ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2022年05月

従軍記者が見た「ウクライナ戦争」

 ロシア軍がウクライナ侵攻した直後、ウクライナ軍の祖国防衛への士気は高く、国民もそれを支えてきた。3日間で首都キーウを制圧できると考えていたロシア軍側はウクライナの激しい抵抗に直面し、後退を余儀なくされた。北部に進出したロシア軍は3日間の食糧、燃料しか準備していなかったことが後日明らかになった。ロシア軍は目下、ウクライナ東部ドンバス地域に軍を集中し、攻勢をかけている。ロシアのラブロフ外相は、「ロシア軍はウクライナ東部の解放を最優先課題としている」という。

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▲オーストリア日刊紙最大部数を誇る「クローネ」日曜版の表紙を飾ったヴェーァシュッツ氏(2022年5月29日)

 ウクライナ側の情報によると、戦争勃発の94日間で、約3万人のロシア兵が殺害され、1330両の戦車、207機の戦闘機、174機のヘリコプター、数千台の軽装甲車両とトラックを破壊、ないしはウクライナ側に乗っ取られたという。軍事力が守勢と受け取られてきたウクライナ軍は軍事大国ロシア軍に対して大きな戦果を挙げている。

 ただ、ウクライナ軍の攻勢がいつまで続くかは不確かだ。ウクライナ軍側に戦争勃発直後のような士気は消え、武器の欠乏もあって次第に守勢を強いられてきたからだ。ゼレンスキー大統領が29日、戦争勃発後、初めてドンバスの地に足を踏み入れ、東部ハルキウ州の軍部隊を訪問し、兵士を鼓舞し、「必ず勝利できるから、頑張ってほしい」と檄を飛ばしたのは、ウクライナ軍がロシア軍の激しい攻撃に直面して苦戦しているからだ。

 現地からの情報によると、ウクライナ東部ドンバス地方ルガンスク州でロシア軍の猛攻撃を受け、ウクライナ軍はセベロドネツクから撤退を余儀なくされてきた。ウクライナ軍は退路を断たれ完全に孤立する恐れが出てきている。マリウポリやアゾフスタリ製鉄所が最終的にはロシア軍に制圧されたこともあって、ウクライナ軍側の士気は否応にも下がってきた。

 ところで、オーストリア国営放送の従軍記者、クリスティアン・ヴェーァシュッツ特派員は28日、「ウクライナ戦争は最長でも5カ月間だ。ゼレンスキー氏は大統領として戦争を主導できる時間は限られている」と、メディア関係者に語っている。その理由として、欧米側のウクライナ支援がいつまで続くか確かではない。戦争が長期化すれば、ウクライナを支援する欧米各国に亀裂が出てくる恐れがあるからだ。

 ウクライナ軍が守勢に回ると、欧米諸国はウクライナ軍を最後まで支援し、武器を供給することは少なくるだろう。だから、欧米のウクライナ支援国に亀裂が生じる前に戦争の行方をはっきりさせなければならないわけだ。ヴェーアシュッツ氏は、「西側から武器が供給されない限り、ウクライナ軍には勝利のチャンスはない。停戦の見通しがなければ、資金を提供する国は自然に減るだろう」と指摘、「ウクライナ戦争はあと4カ月から5カ月間しか続かないだろう。冬が到来すれば、欧州諸国は天然ガスの確保に奔走せざるを得なくなる。食糧価格の高騰、エネルギー危機に悩む国民を無視して、ウクライナを支援できなくなるのだ」と強調し、「ウクライナ戦争は今、ターニングポイントを迎えている」と主張する。

 同氏は旧ユーゴスラビア戦争、コソボ戦争を戦地で報道する記者としてオーストリアばかりか欧州全域で有名なジャーナリストだ。同氏は8つの言語を話す。ウクライナ戦争ではキーウや他の都市を愛車トヨタのカローラに乗って戦地を取材している。常に死と向かい合っている日々だ。

 ヴェーァシュッツ氏は、「ウクライナ戦争は次第にロシアと米国の代理戦争の様相を深めてきている。欧米側はロシアと遅かれ早かれ協議しなければならない」と指摘する。ちなみに、海外亡命中のオリガルヒ(新興財閥)の1人、ミハイル・ホドルコフスキー氏は、「ウクライナへ武器供給する欧米諸国はロシア側にとって既に戦争当事国だ」と説明している。

 「ウクライナ戦争でウクライナがこれほど長く持ちこたえ、ロシア軍の一部を押し戻すことができるとは誰も信じていなかった。しかし、今やウクライナ戦争の潮流が変わり出した」、「ウクライナはルガンスク地域で既に支配を失い、97%はロシアの手にあり、ウクライナの部隊は現在は包囲の脅威にさらされている」と淡々と語る。

 ヴェーァシュッツ氏は、「ウクライナ側は最初の軍事的成功を誤解して、戦争の勝利といった非現実的な期待を国民にもたせるプロパガンダを行ってきた。残念ながら、ゼレンスキー大統領自身が言葉は時に過剰さがある」と説明した。

 同氏は、「ロシア軍は東部を制圧すると今度はウクライナ西部とキーウでも攻撃を仕掛けることが予想される。目的は供給ライン破壊だ。しかし、ロシアの情報源やインターネットから知る限りでは、ロシア側の軍事指導部にも依然として大きな不満があり、ロシアも巨額の損失に苦しんでいる。ロシアは明らかにウクライナよりも多くの人的資源を持っているから、戦いが長期化すれば、戦況はロシア軍側に有利に展開する可能性が出てくる」と考えている。

 ヴェーアシュッツ特派員は、「ウクライナ戦争ではこれまでの戦地では目撃しなかったほど多くの英雄を見た。同時に、砲丸で完全に焼け落ちた遺体を見てきた」と述べた。

中国での現地調査・視察は無意味だ

 中国共産党政権は新型コロナウイルスのパンデミック前までは世界のグローバル化を巧みに利用して国民経済を成長させてきた。同時に、国内の人権・少数民族問題、テロ問題などでは独自の定義を振りかざし国際社会からの批判をかわしてきた。「人権」では普遍的な定義はなく、各国がその社会の発展状況に合った人権があること、政府の政策に反対する国民は一様に「テロリスト」と呼ばれる、といった具合だ。そんな印象を17年ぶりに訪中した国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官の6日間の歩みから改めて受けた。バチェレ氏と中国共産党政権の間には深く、どんよりとした河が流れ、両者をつなぐ橋がない、といった状況だ。

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▲訪中日程を終えた直後に会見するバチェレ国連人権高等弁務官(2022年5月28日、OHCHR公式サイトから)

 ジュネーブに本部を置くOHCHRのバチェレ高等弁務官は6日間の日程で中国を訪問し、懸案となっている新疆ウイグル自治区を現地視察し、28日、帰国前にオンラインの記者会見をした。同氏は中国の少数民族ウイグル人への弾圧政策の見直しと改善を要求した。同時に、同自治区で行方不明の国民に関連する情報を家族側に提示することなどを求めた。同氏によると、国連側と中国側は今後も同問題で会合をすることで一致したという。

