ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2022年10月

「死者の日」に「生きること」を考える

 欧州では30日、夏時間から冬時間に入った。30日午前3時の時計の針を午前2時に1時間戻す。スマートフォンや他の多くの電気製品は自動的に時間を冬時間に合わせるので、針を戻すといった手仕事はない。例えば、当方の部屋の時計は古いから毎年、冬時間、夏時間が来る度に時間を調整する。

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▲万聖節には先祖の墓を参る人々(2021年11月1日、ウィーンで)

 冬時間が始まると、カレンダーは11月に入る。ローマ・カトリック教国のオーストリアでは1日はカトリック教の「万聖節」(Allerheiligen)で聖人を追悼する日で休日だ。2日は「死者の日」(Allerseelen)だ。2日は休日ではないので、1日の万聖節に先祖や家人の墓参りに行く人が多く、墓地は花を手にする人々で溢れるのが慣例だ。

 このコラム欄を開始して16年余りの年月が経過したが、当方は11月が始まると「死者の日」についてその時々の感慨をコラムに書いてきた。その伝統に従って、2022年の「死者の日」について書き出した。

 今年は多くの新たな死者が生まれてきた。2019年末から発生した中国武漢発の新型コロナウイルスの感染は未だ終息していない。これまで650万人以上の人々が感染で犠牲となった。重症急性呼吸器症候群(SARS)のCov-1は9カ月間で死者800人、エボラの感染死者数は1万1000人だったが、今回のパンデミックでの死者数はそれらをはるかに上回っている。

 オックスフォード大学元熱帯医学教授、現在はイギリスに本拠地を持つ医学研究支援等を目的とする公益信託団体「ウェルカム・トラスト」のジェレミー・ファ―ラー所長(Jeremy Farrar)は独週刊誌シュピーゲル(10月22日号)とのインタビューの中で、「通常のインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルス(H5N1)が結合した新たなウイルス変異株が生まれてきた場合、大変だ」と指摘していた。感染力と致死力のあるインフルエンザウイルスが出現した場合、人類はその対策に苦闘することが予想されるわけだ。

 コロナの感染症だけではない。ロシアのプーチン大統領は2月24日、ロシア軍をウクライナに侵攻させた。ウクライナとロシア両国の戦闘は既に8カ月が経過したが、まだ停戦の見通しはない。ウクライナ軍参謀本部が29日発表したところによると、ロシア軍の兵士の死者数は7万人以上という。戦争は侵略された国だけではなく、侵略した国からも多くの命を奪っていったのだ。

 ウクライナ戦争の影響もあって、欧米各国では食料不足、物価の高騰、エネルギー危機に直面している。ドイツのメディアが今頻繁に使用する表現は「Dauerstress」という言葉だ。一時的なストレスではなく、長期的、持続的なストレスの状況下で現代人は生きているということだ。

 科学、情報技術、そして医学も大きく発展している今日、これまでにないほどの多くの死者が出てきた。コロナウイルスが自然発生か武漢ウイルス研究所(WIV)から流出したかはまだ確定されていないが、ファーラー博士が指摘しているように、「2020年1月の段階で世界がウイルスの恐ろしさを正しく認識していたら、パンデミックは防げられたかもしれない」という。われわれはチャンスを逃したのだ。ロシア軍のウクライナ戦争は「プーチン大統領の戦争」かもしれないが、我々にも責任の一端はある。それに関連して生じてきた物価高騰、エネルギー危機も同じだ。世界の食料が急に不足した訳ではないし、エネルギーの埋蔵量が急減したわけではない。明らかに人間がもたらした危機といえるだろう。

 オーストリアの10月は例年より暖かい月だったという。エネルギー危機の時だけに電力の消費は節約できたが、11月からいよいよ本格的な冬を迎える。慣例のクリスマス市場は今年は電力節約のためにオープニングを1週間ほど遅らせる一方、商店街では夜間時間の点灯を止める店が出てきた。文字通り、Dauerstressの状況だ。終わりが見えないだけに、そのような持続的ストレス下に長期間さらされると、人間の精神生活にも支障が出てくる。ストレスが高まれば、暴発という事態も出てくる。それだけに心身共に健全でなければこの厳しい期間を乗り越えることはできないのではないか。

 「死者の日」に、死者に対して「あなた方はいいですね。既にあの世ですから。この世は目下、生きていくことが大変難しいです」と先祖の墓の前で不満を吐露する人が出てきても可笑しくはない。

 シャーロック・ホームズの著者コナン・ドイルは亡くなった息子ともう一度会いたいと思い、当時、流行っていた心霊科学の世界に入っていった話は有名だ。「死」は決して永遠の別離を意味せず、肉体的な衣を捨てた後、生きていた時には埋没していた本源の意識を取り戻していくプロセスではないか。人は死んで初めて一人前の人間となるとすれば、地上に生きている間は誰に対しても偉そうなことはいってはならないわけだ。

「恐れ」を捨てたウクライナ人の強さ

 社会学者なら「戦時下の国民の精神的変化」といった学術的なタイトルにするかもしれない。実際、ウクライナ国民は2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻して以来、軍事大国ロシアの砲撃を受け、当初は恐れや不安が国民の心を占めたが、その期間は長く続かなかった。軍事大国ロシアへの恐れは3月に入れば吹っ飛んでしまった。そして現在、ウクライナ国民の70%は未来に希望を感じ出しているという。

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▲独立記念日で演説するゼレンスキー大統領(ウクライナ大統領府公式サイトから、2022年8月24日)

 独週刊誌シュピーゲル10月15日号は「戦争下の国民の感情について」、非常に興味深い記事を掲載していた。ウクライナの国民性は本来、悲観的な傾向が強いという。ウクライナの著名な社会学者、Jewhen Holowacha氏はウクライナ国民の精神性について研究を重ねてきた。同氏は、「ウクライナ人は幸せな国民ではない。2021年10月に実施した調査では国民の3分の1は悲観的、憂鬱なメンタリティ、世界観だった。その半年後、同じ調査を実施したら、国民の70%は希望を感じだしてきているという結果が出た」という。

 同氏は、「多くのウクライナ国民は独立国となって以来初めて、自国が如何に素晴らしかを認識し出した」というのだ。忘れてはならないことは、戦争下で爆弾が破裂し、ミサイルが飛んでくる時に、ウクライナ国民は未来に対しこれまで持たなかった希望を感じ出してきたという事実だ。

