ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2022年07月

欺瞞に満ちた「北京発共同通信」電

 北京発共同通信の記事(7月29日)を読んで驚いた。記事は「中国、旧統一教会『邪教』、浸透を防いだと宗教政策正当化」という見出しがついている。共同によると、中国共産党政権は安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)への批判を強め、非合法の邪教、カルトと指摘する一方、「わが国の宗教政策が正しかった」と豪語しているという。

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▲宗教弾圧を強化する中国の習近平国家主席(2022年3月7日、中国人民共和国国務院公式サイトから、写真は新華社)

 それだけではない。公安省系サイト「中国反邪教ネット」は19日に公表した動画の中で元統一教会創設者文鮮明師を中傷誹謗し、「旧統一教会と日米政治家との接点は多い」と指摘した、と報じているのだ。

 この北京発共同通信電を読んで中国共産党政権の欺瞞に改めて驚くだけではなく、その記事を報じた共同通信の報道姿勢にも正直言って首を傾げざるを得なかった。以下、少し説明する。

 中国共産党政権下で宗教の弾圧は進行中だ。現地から流れてくる情報によると、キリスト教会の建物はブルドーザーで崩壊され、新疆ウイグル自治区ではイスラム教徒に中国共産党の理論、文化の同化が強要され、共産党の方針に従わないキリスト信者やイスラム教徒は拘束される一方、「神」とか「イエス」といった宗教用語を学校教科書から追放するなど、弾圧は徹底している(中国共産党政権が宗教弾圧する理由」2019年7月9日参考)。

 習近平時代になって、「宗教の中国化」が進行中だ。「宗教の中国化」とは、宗教を完全に撲滅することは難しいと判断し、宗教を中国共産党の指導下に入れ、中国化すること(同化政策)が狙いだ。その実例は新疆ウイグル自治区(イスラム教)で実行中だ。100万人以上のイスラム教徒が強制収容所に送られ、そこで同化教育を受けている。キリスト教会に対しては官製聖職者組織「愛国協会」を通じて、キリスト教会の中国化を進めている、といった具合だ。

 習近平主席は、「共産党員は不屈のマルクス主義無神論者でなければならない。外部からの影響を退けなければならない」と強調する一方、「宗教者は共産党政権の指令に忠実であるべきだ」と警告している。具体的には、キリスト教、イスラム教など世界宗教に所属する信者たちには「同化政策による中国化」を進める一方、法輪功のように中国発の伝統的な心身向上・倫理運動に対しては身体的な迫害、拷問を駆使して団体・運動の解体を進めるなど、硬軟織り交ぜた政策を実施している。

 習近平主席が宗教弾圧を強化する背景には、|羚饒甘擇嚢駝韻隆屬暴ゞ気覚醒してきたこと、▲僖鵑鰺燭┐觜駝鰻从兩策が世界第2の経済大国まで発展し、一応成果を上げたことだ。ここで「パン」とは、人間の基本的生存に必要なものの総称を意味する。

 中国共産党は無神論世界を標榜し、唯物思想を土台とした共産主義思想を政治信条としている。その共産党政府が最初に語ることは全ての人民にパンを与えることだ。中国共産党は旧ソ連型「計画経済」から「国家管理資本主義経済システム」を導入することで短期間で世界的経済大国となった。

 ここまでは成果があったが、「人はパンのみに生きる」存在ではない。もう少し厳密にいえば、パンが保証された後には、パン以外の何かを求め出す。欧米社会のデカダンな享楽生活に走る国民が出てくる一方、宗教を含む精神的なものに人生の糧を求める人々が生まれてきた(「『宗教の中国化推進5カ年計画』とは」2019年3月22日参考)。 

 中国共産党政権は国家統治に役立つ範囲では宗教を容認するが、国の脅威となれば即弾圧、抹殺してきた。その実例が元統一教会だろう。元統一教会の宣教師が中国に入ると、まず国民の教育に力を注いだが、教会が祝福など宗教的イベントを開催していくようになると、中国当局は脅威を感じ始める。10人以上の集会を禁止するなど、当局の監視、弾圧が強まっていった。また、統一教会が法輪功を支援したという情報が流れると、中国側の弾圧は一層強化され、中国共産党は1997年、統一教会を邪教と認定した。その後、統一教会の中国の宣教はほぼ完全に中断した。信者の中には投獄された者もいる。安倍晋三元首相暗殺事件を契機に元統一教会バッシングが行われている日本の状況を見て、中国共産党は、「わが国の統一教会対策は正しかった」とその宗教弾圧を正当化しているわけだ。明らかに欺瞞だ。

 次に、中国側の今回の発表を報じた北京発共同通信の記事だ。共同通信特派員に聞きたい。なぜ中国共産党政権下で行われてきた残虐な宗教弾圧にこれまで沈黙しながら、中国側の統一教会批判に対しては即反応して報じたのか、どうして法輪功メンバーに対する中国側の臓器摘出問題に長い間沈黙してきたのか。法輪功メンバーへの弾圧は20年以上続いてきているのだ。

 もちろん、それなりの理由は考えられる。日本では左派系メディアを中心に元統一教会バッシングが進行中だ。共同通信は中国側の元統一教会批判の発表にニュースバリューがあると判断したのだろう。

 忘れないでほしい。中国国内では日本では考えられないような宗教弾圧が行われている。北京駐在の共同通信記者ならばそれらのことを知っているはずだ。中国治安関係者の目を恐れて自己検閲し、もっぱら中国側が発表したストーリーを垂れ流す。これが今回北京発共同通信電から当方が感じた印象だ。厳密にいえば、北京発共同通信電は中国の宗教弾圧を容認したことにもなるのだ。

「政治」と「宗教」の関係について

 安倍晋三元首相の暗殺事件を契機に、事件の背景に自民党議員と「特定の宗教」との関係があったとして「政治」と「宗教」の関係について再び問題となってきた。「再び」と書いたのは、このテーマは日本だけではなく、キリスト教文化圏の欧州でも程度の差こそあれ話題となってきたからだ。

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▲オーストリアのローマ・カトリック教会のシンボル、シュテファン大聖堂

 安倍元首相暗殺事件の山上徹也容疑者の供述によると、容疑者の母親が宗教団体に高額献金し、その結果、家が破産したとして、容疑者はその宗教団体を恨み、団体と関係があると判断した安倍元首相の銃殺を計画したという。この供述が報じられると、政治家と宗教団体との関係にスポットライトが当てられ、「政治」と「宗教」の分離(政教分離)を唱える声が高まってきたわけだ。特に「憲法9条の死守」を叫ぶ左派的メディア、論客、知識人たちから聞かれだした。

 宗教団体と過去関係があった自民党議員たちはメディアからの激しい追及を恐れ、「私は同団体とは関係がありません」「祝電を送っただけだ」と次々と弁明に追われた。靖国神社参拝では記者たちから「私人ですか、それとも公人の立場から参拝されたのですか」といった質問が首相や閣僚たちに向かって飛び出し、その返答に苦慮する政治家の姿は慣例の行事となった。靖国神社への参拝は、多くの戦没者に敬意と感謝を表するものであり、「政治」と「宗教」の分離原則には違反していないが、左派系メディアからは常に戦前の軍事主義への回帰といった枠組みから報じられてきた。