 バチェレ氏は事前に、「今回の訪中は同自治区の現地調査ではなく、あくまでも視察だ」と指摘し、外電によると、同氏は2日間の日程で区都ウルムチと西部の都市カシュガルを視察したほか、「職業訓練施設」(強制収容所)を訪れたという。

 もちろん、2005年以来、17年ぶりの人権高等弁務官の訪中でウイグル人への人権問題の状況が解明され、解決されるとは誰も期待していなかったが、同氏が記者会見で明らかにした内容は余りにも乏しい。

 (国際人権グループは、「中国新疆ウイグル自治区では少なくとも100万人のウイグル人と他のイスラム教徒が再教育キャンプに収容され、固有の宗教、文化、言語を放棄させられ、強制的な同化政策を受けている」と批判してきた。中国共産党政権は、「強制収容所ではなく、職業訓練所、再教育施設だ」と説明するが、現状はウイグル民族の抹殺が進められている。ポンぺオ前米国務長官は中国の少数民族への同化政策を「ジェノサイド」と呼んでいる)

 バチェレ氏の訪中期間にウイグル自治区警察ファイルが欧米メディアで報道され、習近平国家主席の命令でウイグル人への弾圧、同化政策が実施されてきたことが記述された文書の存在が24日、明らかになった直後だ。追い風を受けた感じだが、バチェレ氏の言動からはまったくそれを感じない。中国高官との間で質疑応答がなかったのだろうか(「『新疆ウイグル区警察ファイル』の波紋」2022年5月26日参考)。

 バチェレ氏は25日、習近平主席とオンライン会議をした。中国国家テレビCCTVによると、習近平主席は、「人権という名目で内政を干渉することは許されない。人権問題を政治化すべきではない」と強く主張、「人権では教師は要らない。国の発展状況に応じてその内容は異なるからだ」と説明したという。バチェレ氏が代表とする国連の人権と習近平主席の「人権」とは大きな隔たりがあるわけだ。

 これでは人権問題で会談したとしても、解決策など出てくるわけがない。ブリンケン米国務長官は28日、「人権高等弁務官の訪中が中国側に管理され、完全で独立した人権状況の掌握には至らなかった」と指摘しているが、「人権」で異なった定義を有する者同士が語り合ったとしても、通訳なしの会話と同じだ。両者間に理解など生まれてこない。

 国連人権高等弁務官を擁護するつもりはないが、バチェレ氏の訪中が成果の乏しいものとなったのは、同氏の政治手腕の欠如とか準備不足だったからではない。OHCHRはバチェレ氏の訪中を実現するために数年の年月を費やして準備してきたのだ。それでも成果がなかったのは相手が中国共産党政権だからだ。

 例を挙げる。世界保健機関(WHO)の武漢ウイルス調査団の団長を務めたデンマーク人のぺーター・ベン・エンバレク氏は2021年8月12日、デンマーク公共テレビ局TV2の「ウイルスの謎」というドキュメンタリー番組の中で、WHOが同年2月9日の記者会見で発表した調査報告が中国側からの圧力もあって強要された内容となった経緯を明らかにして大きな波紋を投じた(「WHO調査団長エンバレク氏の証言」2021年8月22日参考)。

 中国武漢発の新型コロナウイルスの発生源問題で世界は「自然発生説」と「武漢ウイルス研究所=WIV」流出説に2分されていた。中国側は前者を主張し、後者を叩き潰すためにさまざまな手を打っていた。その時、WHOは現地視察に乗り出したわけだが、WHOが選んだ使節団には親中派の英国人動物学者で米国の非営利組織(NPO)エコ・ヘルス・アライアンス会長のペーター・ダザック氏が入っていた。中国側の工作が行われていたのだ(「武漢ウイルス発生源解明は可能だ」2021年11月2日参考)。

 WHO武漢調査団もOHCHRのバチェレ高等弁務官のウイグル自治区視察も中国共産党政権の厳しい監視とコントロール下で行われた。それゆえに、問題の解明はもともと無理なのだ。国連機関の現地視察団を受け入れた、という中国側のアリバイ工作に利用されるだけだ。バチェレ氏の訪中はそのことを改めて追認させた。

分裂と離脱が続く「ロシア正教会」

 キリスト教東方正教会のウクライナ正教会は27日、ロシア正教会のモスクワ総主教キリル1世の戦争擁護の言動に抗議して、ロシア正教会の傘下からの離脱を決定した。この話を進める前に、ウクライナ正教会とロシア正教会のこれまでの成り行きを簡単に復習する。

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▲プーチン大統領のウクライナ戦争を支援するモスクワ総主教キリル1世(2022年3月10日、世界教会協議会(WCC)公式サイトから)

 ウクライナ正教会は本来、ソ連共産党政権時代からロシア正教会の管轄下にあった。同国にはウクライナ正教会と少数派の独立正教会があったが、ペトロ・ポロシェンコ前大統領(在任2014年〜19年)の強い支持もあって、2018年12月、ウクライナ正教会がロシア正教会から離脱し、独立した。その後、ウクライナ正教会と独立正教会が統合して現在の「ウクライナ正教会」(OKU)が誕生した。ただし、ウクライナにはモスクワ総主教のキリル1世を依然支持するウクライナ正教会(UOK)も存在する。モスクワ総主教区から今回独立を表明したのはUOKの話だ(「ウクライナ正教会独立は『善の勝利』か」2018年10月15日参考)。

 UOKの聖職者、宗教家、一般市民が出席した全国評議会は27日、キーウで「ウクライナ正教会の完全な自治と独立を表明する」教会法の改正を採択した。モスクワ総主教区傘下からの離脱動機は、「人を殺してはならないという教えを無視し、ウクライナ戦争を支援するモスクワ総主教のキリル1世の下にいることは出来ない」と説明している。その結果、ロシア正教会は332年間管轄してきたウクライナ正教会を完全に失い、世界の正教会での影響力は低下、モスクワ総主教にとって大きな痛手となった。

 UOKは、「ウクライナ正教会の統一性の欠如に深い遺憾」を表明する一方、OKUとの対話に希望を放棄していないと述べている。ただし、OKUに対し、「教会の没収とウクライナ正教会の会衆の強制チェンジを止めるべきだ」と求めている。

 欧州連合(EU)の欧州委員会ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は今月4日、対ロシア制裁の第6弾目の内容を表明したが、その中で個人を対象とした制裁リストの中にロシア正教のモスクワ総主教キリル1世が入っていたことが明らかになって、大きな衝撃を投じたばかりだ。

 キリル1世のウクライナ戦争への立場は明確だ。キリル1世はプーチン大統領のウクライナ戦争を「形而上学的な闘争」と位置づけ、ロシア側を「善」として退廃文化の欧米側を「悪」とし、「善の悪への戦い」と解説する。キリル総主教は2009年にモスクワ総主教に就任して以来、一貫してプーチン氏を支持してきた。総主教は欧米社会の同性婚を非難し、同性愛は罪だと宣言。同時に、少数派宗教グループに対する取り締まり強化を歓迎してきた。ウクライナ戦争ではプーチン大統領と二人三脚でウクライナの制覇を夢見ている。