 それでは、戦争時に生まれてきた希望とは何だろうか。ウクライナ国民が感じ出した希望はウクライナ軍の軍事的成果と密接な関係があることは間違いないだろう。プーチン大統領はロシア軍がウクライナに入り、首都キーウに侵攻した時、短期間でキーウを制圧し、親ロシア政権を樹立させるという計画だったが、ウクライナ国民と軍の激しい抵抗にあって、後退せざるを得なかった。多くのウクライナ国民はロシア軍の首都キーウからの撤退を奇跡と感じているというのだ。

 そしてウクライナ東部、南部を占領するロシア軍に対してウクライナ軍の領土奪回はウクライナ国民を奮い立たせたことは間違いない。同時に、欧米諸国からの軍事支援と連帯がウクライナ国民を勇気づけていることは確かだ。

 ウクライナ国民がロシアに対する恐怖を捨て去ったと感じたプーチン大統領はロケット砲撃を命令し、首都キーウ、西部のリヴィウ市などに激しい攻撃を開始。ターゲットはウクライナのインフラ破壊と可能な限り多くの民間人を殺害することだ。それによって、ウクライナ国民を再び恐怖の虜にするという狙いだ。

 キーウにミサイルが飛んできた。市民の多くは3月以来、再び地下鉄の構内に避難した。プーチン氏はウクライナ国民がロシア軍を恐れるだろうと密かに期待したが、キーウ市民は近くの地下鉄に避難するが、もはや同じ恐怖心を持つことはなかった。

 軍の守勢に直面したプーチン氏は部分的動員令を発令する一方、対面での地上戦闘ではなく、ミサイル攻撃、自爆無人機を動員し、26日には戦略核戦力の演習を実施、放射能をまきちらす“汚い爆弾”問題などを恣意的に話題に挙げる情報戦を展開し、ウクライナ側に恐怖心を与える作戦を展開させたが、「ロシア軍は恐れるに足らず」と感じたウクライナ人はもはや「恐怖」ではなく、プーチンのロシア軍に「怒り」を強めているのだ。

 シュピーゲル誌は、「ウクライナを現在訪問する人は驚くべき感情が国民を支配しているのを目撃するだろう。それは怒りと自信、痛みと多幸感のカクテルだ」と書いている。ウクライナ人は戦争の終焉を願っている。彼らは公平さと正義を回復し、戦争犯罪法廷の実施を夢見ているというのだ。

 軍事大国ロシアへの恐れを捨て、未来に希望を持ち出したウクライナ人に、プーチン大統領は何をもって対抗できるだろうか。占領したウクライナ東部と南部の領土をウクライナ側に奪い返されるようだと、プーチン氏の軍事責任が問われることになる。

朝日新聞こそ反社会的ではないか?

 朝日新聞電子版26日を読んで驚いた。アフリカのモザンビークで現地の教育復興のために献身的な歩みをし、日本の外務省から表彰された女性が実は旧統一教会の関連団体、世界平和女性連合から派遣された人物だった、と何か宝物でも見つけたように報じていたのだ。ところが表彰を称賛する記事かと思いきや、表彰された女性が旧統一教会関連団体だったということで表彰にイチャモンをつけている。その延長線で、事実を知りながら日本の外務省が女性を表彰したことに疑問を呈しているのだ。

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▲朝日新聞の本社(朝日新聞公式サイトから)

 アフリカのモザンビークで現地の子供たちに教育のチャンスを与えてきた日本人女性に対し、日本人の1人として誇りを感じ喜びたくなるが、朝日新聞はどうやらそうではなく、旧統一教会叩きの材料として利用しているのだ。その魂胆は哀れというほかない。

 その日本人女性は宝山晶子さん。モザンビーク太陽中学校・高校の理事長である宝山さんのモザンビークでの実績は旧統一教会に友好的ではない日本外務省関係者ですら評価せざるを得ないものだった。外務省の担当者は理事長を表彰したことを認め、「長年の教育・医療関連活動はモザンビークからも評価されていたことに鑑みて表彰した」と説明している。「学校運営にあたり女性連合から支援も受けていると認識していた」(朝日新聞)と述べている。

 安倍晋三元首相が銃殺されて以来、朝日新聞ら左派系メディアは事件の解明というより、容疑者の供述に基づき事件の背後に旧統一教会あり、といわんばかりに旧統一教会バッシングを開始、同時に、旧統一教会と自民党議員との関係を報道し、政権叩きを始めた。そして24日、とうとう岸田政権の要の閣僚、山際大志郎経済再生担当相が旧統一教会との関係を追及され辞任に追い込まれたばかりだ。

 これに勢いついた朝日新聞ら左派系メディアは 旧統一教会関連の話題探しに一層力を注ぎだしている。岸田首相は当初、教会への解散命令請求の要件として「民事訴訟だけでは無理」という文化庁の意見を受け入れてきたが、ここにきて教会側に刑事責任を認めた確定判決がなくても解体を命令できるという方向に修正してきたのでなおさらだ。そして今回、モザンビークで現地の教育復興に献身的に歩む日本人女性が旧統一教会関連団体出身ということで騒ぎ出したわけだ。

 安倍元首相銃殺事件が突発した直後、九州大学の旧統一教会系学生グループ(カープ)がゴミ拾いの奉仕活動を行い、福岡市から2度、表彰されたが、その学生グループが旧統一教会関連団体であることが通知され、表彰が撤回されたというハプニングがあった。朝日新聞のモザンビークの関連報道と同じ理屈だ。アフリカの現地での教育活動支援、そして学生たちの奉仕活動は本来喜ばれこそすれ、批判されることではない。それを旧統一教会関連団体云々ということでバッシングを受ける。中世の魔女狩りのようだ。

 朝日新聞に聞きたい。ワシントン・タイムズは旧統一教会とは直接関係はないが、その創始者は旧統一教会創設者・文鮮明師だということぐらい知っているはずだ。にもかかわらず、ワシントン・タイムズがスクープ報道をすれば、朝日新聞は過去、「ワシントン・タイムズによれば」と報道してきた。メディアとしては当然だ。スクープ情報があれば、読者にその内容を知らせることはメディアの責任だからだ。

 旧統一教会バッシングを主導している朝日新聞はその際、ワシントン・タイムズが「旧統一教会関連団体」と追加して批判はしていない。米国でそのような批判をすれば、「ナンセンス」と笑われてしまうだろう。高級紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」など、一流紙は結構宗教団体系がスポンサーとなっている。旧統一教会関連団体という理由で批判してきた朝日新聞も日本以外ではそのような理屈は通用しないことぐらい知っているはずだ。

