ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2021年12月

ニューイヤー・ブルースを乗り越え

 1年の最後の日をドイツ語圏ではシルベスターと呼び、各地で人々が集まって過ぎ行く年を忘れ、賑やかに新年を迎えるのが慣例となっている。音楽の都ウィーンでは31日、シュテファン大聖堂周辺で多くの市民が集まり、新年を告げる正午零時の鐘が鳴ると、ヨハンシュトラウスのワルツを踊り、シャンペンで乾杯しながら新年を迎える。大晦日除夜の鐘を境に近くの神社に行って新年の健康と幸運を祈る人が多い日本とは違って、当地では31日は街に繰り出して、花火を見ながらニューイヤーをカウントダウンして迎える。

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▲わが家に住むジャッキー&ポッキーからの挨拶
 「今年1年ありがとう。新年もよろしくね」

 2021年は新型コロナウイルスが世界を席巻し、パンデミック(世界大流行)となって多くの犠牲者を出した年だ。コロナ禍は欧州でもこれまでの伝統、習慣、慣例の全てをを打ち破った(幸い、2022年のニュー・イヤー・コンサートは無観客で開催された2021年とは違い、限定された数のファンが楽友協会に入場可能となった)。

 シルベスターは本来、レストランや特定の飲食店は深夜まで営業する。“シルベスター・メニュー”と呼ばれる食事は普段の2倍の値段とちょっと高いが、1年最後のシルベスターメニューを楽しんだ後、街に出てワルツを踊って新年を迎える。今年もコロナ規制のためにその情景は見れない。政府のコロナ規制委員会が、「シルベスターは夜22時で営業閉店すべきだ」となったのだ。レストランのラスト・オーダーは21時半、22時になるとゲストは外に出ていかなければならない。シルベスターの祭りもこれではおじゃんだ。ということで、飲食業界は最後まで政府のコロナ規制に猛反対している。

 ただし、新型コロナウイルスの感染動向はやはりそれを認めないだろう。多くの人々が集まり、大騒ぎする場所はコロナウイルスにとっても絶好のチャンスとなる。4回目のロックダウン(都市封鎖)明けから数日間、新規感染者数は減少したが、ここにきてウイルスの変異株オミクロン株がオーストリアでも猛威を振う気配が出てきたからだ。

 政府は「家でシルベスターを過ごし、新年を迎えてほしい」と懸命にアピールしている。ウイルス学者たちは「シルベスター・パーティは危険だ」と警告を発するが、国民の中には強い抵抗がある。オーバーエステライヒ州では31日夜10時からコロナ規制反対、ワクチン接種の義務化に抗議するデモ集会が開催されるという。警察当局は、「シルベスター規制を破る国民は厳格に処罰される」と述べ、国民に自制を促している。

 ところで、ニューイヤー・ブルースという言葉をご存知だろうか。社会心理学者がこの時期になると使用する表現で、「年の終わりから新年にかけ、憂鬱になり、眠れず、やる気がなくなる人々が出てくる。新型コロナウイルスの感染とその規制が長期化することで、コロナ・ブルースと呼ばれる精神的落ち込みがみられるが、ニューイヤー・ブルースも症状は似ているが、年末年始にかけての精神的、心理的落ち込み現象を意味する」という。

 ニューイヤーは本来、新しい年を迎え、目標をたててスタートする時だが、ブルー(憂鬱)になる人が出てくる。理由は様々だ。欧州では年最大のイベントのクリスマスが終わり、シルベスターを迎えると、一種の“祭りの終わり”だ。興奮して緊張していた神経は解かれ、体力的にも疲れが出てくる。そのうえ、夕方4時には外は暗くなる。外で何かするといった雰囲気はない。そのうえ、コロナ・ブルースも重なってくると、人は深い憂鬱の世界に陥り、そこから出てくることが難しくなるわけだ。

 ウィーン市ではニューイヤー・ブルースに陥った市民へのホットライン、相談所がある。社会心理学者は、「規律ある生活を過ごすべきだ。深夜までテレビを観て、昼頃目を覚ますような生活はよくない。家族や知人、友人と話す時間を大切に」とアドバイスしている。

 ウィーンでは2021年はロックダウンで始まり、ロックダウン明けで幕を閉じた1年だった。22年に入ればオミクロン変異株の猛威を迎える。そのような中で希望を失わず、目標を立てて生きていくのは大変だ。コロナ禍も3年目を迎えるが、全てには始まりがあるように、終わりがある。この期間をニューイヤー・ブルースに陥ることなく、精神的にも体力的にも挑戦的な日々を過ごしたいものだ。

 2021年の1年間、お付き合いしてくださいまして有難うございました。皆様に神の祝福がありますように。

トリアージと「障害者の権利」問題

 ドイツ連邦憲法裁判所(独南部カールスルーエ)の第1上院は28日、トリアージの際に障害者の保護を要求した9人の障害者の訴えを認め、「障害者権利条約に基づき、トリアージが発生し、医師が誰を救うか、誰を救わないかを決定する状況になった場合、障害者を保護するために直ちに予防措置を講じる必要がある」と裁定し、立法府に迅速にトリアージでの障害者の保護を明記した法案を作成をするように要請した。

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▲ロベルト・コッホ研究所の研究開発室で独国立感染症研究所「ロベルト・コッホ研究所」(RKI)公式サイトから

 トリアージについて、トリアージ専門家のバーバラ・フリーゼネッカー氏は独週刊紙「ディ・ツァイト」とのインタビューで、「トリアージとは並べ替えと振るい分けを意味する。コロナ患者の急増で医療崩壊した状況を表現するときに頻繁に使用されているが、この概念は通常、災害医療の現場で使用される。地震や列車事故の場合、事故現場に到着し、医師が少なすぎて全ての患者を適切にケアできない場合、医師はどの患者を最初に救済しなければならないかを判断しなければならない。集中治療を受ける患者とそうではない患者に分け、別々のカードを使って区別する。生存の可能性の少ない患者は緊急治療から外す。トリアージの目的は緊急事態で出来るだけ多くの命を救うことだ」と説明している。