 キリル1世はウクライナとロシアが教会法に基づいて連携していると主張し、ウクライナの首都キーウは“エルサレム”だという。「ロシア正教会はそこから誕生したのだから、その歴史的、精神的繋がりを捨て去ることはできない」と主張し、ロシアの敵対者を「悪の勢力」と呼び、ロシア兵士に闘うように呼び掛けてきた(「キリル1世の『ルースキー・ミール』」2022年4月25日参考)。

 当然のことだが、キリル1世の言動に対してキリスト教神学界から厳しい批判が飛び出した。神学者ウルリッヒ・ケルトナー氏は、「福音を裏切っている」とキリル1世を非難している。東方正教会のコンスタンディヌーポリ総主教、バルソロメオス1世は、「モスクワ総主教キリル1世の態度に非常に悲しんでいる」と述べ、ジュネーブに本部を置く世界教会協議会(WCC)では、「ロシア正教会をWCCメンバーから追放すべきだ」という声が高まってきた。

 UKOのモスクワ総主教区からの離脱はウクライナ正教会のモスクワ離れを改めて明らかに示したものだ。最近では、イタリア北部のウディネにあるロシア正教会が、モスクワ総主教区から分離したばかりだ。

 ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系、UOK)の首座主教であるキーウのオヌフリイ府主教は2月24日、ウクライナ国内の信者に向けたメッセージを発表し、ロシアのウクライナ侵攻を「悲劇」とし、「ロシア民族はもともと、キーウのドニエプル川周辺に起源を持つ同じ民族だ。われわれが互いに戦争をしていることは最大の恥」と指摘、創世記に記述されている、人類最初の殺人、兄カインによる弟アベルの殺害を引き合いに出し、両国間の戦争は「兄弟戦争(フラトリサイド)だ」と述べ、大きな反響を呼んだ。

「プーチン暗殺未遂事件」の因果

 独裁者は実際に亡くなるまで少なくとも数回、暗殺未遂を経験し、生前中に何度か自分の死亡が報じられる運命にある。3代の金王朝が続く北朝鮮などはその典型的な例だろう。金正恩総書記の父・金正日や祖父・金日成は実際に埋葬されるまでに何度か死亡説や暗殺説がメディアを賑わせた。例えば、2004年春、訪中を終えて平壌への帰途、金正日総書記が乗る特別列車が龍川駅を通過した数時間後、同駅周辺で大爆発が発生し、多数の死傷者を出した事件があった。あれなどは明らかに金正日総書記を狙った暗殺事件だったはずだ。

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▲第1回ユーラシア経済連合の本会議で演説するプーチン大統領(2022年5月26日、ロシア大統領府公式サイトから)

 そしてロシアのプーチン大統領も例外ではないらしい。一部の報道では「プーチン氏は不治の病を患っている」という。気の早い報道では、プーチン氏は職務不能の病人だというのだ。そしてやはり暗殺未遂事件があった。

 時期は今年3月だ。ロシア軍のウクライナ侵攻後に暗殺未遂事件が生じたが、プーチン氏は生き延びた。情報源はウクライナ軍事諜報機関SBUだ。それによると「事件は完全な失敗に終わった」という。SBUのキリロ・ブダノフ長官 (Kyrylo Budanow)はウクライナの新聞プラウダに語っている。情報はまだ検証されていない。

 オーストリア日刊紙クリアによれば、プーチン大統領をターゲットとした暗殺未遂事件は少なくとも5件あったという。独裁者となると政敵が多い。例えば、「ヒトラー暗殺未遂事件」は有名だ。第2次大戦後半の1944年7月20日、シュタウフェンベルク陸軍大佐が現在のポーランド北部にあった総統大本営の会議室に爆弾入りの鞄を仕掛けた。爆発したが、ヒトラーは軽傷で済んだ。大佐は同日中に逮捕され、仲間の将校らとベルリンで銃殺になった。歴史に残る暗殺未遂事件だ。

 プーチン氏の場合、医師、警備員、狙撃兵、フードテイスターがチームを編成し、常に大統領に随伴しているという。医者が常時随伴していることから、「プーチン氏の不治の病」説が飛び出したわけだ。ヒトラーも自害する数年前から主治医が常に軍服姿で随伴していた。主治医は毎日、多数の薬をヒトラーに調合していたという。その薬の中には精神安定剤や痛み止め用の麻薬類があったことが知られている。独裁者は世を問わず、ストレスの多い立場だ。

 ちなみに、「プーチン氏重体説」は英国の秘密情報部MI6の元長官リチャード・ディアラブ氏が5月19日に語って大きな反響を呼んだ。同氏曰く、「ロシアでプーチン体制の終わりが近づいている。プーチン氏は2023年までには亡くなるだろう」と、プーチン氏の死亡年まで予言している。

 興味深い点は、警備員や医者の他に、フードテイスターがプーチン大統領警備チームに加わっていることだ。その真偽は確認できないが、事実とすれば北朝鮮の金正日総書記時代と似ている。フードテイスター(毒見役)は主人が料理を口に入れる前にその安全性をチェックするのが任務だ。ソ連共産党時代にも聞かなかったようなフードテイスターがプーチン大統領の警備チームに加わっているというのだ。それは何を意味するのだろうか。プーチン氏は外からだけではなく、身内からも常に暗殺の危険があるというわけだ。常時、生命の危険というストレス下にあるプーチン氏だ。如何にタフといっても病気にならないはずがない。

 プーチン氏が自身への暗殺の危機感が強い背景には、同氏が過去、数多くの政敵を殺してきたことと密接に関係している。一種の因果だ。実際、プーチン時代に入って、反体制派活動家、政治家たちが毒殺されるケースが増えた。情報機関出身者らしく、毒薬を利用した暗殺が多いのが特徴だ。最近では、反体制派活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏は2020年8月、毒殺未遂事件に遭遇している。

 路上で射殺する事件も起きている。例えば、プーチン批判の政治家だったボリス・ネムツォフ氏の名前を思いだす。エリツイン大統領の後継者ともみられた政治家だったが、当時、首相に就任したプーチン氏から政敵と受け取られていく。同氏は2015年2月27日、モスクワ中心部のグレートモスクワ橋で射殺された。55歳だった。同氏は2014年3月15日、モスクワの平和行進で、「プーチンのいないロシアとウクライナのために!」と叫んでいる。

 参考までに、ネムツォフ氏の名前を付けた道路標識がスロバキアの首都ブラチスラバでロシア大使館前に登場した。名前は「ボリス・ネムツォフ通り」だ。今月25日の道路標識の設置式にはネムツォフ氏の娘ザンナ・ネムツォワ氏が参加したという。スロバキアのTASR通信社が報じた。同氏の勇気ある言動を称え、「ボリス・ネムツォフ通り」は、ワシントン、ビリニュス、キーウ、プラハなどの他の首都にもあるという。

 このコラム欄でも、「戦争犯罪人プーチン氏を解任せよ」で書いたが、プーチン氏を解任に追い込むシナリオはさまざま考えられる。プーチン氏には、自身がそうであるから、政敵も自分を暗殺しようとするだろう、という強迫感が誰よりも強い。自業自得といえばそれまでだが、独裁者は程度の差こそあれ同じような道を行くものだ。

 なお、プーチン氏が長期的に医療施設に入院した場合、彼の後を継ぐ可能性が最も高いのはニコライ・パトルシェフ氏という。プーチン氏と同じサンクトペテルブルク出身で大学卒業後ソビエト連邦国家保安委員会(KGB)の要員となる。プーチン氏に忠実な人物といわれる。彼は2008年5月以来、ロシア安全保障評議会の書記だ。70歳だから若くはない。


 <参考情報>
 「戦争犯罪人プーチン氏を解任すべし」2022年4月7日
 「海外『ロシア反体制派』の事情」2022年5月15日

露とウクライナの「和解」は時期尚早?