 左派系メディアが強調する「政治と宗教」の分離はフランスから始まった思想だ。「政教分離」(ライシテ)は宗教への国家の中立性、世俗性、政教分離などを内包した概念だ。フランスは1905年以来、ライシテを標榜し、時間の経過につれて、神を侮辱したとしても批判を受けたり、処罰されることがないと理解されてきた。マクロン仏大統領は2020年9月1日、訪問先のレバノンで「フランスには神を侮辱する自由がある」と主張して物議を醸したことがあった。

 そのカトリック教国フランスで2021年10月5日、1950年から2020年の70年間、少なくとも3000人の聖職者、神父、修道院関係者が約21万6000人の未成年者への性的虐待を行っていたこと、教会関連内の施設での性犯罪件数を加えると、被害者総数は約33万人に上るという報告書が発表された時、ローマ・カトリック教会の総本山、バチカン教皇庁だけではなく、教会外の一般の人々にも大きな衝撃を与えた。

 聖職者の未成年者への性的虐待事件が多発し、教会への信頼が著しく傷つけられる一方、性犯罪を犯した聖職者を「告白の守秘義務」という名目のもとで教会上層部が隠蔽してきた実態が明らかになり、聖職者の告白の守秘義務を撤回すべきだという声が高まった。

 エリック・ド・ムーラン=ビューフォート大司教は2021年10月6日、ツイッターで、「教会の告白の守秘義務はフランス共和国の法よりも上位に位置する」と述べた。その内容が報じられると、聖職者の性犯罪の犠牲者ばかりか、各方面の有識者からもブーイングが起きた(「聖職者の性犯罪と『告白の守秘義務』」2021年10月18日参考)。

 しかし、聖職者の性犯罪問題をきっかけに、国は宗教への中立性を放棄し、教会に「この世の法」を遵守すべきだと主張、教会側は教会法の修正を強いられ、「この世の法」に歩み寄りを示してきた。そのプロセスの中でライシテの名目で認知されてきた「神を冒涜したり、侮辱する権利」への再考もテーマとなっていったわけだ(「人には『冒涜する自由』があるか」2020年9月5日参考)。

 また、欧州の盟主ドイツでも野党第一党「キリスト教民主同盟」(CDU)ではメルケル政権時代から見られた保守派有権者のCDU離れを阻止するために、党結成当時のキリスト教精神に回帰すべきだという声が聞かれてきた。社会の世俗化の中で失われてきた「キリスト教」(C)への回帰だ。換言すれば、キリスト教価値観を日々の政治活動に積極的に活用すべきだというわけだ。「政治」と「宗教」の分離とは一見、逆方向だ(「独CDU/CSUから『C』が抜ける日」2021年9月29日参考)。

 そして「宗教の百貨店」と呼ばれる日本では左派系メディアを中心に厳格な「政治と宗教」の分離を求める声が高まったきたわけだ。その直接の契機は、先述したように、安倍元首相暗殺事件で浮かび上がった自民党議員と特定宗教団体との関係だ。日本では政治家が選挙活動で宗教団体から無償の奉仕活動員の助けを受け、宗教団体は政治家にその活動の法的保護を受けるといった一種の癒着関係が生まれてくるとして、政教分離は不可欠だ、という主張だ。

 当方は「政治」と「宗教」は本来分けることができない人間の基本的な活動領域と考えている。「政治なき宗教」も「宗教なき政治」も考えられない。人間には心と体があるように、政治と宗教が一体化しない限り、理想的な社会は建設できない。両者は相互補助関係だ。人間は限りなく、政治的であり、同時に宗教的な存在ではないか。宗教的背景の皆無な文化イベントは少ない。

 政教分離は本来、政治の宗教への干渉を防ぎ、「宗教の自由」を守ることが出発点だった。日本の政教分離論争は与野党の争いの道具に過ぎず、その狙いが「宗教の自由」をこれまで以上に制限する方向に向けられていることに一抹の不安を感じる。

「統一教会」批判を煽る2つの勢力

 安倍晋三元首相銃殺事件の山上徹也容疑者(41)の母親が宗教法人「世界平和統一家庭連合」(家庭連合)、元統一教会の信者であり、高額献金をして家庭を破綻させたとして、息子の山上容疑者は元統一教会への恨みから、同教会と関係があると判断して安倍元首相射殺という大事件を起こしたが、日本のメディアでは、山上容疑者への非難より、本来は被害者の立場である元統一教会が激しいバッシングを受けている。元統一教会の悪行を糾弾する山上容疑者を英雄視する声すら聞かれるのだ。

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▲共産主義の誤謬を指摘した文鮮明師(「世界平和統一家庭連合」(家庭連合)公式サイトから)

 事件は悲劇であり、日本国民は戦後最長政権を主導し、「戦後レジームからの脱却」をモットーに歩んできた貴重な政治家を失ってしまったことは悔しいことだが、統一教会批判に走る日本のメディアを見ていると、別の危険性すら感じるのだ。以下、統一教会がこれまでなぜ嫌われてきたのかを検証しながら、山上容疑者の家庭破綻問題で見えなくなった事件の核心について、もう少し冷静に考えてみたい。

 統一教会を心底から嫌悪する2つの勢力が存在する。まず、日本のメディアの統一教会批判では見逃されているが、統一教会はキリスト教の本流から出てきた宗教だ。そしてキリスト教歴史を振り返れば、新しいグループが登場すれば、必ずと言っていいほど激しい批判、迫害を受ける。誰からか、といえば、既成のキリスト教会からだ。

 LGBT問題では性的少数派の権利擁護が叫ばれるが、宗教界の少数派は既成の宗教集団から迫害されるケースが多い。初期キリスト教会時代、イエスの教えを最も激しく批判したのはイエスの教えの母体だったユダヤ教を信じる人々だった。キリスト教会では新しいグループが登場し、多くの信者を獲得していくと、「あれは異教だ」、「セクトだ」といって罵倒する。例えば、ドイツのカトリック教会の聖職者はLGBTを社会の少数派としてその権利を擁護する一方、自身の教区に侵入してきた新しい宗教少数派に対しては糾弾する。彼らの多くはそれが「神の御心だ」と信じているから始末に負えない。

 統一教会の神学は既成教会にとって無視できないインパクトを有している。イエスの十字架救済をその信仰の中核に置くキリスト教会にとって、イエスの十字架の道はプランAではなく、やむ得ず選ばざるを得なかったプランBであった、と主張する統一教会は彼らにとって立派な異端だ。統一神学は、「イエスはメシアとして生きて人類救済を実現したかったが、ユダヤ民族の迫害などがあって十字架の道を行かざるを得なくなった」と説くのだ。