 欧州全土で新型コロンウイルスの感染が拡散し、新しい変異株オミクロン株が猛威を振るいだし、ドイツでもオミクロン株の感染が広がってきた。ドイツではパンデミック以後、トリアージがテーマとなることはなかった。ところが、9人の障害者が「新型コロナウイルスの感染が広がり、病院の入院患者が増え、集中治療室ベッドが少なくなった時、障害者が他の患者より延命チャンスが少ないとして、その権利が蹂躙される危険性が出てきた」と指摘、「医師会が作成したトリアージの推奨事項では障害者の権利が言及されていない」として、全ての国民が平等の権利を有していると明記したドイツ基本法(憲法に相当)に違反している」と訴えたのだ。

 それを受け、連邦憲法裁判所は訴えを受理し、立法府に「基本法の第3条第3項第2項に基づき、障害者の権利を保護するために迅速に関連法を作成すべきだ」と要請した。連邦憲法裁判所が少数の国民の訴えを受理すること自体、非常に珍しい。コロナウイルス感染拡大を受け、トリアージ問題がここにきて浮上してきたわけだ。

 連邦憲法裁の要請を受け、マルコ・ブッシュマン法相(自由民主党=FDP)は「政府は連邦憲法裁の決定を受け、迅速に対応する」と発表、「我々の目標は、トリアージが生じないことだが、もしそのような状況に陥った場合、障害をもつ人々を差別から守るために明確なルールが必要だ」と述べ、政府は早急に関連法案を提出すると述べている。

 これまでトリアージ問題は医師会の決定に従うもので、政府が同問題に関与して関連法案を作成する必要性はない、という立場だった。原告側の障害者は、「トリアージは不公平だ。人の価値を身体の障害で判断すべきではない」と訴えてきた。医師会が作成する基準自体が問題だという声もある。障害ゆえに延命チャンスが低いといった偏見が医師たちにあるからだ。

 トリアージのガイドラインはドイツ集中医療救急医学会(Divi)や他の医学会が作成したものだ。連邦憲法裁判所は、臨床的成功の基準を憲法上異議のないものと受け取ってきたが、「すべての人が利用できるわけではない救命救急リソースの割り当てで誰も不利益を被らないように予防措置を講じる義務がある」として、立法府に法案の作成を要請したわけだ。与党社会民主党(SPD)の健康問題広報担当のハイケ・ベーレンス議員(HeikeBaehrens)は「法案に関する審議は1月に始める」と述べている。

 問題はある。政治家は医療分野の専門家ではない。トリアージの場合、現場の医療専門家が最終的に決定を下すから、今回の連邦憲法裁判所の決定はその点で変化はない、という点だ。なお、医師たちは「年齢や障害はトリアージの決定に影響を与えない」と主張している。

 トリアージ問題の専門家は、「非常に異なる状況にある複数の患者がいる場合、すばやく客観的で正しい決定を下すことは困難だ。その場合、『宝くじ』の倫理原則に従って、サイコロを投げたり、棒を引いたりする。優れた医学的意思決定とは何の共通点もない絶望的な行為だ」と述べている。トリアージは患者たちにとって過酷な運命だが、医師たちにとっても苦しい選択となる。

イラン大統領は「夢」を見たのか?

 陸上競技の三段跳びをご存じだろう。イランの少数宗派キリスト教徒への政策が三段跳びの選手のように見えてくるのだ。説明する。三段跳びに倣いホップ・ステップ・ジャンプで紹介する。

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▲イラン・イスラム共和国の国旗(バチカンニュース2021年12月27日から)

 ホップ・・・イランで先月、裁判所で9人の改宗者(イスラム教徒からキリスト信者に)が自宅や個人の建物で行われた教会礼拝(家の教会)に出席していたとして、禁錮5年の実刑判決を宣告されたが、イラン最高裁判所が11月3日、「キリスト者らの自宅での礼拝の参加またはキリスト教の促進は国家安全保障を侵害する行為とはならない」と判断し、改宗者を訴える必要はないとの裁定を下したのだ。イランではイスラム教以外の宗教者は「国家の敵」と受け取られてきたが、その国の最高裁判所が「そのようには解釈できない」という法解釈を下したのだ(「テヘランから朗報が届いた」2021年12月10日参考)。

 ステップ・・・イスラム教シーア派の盟主イランのエブラヒーム・ライシ大統領から世界のキリスト教徒にクリスマス・メッセージがあった。イラン指導部の強硬派として知られているライシ大統領はフランシスコ教皇宛てのメッセージの中で、「平和と優しさの預言者であるイエス・キリストの誕生日、2022年の初めに、あなたの聖性と世界中のすべてのクリスチャンに心からのお祝いを申し上げます」と述べている。

 同大統領は、「イエス・キリストの誕生日は神の意志と力の現れであり、聖マリアの精神的な位置は、神の宗教の存在論における女性の地位の偉大さを示しています。この祝福された誕生日を祝うことは、聖マリア(PBUH)を称える機会であり、利他主義のモデルと抑圧された人々の救いの先駆者であるイエス・キリストの道徳的資質を思い出します」と述べている。クリスマス・メッセージは多くあるが、イランのライシ大統領のそれは宗教者らしい格調のある内容だ(「イラン大統領のクリスマス祝賀書簡」(2021年12月26日参考)

 ジャンプ・・・イランの司法の長は、キリスト教徒の囚人に、家族と一緒に休暇を過ごすことができるように、10日間の休日を与える指令を全国の当局に指示した。イランのクリスチャンは、1月6日にエピファニー(公現祭=異邦への救い主の顕現を記念する祝日)でクリスマスを祝うアルメニア人がほとんどだ。クリスマスシーズンに入ると、テヘランや他の主要都市のいくつかの店はクリスマスツリーを含む装飾を施し、サンタクロースに扮した人々が店の前に立っている。

 イラン最高指導者ハメネイ師はイスラム教の休日に囚人に恩赦または短縮刑を与えることがよくあったが、イランの司法当局がキリスト教徒の少数派のメンバーに配慮したような措置を発表することはまれだ。ニュースポータル「Uca-News」が報じている。