 ロシア軍がウクライナに侵攻して以来、隣国の主権を蹂躙したロシアは侵略者であり、ロシア軍の激しい砲撃を受けるウクライナ側は犠牲者である点で国際社会にはほぼコンセンサスが出来ている。だから、欧米諸国は軍事大国ロシア軍の攻撃を受けるウクライナに経済支援、そして武器の供給を実施する一方、侵略者ロシアに対して過去にないほどの厳しい制裁を科してきた。

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▲ロシアとウクライナ両国の和解を呼びかけるポスター(ウィーン市と「ウィーン経済会議所」の共同作成)

 ウクライナ戦争は勃発後、24日で90日を経過し、状況は長期化の傾向が見られ出した。ロシア側は軍体制の整備、強化、軍需品の補給に乗り出す一方、ウクライナ側は欧米諸国に重火器の供給を強く要請、クレバ外相はスイスのダボスで開催中の「世界経済フォーラム」(WEF)に出席し、欧米側に多連装ロケット砲システム(MLRS)の供給を要請するなど、重火器の入手に努力している。
 
 同時に、様々なルートを通じて停戦交渉の動きが見られる。ロシアもウクライナ側も永遠に戦争できないからだ。戦況が激しくなり、兵士や民間人に更に多くの犠牲が出てきた場合、「停戦に応じるべきだ」という動きや要求が国内外から出てきても不思議ではない。

 ところで、オーストリアの首都ウィーン市で市とウィーン経済会議所(WKO)が共同でポスターを出した。ロシア出身の商工会議所関係者(男性)とウクライナ出身の看護師(女性)が手にそれぞれロシアとウクライナの国旗を形どったカードを持ち、両国民の和解を呼びかけている。両者は夫婦だ。ポスターには「Gemeinsam、Das ist unser Wien」(一緒に、これが私たちのウィーンです)と書かれている。

 平時の時(戦時ではない場合)には全く問題にならないポスターだ。両国同士の連帯を呼びかけることに文句を言う人は少ないだろう。しかし、時はウクライナ戦争中だ。ウィーン在住のウクライナ人たちが、「ロシアの戦争の罪科を相対化する試みだ」と激しい抵抗の声を挙げたのだ。そのため、WKOは急遽、そのポスターを商工会議所のWebサイトから削除した。その理由は「両国民間のいがみ合いに油を注がないために」という(ウィーン市はそのポスターを来週まで使用する予定)。

 オーストリア在住ウクライナ人は、「残忍で不当なロシアのウクライナ侵攻が3カ月続いた後、ここオーストリアでは、ウクライナ人の意見を聞くことなく、ロシアの罪悪を相対化する試みが行われていることに憤りを感じる。ポスターは、ロシアとウクライナ両国は戦争当事者であり、連帯が犠牲者と侵略者の間で平等に共有されている、というメッセージを伝えている。ウィーンのような国際都市では、政治的議題に和解を置くことは高貴な考えかもしれないが、和解は現在、間違ったメカニズムだ」と説明している。

 ロシア人とウクライナ人のカップルは多い。モスクワ居住のウクライナ女性は、「夫はロシア人だ。夫と共にウクライナ戦争が早期に終わることを祈っている」と言っていた。「私の妻はロシア人だ。多くのウクライナ国民を殺害するロシア人には怒りを感じる」といって、ロシア出身の妻と離婚した、といった話は聞かない。両国民は一緒に共存することを願っているが、戦争の被害者側にあるウクライナ人には、「この時にロシア人と和解を呼びかける言動はロシア人の戦争責任を曖昧にするだけだ」という思いがどうしても強くなるのだろう。

 同じことが今年4月15日の復活祭の聖金曜日の行事の中で起きている。ローマのコロッセオで2000年前のイエスの十字架の受難を再現した式典「十字架の道行き」が行われた。そこでローマに住むウクライナ人とロシア人の2人の女性が十字架をもって共に行進しながら、ウクライナ戦争の終結をアピールしたが、ウクライナ側から、「ロシア軍が戦争犯罪行為を繰り返している時、ロシアとの和解、連帯を演出することは良くない」といった声が出てきた。バチカン側は対立する両民族の和解を演出することで、イエスの教えをアピールできると考えたのだろう。しかし、実際はウクライナ側から批判や非難の声が出てきたのだ。平時ではなく、戦時だからだ。平時の論理は戦時では通用しないばかりか、相手側に怒りを与えることにもなるのだ。

 それでは、「いつ」になったら両者に和解、連帯を呼びかければいいのか。「いつ」だったら、ウィーンのポスターは問題なく、復活祭の式典「十字架の道行」で物議を醸さなくなるのだろうか。侵略者の罪科を相対化させないために、戦場から砲弾の音が消えて停戦が実現してからだろうか。「和解」や「連帯」という言葉は高貴な内容なので、政治や外交の世界では好んで使用されるが、ウクライナ戦争の場合、残念ながら、それらの言葉を使うには時期尚早なのかもしれない。

「新疆ウイグル区警察ファイル」の波紋

 いつか明らかになると考えてきたが、今回の情報は中国共産党政権にとって致命的なダメージを与えることが予想される。中国側は国際社会の非難に対して「内政干渉」としてしらを切ってきたが、それは「大嘘」だったことが判明したからだ。

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▲「ウイグル人強制収容所」(日本ウイグル協会公式サイトから)

 独週刊誌シュピーゲル(電子版)は24日、中国新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル人が強制収容所に送られ、虐待され、逃げようとした人間は射殺されるなどの激しい人権蹂躙が行われていることを記述した内部資料や収容者リストとその写真などを報じた。「新疆ウイグル区警察ファイル」(Xinjiang Police Files)と呼ばれる資料はドイツの中国問題専門家アドリアン・ゼンツ氏が入手したもので、その経路は明らかにされていない。ウイグル人を対象とした強制収容所は習近平国家主席の直接の命令によって建設されたことが内部資料で裏付けられている。

 アンナレーナ・ベアボック独外相は、「(報道内容について)中国政府は説明責任がある」と指摘した。独外務省によると、ベアボック外相は中国の王毅国務委員兼外相とビデオ会議をし、今回明らかになったウイグル人への人権弾圧の実態報道に対して中国側の姿勢を質した。また、クリスティアン・リンドラー独財務相(自由民主党党首)は中国政府の人権弾圧を示す写真を見て、「ショックを受けた」と独日刊紙「ハンデルスブラト」とのインタビューに答え、「ドイツ経済の中国依存体質を改革する必要がある。私たちの経済的利益のために、中国の人権蹂躙に目をつぶってはならない」と付け加えた。