 日本の民放が昔、世界の村で発見「こんなところに日本人」といったタイトルで、世界の極地や未開地で国際結婚した日本人女性の生活ぶりを報道して好評だった。その中に登場した日本人女性はモザンビークの宝山さんのように世界平和女性連合から派遣された派遣員も登場していた。番組制作関係者はそれを知っていたはずだが、番組の中では何も言及していない。日本で批判されている旧統一教会関係者の女性と分かれば不味い、という判断が働いていたからだろう。異国で活躍する日本人女性の話はいいが、旧統一教会関係者ではダメというわけだ。

 朝日新聞だけではなく、日本のメディアの旧統一教会関連報道はどう見ても正常ではない。旧統一教会関連報道ならば視聴率が上がるので、共産党系弁護士、元信者、脱会2世などを総動員させ、その大部分を過去の高額献金問題で再三再四報道するが、世界各地で貢献する旧統一教会関係者については沈黙している。

 朝日新聞はモザンビークの件では墓穴を掘っている。アフリカの地で日本人女性が現地の子供たちの教育を支援しているということが分かれば、普通の日本人なら評価するだろう。朝日新聞の思惑は完全に外れてしまっている。朝日新聞が旧統一教会関連団体に属するという理由だけでその女性を批判するならば、朝日新聞こそ反社会的な団体と言わざるを得ないのだ。

 ところで、朝日新聞は、表彰当時の外相が河野太郎消費者担当相だったとわざわざ記事の中で言及している。そこで朝日新聞にお願いがある。旧統一教会の解散を要求する河野氏に宝山さんの活動をどのようにみているか聞いてほしいのだ。まさか、河野氏が朝日新聞の記事のようなことはいわれないだろう。

中国、海外にも自国警察署を設置か

 中国共産党政権が海外に自国の警察署を設置、自国の反体制派活動家を監視しているというニュースが流れている。中国が海外に住む自国民を監視していること自体は新しいことではないが、その監視体制が強化されてきている点で注目される。

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▲中国共産党第20回党大会で演説する習近平国家主席(英ガーディアン紙のスクリーンショットから、2022年10月22日)

 BBCは26日、オランダのRTLニュースと非政府機関NGO「セーフガード・デフェンダース」の情報として、「オランダで少なくとも2カ所の不法な中国警察拠点がある。非公式な警察の拠点を設置することは違反だ。オランダ外務省は中国側に抗議した」と大きく報道した。

 スペインに拠点を置く「セーフガード・デファンダース」は「中国の国境外で警察活動は野放しになっている」として、「中国は世界21カ国、54箇所に 『海外警察サービスセンター』を設立している。それらのほとんどはヨーロッパにあって、スペイン9箇所、イタリア4箇所 、英国では、ロンドン2箇所、グラスゴー1箇所が発見されている」という。

 中国側がオランダの批判を否定し、「海外に住む中国人へのサービスセンターだ」という。例えば、運転免許の更新などを手助けするというのだ。それに対し、「セーフガード・デファンダース」は、「中国共産党政権を批判する海外居住国民を監視し、必要ならば強制的に帰国させる機関だ」という。海外拠点の中国警察関係者から嫌がらせの電話や脅迫を受けた海外居住中国人が少なくないという。

 オランダ外務省報道官マキシム・ホーベンカンプ氏はBBCに対し、「オランダ政府は、中国政府との外交ルートを通じてこれらの活動について知らされてこなかった。それは違法行為だ」と語っている。

 パスポートの更新やビザの申請などのサービスは、ウィーン条約の規定に基づき、通常、大使館または領事館によって処理される。中国が非難されているような警察の前哨基地は、ホスト国の領土保全を侵害する可能性すら出てくる。

 中国の外交問題スポークスマン、王文彬氏は26日、「海外の警察署と呼ばれていたものは実際は海外の中国市民のためのサービスステーションだ。中国政府は他国の司法主権を完全に尊重している」と反論している。

 このBBCの報道を読んでいて 当方は2005年11月3日、 シドニー中国総領事館の元領事で同年夏、オーストラリアに政治亡命した中国外交官の陳用林氏(当時、37歳)と会見したことを思い出した。同氏は「610公室」のメンバーだった。江沢民国家主席(当時)が1999年に創設した「610公室」は超法規的権限を有し、法輪功の根絶を最終目標としている。中国反体制派活動家たちは「610公室」を中国版ゲシュタポ(秘密国家警察)と呼んでいる(「江沢民前国家主席と『610公室』」2011年7月13日参考)。

 陳用林氏はオーストラリアにいる中国人社会を監視し、法輪功メンバーがいたらマークするのが任務だった。彼は自身の任務に疲れ、その職務に疑問を感じて亡命した。彼は決して例外ではない。海外駐在の中国外交官の中から今後、多くの外交官が自身の職務に懐疑的になり、政治亡命するケースが増えるのではないか、と予想していた。(「欧州駐在の悲しき中国外交官」2020年9月4日参考)

 陳用林氏はシドニーに住む中国人、特に法輪功メンバーの動向を監視し、その情報を中国に送っていた。中国側がいう「海外サービスセンター」での業務は何かを説明した実例だ。

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▲インタビューに答える陳用林氏(2005年11月3日、ウィーンにて撮影)

 参考までに、同氏は当方とのインタビューの中で以下のように答えている。

 ――政治亡命の動機は

 「一つは自由を求めてだ。14年間、外交官として生きてきたが、真の自由はなかった。いつも監視下にあったからだ。また、自分が政治亡命することで母国の民主化を促進させたいという願いがあった。駐シドニー総領事館では中国出身の同胞国民を監視することが私の任務だったが、それが耐えられなくなった。中国政府は政治亡命した私を『祖国の裏切り者』と批判するが、私は祖国から逃亡したのではなく、中国共産党から逃亡しただけだ」

 ――駐シドニー領事としての任務は具体的に何だったのか。

 「オーストラリアに居住する中国人を監視し、反政府活動する中国人の言動を北京に報告することだ。私は気功集団『法輪功』信者の監視を担当してきた。ちなみに、中国秘密警察『610号』高官がシドニーを視察した時、同高官は『約3万人の法輪功信者が収容所に入れられている』と語っていた」

 陳用林氏の証言は、BBCらが報じた「中国共産党政権が治安関係者を海外に派遣し、海外に住む国民を監視している」との報道内容を裏付けるとともに、習近平国家主席時代に入り、海外で自国の警察署を設置するなど、海外居住の反体制派中国人監視が一層、強化されだしてきたことが分かる。