 何人のキリスト教徒の囚人が休暇の恩恵を受けるか、または10日間の期間がいつ始まるかについては報じられていない。ただし、治安を損なう、組織犯罪、誘拐、武装強盗で有罪判決を受けた被拘禁者、および死刑を宣告された者はその恩恵を受けられないという。地元メディアによると、キリスト教徒はイランの総人口8300万人のうち、わずか1%を占めるだけだ。大多数はシーア派イスラム教徒だ。

 ホップ・ステップ・ジャンプでイランという国の三段跳び選手はどこまで飛ぶだろうか。イランは「イラン革命」以来、神権国家であり、イスラム教の法の教えを国是とするイスラム教国だ。そこで少数派のキリスト教徒に対して、司法当局が寛容な政策を実施しているのだ。「家の教会」はもはや国家の敵ではない、という判断は画期的な政策転換を意味する。ひょっとしたら一時的な政策で時間の経過と共に再び厳格な少数宗派政策が行われるのではないか。ローマ・カトリック教会の総本山バチカンは、「イラン当局の政策を過大に評価せずに慎重に受け取るべきだ」と釘を刺している。確かに、イランでは最高裁判所とはいえ、革命裁判所の前には無力かもしれない。それとも、イラン当局内でまだ知られていないが、パラダイムシフトが起きているのだろうか。

 ペルシャ王クロスはBC538年、ユダヤ民族を解放し、エルサレムに帰還することを助けた話をご存じだろう(「ペルシャ王がユダヤ民族を助けた話」(2013年11月28日参考)。ヤコブから始まったイスラエル民族はエジプトで約400年後、モーセに率いられ出エジプトし、その後カナンに入り、士師たちの時代を経て、サウル、ダビデ、ソロモンの3王時代に入ったが、神の教えに従わなかったユダヤ民族は南北朝に分裂し、捕虜生活を余儀なくされる。北イスラエルはBC721年、アッシリア帝国の捕虜となり、南ユダ王国はバビロニアの王ネブカデネザルの捕虜となったが、バビロニアがペルシャとの戦いに敗北した結果、ペルシャ王国の支配下に入った。そのペルシャ王クロスはユダヤ民族を解放し、エルサレムに帰還することを認めたのだ。

 現代のイランの為政者はイスラエルを最大の宿敵と考え、「地図上からイスラエルを抹殺する」と敵愾心を露わにしているが、2550年前、ペルシャ王は夢を通じてユダヤ人を救った。ペルシャ王のその決断がなければ、イスラエルのその後もなかっただろう。

 それではなぜクロス王は捕虜だったユダヤ人を解放したのか。旧約聖書のエズラ記1章1節によると、「ペルシャ王クロスの元年に、主はさきにエレミヤの口によって伝えられた主の言葉を成就するため、ペルシャ王クロスの心を感動させたので、王は全国に布告を発し……」というのだ。ペルシャ王の心を感動させたということは、ペルシャ王は夢を見たのではないか。旧約時代では「夢」は神のメッセージを伝える手段だと考えられた。クロス王は夢を見て、国内にいるユダヤ人を即釈放すべきだと悟ったのだろう。

 世界史で学んだことだが、キリスト教徒を迫害してきたローマ帝国は西暦313年、ミラノ勅令でキリスト教を公認したが、古代末期の歴史家で神学者カエサレアによると、皇帝コンスタンティヌス(在位306〜337年)が戦場に向かう時、上空に光の十字架を見たという。その前に、皇帝コンスタンティヌスは夢を見、そこでイエスが現れたというのだ。ローマ皇帝のキリスト教公認の背景には夢と幻想が大きな役割を果たしているのだ。

 歴史は、その時の指導者や暴君が戦争や紛争を引き起こし、時代の様相が激変していったことを記しているが、歴史的なエポックはクロス王やコンスタンティヌス大帝のように夢や幻想という通常ではない手段でもたらされてきたのではないか。

 イランの最近のキリスト教徒への寛容な政策は現在の世界情勢を反映したものというより、ライシ大統領が見た夢によるものではないか(ひょっとしたら、夢を見たのはイラン最高指導者ハメネイ師かもしれないが……)。いずれにしても、イランの指導者が三段跳び選手のように、ジャンプで遠くに飛ぶために懸命に助走方向に足と手を伸ばしている姿が浮かび上がってくる。当方も夢を見ているのだろうか。

チェコの「コロナ事情」と新政権

 「新型コロナウイルスへのワクチン強制接種に対して自分は最初は懐疑的だったが、パンデミックの拡大に直面してその考えを変えた」
 チェコのミロシュ・ゼマン大統領は慣例のテレビのクリスマス演説でこのように述べた。

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▲フィアラ首相(中央)=チェコ政府公式サイトから、2021年12月17日

 コロナ感染が拡大し、デルタ株、オミクロン株などの変異株が拡散してきた事態に直面し、欧州ではワクチン接種義務化について容認する声が高まってきている。ゼマン大統領もその1人だ。政治家が公の場で自身の考えが変わったと表明するケースはこれまで少なかったが、パンデミック以来、増えてきている。

 チェコの隣国オーストリアでも政府のコロナ政策を悉く批判してきた野党、リベラル政党「ネオス」のベアテ・マインル=ライジンガー党首は記者会見で、「自分はワクチン接種の義務化には反対してきた。国民の自由な判断を尊重していたからだ。しかし、ワクチン接種の現状やコロナ感染の拡大などをみて、ワクチン接種の義務化を支持することにした。さもなければ、第5、第6のロックダウンが回避できなくなるからだ」と説明していた。

 ゼマン大統領は、「ワクチン接種の義務化はパンデミック対策でわれわれが取れる対策の一つと確信している。実際、われわれは過去、他の多くの病気に対してワクチン接種の義務化を実行してきた。なぜコロナウイルスに対して反対するのか」と問いかけている。

 ゼマン大統領がここにきてワクチン接種義務に立場を変えた最大の理由は、オーストリア政府のワクチン接種義務化政策の影響があることは疑いない。オーストリアでは来年2月から接種義務化を実施することになっている。チェコのワクチン接種率は27日時点で1回接種率63・7%、2回完了62%で、欧州の中ではかなり低い。