 (16年間の長期政権だったメルケル政権の対中政策は、経済・政治と人権問題を区別して対応していく路線だった。その理由は明瞭だ。ドイツは輸出大国であり、中国はドイツにとって最大の貿易相手国だからだ。例えば、ドイツの主要産業、自動車製造業ではドイツ車の3分の1が中国で販売されている。2019年、フォルクスワーゲン(VW)は中国で車両の40%近くを販売し、メルセデスベンツは約70万台の乗用車を販売している。そのような国が中国の人権問題を激しく追及できるだろうか)

 オーストリア国営放送は24日夜のニュース番組の中でウイグル自治区の強制収容所に拘束され、警備員に殴打されているシーンの写真を報じるなど、欧米メディアは一斉に中国共産党政権のウイグル人弾圧問題を報じ、大きな反響を呼び起こしている。

 同報道は23日から中国を訪問中の国連人権委員会のミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官の日程にも少なくない影響を与えるかもしれない。同高等弁務官は新疆ウイグル自治区を現地視察することになっているからだ。 

 中国国家テレビCCTVは25日、習近平国家主席がバチェレ人権高等弁務官とオンラインで会談したことを報じた。CCTVによると、習近平主席は、「人権という名目で内政を干渉することは許されない。人権問題を政治化すべきではない」と強く主張、「人権では教師は要らない。国の発展状況に応じてその内容は異なるからだ」と説明したという。

 それに先立ち、中国外務省によると、王毅国務委員兼外相は23日、広東省広州市でバチェレ国連人権高等弁務官と会談し、「わが国を批判する一部の国は偽情報を流して人権問題を政治化している」と不快を表明する一方、新疆ウイグル自治区の現地を視察予定のバチェレ高等弁務官に、「デマや嘘に惑わされないでほしい」と強く要請している。

 一方、国連側はツィッターで、「今回の訪中で懸案の人権問題が解決へ前進することを期待している」と報じている。国連側の情報によると、バチェレ人権高等弁務官は28日までの日程でウイグル自治区のウルムチやカシュガルなどを視察する予定だ。なお、国連側はウイグル自治区内の視察が制限されずに実施されるために中国共産党政権と長い年月をかけて交渉を重ねてきたことを明かにしている。

 国際人権グループは、「中国新疆ウイグル自治区では少なくとも100万人のウイグル人と他のイスラム教徒が再教育キャンプに収容され、固有の宗教、文化、言語を放棄させられ、強制的な同化政策を受けている」と批判してきた。中国共産党政権は、「強制収容所ではなく、職業訓練所、再教育施設だ」と説明するが、現状はウイグル民族の抹殺が進められている。ポンぺオ前米国務長官は中国の少数民族への同化政策を「ジェノサイド」と呼んでいる。

 王毅外相は2月19日、ミュンヘン安全保障会議に北京からオンラインで出席し、基調演説をしたが、中国のウイグル人政策について、「新疆ウイグル自治区には体系的な強制労働や再教育キャンプは存在しない。それらは偽情報だ」と語った。新疆ウイグル自治区では、支配する漢民族と少数民族の間に緊張関係が続いている。ウイグル人が抑圧について不平をいえば、北京は彼らを「分離主義者」、「テロリスト」と非難してきた。
 
 ちなみに、同外相は「人権」について新しい定義(解釈)を明らかにしている。王毅外相は昨年2月に開催された国連人権理事会(UNHRC)第46回会議で新疆ウイグル自治区の人権弾圧批判に対し、「人権とは経済発展と安保の観点から考えるべきで、民主主義と自由に焦点を合わせるのは最後だ」と説明したという。換言すれば、「国が安定し、国民が3食を充分に得るまでは個々の国民の人権(自由)は後回し」ということだ。

 海外中国メディア「大紀元」はウイグル自治区で民族抹殺計画が進行中であると警告を発してきた。それによると、「中国共産党政権はウイグル自治区で人口抑制政策を実行中で、80%の出産可能年齢の女性に、子宮内避妊具の挿入、不妊手術などの避妊措置を強要している」という。このまま続けば、今後20年間でウイグル人の人口が3分の1に縮小するという。

 ウイグル自治区の人口は2040年には本来、1310万人と予測されていたが、中国当局の「人口抑制政策」の結果、860万から1050万人に減少する可能性がある。ゼンツ氏の報告書によると、「中国当局が意図的に漢民族を新疆へ移住させ、新疆のウイグル族を強制的に転出させている。 新疆南部の漢民族の人口割合は現在の8・4%から約25%に増加する可能性がある」というのだ(「習近平主席『中国は愛されていない』」2021年6月13日参考)

 ウイグル人は中国56民族の中の一民族だが、ウィグル人問題を考える時、忘れてならない点は、ウイグル人が住む新疆ウイグル自治区にあるロブノールは旧ソ連カザフスタンのセミパラチンスク核実験場と共に核実験場だったことだ。ウィーンに本部を置く包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)によると、中国は過去、45回の核実験を行った。核実験で放出される放射能の影響で同自治区では多くの奇形児、障害児が生まれてきている。(「中国核実験地ウイグル自治区の人々」2021年1月2日参考)。また、「移植用の臓器は今、すべて新疆ウイグル自治区からきている」といわれている。共産党政権の同化政策に反対するウイグル人は強制的に臓器移植の対象となっているという。

武器で「平和」は実現できるか

 「平和」を実現するために「武器」を積極的に供給すべきだ…、ウクライナ戦争前ならばそんなことを言えば平和主義者たちからこっぴどく批判されただろうが、ロシア軍のウクライナ侵攻からは(2月24日)、現実的な主張だと受け取られてきた。

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▲ブチャで追悼するギャラガー大司教(右はウクライナのクレバ外相)バチカンニュース2022年5月22日から

 時代の変遷を象徴的に表した場面は、ドイツのショルツ首相が今月1日、ウクライナに対して重火器の供給を決定したことに対する批判に、「ロシア軍の侵略に対して死闘するウクライナ兵士に武器なして戦え、といえるか」と珍しく大きな声で叫んだ時だ。ドイツの社会民主党(SPD)出身の首相が国民の前に武器の供給を擁護する、といったシーンはウクライナ戦争前までは考えられなかったことだ。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、スイスのダボスで開催された「世界経済フォーラム」にオンラインで参加し、世界に向かって、「もっと武器を供給してほしい」と叫んだ。武器供給がウクライナに平和をもたらす、というのだ。「戦争」と「平和」は対義語だが、「平和」がこれまで距離を置いてきた「武器」という言葉に急接近してきた。武器によって「平和」を実現(回復)するというのだ。

 ロシアとウクライナの戦いは長期化する兆候が出てきた。それに呼応して、ロシア軍は武器の補給に乗り出し、ウクライナは新規武器を欧米諸国から入手するために努力している。戦場で投入される武器が増えれば、それだけ犠牲者の数は増えるだろうし、破壊される建物の数は増加するが、ウクライナ戦争の場合、それは武器供給者にとって第1の懸念ではなく、ウクライナ軍が軍事大国ロシアとの戦いで如何に公平な戦いが出来るか、その条件を整えることがウクライナ支援国の課題となってきた。表現は悪いが、まるでビデオのウォー・ゲームのようだ。