 中国共産党政権は2014年、「社会信用システム構築の計画概要(2014〜2020年)」を発表した。それによれば、国民の個人情報をデータベース化し、国民の信用ランクを作成、中国共産党政権を批判した言動の有無、反体制デモの参加有無、違法行為の有無などをスコア化し、一定のスコアが溜まると「危険分子」「反体制分子」としてブラックリストに記載し、リストに掲載された国民は「社会信用スコア」の低い二等国民とみなされ、社会的優遇や保護を失うことになる、というわけだ。

 共産党政権下で監視社会の出現を予言した英国の作家ジョージ・オーウェルの小説「1984年」を思い出す読者も多いだろう。中国では顔認証システムが搭載された監視カメラが既に機能しているから、「社会信用スコア」の低い危険人物がどこにいてもその所在は直ぐに判明する。その監視システムの対象が海外に住む中国人にまで広がられてきているわけだ。中国は今、国民のDNAを集めている。

露正教会キリル1世は辞任すべきか

 世界の正教会の精神的指導者、東方正教会のコンスタンティヌープル総主教、バルソロメオス1世は、「ウクライナに対するロシアの戦争を即時終結すべきだ。この『フラトリサイド戦争』(兄弟戦争)は人間の尊厳を損ない、慈善の戒めに違反している」と述べている。同時に、ロシアのウクライナ侵攻に対するロシア正教総主教キリル1世の態度について遺憾の意を表明し、「キリル1世が戦争を支持するのならば、辞任したほうが良い」と語った。バチカン・ニュース独語版が23日、米国のポータルThe Pillarから引用して報じた。

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▲ロシア正教会最高指導者キリル1世(バチカン・ニュース独語版10月23日、写真・イタリアANSA通信)

 世界正教会の指導者がロシア正教会の最高指導者に「辞任したほうが良い」と表現することは非常に珍しい、というより異例だ。それだけキリル1世のウクライナ戦争での姿勢に怒りを感じているのだろう。世界約3億人の正教会の精神的指導者は、正教会の間(ロシアとウクライナ間)で進行中の戦争に大きな打撃を受けているわけだ。

 バルソロメオス1世は、「私たちにとって苦痛は、モスクワ総主教庁がこの暴力的な侵略と不当な流血を支持し、それを祝福するようにすら見え、ロシアのプーチン大統領の政治的野心に服従しているという事実だ」と強調し、「熱心かつ兄弟愛を込めてモスクワ総主教に、政治犯罪から距離を置くように」と訴えてきた。

 正教国ロシアの殺戮戦争は世界の正教会に大きな衝撃を与えている。モスクワ総主教は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領の親友と見なされ、ウクライナの侵略戦争を支持している。キリル1世はロシアの敵対者を「悪の勢力」と呼び、ロシア兵士には戦うように呼びかけてきた。そのためキリスト教神学界からも厳しい批判が飛び出し、神学者ウルリッヒ・ケルトナー氏は「福音を裏切っている」とキリル1世を非難している。

 キリル1世はクリミア半島はロシア正教会の起源と見なしている。「キーウ大公国」のウラジミール王子は西暦988年、キリスト教に改宗し、ロシアをキリスト教化した。キリル1世はそのウクライナとロシアが教会法に基づいて連携していると主張し、ウクライナの首都キーウを“エルサレム”と呼び、ロシア正教会はそこから誕生したのだから、その歴史的、精神的繋がりを捨て去ることはできない、という論理だ。

 キリル1世はロシアのプーチン大統領を支持し、ロシア軍のウクライナ侵攻をこれまで一貫して弁護し、「ウクライナに対するロシアの戦争は西洋の悪に対する善の形而上学的闘争だ」と強調してきた。ウクライナ戦争は「善」と「悪」の価値観の戦いだから、敗北は許されない。キリル1世はプーチン氏の主導のもと、西側社会の退廃文化を壊滅させなければならないと説明する。中途半端な勝利は許されない。その結果、戦いには残虐性が出てくる。相手を壊滅しなければならないからだ。

 マリウポリや“ブチャの虐殺”からその残虐性、非情さが読み取れる。徹底した虐殺であり、空爆だ。民間人が避難している場所であろうが、病院、幼稚園だろうが、空爆する。領土拡大という戦争の場合、そのような蛮行は本来、必要ではない。しかし、「形而上学的戦い」となれば、相手を壊滅しない限り、勝利とはならないからだ。

 ジュネーブに本部を置く世界教会協議会(WCC)では、「ロシア正教会をWCCメンバーから追放すべきだ」といった声が高まってきた。WCCはスイスのジュネーブに本部を置く世界的なエキュメニカル組織だ。120カ国以上からの340を超える教会と教派の会員が所属している。 WCCには、多数のプロテスタント、ほとんどの正教会、東方諸教会が所属している。

 注目すべきは、ウクライナでキーウ総主教庁に属する正教会聖職者とモスクワ総主教庁に所属する聖職者が「戦争反対」という点で結束してきたことだ。ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)の首座主教であるキーウのオヌフリイ府主教は2月24日、ウクライナ国内の信者に向けたメッセージを発表し、ロシアのウクライナ侵攻を「悲劇」とし、「ロシア民族はもともと、キーウのドニエプル川周辺に起源を持つ同じ民族だ。われわれが互いに戦争をしていることは最大の恥」と指摘、人類最初の殺人、兄カインによる弟アベルの殺害を引き合いに出し、両国間の戦争は「カインの殺人だ」と述べた。

 ウクライナ正教会は本来、ソ連共産党政権時代からロシア正教会の管轄下にあったが、2018年12月、ウクライナ正教会はロシア正教会から離脱し、独立した。その後、ウクライナ正教会と独立正教会が統合して現在の「ウクライナ正教会」(OKU)が誕生した。

 一方、ウクライナにはモスクワ総主教のキリル1世を依然支持するウクライナ正教会(UOK)は5月27日、全国評議会でモスクワ総主教区から独立を決定した。曰く「人を殺してはならないという教えを無視し、ウクライナ戦争を支援するモスクワ総主教のキリル1世の下にいることは出来ない」という理由だ。その結果、ロシア正教会は332年間管轄してきたウクライナ正教会を完全に失い、世界の正教会での影響力は低下、モスクワ総主教にとって大きな痛手となった。

 ウクライナ戦争は既に8カ月が過ぎた。厳冬を控え、停戦の見通しはない。プーチン大統領への批判は国内外で高まり、同大統領は国際社会では益々孤立化してきた。その大統領を支援してきたキリル1世は世界の正教会から同じように孤立を深めてきている。バルソロメオス1世の「辞任要求」はそのことを端的に物語っている。ちなみに、キリル1世はプーチン氏と同じサンクトぺテルブルク出身でKGB(ソ連国家保安委員会)のエージェントだったという情報がある。