 チェコでは11月22日から飲食店、宿泊施設、サービス店舗(美容院など)を利用する際にはワクチン接種証明又は感染済み証明だけが有効となり、PCR検査や抗原検査の陰性証明書は無効となった。そして11月26日から12月25日まで30日間の非常事態宣言が発令された。同国では5度目となる非常事態宣言下のコロナ規制は、ロックダウン(都市封鎖)は行わず、店舗は営業が継続され、店舗面積に応じた人数制限が行われ、レスピレーター(FFP2マスク)の着用義務、飲食店の営業時間は夜22時まで、公共の場での飲食は禁止、イベント参加人数は上限100人まで、スポーツやコンサートなどの文化イベントは1000人まで等となっている。

 非常事態宣言の終了後、 2、3のコロナ規制、外出制限は解除されたが、イベント参加人数などは一層強化される。フィアラ新連合政権は27日から厳しい入国規制を施行する。ロイター通信によると、チェコでは新規感染者数は減少傾向にあり、平均1日6070人の新規感染者が報告されている。1日平均人数のピークだった11月26日の32%に当たる。パンデミック開始以降、12月26日時点で累計感染者数は244万5741人、死者数3万5749人だ。

 ちなみに、コロナ禍下で実施された下院選挙(10月8,9日)でバビシュ首相が率いるポピュリスト運動「ANO2011」が反バビシュで結束したリベラル・保守政党の野党連合(Spolu)と左翼のリベラルの政党「海賊党」と「無所属および首長連合」(STAN)の選挙同盟に僅差で敗北した。選挙結果を受け、ゼマン大統領は野党連合に新政権の組閣を要請する予定だったが、本人が病気に倒れ、入院。退院後、今度はコロナに感染して再入院となったため、新政権の発足は遅れ、12月17日になってようやく「市民民主党」(ODS)のペトル・フィアラ党首主導の新政権が誕生したわけだ。

 なお、バビシュ政権は2022年3月から60歳以上の国民にワクチン接種の義務を決定したが、新政権のヴラスティミル・ヴァレク新保健相は前政権のコロナ対策の見直しを発表している。左右両陣営の政党から構成されたフィアラ政権は欧州全土に急速に拡散するオミクロン株対策に取り組むことになる。ゼマン大統領の「ワクチン接種義務化」についての発言は今後の感染状況次第では本格的な議論を呼ぶかもしれない。

欧州アルペンスキー国の「懸念」

 オーストリアは今年の第32回東京夏季五輪大会では予想外の成果を上げ、国民は大喜びだった。メダル数では金1、銀1、銅5の計7個を獲得した。メダル総数では2004年のアテネ大会の8個に次いで歴代2番目の成果だ。国民にとって最高のエキサイティングな五輪大会となった。同時に、新型コロナウイルスの感染拡大の下で大きな不祥事もなく、17日間の競技を無事終了したということは、ホスト国日本が世界に誇ることが出来る結果となった。

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▲アルペンスキー国オーストリアの女子大回転(オーストリア・スキー連盟公式サイドから)

 オーストリアは本来、ウインター・スポーツのメッカだ。過去2回、インスブルックで冬季五輪大会を開催した実績がある。2006年のトリノ大会では金メダル9個を含め23個のメダルを獲得してメダル獲得数では出場国中3番目だった。2018年の韓国平昌大会では金5、銀3、銅6、計14個のメダルだった。来年2月4日から始まる第24回北京冬季五輪大会にアスリートばかりか国民もメダルへの期待は大きい。オーストリアは、長野冬季大会(1998年)で大回転とスーパー大回転で2個の金メダルを取ったヘルマン・マイヤーや、ワールド・カップ総合優勝8連覇の大記録をつくったマルセル・ヒルシャーを輩出したアルペンスキー大国だ。

 ところが、オーストリア・スキー連盟(OSV)関係者から北京五輪に対して不安と懸念の声が聞こえる。OSVでアルペンスキーの組織準備責任者パトリック・リムル氏は、「北京大会はわれわれにとって大きな挑戦だ。問題はアルペンスキー競技が実施されるオリンピック競技場のアルペンスキーセンター(北京市延慶区)を訪ねたことがないことだ。私たちはスキー・クロッサーなど限られた競技の体験しかない。そのうえ、新型コロナウイルスの感染対策は昨年以上に厳しくなった」という。

 スキー選手は大きな大会前には必ず現地を訪ね、コースなどを視察し、距離感、傾斜などの感触を学ぶ。W杯大会となれば、一流選手は過去、何度もそのコースを滑ったことがあるので不安は少ない。しかし、北京の場合、選手も関係者も現地を全く視察したことがない。選手や関係者もコースへの不安や雪の状況について懸念を払しょくできないわけだ。

 リムル氏は、「前回の韓国平昌大会では、大会前に5回、現地を視察した。延慶では、昨年(男子)と今年(女子)のW杯レースが行われる予定だったが、コロナウイルスのパンデミックのため、レースはキャンセルされた」という。

 リムル氏によると、「来年1月22、23日開催されるキッツビュール大会後、中国に飛び、宿泊施設や競技会場をみて、現地の雰囲気を感じたい。選手団は1月28日、29日には中国入りする予定だ。ただ、確認済みのフライトはまだない」という。

 参加国に対する中国側からの要請はコロコロ変わるという。リムル氏は、「オーストリアとしては、自国のホスピタリテイ・チームを派遣し、わが国から料理人を連れていきたいところだ。ただし、可能としても現地での食材確保は大丈夫かなど不明な点は多い」と述べている。

 オミクロン変異株が広がっていることもあって中国側の検疫体制は厳格なだけに、選手たちにとって負担は大きい。北京大会では選手や関係者と外部との接触は遮断される「バブル方式」だ。

 なお、オーストリアのネハンマー首相(国民党党首)は、「五輪参加問題を政治化する考えはない」と強調し、米国、英国、カナダなどの外交ボイコットには加わらない意向を明らかにしている。新型コロナウイルスが広がった時、中国からマスクや医療保護服の支援を受けるなど、オーストリアは中国とは友好関係を維持している。ちなみに、コグラー副首相(スポーツ担当相兼任、「緑の党」党首)は、「中国当局の人権弾圧に抗議する。北京の冬季五輪には参加する予定はない」という。