 米国と同盟国は23日、ウクライナへの軍事支援に関するオンライン会合を開き、47カ国が参加した、オースティン米国防長官は会合後、「イタリア、ギリシャ、ノルウェー、ポーランドなど約20カ国の参加国が新規支援を約束した。参加国の多くは、ロシアに対する防御のために、大砲、沿岸防衛システム、戦車、装甲車両をウクライナに供給することを約束した。たとえばデンマークは、対艦ミサイルとそれに対応する発射装置を供給する。これでウクライナがロシアの港の封鎖を打破できるようになる」と歓迎した。

 英国、フランス、ベルギーなどはいち早く軍事的守勢にあるウクライナを支援するために武器を供給してきたが、欧州の経済大国ドイツは第2次世界大戦での苦い体験から紛争地への武器の供給には厳格な規則があるうえ、国民からも厳しい抵抗があって、ウクライナ側の執拗な武器供給要請を拒んできた。しかし、ウクライナ東部マリウポリの廃墟化、キーウ近郊のブチャの虐殺などロシア軍の戦争犯罪を目撃するに及んで、ショルツ政権は政策を変更し、重火器の供給を認可した。

 (短期間だったが、ドイツでは集中的な論争が展開した。例えば、28人の知識人が4月29日、ショルツ首相宛てに書簡で武器供給の認可決定に反対を表明した。政治学者のトーマス・イェーガー氏は今月3日、「国際法によれば、武器の供給は認められる。それによって、ドイツは戦争の当事国とはならない。防御兵器と攻撃兵器の区別はないし、軍事装備でウクライナの兵士を訓練することは法的に正当化される」と表明。一方、「武器の供給がウクライナ戦争をエスカレートし、北大西洋条約機構(NATO)とロシア間の紛争となって、ロシア側の核兵器使用というリスクが現実味を帯びる」といった警戒論が出た。また、少数派だが、「戦争を終わらせ、平和を実現できるのならば、降伏も悪くはない」といった平和主義論者の声も聞かれた。注目すべきことは、連邦軍関係者が、「ウクライナに武器を供給し続けることは出来ない。わが国の軍事力を弱体化させる危険性があるからだ」と警告を発したことだ)。

 ドイツは背中を押されるように戦後から継続されてきた紛争地への武器供給禁止を破棄してウクライナへの武器供給を認可した。ドイツのメディアは、「ドイツ外交のパラダイムシフト」と呼んだ。保守派の「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)主導政権下ではできなかった外交・国防政策の変更を、SPD、緑の党、そして自由民主党(FDP)の3党連立のショルツ政権下で実現されたことは少々皮肉だ。

 メディアではあまり報道されていないが、世界最大のキリスト教宗派、ローマ・カトリック教会総本山、バチカン教皇庁もウクライナ戦争ではその外交が大きく変わった。バチカンはウクライナ戦争勃発直後、少し躊躇がみられたが、ここにきてウクライナを支援し、フランシスコ教皇のキーウ訪問の話も出てきている。建前はロシアとウクライナ間の停戦への調停だが、その姿勢はキーウ寄りだ。欧米諸国のウクライナへの武器供給に対して批判的なコメントはバチカンニュースでは見られなくなった。もちろん、ショルツ首相のようにウクライナへの武器供給支援を表明できないが、少なくとも暗黙の了解だ。

 バチカンの外務長官、ポール・リチャード・ギャラガー大司教は18日からウクライナのキーウを訪問し、ウクライナの人々に対するフランシスコ教皇の支持と連帯を伝えている。同大司教のウクライナ訪問はフランシスコ教皇のキーウ訪問の下調べだろう。

 (フランシスコ教皇のウクライナ訪問の日程はまだ不明だ。教皇自身が健康問題を抱えている一方、プーチン大統領を全面的に支持するロシア正教のモスクワ総主教キリル1世との関係もあって、ローマ教皇はキーウ訪問に慎重とならざるを得ない)。

 ウクライナ戦争を通じて、平和を回復するためには時には武器が必要、ということがほぼコンセンサスとなった。ウクライナの主権を蹂躙したロシアはその代償として世界を敵にしている。一方、敵国に包囲され、いつ襲撃されるか分からない状況にありながら、平和、平和と唱えているだけで相手が撤退すると考える国や国民にとっても貴重な教訓を与えている。

 ただし、武器で回復された平和は強固なものではなく、壊れやすいことは変わらない。勝者にも敗者にも積もり積もった恨み、憎悪が消えていないからだ。戦いが再開するかもしれない。

 武器で平和を実現する道はやむを得ない場合に限られるべきだ、と釘を差すべきだろう。ウクライナ戦争を契機に無制限な軍拡レースには警戒が必要だ。「剣を取る者は皆、剣で滅びる」というイエスの言葉を思い出す、多くの場合、やはりそれは当たっているからだ。

C・クラーク教授の「ウクライナ戦争」

 「戦争は開始するより終わらせるほうが数段難しい」といわれる。ひょっとしたらロシアのプーチン大統領はその課題に直面して頭を悩ましているのだろうか。それともロシア軍の再編成が終わり次第、ウクライナ全土の制覇に向けて総動員をかける考えだろうか。

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▲「夢遊病者たち」の著者クリストファー・クラーク教授、ドイツランド放送のインタビューに答える(ドイツ通信=DPAアルノ・ブルギ氏撮影)

 ロシア軍がウクライナに侵攻して以来、今月24日で90日目を迎えた。丸3カ月だ。ウィーンのウクライナ会議に参加したウクライナ政府関係者の話によると、これまで8万件以上のインフラがロシア軍の攻撃で破壊されたという。戦争が停戦したとしてもウクライナの再建復旧には長い年月と莫大な経費が必要となることは間違いない。

 興味深いことは、ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、TVインタビューで、「わが国はロシアに如何なる領土も手渡さない。ロシア軍が侵攻して占領した地域を奪い返すまで戦い続ける。それが実現すれば勝利だ」と述べる一方、「戦争は外交を通じて終結する」と指摘し、ロシアとの停戦交渉に柔軟な姿勢を示唆したことだ。それはウクライナ軍の軍事的成果に対する自信の表れか、それとも戦闘の長期化はウクライナ側にとっても大きな負担となってきた兆候だろうか。

 軍事大国のロシア軍が侵攻して以来、脆弱と思われたウクライナ軍は旺盛な士気と戦闘能力を発揮し、ロシア軍のキーウ征服を防ぐ一方、ロシア軍に奪われた領土の一部を奪い返すなど抵抗してきた。欧米諸国はウクライナ軍の士気の高さに脱帽する一方、武器供給要請にも応じてきたが、ドイツメディアの報道によると、ウクライナ兵士の中にも戦闘疲れ、厭世観が見られだしたという。その意味でロシア軍とウクライナ軍が武器を下ろしてシリアスな停戦交渉を始める時ではないか、といった希望的観測が聞こえるわけだ。