 33歳で亡くなったイエスの生涯を統一教会ほど厳密に聖書に基づいて解釈しているキリスト教会はない。それゆえに、イエスの十字架救済を唱える既成教会からは激しく糾弾され、「あれは邪教だ」としてセクトと呼ばれる理由ともなっているわけだ。カトリック教会では聖人と称されている洗礼ヨハネは統一教会ではイエスを十字架の道に行かざるを得なくした張本人の一人と解釈されている。洗礼ヨハネを崇拝しているフランシスコ教皇が聞けば、驚くより、怒り出すかもしれない。

 当方はローマ・カトリック教会総本山バチカン教皇庁の高位聖職者と会見し、統一教会について聞いたことがある。同聖職者は、「文鮮明師が世界基督教統一神霊協会(当時)という呼称から『基督教』を外すならば、われわれは文師と話し合う用意がある」と答えた。「基督教」という名称が世界最大のキリスト教会を自負するバチカンにとって容認できない、それもキリスト教会の統一を看板とする宗教となれば、容認できないわけだ。統一教会の創設者文鮮明師が1992年、冷戦終了直後、自身が再臨主だと宣言したことから、カトリック教会や他のキリスト教会は文鮮明師を偽メシアとして警戒しだしたわけだ。

 ちなみに、統一思想は創造原理、堕落論、復帰原理の3本の柱を有し、統一思想を構築している、その内容は旧約聖書と新約聖書の全66巻を土台としたキリスト教神学をバックボーンとしている。

 統一教会が嫌われるもう一つの理由は共産主義思想を無神論的世界観として徹底的に論破してきたからだ。統一教会の関連団体「勝共連合」は統一思想を現実の世界情勢に展開し、共産主義世界がカイン思想から派生した、神への恨みの思想であり、神の存在を否定した無神論的唯物思想だ、と指摘している。それゆえに、マルクス・レーニン主義を標榜する左派思想家や共産党関係者は統一教会を徹底的に嫌う。朝日新聞など左派系メディアは今回の安倍元首相銃撃暗殺事件でも、事件の真相究明以上に、統一教会を叩く絶好のチャンスとしてバッシングを始めているわけだ。

 参考までに、統一教会の共産主義批判は日本以外では大きな障害とはならない。特に、冷戦時代、民主主義陣営と共産主義陣営に分裂した欧州では共産主義が如何に非人道的な世界観かを肌で感じてきたからだ。例えば、オーストリアでは終戦後から現在まで連邦レベルで共産党議員が選挙で選出されたことはない。その意味で、統一教会の共産主義批判は欧州では問題にはならない。書斎でお茶を飲みながら空想的社会主義の共産主義を夢見ている日本の左翼思想家、共産党員のような人間には、勝共思想は危険な思想と受け取られるわけだ。

 以上、統一教会が嫌われる大きな理由は、‥一思想が既成のキリスト教神学とは異なること、そして共産主義世界観への批判の2点だ。その結果、統一教会は既成のキリスト教会と共産主義的思想に傾斜する左派系政治家、教育界、法曹界、メディア関係者から常に批判を受ける立場となったわけだ。

 ただし、日本の左派系メディアが統一教会を批判する場合、上記の2点はテーマにもならない。争点は、もっぱら今回の山上容疑者が語った高額献金、霊感商法などの問題だけに絞られる。そしてメディアは「統一教会は反社会的な宗教」と糾弾する。この批判に対して統一教会側は謙虚に耳を傾け、改善しなければならないことは間違いない。ただ、どのような宗教団体も程度の差こそあれ、この種の問題を抱えている。信者の献金が不正な不動産投資に利用されていたとか、ローマ教皇への直接の献金(ペテロ献金)の使用が不明確といった事件は後が絶えない。日本のメディアは既成教会のこの種の事件をほとんど報道しないから、関係者以外は知らない。

 一方、壺を高額で売ったとして、統一教会の一部の信者たちがメディアで大きく報じられる。売り手と買い手の原則から、買い手がその壺に高い付加価値を感じ、壺を買ったとすれば、普通の取引だ。献金でも同じだろう。原則として献金する側の判断によるからだ(そこに強要される場合があれば問題だ)。この問題はメディアが報じやすいテーマだから、左派系メディアは統一教会信者が絡んでくる場合、大きく報道してきた。その結果、統一教会は詐欺集団といったイメージを読者に与えることになったわけだ。

 当方はカトリック教国のオーストリアに住んでいることもあって、カトリック教会の聖職者の未成年者への性的虐待問題をよく耳にする。カトリック教会の聖職者の未成年者への性的虐待件数は数万件になる。しかし、メディアは世界に13億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会を性犯罪の組織犯罪グループとは呼ばない。性犯罪の数だけをみれば、ローマ・カトリック教会は性犯罪グループであり、それを隠ぺいしてきた教会は組織犯罪集団と批判されても本来弁明できないはずだ。

 どの犯罪も反社会的であり、許されないが、未成年者への性的虐待行為は不法な商売や詐欺行為より深刻な問題だ。にもかかわらず、日本のメディアはローマ・カトリック教会の性犯罪問題を無視し、統一教会の高額献金、霊感商法を大きく報じる。今回の銃殺事件を統一教会バッシングの絶好のチャンスと受け取り、自民党と統一教会の癒着に焦点を合わせ反自民党報道をするメディアには明らかに恣意的な計算が働いている。

 看過できない点は、統一教会が韓国発の新興宗教だという事実だろう。韓国社会には歴史的に反日思想が根底にあるから、そこから生まれた宗教にも反日思想が根強い面は否定できない。一方、日本側には嫌韓感情がある。そこから生じる問題は大きいが、テーマが広がり過ぎるのでここでは扱わない。

 繰り返すが、安倍元首相暗殺事件は許されない犯罪だ。この種の犯罪再発防止のために山上容疑者の犯行動機の全容解明が急務であることはいうまでもない。ただ、元統一教会を批判するのならば、先述した「統一教会が嫌われる理由」をテーマに、統一教会の世界観を堂々と論破すべきだ。具体的には、33歳のイエスの生涯は本当に十字架にかかることが目的だったのか、十字架を信じれば、本当に救済されるのか、既成のキリスト教会は答えるべきだ。また、共産主義思想は正しいのか、共産主義国では過去、数千万人の国民が殺されてきた。その共産主義思想の誤謬を指摘した勝共思想は間違いだったのか、等々の問題について明確に答えるべきだろう。その後、統一教会が危険な集団か否かを判断したとしても遅すぎることはないはずだ。現在、日本のメディアにみられる統一教会バッシング報道には一種の魔女狩りのような雰囲気が漂ってきている。

教皇のカナダ訪問「悔い改めの巡礼」

 フランシスコ教皇は24日、6日間の日程でカナダ訪問を開始し、同日、最初の訪問地エドモントン国際空港に到着、メアリー・サイモン総督とジャスティン・トルドー首相、先住民の代表らに迎えられた。フランシスコ教皇によると、「悔い改めの巡礼」の始まりだ。

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▲カナダ中西部アルバータ州の エドモントンで最高年長者の先住民の歓迎を受けるフランシスコ教皇(2022年7月24日、バチカンニュースから)