 注:リムル氏のコメントはオーストリア通信(APA)からの引用。

イラン大統領のクリスマス祝賀書簡

 世界に13億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会総本山バチカンでは25日、フランシスコ教皇がサン・ピエトロ広場でクリスマス・メッセージを送り、シリア、レバノン、イラク、イエメン、アフガニスタン、ミャンマー、ウクライナ、エチオピアなど紛争地の平和解決をアピールし、ギリシャのレスボス島の難民問題にも言及した後、世界の信者たちに向かって慣例の「ウルビ・エト・オルビ」の祝福を発した。小雨が降る中、コロナ規制の下、信者たちはサン・ピエトロ広場に集まり、パンデミック以来、2年ぶりにローマ教皇のクリスマス・メッセージに耳を傾けた。

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▲サン・ピエトロ広場でクリスマスミサを行うフランシスコ教皇(2021年12月25日、バチカンニュースから)

 フランシスコ教皇はクリスマスイブの24日夜、サン・ピエトロ大聖堂で記念ミサを行い、小さな恵みを大切にして生活してほしいと呼び掛け、「世界の創造主はホームレスです。神はこの世では小さくなり、その大きさは、小ささの中で私たちに与えられている。しかし、私たちはしばしば神を理解せず、むしろ偉大さと名声を求めている。イエスは仕えるために生まれきた。イエスは私たちに人生のささいなことに感謝し、それらを再発見するように願われている。私たちはベツレヘムに戻ろう」と呼び掛けた。

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▲クリスマスを祝う書簡に署名するイランのライシ大統領(2021年12月24日、IRNA通信から)

 ところで、世界からクリスマスを祝うメッセージがバチカンに届いているが、その中にイスラム教シーア派の盟主イランのエブラヒーム・ライシ大統領からのメッセージがあった。イラン指導部の強硬派で知られているライシ大統領はフランシスコ教皇宛てのメッセージの中で、「平和と優しさの預言者であるイエス・キリストの誕生日、2022年の初めに、あなたの聖性と世界中のすべてのクリスチャンに心からのお祝いを申し上げます」と述べている。

 同大統領はクリスマスの意義についても言及して、「イエス・キリストの誕生日は神の意志と力の現れであり、聖マリアの精神的な位置は、神の宗教の存在論における女性の地位の偉大さを示しています。この祝福された誕生日を祝うことは、聖マリア(PBUH)を称える機会であり、利他主義のモデルと抑圧された人々の救いの先駆者であるイエス・キリストの道徳的資質を思い出します」と述べ、「アブラハムの宗教の信者の心と思いを近づけるためのあなたの努力に感謝します。あなたの健康と成功、そして神のすべての僕とすべての人間の幸福と誇りのために全能の神に祈ります」と結んでいる(イラン国営通信IRNA)。非常に格調の高いメッセージだ。ただし、メッセージの中では、救世主イエスは「預言者」と呼ばれている。

 当方は「テヘランから朗報が届いた!!」(2021年12月10日参考)というコラム記事を書いたばかりだ。イランで先月、裁判所で9人の改宗者(イスラム教徒からキリスト信者に)が自宅や個人の建物で行われた教会礼拝(家の教会)に出席していたとして、禁錮5年の実刑判決を宣告されたが、イラン最高裁判所が11月3日、「キリスト者らの自宅での礼拝の参加またはキリスト教の促進は国家安全保障を侵害する行為とはならない」と判断し、改宗者を訴える必要はないとの裁定を下したのだ。イランではイスラム教以外の宗教者は「国家の敵」と受け取られてきたが、その国の最高裁判所が「そのようには解釈できない」という法解釈を下したのだ。驚くべきニュースだ。

 ライシ大統領のクリスマスのメッセージはそれに次ぐ朗報だ。中東は“アブラハムの後裔たち”の歴史だ。頻繁に対立してきたが、共通のルーツを有している。だから、和解の動きが出てきても不思議ではない。スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派のイランの和解だけではなく、ユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の統合も非現実的とはいえなくなってきた(「サウジとイランが接近する時」2021年4月29日参考)。

 フランシスコ教皇はクリスマス・ミサで信者に、奢ることなく謙虚であるべきだとアピールし、「ベツレヘムに戻ろう」と呼び掛けた。アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3兄弟の宗派がここにきて歩み寄りが見られだしたのだ。2022年はアブラハムの3兄弟の動向に世界の関心が集まるかもしれない。

北京冬季五輪の「3つのハードル」

 中国国営新華社の報道によると、中国共産党中央委員会政治局常任委員会のメンバーであり、2022年の北京冬季五輪準備を監督する責任者の1人でもある韓正副首相(Han Zheng)は14日、北京冬季五輪大会開催まで2カ月を切ったことを受け、国家速滑館、冬季オリンピック村、メインメディアセンターなど、北京のいくつかの会場を視察している。同副首相は「パンデミックはゲーム主催者にとって厳しい試練だ。常に警戒を怠らず、COVID-19の対策に厳密に従うように」と関係者全員に注意を促している。

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▲北京冬季五輪会場を視察する韓正副首相(2021年12月16日、北京冬季五輪大会公式サイドから)

 北京冬季五輪大会は2月4日から20日まで、その後、3月4日から13日まで冬季パラリンピックが開催される。中国共産党政権は冬季五輪大会を国家の威信高揚のチャンスと受け取り、「北京は夏季と冬季の両五輪大会を開催する世界初の都市」として関係者に発破をかけている。

 その中国の野心にとって障害となるのは3点ある。/祁織灰蹈覆諒儖朿堯屮ミクロン株」の感染、外交ボイコット、雪状況だ。

 まず、|羚馼雋組の新型コロナウイルスの変異株オミクロン株の感染拡大だ。英国、デンマークなど欧州ではオミクロン株が猛威を振るっている。中国でも既に感染者が確認されている。中国国営メディアによれば、天津市では12月9日、海外から中国入りした人にオミクロン株の感染が見つかった。また、中国広東省広州市の衛生当局は16日、市内でオミクロン株に感染した事例が見つかったという。オミクロン株の市中感染だ。オミクロン株の感染力を考えると、中国全土で既にかなりの感染者が出ていると考えられる。