 オーストリア最大部数を誇る日刊紙クローネ日曜版(5月22日)には英ケンブリッジ大で教鞭をとるオーストラリアの歴史家クリストファー・クラーク教授とのインタビュー記事が掲載されていた。同氏は近現代史研究の第一人者だ。第1次世界大戦の勃発背景を詳細に検証した著書「夢遊病者たち」(Die Schlafwandler)はベストセラーとなった。バルカン半島の紛争が如何に世界大戦にまで発展していったかをテーマとした歴史書だ。ロシア軍がウクライナに侵攻した直後、ウクライナ戦争が第3次世界大戦に発展する危険性があるとして、ウクライへの武器供給に懐疑的な政治家や関係者がその根拠としてクラーク教授の「夢遊病者たち」を例に挙げて論議してきた。

 そのクラーク教授は、「ロシア軍の動員状況は1911年から12年の冬にかけてオーストリア・ハンガリー帝国軍とロシア帝国軍の動員状況を想起させるが、その後の展開はまったく異なっている。欧州諸国は統合する一方、ロシアは孤立している。そのうえ、争いの動機が根本的に異なる」と指摘し、1914年の第1次世界大戦とウクライナ戦争とは類似性がないと強調。ウクライナ戦争を第2次世界大戦と比較する点については、「理解できるが、プーチン大統領をヒトラーと比較する論調は間違っている。プーチンはヒトラーではない。ウクライナでロシア軍が行っているのは戦争犯罪であり、特定の民族を対象としたジェノサイドではない」と主張している。

 ウクライナに武器供給するなど軍事支援することで戦争をエスカレートさせる危険性が出てくる、との指摘に対して、「犯罪行為に対して過剰に反応することによって生じる危険より、過小評価して生じてくるリスクのほうが深刻だ。隣国が武力侵攻された時、それを過小評価して対応するなら、次のリスクを生み出すことになる」と説明する。

 ウクライナ戦争への英国のジョンソン首相とドイツのショルツ首相の対応が対照的と受け取られている。クラーク教授は、「ジョンソン首相は自身をウインストン・チャーチル元首相(在任1940年〜45年、51年〜55年)のような気分で振舞っているが、滑稽だ」と批判する一方、ドイツのショルツ首相の慎重なウクライナ政策を評価する。

 クラーク教授は、「戦争前、ロシアのラブロフ外相や2、3の中国の政治家たちは欧米諸国が支配してきた時代は終わり、ポスト欧米世界が到来すると主張してきたが、実際は違ってきた。欧州諸国はウクライナ危機で結束を強め、北大西洋条約機構(NATO)はその役割を果たしている。西側主導の世界はまだ終わっていない」と語った。そして「プーチンとロシアは異なっている。戦争に反対する勇気あるロシア国民もいる」と指摘、「ロシアを見捨ててはならない。将来のために正当な役割をロシアに提供すべきだ」と述べている。

「戒め」はいつ、誰から始まったか

 オーストリア与党「国民党」特別党大会が今月14日、同国第2番の都市グラーツで開催されたが、党首選出後、ニーダーエステライヒ州元首相(在任1992年〜2017年)のエルヴィン・プレル氏が民間放送とのインタビューに答えていたのをたまたま聞いた。同氏は党首選の結果や国民党の諸問題について答えた後、「重要なことは10戒を守ることです」と述べたのだ。もちろん、「10戒」とはモーセがシナイ山で神からもらった10の戒めのことだ。

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▲レンブラントの画「モーセの10戒」(ウィキぺディアから)

 「へえー、プロル氏も案外宗教的な人間だな」と関心してしまった。同氏曰く、モーセの「10戒」を守れば、党内の腐敗、堕落が絶えない国民党だけではなく、オーストリアの政界、社会もよくなることは間違いない、と言いたかったのだろう。問題はそれを守れるかどうかだ。10戒をそらんじても意味がない。ただ、宗教家ではなく、政治家が「10戒」という言葉をメディアに語ったので当方は新鮮な驚きを感じた。

 そこで「モーセの10戒」について考えてみた、まず「10戒」の内容を簡単に紹介する。

 ,錣燭靴里曚に神があってはならない。
 △△覆燭凌澄⊆腓量召鬚澆世蠅望Г┐討呂覆蕕覆ぁ
 主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。
 い△覆燭良稱譴魴匹─
 セΔ靴討呂覆蕕覆ぁ
 Υ淫してはならない。
 盗んではならない。
 隣人に関して偽証してはならない。
 隣人の妻を欲してはならない。
 隣人の財産を欲してはならない

 モーセの「10戒」の内容は 銑を除けば新しい内容ではなく、家庭や学校、社会で学ぶものだ。

 神はモーセに「10戒」を与える前にノアにも「戒め」を与えている。ただし、10の戒めではなく、7つの戒めだ。英語ではノアハイド法(Noahide Law)とも呼ばれ、タルムードに記載されている。ノアの「7戒」は以下の通りだ。

 ゞ像崇拝の禁止。
 ∋人の禁止。
 E霪颪龍愡漾
 だ的不品行の禁止。
 ニ粗造龍愡漾
 Δ泙誓犬ている動物の中から取られる肉を食べる残虐行為の禁止。
 Ъ匆饑亀舛里燭瓩遼‥整備の義務化

 神はモーセに「10戒」を与えているのに、ノアの時はなぜか「7戒」の戒めしか与えなかったのだろうか。ノアはアダム・エバの人類始祖から約1600年後の人物だ。神はアダムに代わって“第2のアダム”としてノアを召命し、アダムに与えたように3つの祝福をノアにも与えている。モーセはそのノアから約400年後の人物だ。すなわち、聖書学的にはノアは先輩であり、モーセは後輩だ。

 当方の推測だが、ノアの時代は7つの戒めで十分だったが、モーセの時代に入ると、異教信仰が広がって世は更に混乱していた。だから神はモーセにノアよりも3つ多い戒めを与えたのではないか。また、ノアハイド法は本来、全世界の人間が従うべき戒めとして神がノアに与えたといわれる。モーセの「10戒」は神の選民ユダヤ人を対象として与えられた内容だ。

 もちろん、戒めはユダヤ教社会だけの専売特許ではない。仏教には「5戒」がある。性別を問わず、在家信者が守るべき基本的な5つの戒(シーラ)だ。

 ”垰生戒(ふせっしょうかい)
 不偸盗戒(ふちゅうとうかい)
 I埃抂戒(ふじゃいんかい)
 ど毀儻豌(ふもうごかい)
 ド坩酒戒(ふおんじゅかい) .. 