 教皇は25日、カナダでの最初のスピーチをマスクワシスで行っている。「親愛なる兄弟姉妹」という呼びかけで始まるスピーチでは、「先住民」、メティス、イヌイットの先住民にカトリック教会関係者が過去行った蛮行に許しを求めている。スピーチの中で、「私はあなたに会うのを待っていました。この悲しい場所から、私がやろうとしていること、つまり、悔い改めの巡礼を始めたいと思います。私はあなたの故郷に来て、私は悲しみに満ちていることをあなた方に伝え、神に許し、癒し、和解を求め、あなたとあなたのために祈ります」と述べている。

 具体的には、カナダの先住民への厳格な同化政策、先住民の子供たちを親から離し、教会が運営する寄宿舎に送り、親を恋い慕う子供たちを殴打し、時には性的虐待を繰り返してきた過去に対し、フランシスコ教皇は、「子供たちの記憶は私たちを悲しみに満たし、苦痛と憤慨、恥を引き起こす。子供たちが寄宿舎で耐えなければならなかった苦しみを思い起こすだけで悲しみに満ちる」と表現している。同時に、「私たちの今日の出会いは過去の傷を開くことにもなり、私たち双方にとって困難さを感じることになるかもしれない」と率直に述べている。

 最初のヨーロッパ人入植者がカナダに到着すると、先住民を強制的に追放する一方、子供たちを寄宿学校を通じて同化していった。先住民の言語、文化は無視され、軽蔑されていった。寄宿学校システムによって多くの先住民の子供たちは幼い時から親から引き離され、肉体的、言語的、心理的、精神的に虐待され、トラウマとなっていったケースが多い。先住民の親と子、祖父母と孫の関係に消えない痕跡が残されていったという。

 フランシスコ教皇は、「私たちが今いる場所は、私を苦痛で泣かせます。この地面には、古い記憶の隣に、まだ開いている傷の傷跡があります。私がここにいるのは、許しを求める私の嘆願を新たにし、心の底から私が深く悲しんでいることをあなたに伝えることだからです。ヨーロッパ人の先住民族への植民地政策、同化政策に対し、教会の多くのメンバーや宗教団体は無関心で、当時の政府による文化的破壊と強制同化のプロジェクトに参加していった」と説明している。

 カナダの領土には約140万人の先住民と呼ばれる人々が住んでいる。総人口の約4・3%に当たる。約600の異なる先住民コミュニティがあり、約60から70の異なる先住民言語がある。特筆すべき点は、1999年以来、ヌナブト準州は最初の先住民族が管理する領土であり、カナダで唯一の領土となっていることだ。

 フランシスコ教皇のカナダ司牧訪問での「悔い改めの巡礼」をフォローしていると、長い歴史を誇るキリスト教会では数多くの蛮行が行われてきたことを思い出さざるを得ない。初期キリスト教会の燃えるような信仰の火は時代の経過とともに消滅していき、中世時代に入ると免罪符が発行されるなど、その信仰は形骸化し、そして世俗化していった。そして「宗教と科学」の闘争、「政治と宗教」の分離を通過して今日のキリスト教会が存在しているわけだ。

 ヨハネ・パウロ2世(在位1978年〜2005年)は新ミレニアムの2000年、キリスト教会の十字軍遠征やガリレオ・ガリレイの異端裁判など、キリスト教の過去の蛮行に対して懺悔を表明している。処刑され、火刑された宗教改革者(例ヤン・フス)や科学者(ガリレオ・ガリレイ)の名誉回復が行われてきた。そしてベネディクト16世時代(在位2005年〜2013年)に入ると、聖職者の未成年者への性的虐待が次々と暴露され、同16世が訪問する先々で謝罪を繰り返さざるを得なくなった。オーストラリア訪問では、ベネディクト16世が聖職者によって性的虐待された犠牲者と会合し、涙を流しながらそれを聞き入っているシーンが世界に報じられた。

 フランシスコ教皇の「苦行の巡礼」となったカナダでの先住民への蛮行も教会史の悲しい部分だ。イエス・キリストの無償の愛と犠牲を教える教会だけに、その負の歴史を織りなす一コマ一コマにやりきれなさと悲しみを一層覚えるものだ。

バチェレ氏退官前の最後の戦い

 中国共産党政権がアフリカ・アジアなどの開発途上国に積極的に進出し、経済支援などを通じてその影響力を拡大してきたことは周知の事実だ。その結果、数がものをいう国連内(加盟国193カ国)のトップ選出や議題採決では中国は自国の政策や候補者への支持を欧米諸国より容易に貫徹できる。中国共産党政権の国連での影響力拡大は世界の安全保障上大きなマイナスだ、といった懸念の声がこれまで国連外交を疎んじてきた米国内でもようやく聞かれてきた。

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▲8月末に退官するバチェレ国連人権高等弁務官(OHCHR公式サイトから)

 ところで、ジュネーブの国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のミシェル・バチェレ高等弁務官は6月、「再選に出馬しない」と表明、8月末に退官する意向を明らかにした。同時に、退官前に中国新疆ウイグル自治区の少数民族の人権状況をまとめた報告書を公表するという。中国側はその報告書の公表を阻止するために加盟国に書簡を送っているという。ロイター通信が今月19日、報道した。

 バチェレ高等弁務官は今年5月、6日間の日程で中国新疆ウイグル自治区を現地視察した。中国は国連側の現地調査を最後まで拒否してきたが、バチェレ氏の忍耐強い交渉の末、2005年以来、17年ぶりの人権高等弁務官の訪中となった。ただ、5月28日の訪中後の記者会見で、「国連側は中国の少数民族ウイグル人への弾圧政策の見直しと改善を要求し、同自治区で行方不明の国民に関連する情報を家族側に提示することを求め、国連側と中国側は今後も同問題で会合をすることで一致した」というだけに留まった。ウイグル人強制収容所への視察もかなわなかった。

 当方はこのコラム欄で「中国での現地調査・視察は無意味だ」(2022年5月30日参考)で書いたが、中国側が事前に管理した日程に基づいた現地視察はもともと成果は期待できない。最近では、世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルスの「武漢ウイルス調査団」の調査でも明らかになったばかりだ。中国側の準備した科学者と会合し、国連調査団には親中派の学者が参加していたWHO武漢ウイルス調査団は典型的な例だろう。

 バチェレ氏の訪中結果に対して国際人権団体から厳しい批判の声が続出した。「バチェレ氏は、新疆ウイグル自治区での人道に対する罪やチベットと香港での大規模な弾圧、人権擁護者や弁護士らの強制失踪や恣意的拘束といった国内の人権状況にはまったく言及していない。バチェレ氏の対中姿勢は被害者や人権擁護者との連帯感の著しい欠如、強大な政府の責任を追及する能力あるいは準備の不足をさらけ出した」(スイス公共放送SRFのスイス・インフォ)といった辛辣なコメントまで聞かれた。