 中国共産党政権は新型コロナのパンデミック発生以来、「ゼロ・コロナ」対策を掲げてきた。具体的には、夜間外出禁止令、集団検査、強制検疫、コンタクトトレーシング、広範囲にわたる旅行と入国の制限などだ。五輪開催中も同じ政策を実施していくという。

 中国当局は冬季五輪大会の成功とコロナ感染対策を「膨大な圧力と挑戦」と受け取っている。北京冬季五輪大会組織委員会の韓子栄副委員長(Han Zirong)は23日、北京で「オミクロン株の蔓延は世界のコロナ状況に大きな不確実性をもたらしている」と述べ、オミクロン株の感染拡散に中国当局が神経質になっていることを明らかにしている。同副委員長は、「五輪開催中に一定数の感染者が出てくる可能性は排除できない」と指摘し、「オリンピック参加者と国民のCOVID-19対策を徹底して実施しなければならない」と強調している。

 同副委員長によると、「オリンピック選手も毎日、コロナ検査を受けなければならず、検査で陽性が判明したならば即隔離される」という。五輪会場での外国人観客はなく、国民が観戦できるか否かは現時点では不明。同副委員長はコロナ感染状況次第と断ったうえで、昨年の東京夏季五輪大会と同様、「無観客の北京冬季五輪大会」となる可能性を排除しなかった。

 次は中国のウイグル人弾圧政策など人権蹂躙に抗議しての「外交ボイコット」の動きだ。米、英、カナダ、オーストラリアは早々と「五輪選手の参加は認めるが、政府関係者を開会式や閉会式などに派遣しない」と表明。日本政府は24日、政府関係者を北京に派遣しないことを決定し、欧米諸国の外交ボイコットに仲間入りしたばかりだ。

 参考までに、欧州の動きを見る。フランスはボイコットする考えは今のところ皆無だ。なぜなら、2024年にパリ夏季五輪大会の開催を控え、「中国側の協力が不可欠」という判断から、北京を怒らす外交ボイコットは避けたいからだ。マクロン大統領は通常、人権問題などで積極的に発言してきたが、国益に密接に関連した場合は沈黙するわけだ。ドイツの場合、ショルツ新政権が発足したばかりだが、外相に就任した「緑の党」のベアボック外相はこれまでも中国の少数民族の弾圧政策を批判してきた。ただし、中国はドイツ製自動車の最大の輸出先だ。人権問題と経済利益のバランスが出てくるため、外交ボイコットは難しい判断となる。

 ちなみに、中国の習近平国家主席は21日、ショルツ首相との初の電話会談で、メルケル前政権時代と同様、両国関係の発展を要請している。同時に、「冷戦思考には断固反対しなければならない」と述べている。中国は独新政権が米国の対中包囲網に参加することを恐れているのだ。欧州連合(EU)は共同外交を標榜しているが、ハンガリーなど欧州の一部では習近平国家主席が提唱した新インフラ構想「一帯一路」に参加するなど、EU加盟国で反中と親中に分かれているのが実情だ。

 最後は「雪」だ。ウインタースポーツのメッカ、オーストリアではアルペンスキーやノルディックスキー選手は競技開始前、雪の状況に非常に神経を使う。ウインタースポーツが盛んでなかった中国は欧米の一流選手の雪に対するきめ細かい配慮を理解できないだろう。だから中国側から「選手たちは人工雪を好む」といった返答が飛び出すわけだ。雪は気象状況次第だから現時点では何もいえないが、「北京の雪はウインタースポーツには合わない」と欧米のアスリートから言われないようにしたいだろう。

 なお、米国は外交ボイコットをするが、競技選手は参加する。北京冬季五輪大会組織委員会の感染症対策室の黄春副所長(Huang Chun)によると、ウインタースポーツ競技の中でも人気があるアイスホッケーで、世界トップクラスが所属する米ナショナルホッケーリーグ(NHL)はコロナウイルスの感染問題もあって、「トップクラスの選手を北京に派遣しない」と決定したという。オリンピック競技の魅力がまた一つ見られなくなったわけだ。


 <参考>
 「北京冬季五輪に『外交ボイコット』を」2021年12月6日
 「バッハ会長は“第2のテドロス”だ」2021年12月13日
 「輸出大国ドイツの『対中政策』の行方」2021年11月11日

予言者が語る「2022年」はどうか

 ババ・ヴァンガについてはこのコラム欄でも数回、紹介した。“バルカンのノストラダムス”と呼ばれたブルガリアの予言者だ。1911年1月、現在の北マケドニアに生まれ、96年8月にソフィアで85歳で亡くなった。ヴァンガは13歳の年にトルネド(竜巻)に遭い、視力を失ったが、その後、多くの啓示や幻想を体験した。彼女が語る予言の約80%が当たることから次第に有名となり、ブルガリア国王ボリス3世は1943年、彼女のアドバイスを受けたという話が伝えられている。彼女の予言は口述によるもので、関係者が彼女の予言を集め、後日公表したものだ。最近では、「米国内多発テロ事件」(2001年9月11日)や英国の「欧州連合(EU)離脱決定(2016年6月)を言い当てていた。

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▲ブルガリアの予言者ババ・ヴァンガ(ウィキぺディアから)

 ヴァンガの「2022年の予言」を紹介する前に、予言には当たり外れがあることを前もって言っておきたい。予言能力のある人間は受けた啓示や幻想を第3者に伝えなければならない使命をもっている。その予言が当たるか、外れるかは予言者の責任ではない。このコラム欄でも「なぜ『予言』は時に外れるのか」2019年1月13日参考)で書いたように、予言を受けた人間側の対応次第で当たり外れが出てくるからだ。

