみに、米大統領選ほど勝者と敗者がはっきり分かれてくる選挙はめずらしい。政権が交替した場合、勝者はその日からワシントンに居住を探し、敗者は荷物を整理してワシントンから出ていく。首都ワシントンでは選挙後、総入れ替えが行われるのだ。

 TV討論会後の世論調査では民主党系のリベラルなメディアですら「トランプ氏が勝利した」と受け取っている。メディアの関心はどちらが第1回TV討論会の勝利者だったかというではなく、バイデン氏は大統領職を務めることができるか、といったテーマに移ってきたのだ。

 ドイツ民間ニュース専門局ntvの視聴者への調査によると、約60%が「バイデン氏は再選出馬を諦めるべきだ」と答えていた。ドイツを含む欧州ではトランプ前大統領には批判的な論調が多い。それゆえに、「民主党がバイデン氏の候補に拘るのならば、トランプ氏が勝利する可能性が高い」という危機感が高まってきたわけだ。バイデン氏に代わって民主党は誰か別の候補者に擁立すべきだというわけだ。バイデン氏もトランプ氏もまだ正式な民主党、共和党の大統領候補者ではない。

 ntvのヤン・ゲゲル記者は「トランプ氏との討論会はバイデン氏にとって災難だった。この討論会でバイデン氏を見るのは痛ましい。81歳の彼は、不安定で混乱し、常に理解できるとは限らないかすれた声で自分自身を解体していった」として、「バイデン氏が米大統領に残る可能性はほとんどなくなった」と指摘しているほどだ。

 バイデン氏と比較すると、78歳のトランプ氏は完全に健康であるように見えた。彼は罵り、非難するが、彼のメッセージは常に暴力性を含んでいることは良く知られている。討論会でバイデン氏が国境警備に関する質問に答える中、トランプ氏は「彼が最後に何を言ったのか本当に分からない。多分、彼自身も(何を言ったか)知らないのではないか」と冷笑するほど、余裕を見せていた。

 バイデン氏にとって、第1回TV討論会の目標は、「自分があと4年間米国大統領を務めることが体力的にも精神的にもできるかについての疑念を払拭したい」というものだったはずだが、疑惑はむしろ大きくなってしまったのだ。

 「バイデン氏がトランプに次期米国大統領にならないことを望み、自身が言ってきた米国の魂を救い、米国の民主主義を守りたいなら、彼は立候補を放棄しなければならない」という声がリベラル派のメディアだけではなく、民主党内でも聞こえ出している。
 バイデン氏に代わって、カルフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事(56)やミシガン州のグレッチェン・ホイットマー州知事(52)らの名前が挙がっている。オバマ元大統領のファーストレデイ、ミシェル・オバマ夫人(60)の名前も聞かれる。民主党は8月19日、シカゴで民主党全国大会を開催して大統領候補者を正式に決定することになっている。

 バイデン氏自身は28日、選挙運動を続け、ノースカロライナ州のファンに「以前ほど討論がうまくできなくなった」と認めたものの、 「私ならこの仕事ができると信じている」と強調し、再選を目指す意思を重ねて表明している。バイデン氏を説得し、再出馬を断念させることができるのはファーストレデイのジル夫人しかいないのかもしれない。

 これまでメディアは「トランプ氏がホワイトハウスにカムバックしたならば」という仮定(「もしトラ」)でさまざまなテーマを論じてきたが、27日夜の第1回TV討論会後、メディアの関心は「バイデン氏が再出馬を断念したならば」という仮定(「もしバイ」)に焦点を変えてきている。

プーチン氏に「後光」が差している!

 ウィーン現地時間28日午前2時半以降、バイデン米大統領とトランプ前大統領の対面討論をCNN放送で聞いていたこともあって、頭は疲れ朦朧としている。29日用コラムを書く体力と集中力が乏しくなった。そこで数日前から頭から離れない「なぜプーチン氏に後光が・・」をテーマに思いつくままコラムを書くことにした。

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▲北朝鮮唯一の正教会である平壌の「聖三位一体聖堂」を訪問したロシアのプーチン大統領に後光が!!(2024年6月19日、クレムリン公式サイトから)

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▲「聖三位一体聖堂」の正教会指導者キム・テオファネス大主教から教会の説明を聞くプーチン大統領(2024年6月19日、クレムリン公式サイトから)

 最近は政治家の発言を聞いた時、それがフェイクかファクトかを確認する必要が出てきたが、発言だけではない。写真でも撮影後、さまざまな修正が可能だから、その写真が本物か否かをチェックする必要が出てきた。被写体が出来た写真に満足できない場合、明暗だけではなく、被写体の目、口などにも手を加えて修正することができる。だから、写真の真偽も検証しなければならないわけだ。

 なぜそのようなことを突然呟くかというと、ロシアのプーチン大統領から後光が差している写真があったからだ。プーチン大統領は19日、北朝鮮を24年ぶりに訪問し、金正恩総書記と会談した。プーチン氏は会談後、平壌にある唯一の正教会、「聖三位一体聖堂」を訪問し、ロウソクを灯して祈祷したが、その時の写真がクレムリン公式サイトに配信されていた。写真はロイター通信やAFP通信のカメラマンが撮った写真ではない。その写真にプーチン氏の頭の後から光(頭光)が写っていたのだ。

 最初は、「教会内の壁の小ランプの光の影響かな」と考えたが、そうではないのだ。プーチン氏の真後ろにはランプは灯っていない。教会内のイコンが写っている。聖人には後光が描かれている。同じように、プーチン氏にも後光が見えるのだ。プーチン大統領が突然、聖人になったのだろうか。ロシア当局がプーチン氏の権威を強めるために後光付きのプーチン氏の写真を配信したのではないかと憶測もしたが、写真には作為の痕跡が感じられないのだ。

 プーチン大統領といえば、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪人として逮捕状が発布されている政治家だ。主権国家ウクライナに軍事侵攻し、多数の民間人を殺害している張本人だ。そのプーチン氏が平壌の正教会内で撮った写真に後光が写っている。それだけではない。正教会のキム大主教と会話しているプーチン氏の顔は非常に柔和な印象を与えるのだ。プーチン氏は突然、北朝鮮を訪問して聖人になったのだろうか。

 私事だが、当コラム欄で最近、ロシア語のコメントが寄せられてきた。そういうこともあって「当方氏はロシア語の読者に媚びる記事を書いているのではないか」と疑われるかもしれないが、そうではない。プーチン氏は宗教的な観点からいえば、極悪人だが、プーチン氏が時たま見せる目線、表情には非常に宗教性を感じることがあった。「プーチン氏はアンチ・クリストだ」という人もいる。極悪人のプーチン氏が時たま見せる不思議な宗教性を当方は無視できないのだ。