 国際人権グループは、「中国新疆ウイグル自治区では少なくとも100万人のウイグル人と他のイスラム教徒が再教育キャンプに収容され、固有の宗教、文化、言語を放棄させられ、強制的な同化政策を受けている」と批判してきた。中国共産党政権は、「強制収容所ではなく、職業訓練所、再教育施設だ」と説明するが、現状はウイグル民族の抹殺が進められている。ポンぺオ前米国務長官は中国の少数民族への同化政策を「ジェノサイド」と呼んでいる。

 バチェレ氏の任期は8月末で終わるが、その前に少数派民族ウイグル人への弾圧状況を集めた「ウイグル人権報告書」を作成し、その公表を準備している。それに対し、在ジュネーブ中国外交官は加盟国にバチェレ氏の人権報告書の公表を阻止すべきだという書簡を送っている。報告書はウイグル人の強制労働を含む、数々の人権弾圧を明確に指摘している。それに対し、中国側は「grave concern」(大きな懸念)と反発し、「人権の政治的利用を許さない。内政干渉だ」とバチェレ氏を激しく批判している。

 バチェレ氏は6月の再選出馬断念を「家庭の事情」と説明したが、再選に出馬した場合、中国側の圧力を回避できなくなるから、ウイグル人の人権弾圧報告書は公表できなくなる可能性が出てくる。当方の推測だが、バチェレ氏は再選出馬を断念する代わりに、報告書を公表しようと考えたのかもしれない。

 中国側は追い込まれたわけだ。そこで6月末から加盟国へ「報告書の公表阻止」を求める書簡を送ったのだろう。中国の書簡にどれだけの支持表明があったかは不明だが、在ジュネーブの中国外交官筋では「100カ国近くが中国側の主張を支持している」という。中国側の攻勢を受け、加盟国の中には「バチェレ氏は権限なしで独自の判断で報告書を作成し、公表することはOHCHRの規約違反になる」といったバチェレ氏批判の声が高まっているという。

 バチェレ氏の最後の報告書となる「ウイグル人弾圧報告書」が実際、公表されるかは現時点では不明だ。バチェレ氏はチリの元大統領(任期2014年〜18年)だ。南米初の女性として国のトップに選出された。ピノチェト軍事独裁政権下で逮捕された父親は獄死し、自身も拘束された体験を持つ。バチェレ氏は今回、退任前、大国・中国の人権弾圧を公表することで有終の美を飾ろうとしているのかもしれない。それとも、成果がなく終わった訪中で失った自身の名誉回復のために戦っているのだろうか。

「ベルリンの少女像」撤去のシナリオ

 このコラム欄で韓国の市民団体「慰安婦詐欺清算連帯」(今年1月結成)のメンバー4人が6月26日、ドイツ・ベルリン市内の旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」の前で、「慰安婦詐欺はもうやめろ」と書かれたプラカードを持って少女像の撤去を求めたことを書いたが、韓国聯合ニュースによると、ドイツ中部ヘッセン州カッセル市のカッセル大学構内に今月8日、新たな少女像が立てられたというニュースが飛び込んだ。韓国の人権団体「韓国協会」が同大学の学生会と連携して準備してきたもので、大学敷地のキャンパス内に建てられた。

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▲林芳正外相とベアボック外相の会合(2022年5月13日、ドイツのG7外相会合で、日本外務省公式サイトから)

 「韓国協会」のメンバーたちは戦時中の旧日本軍の蛮行を批判し、「女性の権利」を蹂躙したとして世界各地で少女像、慰安婦像を設置してきた反日思想に凝り固まった確信犯だ。同じ韓国人でも、史実に基づいて日韓関係の見直しを求める「慰安婦詐欺清算連帯」のメンバーとは歴史観が明らかに異なる。

 ベルリンのミッテ区当局は2020年10月7日、在独日本大使館からの撤去要請を受け、韓国側に同年10月14日までに像の撤去を指示する公文書を送った。理由は、韓国側が少女像にある碑文を区当局側に事前に報告していなかったこと、そのうえ碑文には第2次世界大戦当時、旧日本軍がアジア・太平洋全域で女性たちを性奴隷として強制的に連行していたなどの一方的な歴史観が記されていたことなどを挙げた。ドイツ側は、「わが国に日韓の懸案を持ち込んで公共の安全を脅かすことは許せない」と説明した。

 ここまでは事態は日本側に有利に進んだが、在独の韓国ロビーが即反撃を開始、「少女像」の撤去を拒否し、行政裁判所の決定まで少女像の設置を容認させることに成功した。換言すれば、現地ドイツの人脈を駆使した韓国側のロビー活動の勝利に終わったわけだ。

 ドイツは東西分断の歴史を体験してきたこともあって、南北韓半島の分断国家のひとつ、韓国に対してもシンパが多い。日韓両国間で問題が生じた場合、ドイツは韓国側の主張に理解を示すことが多かった。一方、韓国でも「戦争後の処理問題でドイツは模範的な国だ」と称え、日本側に対して常に「ドイツに見習え」と主張してきた経緯がある。また、韓国の軍事政権下で反体制派活動家がドイツに亡命するケースが多く、ドイツには親北派の韓国反体制派の拠点が構築されている(「韓国人はドイツ人を全く知らない」2014年12月3日参考)。

 韓国側の最強のロビイストはゲアハルト・シュレーダー元独首相だ。同氏についてはこの欄でも何度か紹介した。韓国女性と5回目の結婚をしたシュレーダー氏は訪韓する度に現職首相級の接待を受け、大歓迎されてきた。日韓の歴史問題では韓国側の主張を支持し、日本に対し「歴史の修正は許されない」と批判してきた人物だ。ただ、ロシア軍のウクライナ侵攻以来(2022年2月24日)、戦争犯罪を繰り返すロシアのプーチン大統領の親友シュレーダー氏に対し、ドイツ国内で批判が高まっている。同氏が所属してきた社会民主党からは党籍剥奪の声が強まっているほどだ。(「訪韓した独前首相の『反日』発言」2017年9月14日、「シュレーダー前独首相と韓国女性」2017年10月4日参考)。

 問題は日本側の外交だ。ドイツに強固な人脈を誇る韓国側に反撃するためには、日本側にも強いパートナーが必要だ。幸い、ドイツにはアンナレーナ・ベアボック外相がいる。日本の林芳正外相も彼女と既に数回会談してきたから、コミュニケーションでは問題ないはずだ。

 ベアボック外相は今月22日、ドイチュランドフンク(Dlf)とのインタビューの中で、「米中央情報局(CIA)によると、中国は台湾に侵攻することを決めている。ウクライナ戦争ではロシアのプーチン大統領の言動を誤って予測したが、世界は同じ過ちを繰り返してはならない」と警告を発し、「欧州がロシアの天然ガスなどエネルギーに依存してきたように、世界は中国製の医薬品、抗生物質に依存している。早急に対応を検討すべきだ」と述べている。ベアボック外相は中国の台湾海峡侵攻を現実的な脅威と受け取っているわけだ。

 ドイツで開催されたG7(先進7カ国)外相会合で林外相は5月13日、ベアボック外相と会談し、「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められないとの認識を共有し、インド太平洋における日独間の連携を推進することで一致した」という。