岸田首相は拉致監禁被害者と会見を

 岸田文雄首相は24日午前の衆院予算委員会の集中審議で、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の問題を巡り、被害者と面会する意向を明らかにした。首相は「被害者、弁護士の方々をはじめとする関係団体の意見を聞くことは大事だ。私も直接、お話を聞かせてもらいたい」と語った(読売新聞電子版10月24日)。

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▲山際大志郎経済再生担当相の辞任を受けての記者会見に応じる岸田首相(2022年10月24日、首相官邸公式サイトから)

 政府の最高指導者が問題の当事者と直接対面で会見することは、問題解決に資するかもしれない。懸念は、被害者は旧統一教会に対して批判的であり、その被害者を擁護する弁護士には共産主義的思想に傾斜した人物が少なくないことだ。彼らから献金問題などの問題について意見を聞くわけだ。冷静にいえば、岸田首相は旧統一教会の解体を既に決意し、その判断の根拠とするために旧統一教会に批判的な被害者と弁護士たちと会うのではないか、といった憶測すら湧いてくる。極端に言えば、一種のアリバイ工作ではないか。

 岸田首相は新資本主義経済などのビジョンを抱えて登場、停滞する日本経済の復興に乗り出す予定だったが、安倍晋三元首相が銃殺されるという大事件が発生。その後は容疑者の供述に基づいて、事件の影に旧統一教会問題があるといわんばかりに、旧統一教会との対応が岸田政権の最大急務となった。このことは岸田首相にとって不運だった。安倍元首相の国葬も無事終わり、再び自身の路線に戻れると考えていた首相だが、時間の経過とともに自民党議員と旧統一教会問題のかかわりは一層深化し、24日には岸田首相の改革で中心的な役割が期待された山際大志郎経済再生担当相が旧統一教会とのつながり問題から辞任に追い込まれたばかりだ。

 一方、朝日新聞などの左派メディアは旧統一教会を解体できるチャンスと受け取り、岸田首相に圧力をかけてきた。首相は当初、教会への解散命令請求の要件として民事訴訟だけでは無理という文化庁の意見を受け入れてきたが、ここにきて教会側に刑事責任を認めた確定判決がなくても解体を命令できるという方向に修正してきた。その直後、首相は旧統一教会の被害者そしてその弁護士たちと会見することを表明したわけだ。

 この流れから判断するならば、岸田首相は旧統一教会の解体を決意したと受け取って間違いがないだろう。岸田首相には一刻も早く旧統一教会問題から解放されたい、という思いが強いからだ。被害者と会見するシーンがメディアに放映され、被害者から統一教会へのネガティブな情報を得た岸田首相はその後、旧統一教会の解体を宣言する、というシナリオが浮かんでくる。

 とまれ、被害者たちと会見することには反対ではないが、公平でフェアな対応のためには岸田首相は反統一教会関係者による統一教会信者の拉致監禁犠牲者とも会見すべきだ。12年5カ月間、拉致監禁され脱会を強いられた後藤徹氏らと会見することを勧める。ジュネーブの国連人権理事会のサイドイベントに参加した国際NGO「国境なき人権」代表のウィリー・フォートレ代表が10年前、日本政府の拉致監禁犠牲者への対応が皆無であるという事実を知って驚いていたことを思い出す。岸田首相は、職業的拉致監禁専門家の牧師、弁護士らが暗躍し、統一教会信者たちを拉致監禁してきた実態を知るべきだろう。

 朝日新聞ら左派メディア、ソーシャルメディアが連日、旧統一教会が如何に悪なる組織かを報じてきた。それも主に昔起きた不祥事を持ち出してバッシングを繰り返してきた。一方、それを見聞きする旧統一教会の一般信者たちはどのような思いになるだろうか。彼らの「信教の自由」はどうしたのか。家族や友人たちからも「統一教会の信者」であるがゆえに白い目で見られる一般信者たちの苦しみを誰が理解できるのか。

 繰り返しになるが、岸田首相が被害者に会う一方、拉致監禁の犠牲者とも会ってその話に耳を傾けてほしい。高額献金による被害者だけと会見しても事件の核心に至ることはないからだ。メディア受けのパフォーマンスでは事は解決できない。

 メディアの一方的な報道によって教会の信者の2世が精神的に苦痛を受け、社会からバッシングも受けて不幸なことが生じた場合、岸田首相はどのように責任を取るのか。同じことが左派メディア関係者にもいえる。世論を誤導した責任は大きいのだ。特に、朝日新聞は過去、慰安婦関連報道で恣意的な虚偽の報道をしてきた前科がある。日本民族の国益を無視し、慰安婦問題を扇動したのは朝日新聞だったではないか。

独学者「武漢研究所が起因」

Sars-CoV-2 に遺伝子操作の痕跡

 ドイツ民間ニュース専門局「ntv」を視ていた時、「ドイツの学者が新型コロナウイルスの武漢ウイルス研究所(WIV)発生説を確認」といったテロップが流れてきた。中国武漢発の新型コロナウイルスの発生源問題では「自然発生説」と「WIV流出説」の2通りがある。前者を支持するウイルス学者が多いが、後者を主張する学者も少なくない。それだけに、3人の独学者チームの今回の発表に驚いた。何を見つけたのだろうか。

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▲中国武漢ウイルス研究所(WIV)ウィキぺディアから 

 そこで早速、ntvのウエブ・サイトから上記の報道関連記事(10月23日付)を探して読んだ。記事の見出しは「Deutscher Forscher: Sars-CoV-2 kommt zu 99.9 Prozent aus Labor」(ドイツの学者、Sars−CoV2(新型コロナウイルス)は99・9%研究所から起因」とかなりセンセーショナルだ。

 記事は、「ウイルスのゲノムにおける遺伝子操作の『指紋』を発見した。ウイルスは中国のWIVからきた可能性が高い」というのだ。オンラインに公表された研究内容のプレプリント(査読前論文)によると、3人の学者はSars-CoV-2が特別に遺伝子組み換えされて出てきたウイルスであるという。すなわち、自然のウイルスではなく、人工ウイルスというわけだ。

 独チームの3人のうち、中心的学者、ヴュルツブルク大学病院に勤めるヴァレンティン・ブルッテル博士は同僚と共に、ドイツのバイオテクノロジーの日で今年のイノベーション賞を受賞した学者だ。同博士は昨年の夏にはSars-CoV-2 のゲノムの異常に気づいたという。