 ちなみに、ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン氏がロシア正教会の洗礼を受けた経緯を語ったことがある。曰く、「父親の意思に反し、母親は自分が1カ月半の赤ん坊の時、正教会で洗礼を受けさせた。父親は共産党員で宗教を嫌っていた。正教会の聖職者が母親に『ベビーにミハイルという名前を付ければいい』と助言した。なぜならば、洗礼の日が大天使ミハイルの日だったからだ。しかし、母親は『父親が既に自分の名前と同じウラジーミルという名前を付けた』と説明し、その申し出を断わった」という(「正教徒『ミハイル・プーチン』の話」2012年1月12日参考)。

 クレムリン公式サイトを追っていると、プーチン氏は忙しい政務の間も正教会のイベントには欠かさず参加している。ロシア正教会は5月5日、復活祭を祝ったが、その時もプーチン氏はモスクワ市長と共に正教会を訪ねている。欧米社会はキリスト教社会というが、教会の祝日や祭日にこまめに顔を出して祈る政治家は多くはいないだろう。曰く、政教分離だから、という言い訳が常に飛び出す。

 プーチン大統領は2022年2月24日、ウクライナ侵攻への戦争宣言の中で、「ウクライナでのロシア系正教徒への宗教迫害を終わらせ、西側の世俗的価値観から守る」と述べ、聖戦の騎士のような高揚した使命感を漂わせた。ロシア正教会最高指導者キリル1世はウクライナ戦争勃発後、プーチン大統領のウクライナ戦争を「形而上学的な闘争」と位置づけ、ロシア側を「善」として退廃文化の欧米側を「悪」とし、「善の悪への戦い」と解説するなど、同1世は2009年にモスクワ総主教に就任して以来、一貫してプーチン氏を支持してきた。

 モスクワの赤の広場前には聖ウラジミール像が建立されている。モスクワ生まれの映画監督、イリヤ・フルジャノフスキー氏はオーストリアの日刊紙スタンダードとのインタビューの中で、「プーチン氏はクレムリン前にキエフ大公の聖ウラジミールの記念碑を建てた。聖ウラジーミルはロシアをキリスト教化した人物だ。プーチン氏は自身を聖ウラジーミルの転生(生まれ変わり)と信じている。この論理は西洋では理解できないだろうが、ロシアでは普通だ」と説明していた。モスクワ総主教キリル1世は説教の中で、「プーチン大統領によって解き放たれた戦争は西側の同性愛者のパレードからロシアのクリスチャンたちを守る」と述べている。

 プーチン氏は、西側の退廃文化に対する防波堤の役割を演じ、近年、正教会の忠実な息子としての地位を誇示してきた。同時に、莫大な国の資金が教会や修道院の建設に投資され、ソビエト連邦の終焉後はほとんど不可能と考えられていたロシア正教会のルネッサンスに貢献している。

 ドイツのミュンスター大学東方教会研究・エキュメニクス学部長のレジーナ・エルスナー氏は3月6日、カトリック教会系ラジオとのインタビューで、「宗教界がどのようにして戦争を承認できるのか」と問いかけ、「ロシア正教会の宗教的神話と政治イデオロギーが結合することで‘宗教ナショナリズム’が生まれてくる。それがロシアのアイデンティティーとなり、西欧文化、グローバリゼーションと闘うという論理が生まれてくるわけだ」と解説している。

 プーチン氏に後光が差しているのをみた時、納得できる説明が浮かんでこなかった。しばらく考えていると、突然「善人なおもって往生を遂ぐ いわんや悪人をや」(歎異抄)といった親鸞聖人の言葉を思い出した。プーチン氏に後光が差したとしても不思議ではないのかもしれない。以上、バイデン・トランプ両者の討論を聞いて朦朧とした頭を駆使しながら考えた結論だ。

AIの倫理問題を問う「ローマコール」

 21世紀の最大の課題の一つは人工知能(AI)を人類の発展の中で如何に調和した助け手とするかだろう。世界の政治家、有識者、専門家たちはここにきてAIの規制問題で話し合いを重ねてきている。その中の一つ、「ローマコール」と呼ばれる国際会議が来月9日から2日間の日程で広島で開催される。

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▲G7サミット会議に初参加し、AIの倫理問題で演説するフランシスコ教皇(2024年6月14日、イタリアG7サミット公式サイトから)

 ローマ・カトリック教会の総本山バチカン教皇庁生命アカデミーは25日、「複数の世界宗教の代表者が、バチカンが立ち上げた人工知能に関する自己拘束プログラムに関する国際会議『ローマコール』に参加し、AIと倫理に関する宣言に署名する予定だ。会議は日本の広島で開催される」と発表した。

 同イベントは「平和のためのAIの倫理: 世界宗教がローマコールに署名する」と題されている。会議の開催地に広島が選ばれた理由は、「広島が破壊的な技術の影響と平和への継続的な探求を他のどこよりも具現化してきた都市だからだ」という。主催者は、教皇庁生命アカデミーのほか、Religions for Peace Japan、アラブ首長国連邦のアブダビ平和フォーラム、イスラエルの大ラビナートの宗教間関係委員会だ。

 「ローマコール」はバチカンの提唱を受け、世界の宗教指導者がAIと倫理問題に取り組む会議だ。「ローマコールAI倫理」(「Rome Call for Ethics」)は、人工知能の発展が人類の福祉に貢献するよう倫理的原則に基づいて行われることを目的としている。この文書は2020年2月28日にローマで教皇庁生命アカデミー、マイクロソフト、IBM、FAO、イタリア政府によって署名され、「アルゴリズム」に類似して「アルゴ-エシックス」と呼ばれている。

 バチカンニュース(独語版)は26日、「AIの倫理を求めるために結集することは、全ての宗教指導者の責任だ」と強調している。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つのアブラハム宗教指導者は昨年、「ローマコール」に署名している。広島の会議では東洋の宗教指導者も集まり、署名する予定という。これにより、この倫理的価値のプラットフォームは実質的に地球上の大多数の人々を結集することになる。なぜなら、地球上の大多数の人々はこれを署名した宗教によって代表されているからだ。

 広島でのイベントは「AIの倫理のような重要な問題に対して、多宗教のアプローチが重要だ。宗教は、一人ひとりの尊厳の保護と私たちの共通の家である地球の保全と共に進む発展の概念を形作る上で、決定的な役割を果たす。AIの倫理を求めるために結集することは、全ての宗教が共に歩むべき道だ」というわけだ(バチカンニュース2024年6月26日)。

 広島の講演者には、教皇庁生命アカデミーの会長ビンチェンツォ・パーリア大司教、アブダビ平和フォーラム会長でありアラブ首長国連邦のファトワ評議会会長のアブドゥラ・ビン・ベイヤー師、イスラエルの大ラビナートの宗教間関係委員会のメンバーであるエリエゼル・シムハ・ワイズ師などが含まれている。また、米国ノートルダム大学の平和学教授であるリサ・シャーチ、教皇庁グレゴリアン大学の技術倫理教授であり、AIに関する教皇顧問であるフランシスコ修道会士のパオロ・ベナンティ神父も講演する。同神父は「生成AIに関する広島付録」を発表する予定で、これは「ローマコールAI倫理」の不可欠な部分となるという。同神父は国連のAI委員会にも所属している。なお、世界宗教の指導者によるローマコールへの署名式は会議2日目の7月10日に行われる。