 「ベルリンの少女像」問題で日韓両国がドイツで争っていたならば台湾海峡の危機の際に大きな障害となる。日本側は、「日韓両国の関係改善が急務だ。その意味からも(両国で争っている)ベルリンの少女像を撤去すべきだ」とベアボック外相に強く働きかけるべきだ。

 プーチン大統領との癒着問題が暴露され、批判に晒されているシュレーダー元首相に頼る韓国側に対し、国内で支持率が急上昇中のベアボック外相を後ろ盾にする日本との両国ロビー戦は日本側に圧倒的に有利だ。日本側はこの好機を逃さず若いベアボック外相(41)の支持を獲得し、日独両国の外交で「ベルリンの少女像」の撤去を勝ち取ってほしい。

江沢民「何故まだ生きているのか」

 海外中国メディア「大紀元」(エポックタイムズ)のサイトに鳥飼聡氏の興味深い見出しの記事(7月22日付)を見つけた。曰く「江沢民まもなく96歳『何故まだ生きているのか?』」というタイトルが付いている。中国第5代国家主席の江沢民氏(在任1993年3月〜2003年3月)は来月17日に96歳を迎える。大紀元の記事はその江沢民氏の長寿を祝う祝賀記事ではない。逆だ。もはや現職でないとしても元指導者に少々礼儀を欠く表現かもしれないが、大紀元の記事は、「何故まだ生きているのか」というきつい問いかけを江沢民氏にせざるを得ない事情を説明している。

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▲法輪功迫害の張本人、中国第5代国家主席江沢民氏(ウィキぺディアから)

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▲法輪功メンバーたちのデモ行進(2015年9月19日、ウィーン市内で撮影)

 「江沢民」という名前を聞くと法輪功メンバーならばきっと顔をしかめ、その顔に唾を吐きかけたくなるかもしれない。江沢民氏は上海市長、上海市党書記などを経て、1989年6月4日の天安門事件の後、小平の推挙により、失脚した趙紫陽に代わって党総書記および中央政治局常務委員に就く。97年に小平が死去。後ろ盾を失った江沢民は以後、自身を支える政治集団「江沢民派」(上海閥)を構築して独裁政治を続けていった。

 しかし、1990年代後半に入ると、李洪志氏が創設した中国伝統修練法の気功集団「法輪功」の会員が中国国内で急増し、1999年の段階で1億人を超え、その数は共産党員数を上回っていった。法輪功は宗教ではない。心と体のバランスを維持する上で役立つ修練法だ。貧しい国民だけではない。共産党幹部たちも法輪功に惹かれ、トレーニングする者が出てきた。

 それに危機感をもった江沢民国家主席は1999年、法輪功を壊滅する目的で「610弁公室」を創設した。「610」という数字は同公室が1999年6月10日に設立された日付から由来する。法輪功メンバーの取締りを目的とした専門機関である。「610弁公室」は旧ソ連時代のKGB(国家保安委員会)のような組織で、共産党員が減少する一方、メンバー数が急増してきた法輪功の台頭を恐れた江沢民主席の鶴の一声で作られた組織だ(「中国の610公室」2006年12月19日参考)。

 「610弁公室」は現存の法体制に縛られない超法規的権限を有し、法輪功の根絶を最終目標としている。中国当局は拘束した法輪功メンバーから生きたままで臓器を摘出し、それを業者などを通じて売買している。2000年から08年の間で法輪功メンバー約6万人が臓器を摘出された後、放り出されて死去したというデータがあるほどだ。

 中国の不法臓器摘出の実態を報告したカナダ元国会議員のデビッド・キルガ―氏は、「臓器摘出は中国で大きなビジネスだ。政府関係者はそれに関与している。法輪功メンバーの家族が遺体を引き取った際、遺体には腎臓などの臓器が欠けていたという証言がある」と報じている(習近平時代に入っても法輪功メンバーへの弾圧は続いている)。

 法輪功メンバーにとって「江沢民」という名前は悪魔を意味する。その江沢民氏が国家主席を辞めた後も生き続け、共産党政権で大きな影響力を行使。そして96歳にもなろうとしているのだ。長寿を天の祝福と受け取る中国国民にとっては理解できないのだ。

 鳥飼聡氏には「重罪を犯した人間は生きている間に公平な裁きを受けなければならない」という考えがあるから、「何故まだ生きているのか」というタイトルには、「江沢民よ、公平な裁きを受けてから死ね」という思いが込められているのだろう。

 当方は2006年頃から中国での法輪功迫害問題をフォローしてきた。それから16年以上の年月が経過した。残念ながら、法輪功メンバーへの迫害はまだ続いている。当方には「中国共産党よ、何故まだ存続しているのか」という思いがある。


<参考資料>
 「法輪功メンバーから臓器摘出」2006年11月23日
 「中国の610公室」2006年12月19日
 「『江沢民告訴』要求の署名活動拡大」2015年9月24日
移植臓器は新疆ウイグル自治区から」2019年1月12日
 「『法輪功迫害』描いたアニメがヒット」2021年3月4日
 「なぜ法輪功学習者を迫害するのか」2021年7月7日 

オルバン首相は「ロシアの共犯者」?

 27カ国から構成された欧州連合(EU)の加盟国間で国益の利害もあって統一した政策が難しいケースが増えてきた。ロシア軍が2月24日、ウクライナに侵攻後、EUが米国らと連携して対ロシア制裁に乗り出したが、制裁を実施する段階で加盟国間の不協和音が高まってきた。特に、ロシア産天然ガス、石油などのエネルギーに大きく依存しているハンガリーは、EU委員会が発表する対ロシア制裁に対し、「制裁はロシアよりEU加盟国の国民経済を一層損なっている」(ハンガリーのオルバン首相)として批判を強めてきた。

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▲プーチン大統領と会談後、記者会見に応じるオルバン首相(2022年2月1日、ロシア大統領府公式サイトから)

 EU欧州員会のフォンデアライエン欧州委員長は20日の記者会見で、「ロシアは天然ガスの欧州供給を武器に、欧州の対ロシア政策に揺さぶりをかけてきた。ロシアの天然ガス供給が完全に途絶えた時を想定して、われわれは準備しなければならない」と指摘し、冬場のガス供給を確保するために「天然ガス消費量の15%節約」を加盟国に呼びかけた。

 ロシアはこれまでEUの制裁を実施する12カ国への天然ガス供給を停止、削減するなど圧力を既に行使してきた。ブリュッセルによると、ロシアからの供給量は現在、3分の軌焚爾僕遒噌んでいる。現在の域内在庫量は貯蔵能力の約65%という(時事通信)。

 天然ガス消費の4割をロシア産に依存してきたEUは、ロシア産に代わり、米国やアゼルバイジャンなど別の供給先を探す一方、EU域内の消費量の節約、長期的視点から代替エネルギー源の拡大に乗り出してきている。