 注意深い読者ならば、モーセの「10戒」、ノアの「7戒」、そして仏教の「5戒」の内容が驚くほど似ていることに気が付かれるだろう。換言すれば、民族、宗教の違いを超え、人間として守るべき戒めは基本的には同じだといえるわけだ。

 ところで、「初めに言があった。言は神と共にあった」(「ヨハネによる福音書」第1章)ように、「戒め」にも初めがあったのだろうか。「戒め」のルーツだ。神は人類の始祖アダムとエバに「戒め」を与えている。それもたった一つの戒めだ。その内容を旧約聖書の創世記から引用する。

 主なる神はその人に命じて言われた、「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。しかし善悪を知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べると、きっと死ぬであろう」(創世記第2章16節〜17節)。

 すなわち、「善悪を知る木の実を取って食べるな」が神が人類に与えた最初の戒めだったわけだ。ただし、神は果実栽培者ではない。「エデンの園」にあった善悪を知る木は文字通りの果実ではなかった。結論をいえば、性的関係を結ぶことを意味する。ただし、神は人類に「産めよ、増えよ」と祝福し、アダムとエバが夫婦関係を結んで子供を産むことを奨励していることから、アダムとエバに夫婦関係を結ぶなという内容の戒めではなかったはずだ。そこで「成熟し、善悪を判断できるまで結婚を待ちなさい」という意味と解釈できる。結果として、アダムとエバはその戒めを破った。神から追及された時、アダムとエバは「下部を隠した」という聖句が記述されている。

 興味深い点は、その後、性的関係を結ぶことがなにか忌まわしいことのように受け取られ出したことだ。実際、ノアの「7戒」、モーセ「10戒」そして仏教の「5戒」には淫乱、淪落を最大の罪としているのだ。それらはアダムとエバ時代の「1戒」をルーツとしているわけだ。そして人類の罪が広がるにつれて、その戒の数が増えてきたのだ。

「生きる」にも「死ぬ」にも大変な時代

 「風が吹けば桶屋が儲かる」というわけではない。ロシアのプーチン大統領がロシア軍をウクライナに侵攻させて以来、エネルギーや食糧の価格は急騰し、物価が高騰してきた。厳密に言えば、エネルギー価格はその前から高騰していたが、ウクライナ戦争でそのテンポが速まった。

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▲埋葬件数では世界1を誇るウィーン中央墓地に埋葬されている楽聖べートーヴェンの墓(2017年10月撮影)

 家人が買い物から帰ってくると、「全てが高くなったわ」とため息を漏らすことが多くなった。例えば、パプリカだ。数カ月前は3個入りの袋が1・9ユーロ前後だったが、ついに3ユーロを突破したという。日本のライスに近いということでイタリア・ライスをよく買うが、安くて結構美味しいことから多くの人が買うため、直ぐに売り切れる。ドイツ人らの主食ジャガイモも高くなったが、まだバカ高くない。2キロで買うより、5キロ入り袋のお徳用ジャガイモを買うほうが得だ。ただし、5キロ入りジャガイモを買うと、その後、数日間はジャガイモ料理が食卓を飾る。腐らないうちにジャガイモを料理しなければならないからだ。

 スパゲッティや小麦粉も高くなった。料理やケーキ作りに欠かせられないバターは特別サービスの日にまとめて買う人が多い。消費者が知恵を使って如何に安く、いい食材を買うかで奮闘しているのだ。

 ちなみに、オーストリアの4月のインフレ率は7・2%だ。ガソリン代、ガス代は2ケタ台のインフレだ。肉類は10・7%、パン類は8・2%、ミルク・チーズ6・9%といった具合だ。

 今、食べている食材がいかに高くなったかを家人と話している時、オーストリア国営放送の夜のニュース番組の中で、「葬儀代も高くなりました。安価で神聖さを失わない葬儀が求められている」というニュースが流れてきた。

 当方はいつ死んでも不思議ではない年齢に入ったこともあって、葬儀代について考える機会が増えた。日本でも冠婚葬祭の費用が高いと聞くが、欧州でも葬儀代が結構高いのには驚いた。

 米作家ラングストン・ヒューズは、「墓場は、安上がりの宿屋だ」と述べたが、ウィーンでは墓場は高くつく。数年前、知人の銀行マンと話した時、彼は、「残された家族のために今から死んだ時の墓場代を貯金しておけばいいですよ。ウィーン市では平均8000ユーロ(約100万円)はかかりますからね」と教えてくれたことがあった。ウィーン市では、安上がりの墓場を見つけることは難しくなった。

 ウィーン市当局は市民の悩みに答え、簡易な葬儀を勧めている。葬儀の費用についての心配が、失った人の悲しみよりも大きくてはいけない。だから、手頃な価格でありながら、ある程度の尊厳のある葬儀が大切となる。欧州でも火葬が増えてきている。埋葬する場所が少なくなったこと、その埋葬を含む葬儀代が高くなったからだ。

 そこで考えられている最も安価な火葬の費用は約1350ユーロ(約18万円)だ。これには、火葬場への移送、火葬自体、棺、骨壷、部品、記念写真などのサービスが含まれる。その後、骨壷を家に持ち帰ることができる。これは最も安価なオプションだ。墓地に埋葬するには、少なくとも900ユーロを追加する必要がある。

 ちなみに、キリスト教の欧州社会では基本的には土葬だ。ローマ・カトリック教会の教えでは、基本的には死者は埋葬される。神が土から人間を創ったので、死後は再び土にかえるといった考えがその基本にあるからだ。旧約聖書でも、「火葬は死者に対する重い侮辱」と記述されている。そのうえ、火葬は、「イエスの復活と救済を否定する」という意味に受け取られたからだ。フランク王国のカール大帝は785年、火葬を異教信仰の罪として罰する通達を出している。ドイツのプロテスタント系地域やスイスの改革派教会圏では1877年以来、火葬は認められ、カトリック教会でも1963年7月から信者の火葬を認めている(「変りゆく欧州の『埋葬文化』」2010年10月29日参考)。

 最近はドナウ川に火葬後の遺灰を撒いたり、ウィーンの森に遺灰を撒くといったケースも報告されている。もちろん、その場合、ウィーン当局の許可が必要となる。市民が皆、遺灰をドナウ川に散布すれば、青きドナウ川は直ぐに遺灰だらけとなり、魚は住めなくなり、人は夏泳ぐこともできなくなる。

 いずれにしても、簡易な葬儀のコストは1350ユーロ、平均8000ユーロ、豪華な葬儀の場合1万ユーロ以上となる。どの葬儀を選択するかは、生きている人間の最後のチョイスだ。死ぬ前に「1350ユーロの葬儀でお願いします」とレストランで食事を注文するように、葬儀関係者に通知しておけば、残された家人は悩むことなく葬儀を挙行できるわけだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で多くの人が亡くなった。そしてウクライナ戦争では兵士だけではなく、民間人も犠牲になっている。感染防止のために亡くなった家人を葬ることが出来ないために悲しむ人々、イタリア北部ロンバルディア州のベルガモ市では、軍隊のトラックが病院から亡くなった人々を運び出すシーンは痛々しかった。戦地では、埋式する場所がないため袋に入れられ、そのアイデンティティすら不明のまま埋められていく。21世紀に入って、「死」は私たちの日常生活から遠ざかるのではなく、再び身近になってきた。

 「生きる」ための衣食住代が高騰してきた。移動し、仕事、活動するためのエネルギー代も高くなった。そして人生の最後のイベント(葬儀代)も高くなった。明らかな点は、「生きる」ことも「死ぬ」ことも容易ではない時代を迎えているということだ。
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