 「ローマコール」会議に先駆け、フランシスコ教皇は14日、イタリアで開催されたG7サミット会議に初参加し、人工知能の課題について語っている、教皇はAIを「魅力的で不気味なツール」と表現し、AIがもたらす大きな革新には「倫理的な管理」が不可欠であると強調している。すなわち、AIの偉大な能力が常に善のために使われているわけではではないからだ(「国連機関『デュアルユース品目』拡散?」2021年9月30日参考)。

 フランシスコ教皇は「私たちが経験している技術革新の時代は、特別で前例のない社会状況が伴う。人間性が喪失し、人間の尊厳の概念が無意味に見えるようになっている。そのため、人工知能のプログラムは人間とその行動が問われることになる。人間の尊厳の相対化が進むことによって現れる倫理の弱さこそ、これらのシステムの導入と発展における最大のリスクとなる」と説明している。そして「私たちが人間の能力を奪われ、自分たちの人生について決定する能力を奪われ、機械の選択に依存するならば、私たちは人類を絶望的な未来に追いやることになる。人間の尊厳自体が危機にさらされる」と述べ、AIを規制する「アルゴリズム倫理」の必要性を説いている(「ロボット軍用犬が戦場に登場する時」2024年6月1日参考)。

 AIの規制問題で世界宗教の役割を強調する「ローマコール」は傾聴に値するが、宗教自体が分裂し、紛争の原因ともなっている今日、宗教界のリバイバルが不可欠だろう。もっと厳密にいえば、AIを使用する人間側の倫理の復活がない限り、‘魅力的で不気味なツール’を正しく管理できないのではないか。

ロシア人旅行者を失望させた「北観光」

 ロシアのプーチン大統領は19日、24年ぶりに訪朝し、金正恩総書記と10時間に及ぶ集中会談を行い、全23条から成る「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結したばかりだ。「露朝新条約」の第12条には「両国は、農業、教育、健康、体育、文化、観光などの分野での交流および協力を強化し・・・」と記述されている。ここで指摘したいのは「観光」分野の交流だ。

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▲北朝鮮唯一の正教会である平壌の「聖三位一体聖堂」を訪問したロシアのプーチン大統領(2024年6月19日、クレムリン公式サイトから)

 ただし、両国間の「観光」の交流促進といっても北朝鮮国民のロシア観光の促進を対象としたものではなく、ロシア観光客の北観光の促進だ。3食すら十分に取れない北朝鮮国民がロシア観光を享受する、ということはもともと考えられない。第12条の「観光」交流の促進とは、ロシア国民の北観光の奨励を意味するのであって、現時点ではそれ以外の意味はない。

 ドイツ民間ニュース専門局ntvが報じていたが、ウインターシーズンにはロシアから多くのスキー客が北朝鮮を訪問したという。ロシア軍のウクライナ侵攻の結果、オリガルヒ(新興財閥)だけではなく、一般のロシア国民も外国旅行が難しくなってきた。西側諸国のビザ発給の制限もあって、西側に自由に旅行できなくなった。そこで未開地の北朝鮮観光が脚光を浴びてきたわけだ。それもクレムリン直々の推薦付きだ。クレムリンにとっては、外国旅行が制限されて不満が溜まっている国民に未開地の北朝鮮旅行を推薦することで一種のガス抜きの効果が期待できるわけだ。

 コロナの感染前、そしてロシア軍のウクライナ侵攻前、金持ちのロシア人は毎年欧州諸国に殺到、冬はインスブルックなどのスキーゲレンデに集まった。それがロシア人旅行者が消え、ロシア人旅行者で潤っていた観光地は、閑古鳥が鳴いている。しかし、資金に余力のあるロシア人は海外に旅行したいという欲求を抑えることができない。

 北朝鮮には金正恩氏が誇る馬息嶺(Masikryong)スキー場がある。平壌から東へ175km、元山市に近いところにある。2014年1月にオープンしたばかりだ。11本のコースが造成され、ゲレンデの下には、プール、カラオケバーなどが完備された高級ホテルがある。平壌国際空港の近代化とともに、海外から旅行者を誘ったが、新型コロナウイルスの感染拡大、国境閉鎖で観光プロジェクトは閉鎖状況だった。

 北朝鮮側としては、ポスト・コロナ時代に入り、ロシアや中国の大国から多くの旅行者が北に殺到するだろうという期待がある。金正恩総書記の目には、受け入れ態勢は万全だ。あとは如何に中国とロシアから多くの旅行者を呼ぶかだ。

 問題は、未踏の観光地の北朝鮮を訪問した旅行者が満足しているのか、機会があれば再び訪問したいと感じたかだ。残念ながら、多くの旅行者は「すごく良かった」とか「ぜひ機会があればもう一度来たい」といったものはなく、ロシアからの旅行者の場合、「共産党政権時代の統制された社会の悪夢が蘇った」といった類が多いのだ。

 独週刊誌シュピーゲルは最新号(6月22日号)でロシア人旅行者の北朝鮮観光の感想を掲載している。ウラジオストック出身の38歳のユリアさんの感想が掲載されていた。彼女は北朝鮮の首都平壌とスキーエリアの馬息嶺を訪問した。

 「平壌の市内や路上には人の姿はなく、仕方がないので路上に走る車の台数を数え出した。近代的な建物と人並みの少ない街の風景のコントラストは際立っていた。ガイドマンが私たちをバーに誘ってくれたが、そこにはわれわれ旅行者以外は誰もいなかった。市内見物はソ連共産党時代を思い出させた。ガイドマンは旅行者の批判的な質問に答えず、常にぼやかし、北朝鮮が如何にいい国かを一生懸命に説明していた。スキー場に行って、自分たちの日帰りチケット代は通常の北国民の平均賃金の倍することを知った。一般の国民とは話できず、ガイドマンとだけ会話できた」

 ユリアさんの感想は珍しくはない。北観光をした西側旅行者(グループ旅行)はほぼ同じような感想を漏らしている。建物だけ新しくなっているが北朝鮮社会が完全な統制下にある点では変わらない、というよりその統制化はパーフェクトな基準にまで達している。

 ロシアのプーチン大統領は国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪人として逮捕状が発布されているため、もはや自由に欧米社会に旅行はできない。可能な国はICC未加盟国か、北朝鮮や中国といった兄弟国しかなくなった。プーチン氏が大統領職を終え、退職し、年金者になれば、北朝鮮へ観光にでかけるかもしれない。そして多くの西側旅行者と同様、「もう二度と行きたくない」と呟くことになるのだろうか。

「露朝新条約」の全容はこれだ!!