 フォンデアライエン委員長が記者会見で天然ガス消費量の節約をアピールした翌日(21日)、ハンガリーのペーテル外務貿易相はロシアの首都モスクワを訪問し、ロシア産天然ガスの輸入拡大について協議している。ハンガリーの与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が明らかにした。ブリュッセルの「天然ガス消費量の節約」アピールをあざ笑うかのように、ハンガリーはロシア産天然ガスの供給量を増やすためにロシア側と交渉し、長期契約で定められた量に加え、7億立方メートルの天然ガスの追加購入を決めたというのだ。

 ちなみに、ハンガリーは4月7日、首都ブダペスト南方にあるパクシュ(Paks)原発への核燃料をロシアから空輸している。同原発はハンガリーの国内電力の半分を供給している。ハンガリーは石油、天然ガスばかりか、原発とその核燃料もロシアに依存しているわけだ。

 ハンガリーとEUの本部ブリュッセルとの関係は良好からは程遠いことは周知の事実だ。EU欧州員会は15日、オルバン首相が率いるハンガリー政府に対し、「民主主義と法の遵守」、「メディアの自由」などを要求し、その是正を求めてきたが、ハンガリー政府が応じなかったとして、ハンガリーを相手に欧州司法裁判所(EuGH)に3件、提訴したばかりだ(「ハンガリーの主張が『正論』の時」2022年7月17日参考)。

 例えば、昨年6月15日に可決、7月1日に発効したハンガリーの新法「反小児性愛法」は、小児性愛者対策を目的とし、教材や宣伝で同性愛や性転換の描写や助長を禁じる内容だ。オルバン首相は、「子供の権利を守る法律だ」とその法案の目的を強調したが、EU各国から非難が続出。ハンガリー側が是正に応じなかったことから今回、EU委員会は提訴に踏み切った。

 オルバン首相は今月15日、ロシア産石油、天然ガスに対するEUの制裁に対し、「EUのトップは制裁によってロシアに打撃を与えられると考えていたが、実際はわれわれが受けた打撃の方が大きかった。自らの肺を撃ち抜き、欧州経済は息も絶え絶えだ」と述べているほどだ(AFP通信)。

 オルバン政権はプーチン大統領のウクライナ侵攻を批判し、ウクライナからの難民を受け入れる一方、軍事支援、武器供給に対しては拒否してきた。オルバン首相によると、ウクライナへ武器供給した場合、同国最西端ザカルパッチャ州に住むハンガリー系少数民族に危険が及ぶと説明している。

 ウクライナのゼレンスキー大統領はEUの対ロシア制裁に異議を唱えるハンガリーのオルバン首相を名指しに「EUの結束を崩すロシアの共犯者」と批判している。

教皇「教会改革も行き過ぎはダメ」

 ドイツのキリスト教信者数はローマ・カトリック教会(旧教)とプロテスタント教会(新教)ではほぼ均衡している。マルティン・ルター(1483〜1546年)の宗教改革の発祥国ドイツでは歴史的に教会改革への機運が漂っている。そのドイツのカトリック教会では聖職者の未成年者への性的虐待事件が多発し、その対応で教会指導部が混乱している現状に対し、信者からだけではなく、教会指導部内からも刷新を求める声が高まってきた。ちなみに、ローマ教皇フランシスコは2019年6月、シノダルパスと呼ばれる教会改革のプロセスに号令をかけている(「独カトリック教会、脱会者が急増」2022年6月29日参考)。

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▲独カトリック教会司教会議のゲオルク・べッツィング議長(独カトリック教会司教会議公式サイトから)

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▲バチカンのサンピエトロ大聖堂のファサード(2022年7月21日、バチカンニュースから)

 ところが、問題が生じてきたのだ。ドイツのカトリック教会司教会議(議長ゲオルク・ベッツィング司教)が推進中の教会刷新政策(通称シノダルパス)に対し、「その改革案は行き過ぎだ」という声が教会内外で聞こえてきたのだ。

 バチカン教皇庁は21日、ドイツ司教会議のシノダルパスに対し、「司教と信者に新しい形態の統治と教義と道徳の方向性を導入し、それを受け入れるように強いることは許されない」という趣旨の公式声明を発表し、「普遍的な教会のシステムを一方的に変更することを意味し、脅威となる」として「ドイツ教会の行き過ぎ」に警告を発した。フランシスコ教皇自身も6月14日、インタビューの中で、「ドイツには立派な福音教会(プロテスタント派教会=新教)が存在する。第2の福音教会はドイツでは要らないだろう」と述べ、ドイツ教会司教会議のシノダル・プロセスに異議を唱えているほどだ。

 改革派のフランシスコ教皇が「行き過ぎ」と警告するドイツ教会のシノダルパスはどのような内容だろうか。バチカンニュースを参考にその内容を紹介する。ドイツ教会の改革案は4項目から構成されている。

 .蹇璽沺Εトリック教会はバチカン教皇庁、そして最高指導者ローマ教皇を中心とした「中央集権制」だ。教皇の指令に基づいて教会運営が行われている。それに対し、ドイツ教会司教会議は各国の教会の意向を重視し、その平信徒の意向を最大限に尊重する「非中央集権制」を唱えている。

 ∪賛者の性犯罪を防止する一方、LGBTQ(性的少数派)を擁護し、同性愛者へ教会をオープンにする。バチカンはその教義に基づき、同性愛者への差別には反対するが、同性婚は公認していない(「『クィアの人々』との対話進める教会」2022年1月26日参考)。

 女性信者を教会運営の指導部に参画させる。バチカン内でも女性信者の抜擢が行われてきたが、「女性聖職者」には躊躇している。ドイツのカトリック教会では「マリア2・0」運動と呼ばれる女性グループが男性主導の教会組織から脱皮し、女性たちにも聖職の道を開くべきだと主張している(「独教会の女性信徒が『スト』に突入」2019年5月14日参考)。

 だ賛者の強制独身制は教会のドグマではなく、伝統であることから、その制度の見直し。既婚者の聖職者の道を開くことで、聖職者不足も解決できる。2019年10月、バチカンで開催されたアマゾン公会議ではこのテーマは大きな議論を呼んだ(「公会議『既婚男性の聖職叙階』を提言」2019年10月28日参考)。

 ドイツ教会の「シノダルのプロセス」は、教会の権力分立、指導部と平信徒の関係改善を核とした内容だ。具体的な改革としては、〇紛気稜ぬ燭砲弔い匿者に発言権を与える、同性カップルのための祝福を正当化する、女性聖職者の任命、等が含まれる。

 4項目の内容を見る限りでは、フランシスコ教皇でなくても、カトリック教会の“福音教会化”と揶揄されても可笑しくはない内容だ。バチカンで「それでは何のためにカトリック教会か」という疑問の声が出てくるのは頷ける。

 シノダルパスは教会聖職者の性犯罪の多発を契機に始まったもので、フランシスコ教皇が2019年に開始し、世界各教会で積極的に協議されてきたものだ。それがここにきてフランシスコ教皇を含む教会指導者から「ドイツのシノダルパスは行き過ぎだ」という声が高まってきたわけだ。