 ブルッテル氏は、「他の分子的手がかりと組み合わせると、このウイルスが 99・9%人工的で、おそらく操作された天然ウイルスのコピーであることを示している」と、「ntv」局とのインタビューの中で語った。ウイルスのコピー方法は、個々のウイルス研究所が合成ウイルスを作成するために使用するものと類似している。これらの技術は日常の業務でも使用されているやりかただ。同博士自身、自己免疫疾患のための「完全に無害な」タンパク質ベースの薬を開発するためにこの技術を利用しているという。

 研究者チームは、Sars-CoV-2のゲノムに一種の「指紋」を発見した。 ブルッテル氏 によると、これはウイルスのゲノムで定期的に繰り返されるパターンだ。Sars-CoV-2 などのRNAウイルスを遺伝子操作する研究所は、最初に個々のDNAビルディングブロックからゲノムを組み立てる。目に見える「認識部位」が構成要素の接合部近くのゲノムに残る。独特の規則的なパターンだ。

 研究者チームは、人工的に作成されたウイルスとそれらの自然な「モデルウイルス」のゲノムを比較した。「自然界のウイルスでは、認識部位は完全にランダムに分布している。しかし、遺伝子操作で構成されたウイルスの場合、生産に関連した特定のパターンで現れる。このパターンはSars-CoV-2にも見られる。自然の進化が偶然にこのパターンを生み出す確率は、せいぜい100分の1であり、おそらくそれよりはるかに少ない」という。

 ブルッテル氏によると、「研究結果からSars-CoV-2 が実験室での事故によって放出された可能性があり、それが最終的に世界的なパンデミックを引き起こした可能性が考えられるわけだ。米国でも高セキュリティの研究所で危険な事故がほぼ毎週発生している。WIVはパンデミックが始まる前は安全性の低い条件下でコロナウイルスに取り組んでいた。口と鼻の保護は義務付けられていなかった。研究者がネズミに噛まれたり、何かが落ちたり、エアロゾルが発生したりする可能性があった。 若い従業員が無意識のうちに感染し、症状がなく、他の人に感染させた可能性は十分考えられる。理論的には、無症候性のウイルス感染者が他に感染を広め、数カ月後に武漢の華南生鮮市場で初めてアウトブレイクが発生した可能性がある」というのだ。

 同研究内容が報じられると、世界のウイルス学者たちから批判にさらされている。WIV流出説に対して最も批判的な学者の1人、カリフォルニア州ラ・ホーヤにあるスクリプス研究所の有名な免疫学者クリスチャン・アンダーセン氏はドイツの免疫学者の研究を「ばかげている」と一蹴し、「分子生物学の幼稚園を通過することさえできないほど欠陥がある。 Sars-CoV-2ゲノムにはランダムノイズのみが見られるのだ」と指摘している。

 また、ドイツのウイルス学者、ギーセン大学ウイルス研究所を率いているフリーデマン・ウェーバー氏は(ブルッテル氏らが言及した)痕跡を残さずにウイルスを遺伝子操作することは「可能だ」と強調している。ちなみに、遺伝子操作の痕跡排除技術は米ノースカロライナ大学のラルフ・バリック教授らが開発し、それを「コウモリの女」と呼ばれている新型コロナウイルス研究の第一人者、WIVの石正麗氏が取得した経緯がある。

 ブルッテル氏は、「人工ウイルスによって偶発的に引き起こされたパンデミックのリスクは過小評価されている。人工的に生成された多くのウイルスは、Sars-CoV-2 よりも何倍も致命的だ」と指摘し、一部のウイルス学者たちが研究している「機能獲得研究」の危険性について警告している。

胡錦濤の「芝居説」が浮上?

 中国共産党第20回党大会(10月16日〜22日)をテレビニュースで見ていて驚いた読者も多かっただろう。北京の人民大会堂で行われた中国共産党党大会閉会式の22日、習近平総書記(国家主席)の左隣に座っていた胡錦濤前総書記(79)が突然退席するというシーンがあった。外電によると、胡錦涛氏は自身の意思に反して退場を強いられたのではないか、という。

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▲党大会の閉会式前に退席する胡錦濤前総書記(2022年10月22日、オーストリア国営放送のスクリーンショットから)

 党大会でのハプニングについて、3つの憶測が流れている。仝婉單鵑痢嵒袖だ癲廖↓⊇近平の「権力誇示説」、8婉單鵑痢崋乃鐇癲廚澄

 そこで人の表情、眼球、口周辺の筋肉の動きからその精神状況を読み取る「マイクロ・エクスプレッション」(微表情)の専門家、精神行動分析学者カル・ライトマン(ティム・ロス主演)に登場してもらって、人民大会の演壇上で演じられた胡錦涛氏の行動、習近平氏らの反応などを分析してもらう(ライトマンは米Foxの心理サスペンス番組「Lie to me」(邦題「ライ・トゥ・ミー」嘘は真実を語る)の主人公)。

(人間は嘘を言う時必ずある共通の動き、表情を見せる。人間が政治的理由から嘘を言うとき、そこには必ず共通する動きがあるから、それを探し出すことで、その時の心理状況、発言内容の真偽を見分けていく。抑制されてきた本当の感情、怒り、悲しみ、幸福感などが瞬間だが視覚的に現れてくるから、その微表情を分析することで、事件の謎を解いていく)

 以下は、当方の憶測に基づいたナラティブ(物語)だ。

 中国語のリップリーディング(読唇術)が出来たならば、栗戦書・全国人民代表大会(全人代)常務委員長が胡錦涛氏に退席を求めたシーン、胡氏に係員が語った内容、胡錦涛前総書記と習近平総書記との小会話、そして今回、最高指導部から退く李克強首相の表情、最後に閉会式前のハプニングを目撃した約2300人の党員代表たちの反応等々、事件の核心に迫ることが出来る材料は結構あるから、中国共産党党大会の出来事をひょっとしたら解読できるかもしれない。

 仝婉單鵑痢嵒袖だ癲廖3こ庵羚颯瓮妊ア「大紀元」によると、胡錦涛は長い間パーキンソン病を患ってきた。だから、浙江省麗水市党委書記を務める息子(胡海峰)は父親が党大会に参席することを心配していた。息子たちの懸念が当たり、閉会式前、胡氏は気分が悪くなった。息子から何かあったら即退席させてほしいと要請されていた党大会の係員が素早く前総書記の席に行って、本人が抵抗したとしても退席させたという。

 胡氏「俺は大丈夫だと息子に言ってくれよ」
 係員「総書記、分かっておりますが、ここは退席されたほうがよろしいかと思います」

 数秒間、胡氏と係員の間で言い争い。傍にいた栗戦書は「早く退席させたほうがいいよ」と口添える。

 退席することになった胡錦涛は自分のポストを継承した習近平に「君、何か言ってくれないか」と頼むと、習近平「お大事にしてください」と答え、それ以上何も言わない。胡氏は諦めて退席する前に、最高指導部(常務委員)から外された李克強首相の肩をたたき、同情の意を伝える。同首相は少し笑顔を見せ、頷くだけだ。