 ロシアのプーチン大統領は19日、24年ぶりに北朝鮮を訪問し、金正恩総書記と10時間に及ぶ協議を重ね、ロシアと北朝鮮両国の関係を新たに明記した「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。全23条から成る新条約は、2000年にプーチン氏と故金正日総書記の間で締結された「友好善隣協力条約」から、1961年の相互軍事援助を明記した「軍事同盟」色の濃い内容に戻っている。

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▲ロシアのプーチン大統領への歓迎会を開催する金正恩総書記(2024年6月19日、クレムリン公式サイトから)

 当方は「露朝新条約」の全文を入手した。原文はロシア語と朝鮮語で記述されている。その朝鮮語版の条約内容を英語訳して新条約の全容を読んだ。新条約は全23条の項目からなる。タイトルは「朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦との包括的戦略的パートナーシップに関する条約」だ。

 前文は「朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦(以下「締約国」とする)は、歴史的に確立された友好と協力の伝統を保持し、新たな時代の前向きな国家間関係を構築し、両国の国民の復興と幸福を促進するという共通の志向と願望に動機付けられている。両国間の包括的戦略的パートナーシップの発展が両国の国民の根本的な利益になり、地域および世界の平和と安全、安定の確保に寄与することを確信している」と記述し、「国際連合憲章およびその他の公認された国際法の原則と規範に忠実であることを確認している。覇権主義的な野心や一極的な世界秩序の押し付けに対抗し、国家間の誠実な協力、相互利益の尊重、国際問題の集団的解決、文化的・文明的多様性、国際関係における国際法の優位性に基づく多極的な国際システムの確立を目指し、共同の努力で人類の存在を脅かす恣意的な挑戦に対処することを確認している」と、新条約の意義を記している。

 第1条は「締約国は、それぞれの法律および国際義務を考慮しつつ、国家主権の尊重および領土の不可侵性、内政不干渉、平等および国家間の友好関係および協力に関する国際法の他の原則に基づき、包括的な戦略的パートナーシップを永続的に維持し、発展させる」と述べ、第2条で「両国は、二国間関係および相互関心のある国際問題について、対話および交渉を通じて意見交換を行い、最高レベルの会談を含む国際舞台での共同支援および協力を強化する」と表明している。

 新条約の主要項目の第3条と第4条で両国関係が軍事同盟であることが明記されている。

 第3条「締約国は、地域および国際の平和と安全を確保するために協力する。いずれかの締約国に対する武力侵略行為の直接的な脅威が生じた場合、締約国は、いずれかの締約国の要請により、立場を調整し、脅威の排除に向けた協力のための具体的な措置について合意するため、遅滞なく二国間交渉のチャンネルを活性化する」

 第4条「いずれかの締約国が一国または複数の国から武力侵攻を受け、戦争状態に置かれた場合、他方の締約国は、国際連合憲章第51条および朝鮮民主主義人民共和国およびロシア連邦の法律に従い、遅滞なくあらゆる手段で軍事的およびその他の支援を提供する」
 (「露朝新条約」の第3条,第4条は、北大西洋条約機構=NATOの第5条(集団防衛)とほぼ同じ内容だ。)

 Article 3
 The Parties shall work hand in hand to ensure durable regional and international peace and security.
  In the event of the creation of a direct threat of an act of armed aggression against either Party, the Parties shall, at the request of either Party, adjust their positions and activate the bilateral negotiating channels without delay for the purpose of agreeing on possible practical measures to provide cooperation in eliminating the threat created.

 Article 4
 In the event that either Party is armedly invaded by an individual State or States and is placed in a state of war, the other Party shall, without delay and in accordance with Article 51 of the Charter of the United Nations and the laws of the Democratic People's Republic of Korea and the Russian Federation, provide military and other assistance by all means at its disposal.

 第5条に入ると、「各締約国は、他方の締約国の主権および安全、領土の不可侵性、政治、社会、経済および文化の制度を自由に選択および発展させる権利、ならびに他方の締約国の他の重要な利益を侵害する第三国との協定を締結しないこと、およびそのような行動に参加しないことを約束する。いずれの締約国も、他方の締約国の主権、安全および領土の不可侵性を侵害する目的で第三国がその領土を利用することを許さない」と言及している。

 第5条は国連安全保障理事会の対北朝鮮決議や欧州連合(EU)の対ロシア制裁などを暗に示唆し、ロシアと北朝鮮両国は締結国の権利を擁護し、それらに同意しないことを謳っている。第6条、第7条でその趣旨を明記。そして第8条で「防衛能力を強化するための共同措置を講じるための機関を設立する」と宣言している。

 Article 5
 Each Party undertakes not to enter into agreements with third countries and not to participate in actions that violate the sovereignty and security of the other Party, the inviolability of its territory, the right to freely choose and develop its political, social, economic and cultural institutions, and other vital interests of the other Party.
 Neither Party shall permit any third State to utilize its territory for the purpose of violating the other Party's sovereignty, security, and territorial inviolability.

 第9条、第10条で「締約国は、食料およびエネルギーの安全保障、情報および通信技術の安全保障、気候変動、健康、供給チェーンなどの戦略的意義のある分野における増大する挑戦および脅威に共同で対処するために協力する」、「締約国は、貿易、経済、投資、科学技術の分野での協力の拡大および発展を促進する」、「締約国は、二国間貿易の量を増加させ、税関、金融および金融分野などの経済協力のための有利な条件を創出」「締約国は、宇宙、生物学、平和的な原子力エネルギー、人工知能、情報技術などの分野を含む科学技術の分野での交流および協力を発展させ、共同研究を積極的に奨励する」と記述され、第12条は「両国は、農業、教育、健康、体育、文化、観光などの分野での交流および協力を強化し、環境保護、自然災害の予防および災害後の対策に協力する」等々、明記している。

 そのほか、国際テロリズムおよび過激主義、国際的な組織犯罪、人身売買、人質の取り、違法移民、不正な金融フロー、犯罪手段で得た収入の合法化(洗浄)、テロリズムの資金提供、大量破壊兵器(WMD)の拡散の資金提供、市民航空および海上航行の安全に対する脅威をもたらす違法な活動、物品、資金、金融手段、麻薬および向精神薬およびその原料、武器、文化的および歴史的な遺物の不正な流れなどの挑戦および脅威に対する闘いで相互に協力する(第17条)。

 興味深い点は「締約国は、インターネット通信ネットワークの管理における国家の平等な権利を主張し、情報通信技術の誤用によって主権国家の尊厳およびイメージを損なうことおよびその主権権利を侵害することに反対する」と述べていることだ(第18条)。

 そして第22条で「本条約は批准を受け、批准書の交換日に発効する。本条約の発効日から、2000年2月9日に採択された『朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦との間の友好、善隣および協力に関する条約』は失効する」と宣言し、第23条で「本条約は無期限に有効」とする。
 いずれかの締約国が本条約の効力を停止したい場合、他方の締約国に書面で通知する。本条約は、他方の締約国が書面通知を受け取った日から1年後に失効する。本条約は、2024年6月19日に平壌で、朝鮮語とロシア語の両方で2部作成され、両言語の文書は同等の効力を有する」と記述している。