 ヴァンガは過去、「2010年11月から14年10月の間に第3次世界大戦が勃発し、核戦争が勃発すると予言したが、幸い、見事に外れた。それでは予言者は世間を混乱させるだけで有意義な存在ではない、という声も出てくるだろう。その指摘は一部当たっているが、そうとも言えない。予言は受け手次第でどのようにも解釈できる余地がある一方、その核には啓示的なメッセージが含まれていることがあるからだ。これは、当方が「マラキ預言書」、「ノストラダムスの予言」、「ファティマの予言」、「マヤの暦」などに心が惹かれる理由だ。

 それではヴァンガの「2022年の予言」を紹介する。.轡戰螢△蚤臉里謀犒襪気譴燭發里ら、その後、新たなパンデミックになる可能性のあるウイルスが発見される、∪こΔ梁臈垰圓念料水の不足が深刻化、インドで極度の暑さから、作物の不作、飢餓、大量死が出てくる。

 いずれも十分考えられる内容だ。特に、気候変化、地球温暖化などで地球の気温に変化が生じている時だから、それに関連した災害などが起きても不思議ではない。ヴァンガの予言の中では、,興味深い。

 ヴァンガは「2018年の予言」の中で「中国が世界の支配国となる」と予言していた。世界経済の状況から判断すれば、その予言は当たっていたが、ここにきて中国の国民経済に陰りが見えるなど、予言内容とは異なってきている。予言には実際に起きる前に人々に伝える、という使命と、警告を発するという2つの側面がある。すなわち、予言をまともに受け取り、災害が起きないように努力すれば、予言は当たらなくなる。予言者が時代で歓迎されない理由は、この予言のもつ本来の性格に起因しているわけだ、予言者は当たっても外れても時代からは「世を惑わす偽予言者」と言われ、罵倒される宿命から逃れられないのだ。

 ちなみに、中国では予言ではないが、「逢九必乱」という言葉がある。その意味するところは、「9」という数字が付く年は社会が混乱したり、政治的暴動などが発生するという内容だ。過去の「逢九必乱」を見ると、。隠坑苅糠:中国共産党が政権を奪う、■隠坑毅糠:チベット蜂起、1969年:中国とソ連の軍事衝突、ぃ隠坑沓糠:中越戦争の勃発、ィ隠坑牽糠:民主化暴動(天安門事件)、Γ隠坑坑糠:法輪功信者への大規模な弾圧、В横娃娃糠:新疆ウイグル自治区ウルムチで大規模な暴動、といった具合だ(「『9』の付く年は中国では大暴動発生!」2019年1月30日参考)。

 それでは2019年は何が起きたのだろうか。中国武漢で新型コロナウイルスが発生し、世界で500万人以の犠牲者が出ているパンデミックは2019年秋に最初の感染者を出している。「逢九必乱」は当たっていたわけだ。

 肝心の「2022年」はどうか。中国共産党は今年党創建100年を迎えた。中国語では「百年」は「死去」するという意味があり、一種の「ゲーム・オーバー」を意味するから「あとは降下するだけ」ということになる。22年は中国共産党政権の凋落の兆候が次第に目に見えてくるわけだ。

 なお、ノストラダムスの予言では2022年、北朝鮮の指導者(金正恩総書記)が予想外の事故で死去し、政権が変わるという。平壌指導者が聞けば激怒するかもしれないが、16世紀の予言者の警告だ。

ドイツ「オミクロン株対策」を発表

 予想されたことだが、ドイツのショルツ首相(社会民主党)主導の3連立政権は政権発足後、メルケル前政権と同様、新型コロナウイルスの感染対策に追われてきた。ショルツ首相は21日、ドイツ16州の首相らとコロナの変異株オミクロン株の感染防止策を協議した後、記者会見で対策案を発表した。

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▲ドイツ国立感染病研究所「ロベルト・コッホ研究所」(RKI)の全景 RKI公式サイトから

 具体的には、ワクチン接種完了者と回復者も私的な会合は最大10人まで(非接種者は2人まで、14歳以下は制限に入らない)。大規模なイベントは観客なしで開催。クラブやディスコは閉鎖され、ダンス、パーティは禁止される。慣例のシルベスター(大晦日)のパーティやイベントは実質的に禁止される。同案はクリスマス開けの今月28日から施行されるが、いつまで続くのかは不明だ。

 ショルツ首相は、「クリスマスを控え、いい知らせを国民に伝えたいが、残念ながらそうはいかなくなった」と説明し、「英国、デンマークなどで拡大するオミクロン株がドイツでも広がる前に緊急に対応策を練る必要が出てきた。悠長なことを言っている時ではなくなった。これからは可能な限り、国民は接触を制限していかなければならない」と述べ、国民に理解を求めた。

 ドイツではデルタ変異種株による第4波の感染者は減少してきたが、入院患者と集中治療室の状況は緊迫している。第5波がすぐ傍まできている。オミクロン株の感染が広がった場合、短期間に患者が急増し、ドイツの医療体制は崩壊の危機に直面することが予想される。

 ドイツ国立感染症研究所「ロベルト・コッホ研究所」(RKI)は「早急に国民の接触制限を強化すべきだ」と強調する一方、レストランを閉鎖、学校のクリスマス休暇を延長すべきだと主張している。今月28日から施行される政府の対策案と比べ、RKIの勧告は一層強い。

 オミクロン株はデルタ株より感染力が強く、従来のワクチン接種の有効性が弱まるとの懸念が聞かれる。そのため、ドイツ政府は国民にブースター接種を呼びかけている。同国では22日時点でワクチン接種完了率は70・4%だ。隣国オーストリアでは来年2月1日からワクチン接種の義務化を行う。ショルツ首相はオミクロン株の感染次第では「ワクチン接種の義務化も排除できなくなる」という考えを度々示唆している。

 RKIは、「オミクロン株は来年1月に入れば、ドイツでも感染症例の大部分を占めるようになるだろう。1日数万件のオミクロン感染症が発生する可能性が考えられる」と警告している。英国では1日のオミクロン株感染者数は既に1万5000人を超えている。