 ⊇近平の「権力誇示説」。党大会で3期の総書記ポストに就任し、長期政権の基盤を築きたい習近平は党内に自分の独裁体制に強く反発する党幹部たちがいることを知っている。実際、習近平落とし、暗殺未遂事件が過去、何度か発生した。党大会前の13日、北京市海淀区の高架橋で「習近平を追放せよ」といった横断幕が掲げられたばかりだ。そこで習近平は自身が党を完全に掌握していることをアピールするために、外国メディアのカメラの前で演劇をした。すなわち、全党員代表が拍手している時、胡錦涛がテーブルの上の書類に目を通し、拍手を忘れた姿を目撃した習近平は係員に退席させるように命令。それを受け、係員が胡錦涛を退席させようとした。胡錦涛は習近平に「これは何の目的か」と怒ると、習近平は「黙って出て行け」と一言。胡氏は李克強に「君も気を付けたほうがいいよ」と言い残して舞台から去っていった。習近平はこのシーンによって「如何なる者も自分に抵抗すればこのようになる」ということを党、世界に向かってアピールしたわけだ。習近平の高等戦略だ。

 8婉單鵑痢崋乃鐇癲廖E淆膕饂に68歳以上なら引退するとの不文律がある。69歳の習近平がこれを破って続投を決め独裁者になってきたことに対し、党内では強い反発があることを知っていた胡氏は党大会で芝居をした。公に批判すれば、自分ばかりか息子たちの将来も厳しくなるからできない。そこで世界が注目する党大会、そして習近平が正式に3期目に就任する前に一芝居した。自身が病気だということは知られていたから、突然、退席する。しかし、外的には嫌々退席させられたと党員たちが受けとれるように係員に少し抵抗する。檜舞台の党大会閉会式の党規約改正案などの採決前のハプニングを快く思わない習近平の横を行くとき、「申し訳ないが退席するよ」と声をかけ、習近平から追放された李克強の肩をたたきながら、「君も大変だな」と同情の意をそれとなく伝える。

 胡氏は、この芝居を中継したメディア関係者たちがこのハプニングに驚くとともに、さっそく憶測を開始するだろうと考えた。習近平の独裁体制、それに反対する党員たちがいるのではないか、といった憶測が大量に流れるだろうと予想したわけだ。習近平は自身の自負心を傷つけられる。反習近平派は胡錦涛の一芝居ハプニングを喜ぶ、というわけだ。

(なお、中国共産党第20期中央委員会第1回総会が23日、北京で開かれ、最高指導部メンバーの政治局常務委員を選出し、習近平総書記の3期目続投が正式決定した)

 以上、3シナリオだ。読者の皆さんはどのシナリオに最も納得されるだろうか。ライトマンがどのような診断を下すか、当方はワクワクしながら待っているところだ。

イランはクレプトクラシー(盗賊政治)

 22歳のクルド系女性マーサー・アミニさんが9月13日、宗教警察官に頭のスカーフから髪がはみだしているとしてイスラム教の服装規則違反で逮捕され、警察署に連行され、尋問中に突然意識を失い病院に運ばれたが、同16日に死亡が確認された事件はイラン全土で女性の抗議デモへと発展させた。今月に入り、イラン北西部アルダビルで15歳の少女アスラ・パナヒさんが他の生徒と共に抗議デモでスローガンを叫んだ時、私服姿の女性警官に暴力を振るわれ、学校に戻って再び殴打され、搬送先の病院で死亡するという事件が発生し、抗議デモに参加する国民を一層、激怒させたばかりだ。

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▲イラン最高指導者アリ・ハメネイ師(イランのIRNA国営通信から)

 また、BBCが報じたところによると、イランの有名なクライマー、エルナス・レカビさん(33)が韓国で開催されたアジア競技大会でヘッドスカーフを着用せずに出場したことを受け、イランに帰国後、テヘランで自宅軟禁されている可能性があるという。

 レカビさんは韓国から19日、テヘラン空港に戻った際、多くの人々から出迎えられたが、その後、一時期行方が不明となっていた。レカビさんは公開されたインタビューの中で、スカーフを着用せずに競技をしたのは「うかつだった」と謝罪したが、それはイラン当局から謝罪を強要されたためと受け取られている。

 アミ二事件、15歳の少女の死、そしてレカビさんの問題はいずれも女性がイスラム教の服装規定に反する、ないしはそれに抗議した理由から生じたものだが、イランで現在、展開されている抗議デモは女性のスカーフ問題、女性の人権といった範囲を超え、イスラム革命後から43年続くイスラム聖職者支配体制への抗議でもあり、国民経済の停滞への不満の爆発によるものだ。すなわち、抗議デモの焦点は「女性の人権」問題から「体制批判」へと移行してきたわけだ。

 イランの状況は何年にもわたって不安定であり、特に経済危機が現在の抗議行動の「触媒」となっている面は否定できない。イランの経済専門家マフディ・ゴー氏はオーストリア国営放送とのインタビューの中で、「国民はますます貧しくなる一方、イスラム政権トップの腐敗と汚職、縁故主義が広がっている。インフレ率は現在50%を超え、国民の約3分の1が絶望的な貧困の中で生活している。通貨リアルは価値を失い続け、多くの人が失業している」という。その一方、イラン国内でミリオネアの数が増加して、昨年米国の経済雑誌「フォーブス」が報じたところによると、その数は25万人にもなるという。すなわち、イラン社会で貧富の格差が見られだしたわけだ。ちなみに、イランは2021年、国際非政府組織「トランスペアレンシーインタナショナル」の腐敗認識指数(CPI)は180カ国中、150位にランクされた。

 イランの企業は80%が国有企業だ。経済の大部分は、政府、宗教団体、軍事コングロマリット(複合企業)によって支配されており、純粋な民間企業はほとんど存在しない。

 最高指導者ハメネイ師が管理するセタードは数十億ドル規模のコングロマリットを率いて中心的な役割を果たしている。セタードまたはイマームの執行本部 (EIKO) と呼ばれるハメネイ師の経済帝国は、宗教的少数派、シーア派、実業家、追放されたイラン人などイラン市民の財産を組織的に没収している。現在では、非常に重要な石油産業から電気通信、金融、医療に至るまで、経済の他の多くの分野をその管理下に置いている。一方、ハメネイ師の支持を得て 昨年に大統領に選出された強硬派のライシ大統領はイラン最大の土地所有者の経済財団を主導している。他の全ての財団と同様に非課税だ、といった具合だ。