 最後に、「露朝新条約」を一読して感じることは、同条約がロシアと北朝鮮の軍事協力面を含むほぼ全分野を網羅した文字通り「包括的戦略パートナーシップ」だということだ。それゆえに、北朝鮮のこれまでの最大の同盟国・中国共産党政権が快く感じないのは当然かもしれない。

「忘れられた戦争」と飢餓の拡大

 アフガニスタン北部で大雨による洪水で、多くの人々が犠牲となり、家屋を失い、飢餓が広がっているというニュースレターを先月アフガンの非政府機関の「Afghan Institut of Leraning」(AIL)の責任者サケナ・ヤコービ博士(Sakena Yacoobi)から届いた。AILはアフガンのコミュニティに教育、医療、女性と子供の支援を提供してきた団体だ。当方はニュースレターの情報をコラムでまとめようと考えていたが、ウクライナ戦争やイスラエル軍とパレスチナ自治区ガザでのイスラム過激派テロ組織「ハマス」との戦闘関連の記事を書くことに集中していたこともあって、アフガンの災害状況を書くタイミングを失ってしまった。食物には一定の賞味期限があるように、ニュース情報も報告すべき時を失うと、記事やコラムに書くことが難しくなる。特に自然災害関連の場合だ。

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▲南スーダンのカリタスの「乳児授乳センター」(Baby-Feeding-Center)(オーストリアのカリタス公式サイトから、エリザベス・セルマイヤー氏撮影)

 ヤコービ博士に申し訳ないことをしたと思っていた時、オーストリア国営放送(ORF)の夜のニュース番組で南スーダンから現地報告を放映していた。記者は「多くの住民が飢餓に苦しんでいる」と報じながら、「南スーダンの危機はウクライナ戦争や中東戦争が発生したこともあって、世界のメディアの関心から外れてしまった」と述べ、南スーダンの紛争を「忘れられた戦争」と報じていた(「アフガンから緊急援助要請のメール」2023年10月12日参考)。

 残念ながら、世界各地で戦争や紛争が起きている。情報社会の今日、オフィスにいながら世界の政治情勢、紛争、自然災害などについて情報は流れてくる。アフガンで女性の教育に努力する博士の活動や状況報告は本来、貴重なニュースであるが、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘やパレスチナ紛争のニュースの洪水の中でどうしても見逃されていく。多くの紛争や戦争がメディアの関心から外れ、忘れられた戦争になっているわけだ。

 ただし、ニュースにならなくても、紛争や災害に遭遇した人々が存在し、彼らは苦しみと悲しみを背負っているという事実は変わらない。ジャーナリストにはニュースの選択権はあるが、戦争や自然災害の犠牲者には選択権はない。生き延びていかなければならないだけだ。

 ウクライナのゼレンスキー大統領が「毎日、ロシアから100発以上のミサイルが飛んでくる。そのような中で生きていくことがどんなに大変かを考えてみてほしい」と述べていたことを思い出す。世界の人々はウクライナ国民の苦境をニュースを通じて知ることが出来るが、アフリカ大陸で起きている民族紛争や自然災害に遭遇した犠牲者の声は伝わりにくいのだ。

 ORFが報じていた南スーダンの報告に戻る。ローマ・カトリック教会の慈善団体「カリタス」の現地報告だ。南スーダンは2011年にスーダンから独立した人口約1100万人の東アフリカの国だ。世界で最も新しい国家であり、同時に最も貧しい国(2023年)の人々が人道支援を必要としているというアピールだ。民族間の緊張と限られた資源を巡る争いは、武装集団間の衝突に発展し、無実の人々が頻繁に巻き込まれている。カリタス関係者は「南スーダンでは紛争と気候危機のダブルパンチ(「不幸な同盟」と呼ばれている)を受けている」という。

 カリタスの海外援助事務総長、アンドレアス・クナップ氏は、「南スーダンのような国は、気候危機に最も関与していないが その影響を最も強く受けている」と述べていた。自然災害だけでなく、干ばつや極端な暑さの時期も増加している。戦争や紛争の再燃はまた、食糧不足と栄養失調を引き起こす。カリタス関係者によると、700万人以上が飢餓に苦しんでおり、100万人以上の子供が飢餓と栄養失調に苦しんでいるというのだ。
(カリタスによると、世界中で現在7億8300万人が慢性的な飢餓に苦しんでいる。国連によれば、昨年、急性の飢餓状態にある人々の数は世界で2億8160万人で、前年より2400万人多くなった。特に深刻なのは、5歳未満の子供1億5000万人が栄養不良のために成長と発育が阻害されている)

 カリタスは国際社会に責任を果たすよう訴えるだけでなく、一般の人々にも寄付を求めている。「飢餓のない世界は可能であり、小さな寄付でも大きな飢餓を解消する助けになる」と述べている。

 なお、当方にはスーダン出身の友人がいる。彼とは長い付き合いだ。そういうこともあって、スーダン(南スーダンを含む)関連の情報には強い関心がある。スーダンから紛争や飢餓のニュースではなく、楽しく、喜ばしいニュースが流れてくる日を願っている(「‘スーダンの春’はいつ到来するか」2013年10月5日参考)。


 以下、南スーダンの「独立」から現在までの政情の流れを<参考資料>としてまとめた。

<独立から南スーダン内戦まで>(2011年〜2013年)
 独立(2011年7月9日):住民投票の結果、南スーダンはスーダンから独立を果たした。サルバ・キール・マヤルディ氏が初代大統領に就任した。独立直後から、南スーダンは経済基盤の弱さ、インフラの欠如、教育や医療の整備不足などの課題に直面した。そしてサルバ・キール大統領とリヤク・マチャル副大統領間で政治的緊張が高まり、キール大統領は2013年7月、マチャル副大統領を解任した。

<南スーダン内戦>(2013年〜2018年)
 内戦の勃発(2013年12月):キール大統領とマチャル前副大統領の支持者間で2013年12月に武力衝突が発生し、内戦に発展した。内戦は民族間の対立(主にディンカ族とヌエル族)も含む。内戦により数万人が死亡し、数百万人が難民や国内避難民となった。2015年には和平合意が結ばれたが、度々破られた(「駐独の南スーダン大使に聞く」2016年2月25日参考)。

<平和への歩み>(2018年〜現在)
 新たな和平合意(2018年):キール大統領とマチャル前副大統領は2018年9月、再度和平合意に署名した。この合意により、マチャル氏は再び副大統領に任命された。2020年2月には移行政府が設立された。これは和平プロセスの一環であり、全ての主要な反政府勢力が参加した。 和平プロセスは進展しているが、不安定な地域が多く、武装集団間の衝突や人道危機が続いている。インフラ整備や経済再建、民族間の和解など多くの課題が残っている。

罪を憎み、人を憎まず

 ローマ教皇フランシスコは18日、国連の第3回「ヘイトスピーチ撲滅国際デー」に際し、「フェイクニュースやヘイトスピーチは人間の尊厳を奪う。私たちは、未確認の情報をひとまとめにしたり、ありきたりで誤解を招くスピーチを繰り返したり、憎しみの表現で他の人に衝撃を与えたりすることによって人類の歴史を紡いでいくわけではない。こうした行為は人々の尊厳を奪うものだ」と、ソーシャルメディアプラットフォームXで述べている。