 ドイツの教会法専門家、ミュンスター大学のトーマス・シュラー教授は21日、「バチカンはドイツ教会の教会改革案を明らかに拒絶している。その改革案はローマの壁の前にぶつかった」と述べている 。

 フランシスコ教皇は昨年1月5日、ドイツの「シノドス方式」に異議を唱えるマニフェストを受け取ったことを明らかにしている。11カ国語で発表されたマニフェストには、ドイツをはじめとする欧州各国から5832人の署名が寄せられたという。また、教皇庁キリスト教一致推進評議会前会長のワルター・カスパー枢機卿は昨年11月7日、ドイツの司教と信徒を集め、教会における権力の行使の仕方、性道徳、神権、女性の役割について話し合うシノダルプロセスについて、繰り返し「懸念」を表明している。

 ドイツ教会司教会議議長のべッツィング司教は5月27日、シュトゥットガルトで開催されたドイツの「カトリックの日」で、「ドイツのカトリック教会の改革プロセスに対し米国や他の国の教会で大規模な反対運動がある」ことを認めている。

 ドイツ教会の独自の教会改革がバチカンや他の教会からの批判に直面して暗礁に乗りだすか、それとも貫徹するか、その成り行きはドイツ教会の将来だけではなく、欧州を含む世界のカトリック教会に大きな影響を及ぼしそうだ。バチカンニュースは7月21日のトップに、「バチカン教皇庁、ドイツ教会にシノダルパスの限界を示す」と大きく報じている。

地球の地軸が変動したのか

 勝負は早朝だ。1日にやらなければならない仕事は朝の時間しかない。ということで、このコラムを書き出している。この時間帯を何らかの理由で逃すと、昼食後にはもはや戦闘意欲は減退し、イエスが「生きているのは名ばかりで実は死んでいる」といったような状況に陥り、総身からは活力は失われ、思考は停止、テーブルの上で回る中古の扇風機の風の向きだけに関心がいってしまう。

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▲「地球」NASA公式サイトから

 外電をみると、熱風がフランス、スぺイン、ポルトガルを襲撃し、40度を超える灼熱が国土を覆い、至る所で山火事が発生、消防士たちが燃え盛る森林に必死に放水しているシーンがテレビ中継されている。熱中症で亡くなる人も出てきたというから、深刻だ。

 夏でも比較的快適な気温だったイギリスでもとうとう40度を超える最高気温を記録したという。英気象庁によると、ロンドンのヒースロー空港で19日、観測史上最高気温の40.2度(速報値)を記録した。英国で40度を超えたのはもちろん初めて。英国の過去最高気温は2019年7月に南部ケンブリッジで観測された38.7度だった(この項、時事通信)。ロンドンっ子の最大の話題は辞任を表明したジョンソン首相の後継者に誰が選出されるかではなく、「どうしたら暑さから逃れるか」だ。

 ドイツでも20日、各地で40度を超えた。ドイツ気象局(DWD)によると、バートメルゲントハイム-ニューンキルヒェンで40.3度を記録し、ハンブルクではハンブルク-ニューウィデンタールで40.1度が測定された。DWDによると、ドイツで最も暑い日は2019年7月25日、クレーフェルト近くのライン川下流域にあるデュイスブルクとテイスヴォルストのノルトラインヴェストファーレン観測所で41.2度が測定されている。

 当方が住むアルプスの小国オーストリアでは20日、最高気温はインスブルックで37度だった。 36度を超える値は、ツィラータールのマイヤーホーフェンを含むオーストリアの他の3つの場所で測定された。

 岸田文雄首相は、「この夏はクーラーで快適に生活してがんばろう」という趣旨の発言をしたと聞く。日本の場合、どの家にもクーラーはあるし、会社や電車の中でもクーラーが効いているから、そこにいる限りどうにか過ごせる。一方、オーストリアでは冬対策での経験はあるが、夏対策では遅れている。クーラーを設置している電車もあるが、まだ数少ない。普通の住居はクーラーなど設置していない。せいぜい、扇風機があるだけだ。ちょっとした暑さならば、扇風機で凌げるが、40度となると、ヤリをもって戦車に向かう兵士のように、扇風機だけでは猛威を振るう灼熱には勝てない。

 個人的体験だが、当方は過去、少なくとも3度、40度を超える気温を体験した。イタリアのフィレンツェ、チェコのプラハ、ヨルダンのアンマンにいた時だ。フィレンツェでは「ダビデの像」をみるためにアカデミア美術館前で長蛇の列で待っていた時、気温は確か40度を超えていた。ミネラルウオーターを定期的に飲みながら、長時間外の暑さに耐えた後、博物館に入った。部屋の真ん中に立っていたダビデの像はライトに浮かび上がって圧倒的な存在感を与えていた。

 プラハではカレル橋を渡って国際会議に取材にいった日、知人が「今、気温は40度に達した」と、敵の戦闘機が襲撃してきたように、真剣な顔をしながら叫んだのを思い出す。

 ヨルダンの首都アンマンへ取材に行ったとき、空港から外に出た瞬間、暑い空気が襲ってきた。「自分は中東にいる」と実感したものだ。ただ、その空気は限りなく乾燥し、湿気がなかった。

 ところで、欧州では2018年も暑い夏を迎えた。当方は当時、このコラム欄で「40年間余り、オーストリアに住んできたが、これほど暑い夏を体験したことがない。今年の暑さは異常を越して、少々不気味さを感じる。アルプスのオーストリアの気温が完全に変わったのだ。地球温暖化という話は聞いてきたが、他人事のように受け取ってきた面が否定できない。アルプスの氷河は既に溶け始めている。ウィーンの森のブドウ畑では1カ月も早く実が熟してしまった」と書いた(「『地球』に何が起きているのか」2018年8月8日参考)。

 中国武漢から発生した新型コロナウイルスのパンデミック、今年2月24日以降はロシア軍のウクライナ侵攻で両国間で戦争が起き、世界の関心がそこに集中したのは仕方がないが、地球温暖化問題は環境保護対策といった領域を超えて人類の存続をかけたテーマとなってきた。

 「AIが神になる日」という著書がある実業家、松本徹三氏の新作「2022年地軸大変動」は近未来の世界の情勢を地軸の大変動という仮定に基づいて描かれたSFの力作だ。地軸の大変動で熱帯地域から極寒帯地になるアフリカ大陸の人々を救うために世界の指導者たちは英知を結集して、地軸の変動が始まる前にアフリカの人々を安全な地域に移住させようと、史上最大規模の移住計画が立てられる。異星人の地軸大変動という計画を詳細に、そして専門的にも論理的に説明しながら、地球が直面している未曾有の危機に立ち向かう人類の姿が冷静に描写されている。ある意味で、21世紀に生きる人類への警告だ(「『2022年地軸大変動』を読んで」2021年11月7日参考)。

 東日本大震災で地球の軸が僅かだが動いたともいわれる。その惑星に住む人類は地球温暖化といった課題に直面し、「生き方」を再考しなければならない時を迎えている。
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