 看過できない勢力は革命防衛隊(IRG)だ。ハメネイ最高司令官に報告するパスダラン(革命防衛隊)は、この国のもう1つの経済勢力であり、その影響力は過小評価できない。マフムード・アフマディネジャド前大統領の下で著しく成長した。ライシ大統領の下で、さらに多くのプロジェクトが彼らの所管に入ってきている。革命防衛隊は石油とガス産業、建設と銀行だけでなく、農業と重工業にも組み込んでいるコングロマリットを所有している。イランの経済システムは、政府、軍、財団の支配下に完全に置かれているわけだ。

 クレプトクラシー(英Kleptocracy)という言葉がある。官僚や政治家などの支配階級が民の資金を横領して個人の富と権力を増やす、腐敗した政治体制を意味し、支配者が被支配者の財産と収入を恣意的に管理し、被支配者を犠牲にして自分自身またはそのクライアントを豊かにする盗賊政治だ。イランのイスラム聖職者支配体制はクレプトクラシーと呼ばれている。

 なお、欧州連合(EU)理事会は17日、イランでの重大な人権侵害に関与し、暴力的な弾圧の直接的な責任を負う4団体と個人11人に対する制限措置を採択した。その中には、風紀警察、政治当局、イラン治安部隊の責任者、弾圧が最も激しかった地域の警察署長が含まれる。EUは20日には、イラン製ドローン(無人機)をロシアに提供したイランの3個人と1団体に追加制裁を科している。

ハンブルク港湾に触手を伸ばす中国

 世界最大の港湾運営会社であり海運会社の 1 つ Cosco Schipping (コスコ・シッピング)は2021年9月、 ドイツのハンブルク湾のハンバーガー・コンテナ・ターミナル・トレロート (CTT) の35%の株式を取得した。そのことが報道されると、「中国共産党政権の管理下にある国営企業がドイツの有数の港湾のコンテナターミナルを買収すれば、ドイツの安全を損なう危険が出てくる」といった懸念の声が聞かれる。

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▲ハンブルク湾のハンバーガー コンテナ ターミナル トレロート (CTT)の全景(HHLACTT公式サイトから)

 独メディアの調査によると、複数の省庁は中国の買収に赤信号を灯したが、ショルツ 首相(SPD)はこの取引を成立させたい意向だ。ちなみに、ショルツ首相は2011年〜18年の間ハンブルク市長だった。

 独放送局NDRとWDRが20日発表した調査によると、この取引に反対した省庁は、経済、内務省、国防、運輸、財務の各省庁と外務省の6省だ。外務省は「中国からの影響が大きすぎる」と警告した。

 それに対し、コスコとの商談の詳細な状況を知っているショルツ首相は、「最小のコンテナターミナルの少数株であり、国益のリスクとなることはない」と懸念を払しょくしてきた。ショルツ首相がハンブルク市長だった時、ハンブルクの港湾会社はコスコとの連携を深めていった。連邦政府がコスコとの商談を拒否しない限り、商談は自動的に10月に発効する。ショルツ首相は11月初めには中国を訪問する計画だ。

 独メディアによると、コスコはターミナルで金銭的な利害関係を取得するだけでなく、意思決定への発言権をも有しているという。中国はハンブルク港における最も重要な貿易相手国だ。世界最大のコンテナ船会社の1つを運営するコスコグループは、何十年もの間CTTに船舶を係留してきた。コスコは貨物をハンブルクに集中させたい計画だ。このターミナルは、これまで市の過半数の株式は HHLA (Hamburger Hafen und Logistik AG) が所有してきた。

 コスコは近年、ヨーロッパの多くの港に関心を寄せてきた。同社は、ピレウス (ギリシャ)、ゼーブルッヘ (オランダ)、ロッテルダム (オランダ)、アントワープ (ベルギー)、バレンシア (スペイン)などの戦略的および経済的に重要なヨーロッパの港の株式を保有している。

 300万TEU(20フィートで換算したコンテナ個数を表す単位)の輸送能力を持つコスコとその子会社はヨーロッパの14の港に既に関与しており、ハンブルクは、ロッテルダムからビルバオ、イタリアのヴァドに至る一連のコスコのコミットメントの最後の投資だ。

 ドイツの中国研究機関MERICSは、「コスコ社の拡大は北京の利益に沿ったものであり、国家資金によって資金提供されている。海洋貿易ネットワークの開発は、世界貿易ネットワークである一帯一路構想に関する中国の計画の中心的な柱だ」と指摘している。

 ヨーロッパでは、中国がヨーロッパの海上貿易を支配しすぎて、安全保障上のリスクになるのではないかという懸念がある。湾は重要なインフラストラクチャだからだ。NDR/WDRのレポートによると、欧州委員会もハンブルク市と中国企業との取引に反対してきた。

 ショルツ連立政権では連立パートナー「緑の党」のハベック経済相(兼副首相)は、「重要なインフラに影響を与える機会を中国に与えるべきではない」と警告し、「私たちは過去の過ちを繰り返してはならない」と中国依存体制に強い警戒を示している。同じ連立与党の自由民主党(FDP)のブッシュマン法相は20日、「ドイツのいかなる重要インフラも中国政府の管理下に置かれるべきではない。それは独立の問題だ」と述べている。一方、野党第一党の「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)議会グループのシュパーン副会長も、「パンデミックとエネルギー危機から学んだ教訓の1つは、中国からもっと独立しなければならないということだ」と述べ、コスコの参入に反対している、といった具合だ。

 それに対して、ハンブルク市のショルツ市長の後継者、ツェンチャー市長 (SPD) は、CTTへのコスコの参加を引き続き支持している。曰く「中国の参加により、コンテナターミナルの持続可能な計画が約束される。コスコが共同所有者である場合、ドイツ北部の港がハブ、つまり優先積み替え拠点になる」というのだ。要するに、中国の国営企業の参入の見返りとして、より多くのコンテナが中国からハンブルク港に集まるというわけだ。

 ハンブルグで取り扱われるコンテナのほぼ3分の1が中国製または中国市場向けであり、年間約120万個のコンテナが集まる。コスコへの参入が失敗した場合、中国人がロッテルダムなど、他の港に切り替える懸念が出てくるわけだ。

 以上、ドイツ通信(DPA)とオーストリア通信の関連記事を参考にした。

 ショルツ首相がメルケル前首相のように対中国政策で融和的な路線を歩み出さないことを願うだけだ。
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