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▲インタビューに答えるアブエライシュ氏(2014年5月10日、アンマンの会議場で撮影)

 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「ヘイトスピーチは、差別、虐待、暴力、紛争、さらには人道に対する罪の一つの目印です。ナチス・ドイツからルワンダ、ボスニア、そしてそれ以外でも、私たちはヘイトスピーチが使われるのを見てきました。ヘイトスピーチに、許容できる水準など存在しません。ヘイトスピーチを完全に根絶するために、私たちの誰もが努力しなければなりません。今日のヘイトスピーチは、幅広い集団を標的とし、往々にして人種、民族、宗教、信条、所属政党に基づいています。ここ数カ月では、反ユダヤ主義とイスラム嫌悪の両方のヘイトスピーチが、インターネット上や、影響力のある指導者たちによる公の発言の中で急増しています」というメッセージを公表している。

 ところで、当方は「憎悪」という人間の感情に強い関心がある。人を憎んだり、特定の事例に強い反発を誘発するためには、強いエネルギーが必要だ。中途半端なエネルギ―では人を憎むことはできない。せいぜい「好き嫌い」の嗜好の範囲に留まるならば、それによってもたらされる被害は少なく済むが、一旦憎むとなればそうはいかない。一旦憎みだすと、相手を完全に破壊し、消滅させるまでエネルギーは止まらない。憎む相手、事例が消滅したとしても憎悪の対象を恣意的に捏造して憎み続けていくケースさえある。

 「憎悪」という感情は人間だけが保有しているものではないか。犬が隣人の犬を憎んでいると聞いたことがない。昔から「罪を憎んで、人を憎まず」という言葉があった。悪行や過ちを批判し、非難するべきはその行為や罪であり、行為者自体を憎んではならないというのだ。これは人間の本質的な善良さや変わる可能性を信じる思想が含まれている。悪い行為をした人でも、その行為自体は非難に値するが、その人自身には改心や更生の余地があるという考えだ。キリスト教の「憎むべきは罪であり、罪人ではない」という教えに通じる。古代ローマの哲学者セネカ(紀元前4年-紀元65年)が「罪を憎んで罪人を憎まず」という考えを提唱している。「罪を憎み、人を憎まず」という言葉は大昔から伝えられてきた一種の戒めだろう。

 ところが、21世紀に入り、罪が何か、その起源はどこにあるか、なぜ人は罪を犯すのか、等々の真剣な再考プロセスはなく、人は安易に相手を憎む。そして一旦憎みだすと、その憎しみの感情から飛び出すことができなくなる。憎悪の虜になるのだ。

 当方は2014年5月、ヨルダンの首都アンマンで開催された国際会議の場で一人のパレスチナ人医師、イゼルディン・アブエライシュ氏と会見したことがある。同氏は穏やかな紳士といった雰囲気はするが、同氏が語ってくれた話はそんなものではなかった。2009年1月16日、イスラエル軍のガザ攻撃中、砲弾を受け、3人の娘さんと姪を失ったのだ。亡くなった娘さんの姿を目撃した時、「直視できなかった」と述懐している。しかし、同氏の口からは“イスラエル軍憎し”といった言葉は飛び出してこなかった(同氏との会見記事を2本のコラム、「憎しみは自ら滅ぼす病だ」(2014年5月14日)と「『憎まない生き方』は現代の福音」(2014年5月20日)にまとめた)。

 アブエライシュ氏は日本語でも出版されている著書『それでも、私は憎まない』の中で証しをしている。「私の本のメイン・メッセージは、私たちの人生は私たちの手にあるということだ。自身の人生に責任を持ち、他者を批判したり、憎むべきではないということだ。憎悪は大きな病気だ。それは破壊的な病であり、憎む者の心を破壊し、燃えつくす」と語っている。

 パレスチナ人難民キャンプで成長し、エジプトのカイロ大学医学部を卒業後、ロンドン大学、ハーバード大学で産婦人科を習得。その後、パレスチナ人の医師として初めてイスラエルの病院で勤務した体験を有する。

 その後、パレスチナ人の友人から「お前はイスラエル人を憎むだろう」といわれたが、「自分は憎むことが出来ない。イスラエルにも多くの友人がいる。誰を憎めばいいのか。イスラエルの医者たちは私の娘を救うためにあらゆる治療をしてくれた。憎しみは相手も自分をも破壊するがん細胞のようなものだ」と答えてきた。その一方、亡くなった3人の娘さんの願いを継いで、学業に励む中東女生たちを支援する奨学金基金「Daughters for life Foundatoin」を創設し、多くの学生たちを応援してきた。

 憎しみを止揚し、建設的なエネルギーに転換させることは容易ではない。誰もがアブエライシュ氏のようにはなれないが、憎悪という感情を克服できると信じたい。「罪を憎み、人を憎まず」という言葉をもう一度思い出したい。

スロバキア「公共放送が解散される時」

 スロバキア議会で20日、公共放送RTVSの解散を決定した。同国では数カ月前から野党グループやジャーナリストたちが政府の決定に抗議するデモを行ってきた。公共放送の解散の理由は、「RTVSが政府の活動を客観的に報道せず、国民に偏向した情報を拡散し、政府の活動に一方的な憎悪を助長してきた」というものだ。RTVSは7月1日からSTVRと呼ばれる新しい放送局に置き換えられるという。

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▲スロバキアのフィツォ首相(スロバキア政府公式サイトから)

 ブラチスラバからの情報によると、議会では与党議員78人全員が解散関連法案に賛成し、野党議員らは抗議して議会から退出し、投票をボイコットした。野党側は「政府はメディアを管理下に置いて、情報操作を画策している」と批判。政府がRTVSを解散したという情報が流れると、同放送前でジャーナリストたちが「不当な解散だ。われわれだけではなく、国民にとっても大きな影響を与える」と抗議した。

 同国では、昨年9月30日に実施されたスロバキア議会の繰り上げ選挙で、フィツォ氏が率いる野党「社会民主党(スメル)」が第1党になり、中道左派「方向党−社会民主主義(Smer−SD)」を中心に、中道左派「声−社会民主主義(Hlas−SD)」および民族主義政党SNSから成るフィツォ連立政権が昨年10月に発足したばかりだ。

 フィツォ政権は隣国ハンガリーのオルバン首相に倣い、対ウクライナ政策では武器支援拒否、親ロシア政策を推進する一方、RTVSの解散など司法・メディアの改革に乗り出してきた。欧州連合(EU)のブリュッセルからは「スロバキアが第2のハンガリーとなる」といった懸念の声すら聞かれ出した。