 なお、ワクチン接種では迅速の対応してきたイスラエルは21日、オミクロン株対策のために医療従事者や60歳を過ぎた国民に対し、4度目のワクチンを接種することを決めている。先進7カ国(G7)の保健相会合は今月16日、「オミクロン株は世界の公衆衛生で最大の脅威」という点で一致している。ポスト・デルタはオミクロン時代の到来となってきた。

オミクロン株とAIの「深層学習」

 生命維持の代謝活動のないウイルスは厳密にいえば非生物だが、生命体と同様、ディ―プラニング(深層学習)している。独週刊誌シュピーゲル(2021年12月4日号)は新型コロナウイルスの変異株オミクロン株がどのように発生したかをテーマにしていた。興味深い点は、オミクロン株が感染するターゲットは免疫機能が弱い人間だ。そこに侵入してもその人間の免疫システム、キラー細胞に攻撃される心配は少ないからだ。健康体で免疫機能が強い人間に入れば、オミクロン株のウイルスはその人の免疫にやられてしまう危険性が出てくる。

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▲オーストリア最大のワクチン接種センター内風景(2021年12月9日、撮影)

 次が問題だ。免疫の弱い人間に感染したオミクロン株はディープラニングを始める。その期間(潜伏期間)がどれだけかは知らないが、ある一定の期間、オミクロン株は発病しない。潜伏して人間の免疫システムがどのように機能しているかを学ぶからだ。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は20日、記者会見で、「アフリカは1カ月前までは、過去1年半、最も感染者数が少ない大陸だったが、過去1週間で世界で第4番目に新規感染者が多い地域になった」と指摘している。過去1年半、オミクロンは人間の免疫システムを学んでいたことになる。

 オミクロン株が最初に感染するのはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)患者に多い。オミクロン株の発祥地の南アフリカにはHIVに感染した人の多いことが知られている。また、臓器を移植した患者に感染する。新しい臓器を移植した場合、その人間の免疫システムはそのニューカマーをやつけようとするから、医師は臓器移植した患者には免疫機能を抑制する薬(Immunsuppressivum、免疫抑制剤)を投与する。移植した臓器が副作用を抑え、その患者に定着するように手助けをする。オミクロン株にとっては絶好のチャンスとなる。薬の投与で減退した免疫システムの人間は最も安全な学習場所となるからだ。

 そして深層学習を終えたオミクロン株はいよいよ本来の野望を発揮し出す。人間の免疫システムのメカニズムを学んだオミクロン株は健康体の人間に感染しても容易には壊滅される懸念はないから、その感染力を増加し、致死力も強まる。英国、オランダ、デンマークでオミクロン株が急速に感染拡散しているのは学習済みのオミクロン株だろう。世界のウイルス学者がオミクロン株を警戒するのはその学習済みの変異株だ。その変異株がどのようなパワーを学んできたかを理解しなければならないからだ。人間でも文科系を学んだのか、理科系かでその進路が変わるように、どのような学習を経てきたかでウイルスの変異株の感染力、致死力が異なってくるからだ

 深層学習といえば、人工知能のことを想起する。東京工業大学の澤田哲生助教はアゴラ言論プラットフォームで「AIナノボットが核兵器を葬り去る」2021年11月30日)という記事の中で、人間を凌ぐAIの登場を紹介していた。深層学習を通じて飛躍的に発展させたAIの存在が浮かび上がるのだ(AIナノボット=ナノとロボットの複合語)。

 澤田氏は、「AIの世界的権威であるレイ・カーツワイルによれば、2029年頃に人工知能が人間と同等の知能を持つようになり、2045年にはシンギュラリティー(技術的特異点)が起こると予想されている。その結果、人間よりもAIの知能が勝り、人間にしかできなかったことのほとんどがロボットやAIが行うようになる」というのだ。汗をかく労働から人間を解放してくれるAIというレベルではなく、強力な演算能力はもちろん、「ヒトと同じような心、つまり意識を持って自律的に行動するという身体を持ったAIが登場してくる」という。

 ここまでくると、懸念が出てくる。人体の免疫システムを学んだオミクロン株は感染力、致死力を増幅させ、人類を滅ぼさないだろうか、深層学習で人間の感情、心の領域まで理解を深めていったAIは果たして常に人間の友であり続けるだろうか、といった新しい問題が出てくるのだ。

 世界的ベストセラー「サピエンス全史」の著者、イスラエルの歴史家、ユバル・ノア・ハラリ氏(Yuval Noah Harari)は、「人類(ホモ・サピエンス)は現在も進化中で将来、科学技術の飛躍的な発展によって“神のような”存在『ホモ・デウス』(Homo Deus)に進化していく」と考えている 同氏は、「20世紀までは労働者が社会の中心的役割を果たしたが、労働者という概念は今日、消滅した。新しい概念はシリコンバレーから生まれてくる。例えば、人工知能(AI)、ビックデータ、バーチャル・リアリティ(VR)、アルゴリズムなどだ」という。そして「数世紀後ではなく、数十年後に到来するだろう。バイオ・エンジニアリング、サイボーク、無機生命体らの領域で成果をもたらすならば、われわれは神のようになるだろう」という。

 ハラリ氏の指摘は非常に現実的な予測だ。問題は、澤田氏も指摘されているように、AIと人間との関係の主従関係が逆転しないかという点だ。例えば、愛や同情といった人間の感情の世界を理解するAIが登場すれば、人間はAIに対しどのような関係を築くことができるかだ。まったく新しい領域だ。

 最近、Neurotheologieという言葉を初めて聞いた。脳内で宗教性と精神性がどのように機能し、それらがどのように生じたのかを研究する分野で「神経神学」と呼ばれている。神経神学者は神の存在について、「依然、信仰の問題であり、近い将来、解明できる問題ではない」と受け取っているが、愛や利他的な思いは脳内の中脳水道周囲灰白質と呼ばれる領域からもたらされていると分かっている。その領域に関して深層学習をしたAIが近い将来、神のような存在になっていくことが考えられる。それでは、同じように人間の免疫システムを学習したオミクロン株は近い将来、どのように発展していくだろうか。

 AIとオミクロン株は共に非生物だが、生命体の人類にとって回避できない深刻な問題をわれわれに提示しているのだ。
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