 興味深い点は、スロバキアでは過去、政府とメディアとの関係が険悪化し、政変の大きな引き金となってきたことだ。2018年2月、著名なジャーナリストのヤン・クシアク氏とその婚約者が殺害されるという事件が起きた。イタリアのマフィアとフィツォ首相の与党の関係が疑われ、ブラチスラバの中央政界を直撃し、国民は事件の全容解明を要求、各地でデモ集会を行った。その結果、フィツォ政権は2018年3月、辞任に追い込まれた。それ以来、フィツォ氏は批判的なメディアとは不仲だ(「スロバキア政界とマフィアの癒着」2018年3月17日参考)。

 そのフィツォ首相が今度は「暗殺未遂事件」に遭遇したのだ。首相の暗殺未遂事件は欧州全土を震撼させた。フィツォ首相が5月15日、同国中部ハンドロバで政治集会を終えて退出し、会場前に集まった市民と交流しようとした時、男性から5発の銃弾を受け、一発は腹部に命中し、重体となって近くの病院にヘリコプターで搬送され、緊急手術を受けた。現地のメディアによると、犯人(71)は当時、「フィツォ首相の政治に同意できないからだ」と、犯行の動機を供述したという。

 首相暗殺未遂事件の直後、与野党の政治家やメディアの間で「対話の文化を促進させなければならない」といった声が聞かれた。その矢先、退院したフィツォ首相は今月5日、、銃撃事件後初めて動画を通じて演説し、政界や社会に憎悪を醸成したのは反政府派だと非難したのだ。フィツォ氏は「容疑者に対して憎しみはないが、彼は政治的憎悪の使者だ」と主張。政権に批判的なメディアや反政府派、NGOを攻撃している。

 政権とメディアの癒着は問題だが、メディアが政府批判一色となったり、逆に独裁国や共産国でも見られるようにメディアが政府のスピーカーとなる場合、健全な民主主義社会の育成は期待できない。フィツォ首相はこれまでも「RTVSの報道は自分たちに偏見を持っている」と繰り返し批判してきた。そこでRTVSを解散し、政権に批判的なメディアの口を塞ぐというわけだ。

 メディアは第4権力と呼ばれ、メディアの影響力は政権さえも崩壊させるパワーを有している一方、政府は悪、メディアはその悪を追求する正義の味方といった自己過信により、客観的な報道から逸脱するケースも出てきている。冷戦時代、共産主義政権下にあったスロバキアの場合、政府とメディアの健全な関係を実現するためにはまだ時間が必要なのかもしれない。

プーチン氏の21時間の訪朝とその成果

 プーチン大統領の前任者ボリス・エリツイン(大統領在位1991〜1999年)は訪問国(アイルランド)に到着したが、飛行機から降りてこなかった。なぜなら、飛行中にウオッカを飲み過ぎて眠り込んでしまったからだ。首脳会談はキャンセルされた。その点、プーチン氏は前任者より数段規律があるから、そのようなことはないが、‘遅刻癖’はなくならない、というか止める気がない。プーチン氏は24年ぶりの訪朝でも数時間遅れて、19日未明になって平壌の国際空港にようやく到着し、金正恩総書記の歓迎を受けた。

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▲19日未明に到着したプーチン大統領を歓迎する金正恩総書記(クレムリン公式サイトから、平壌の国際空港で)

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▲「軍事同盟」を宣言したプーチン大統領と金正恩総書記(クレムリン公式サイトから、平壌で、2024年6月19日)


 ところで、待機時間中、金正恩氏はどうだったろうか。激怒してコーヒーカップの一つでも壁に向かって投げつけただろうか。それともプーチン氏の遅刻癖については知っていたから、国際空港内の待機室で仮眠をとっていただろうか。朝鮮中央通信(KCNA)が報じていないから、その辺のことは分からない。

 ちなみに、プーチン氏の遅刻癖には多分に安全問題が関わっているのだろう。KGB時代から、どこに、いつ行くかを直前になるまで外部に流さない。その習慣が大統領になっても変わらないのだ。それとも、プーチン氏を狙う外国の暗殺者が暗躍しているからだろうか。

 プーチン氏の24年ぶりの訪朝はロシアと北朝鮮両国にとって実り多き機会となったことは間違いないだろう。金正恩氏はプーチン氏と10時間を超える会談をしたという。両首脳はほとんどぶっ通しで話していたことになる。話すべき議題が多いうえ、プーチン氏は訪朝後、ベトナム訪問を控えていたからだ。

 その10時間余りの会談の成果は19日に署名された「包括的戦略パートナーシップ条約」だ。その中では「締結国が戦争状況下になれば、その国を保有しているすべての手段で軍事支援する」ことが明記されている。すなわち、ロシアと北朝鮮の関係は旧ソ連と北朝鮮が1961年に結んだ「ソ朝友好協力相互援助条約」から始まり、2000年締結した現行の「友好善隣協力条約」となり、今回再び1961年の相互軍事援助を明記した「軍事同盟」に復帰したということになるわけだ。

 露朝関係が再び軍事同盟になったことが明らかになると、韓国側は非常に神経質になっている。新条約の第4条には、「一方が武力侵攻を受けた場合、すべての手段で軍事や他の援助を提供する」というのだ。金正恩氏が首脳会談後の共同記者発表で満面の笑みを浮かべていたのは当然だろう。もはや韓国軍を恐れる必要はない。同盟国のロシア軍が控えているぞ、といったところだろうか。

 露朝新条約の第14条は、北大西洋条約機構(NATO)の第5条(集団防衛)とほぼ同じ内容だ。NATO第5条では、「欧州又は北米における一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす。締約国は、武力攻撃が行われたときは、国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む)を個別的に及び共同して直ちにとることにより、攻撃を受けた締約国を援助する」(日本外務省欧州局政策課)と記されている。

 プーチン大統領は北朝鮮労働党機関紙の「労働新聞」(18日付)に寄稿し、その中で「ロシアは、独立、アイデンティティ、そして発展の道を自由に選択する権利のための戦いにおいて、危険で攻撃的な敵と戦う北朝鮮と英雄的な朝鮮人民を絶え間なく支援しており、今後も支援していくだろう」と述べている。

 興味深い点は、先の寄稿の中でプーチン氏はウクライナへの欧米諸国の支援に対し、強い怒りを吐露していることだ。「我々の敵対者たちは、ネオナチ・キエフ政権に資金、武器、諜報情報を供給し続けており、明らかに民間人を狙ったロシア領土への攻撃を行うために、現代西側の武器や装備の使用を許可し、事実上奨励している。彼らはウクライナに軍隊を派遣すると脅している。さらに、彼らはさらなる新たな制裁でロシア経済を疲弊させ、国内の社会政治的緊張を煽ろうとしている。彼らがどれほど努力したとしても、ロシアを封じ込めたり孤立させたりする試みはすべて失敗した。私たちは着実に経済力を強化し、産業、技術、インフラ、科学、教育、文化を発展させ続ける」と、敵意まる出しで決意を述べているのだ。

 共同宣言文によると、そのほか、貿易の促進、宇宙・原子力を含む科学技術分野での協力拡大などが記されている。具体的には、ロシアからは日常品、食糧、原油などのほか、偵察用衛星関連の技術支援を、北側からはロシアに弾薬、ミサイルなど武器を供与する。インスブルック大学のロシア問題専門家、マンゴット教授は「ロシアと北朝鮮間の貿易総額は前年比の9倍に急増している」という。

 なお、24条からなる露朝新条約について、マンゴット教授は20日、ドイツ民間ニュース専門局ntvとのインタビューで「プーチン氏は日本と韓国にも明確なシグナルを送っている。両国がウクライナ支援を今後とも続けるならば、ロシアは何らかの報復を行うと強迫しているのだ」という。韓国の尹政権はウクライナに戦闘用武器の供与を検討しているといわれるが、プーチン氏は韓国政府に「これ以上ウクライナを支援するな」と警告を発したというわけだ。

 国際社会から孤立しているロシアと北朝鮮両国間の「軍事同盟」はいつでも暴発する危険性を内包している。そのうえ、露朝新条約に対して、中国がどのようなスタンスを示すか現時点では不明だ。日米韓は露朝間の軍事同盟に一層警戒する必要がある。

ベルリンの「平和の少女像」撤去の動き

 ドイツの首都ベルリン市のミッテ区には旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」が設置されているが、韓国の聯合ニュースの取材に対し、ミッテ区役所関係者は18日、「少女像の碑文の修正を巡る協議が不調に終わり設置許可を延長できない」との立場を明らかにした。すなわち、「少女像」設置4年目を迎える今年9月に銅像が撤去される可能性が出てきたわけだ。永久設置を要求する韓国側のロビー活動が活発化してきている。

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▲ベルリンの少女像撤去を求める韓国市民団体(韓国中央日報日本語版2022年6月28日から)

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▲韓国・釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像(森啓造撮影)

 在ベルリンの韓国民間団体「韓国協会」は2020年9月28日、ベルリンの公道に日本軍の慰安婦を象徴した「少女像」を設置した。「韓国協会」のメンバーたちは戦時中の旧日本軍の蛮行を批判し、「女性の権利」を蹂躙したとして世界各地で少女像、慰安婦像を設置してきた反日思想に凝り固まったグループだ。それに対し、日本側は韓国側の主張するような強制的な従軍慰安婦はいなかったこと、日韓両外相(岸田文雄外相と尹炳世韓国外相=いずれも当時)は2015年12月28日、慰安婦問題の解決で合意に達し、両政府による合意事項の履行を前提に、「この問題が最終的、不可逆的に解決することを確認する」と表明。それを受け、慰安婦問題は外交上解決済みだと説明してきた。

 ベルリンのミッテ区当局は2020年10月7日、在独日本大使館からの撤去要請を受け、韓国側に同年10月14日までに像の撤去を指示する公文書を送った。理由は、韓国側が少女像にある碑文を区当局側に事前に報告していなかったこと、そのうえ碑文には第2次世界大戦当時、旧日本軍がアジア・太平洋全域で女性たちを性奴隷として強制的に連行していたなどの一方的な歴史観が記されていたことなどを挙げた。ドイツ側は、「わが国に日韓の懸案を持ち込んで公共の安全を脅かすことは許せない」と説明した。

 少女像の碑文には、第2次世界大戦当時に日本軍がアジア太平洋全域で女性を「性奴隷」として強制連行した。このような戦争犯罪の再発を防ぐためにキャンペーンを繰り広げる生存者たちの勇気に敬意を表すると書かれている。また、慰安婦被害者を支援する韓国市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)が寄贈したとも記されている。

 ミッテ区当局の撤去要請を受けた在独の韓国ロビーは即反撃を開始した。韓国側は行政裁判所に少女像撤去差し止めを申請した。ミッテ区側は2020年10月13日、同裁判所の決定まで撤去を延長すると伝達していたが、同年12月1日、区内に設置された従軍慰安婦の「少女像」を1年間、設置し、その間に恒常的な解決策を模索する決議を賛成24票、反対5票で可決。その後、ベルリンの少女像は今日まで撤廃されることなく、撤去要請は今日まで延期されてきた。

 ちなみに、ドイツは東西分断の歴史を体験してきたこともあって、南北韓半島の分断国家のひとつ、韓国に対してもシンパが多い。日韓両国間で問題が生じた場合、ドイツは韓国側の主張に理解を示すことが多かった。一方、韓国でも「戦争後の処理問題でドイツは模範的な国だ」と称え、日本側に対して常に「ドイツに見習え」と主張してきた経緯がある。また、韓国の軍事政権下で反体制派活動家がドイツに亡命するケースが多く、ドイツには親北派の韓国反体制派の拠点が構築されている(「韓国人はドイツ人を全く知らない」2014年12月3日参考)。

 興味深い点は、韓国の市民団体「慰安婦詐欺清算連帯」のメンバー4人が2022年6月26日、ドイツ・ベルリン市内の旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」の前で、「慰安婦詐欺はもうやめろ」と書かれたプラカードを持って少女像の撤去を求め、「ベルリンの少女像は韓国の恥を世界に広げるだけだ」と主張している。

 参考までに、「反日種族主義」(文芸春秋発行)の編著の一人、李栄薫氏は「日本軍が韓国の若い女性を強制的に拉致し、日本軍兵士の慰安婦としたり、慰安婦は日本軍の性奴隷だったといった報道は本来あり得ないことだ。日本軍は1937年に初めて慰安所を設置したが、既にあった慰安所を軍が管理し、女性の衛生問題から性病対策のために厳格な管理をした。慰安婦には通常の公娼と同じように手当も休日もあった」、「興味深い点は、韓国軍慰安婦や米軍慰安婦問題は韓国民の関心を呼び起こさないが、1936年から1945年までの日本軍慰安婦には大きな関心と国民の怒りが沸き起こってくる。ぎこちない不均衡は『反日種族主義』という集団情緒が働くからだ」と喝破している(「『日本軍慰安婦』+『集団情緒』=反日?」2020年1月6日参考)。

 ベルリンの「平和の少女像」が撤去される方向に向かっている一方、韓国聯合ニュースによると、正義連は19日、イタリア・サルデーニャ島のスティンティーノ市で22日午後7時(日本時間)に少女像の除幕式を行うと発表した。正義連によると、この少女像は欧州ではドイツ・ベルリンに次いで2番目に公共の場所に設置される。少女像の碑文はベルリンのそれと全く同文だ。

 なお、聯合ニュースによると、「平和の少女像」は2011年12月、ソウルの日本大使館前に初めて建てられたのを皮切りに、現在は韓国に148、海外に31の記念碑・平和碑が設置されている。

 日本との友好関係を模索する尹錫悦政権が発足して以来、文在寅前政権下で暗躍してきた反日活動家は「平和の少女像」の海外設置を進めることで日本の国際的評価を貶め、同時に尹錫悦政権に揺さぶりをかけている。彼らは「平和の少女像」という名称で‘憎悪’を世界に拡散しているのだ。
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