ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2020年12月

「コロナ・ワクチン」いろいろ

 中国武漢発の新型コロナウイルスが世界に感染を広めて10カ月以上が経過した。世界で30日現在、累積感染者数は約8200万人、死者数は約179万人だ。欧州連合(EU)では今月27日から米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品企業ビオンテックが共同開発したワクチンの接種が開始されたばかりだ。コロナ禍に苦しめられた欧州の人々にとってワクチンは一種の救世主のようなもので、「これでようやく正常な日常生活に戻れる」と希望する声が聞かれる。同時に、ワクチンの接種問題では単なる医学問題ではなく、様々な政治的思惑が絡んできて、人々を混乱に巻き込んでいる面も否定できない。

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▲独ビオンテック社のコロナ・ワクチン(ビオンテックの公式サイトから)

 EU加盟国ハンガリーで今月26日、ファイザー・ビオンテック製のコロナ・ワクチンではなく、ロシア製で「世界で最初に実用化されたコロナ・ワクチン」という名誉を得たスプートニクVの購入が明らかになると、同国野党から、「国民をロシア製のワクチンで恐怖に落し入れるのは止め、EUが正式に認可したより安全なファイザー・ビオンテック製のワクチンの接種を実施すべきだ」とオルバン政権に申し出ている。

 ハンガリーの野党「民主連合」(DK)の報道官は29日、「ぺーテル・シーヤールトー外務貿易相は6000本のロシア製ワクチンの到着を公表したが、EUが認可しておらず、ロシア国民や学者たちから懐疑的に受け取られているワクチンをなぜ購入したのか。誰に接種する予定かを明らかにしていない」とロシア製ワクチン購入に疑問を呈している。

 それに対し、同外務貿易相は、「野党の批判は無責任だ。わが国の医者、ウイルス学者の見解を疑い、ロシアで製造されているワクチンを政治問題化している。わが国は昔から今日までロシア製ワクチンを接種してきた歴史がある。わが国のウイルス学者はスプートニクVが製造されている研究所を訊ね、その製造工程をチェックしてきた」と反論している。なお、オルバン政権は国内でロシア製ワクチンの製造に乗り出す可能性も視野に置いているという。

 ロシア製ワクチンについてもう少し情報を得ようとロシアの情報放送「Russia Today」(RT)のサイトを開くと、ワクチン関連記事が2本、掲載されていた。1本はイスラエルでワクチンを接種した患者が急死したという話だ。75歳の男性が28日、ワクチンを接種し、自宅に戻った直後、心臓発作で亡くなった。イスラエル保健省は心臓発作とワクチン接種との関連は見つかっていないという。ただし、男性は過去、何度か心臓発作に襲われたことがあったという。どのワクチンを使用したかは明らかにされていない。同国では12月20日からワクチン接種が開始され、既に50万人以上がワクチンを受けている。

 もう一本はEU国民のワクチン接種への関心が低いという世論調査の記事だった。RTはロイター通信の記事を引用し、副作用に関する十分な研究が終わるまでは、例えばフランスとポーランドでは国民の40%、ブルガリアでは15%の国民しかワクチンの接種を願っていないという。

 ちなみに、EUはファイザー・ビオンテック製と英アストラゼネカ製のワクチンを2021年以内に全成人へ接種することを目標としているが、予想以上にワクチン接種への懐疑心が強いという趣旨の記事だ。

 両記事に共通していることは、ワクチン接種に対する懐疑的傾向を報じていることだ。もう少し、厳密に言えば、RTはワクチン接種に関するネガティブな情報を恣意的に拡散している、といえるわけだ。

 ドイツ連邦情報局(BND)のブルーノ・カール長官は、「ロシアは欧米で偽情報やプロパガンダを駆使したサイバー攻撃を繰り返し、政治的不安定感を広げようとしている」と警戒を呼び掛けている。具体的には、RTやオンラインの情報通信「Sputnik」が情報工作の手先という。

 参考までに、新型コロナウイルスの発生地、中国では15種類のワクチンが臨床試験に入っている。このうち、5種は最終段階である第3相試験を行っており、有効性や副作用などを確認しているという。この5種は、中国医薬集団(シノファーム)傘下の中国生物技術(CNBG)の不活化ワクチン2種、北京科興中維公司の不活化ワクチン1種、軍事医学研究院と康希諾公司(カンシノ)が共同開発するアデノウイルスベクターワクチン、中国科学院微生物研究所と智飛生物公司が共同開発した組換えタンパクワクチンだ(海外中国メディア「大紀元」12月28日)。

 中国国務院の通知によると、「ワクチンが人々を守るのは約6カ月間だけであり、COVID-19ワクチンを接種した後も、マスクの着用、社会的距離の維持、こまめな手洗いなどを続ける必要がある。100%予防できるワクチンはない」という。

 前述したが、コロナ禍の欧州の人々にとってワクチンは救世主のようなものだが、どの時代でも救世主が直ぐに人々に信頼されて、受け入れられるということはない。コロナ・ワクチンも例外ではないわけだ。


 読者の皆様、今年1年お付き合い下さり有難うございました。2021年が皆様にとって新しい希望溢れる年となりますように。

「実効再生産数」から「善行再生産数」へ

 2020年は中国武漢発の新型コロナウイルスのパンデミックの1年だったことに異議を唱える人はいないだろう。当方はこの1年間、毎日コラムを書いてきたが、新型コロナウイルス感染コラムは既に100本を超えている。それだけ、20年は新型コロナが話題を独占した年だったといえるわけだ。もちろん、米大統領戦とその「不正集計問題」も大きな出来事だった。オーストリアの場合、11月2日にウィ―ン市で起きたイスラム過激派銃撃テロ事件も国民の記憶に残る出来事だった。

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▲2021年は良き年となりますように(2020年12月29日、ウィ―ンで)

 新型コロナもウィーンの銃撃テロ事件も暗いニュースである点では変わらない。それではグッド・ニュースはなかったのかというと、やっぱりあった。オーストリアの場合、男子プロテニスでドミニク・ティ―ム選手がメジャー大会の一つ、全米オープン大会に初優勝を飾ったことだ。コロナ禍で苦しむ国民を喜ばせた。

 ところで、新型コロナ感染が欧州を席巻し、イタリアを含む欧州各地で多くの犠牲者を出している。当方の親戚が住むイタリア北部ロンバルディア州のベルガモはその中でも最悪の感染地となった。軍のトラックが遺体を他の州に埋蔵するために運ぶシーンはベルガモ市民の悪夢となってしまっただろう。

 当方はこの1年、取材で海外に出かけることはなく、国連取材はもっぱら自宅でフォローしてきた。国連からは定期的にニュース・レターが送られてくる。「今回何人の国連職員が新型コロナに感染した」という速報も届く。12月21日現在、累計感染者数は180人、そのうち168人は回復した。多くの場合、国連内での感染よりも、自宅など勤務先以外での感染だ。国連に記者登録しているジャーナリストの取材記者証の延長は来年に入ってからになったばかりだ。

 新型コロナが猛威を振るったこともあって、当方は今年、新型コロナ関連のコラムを書いてきたが、そのおかげといえば可笑しいが、普段の取材では使用しない感染病関連専門用語を学んだ。当方は基本的にはドイツ語メディアを利用している。この1年余り、多くの独語専門用語と接触した。隔離期間、核酸検査(PCR)、無接触感染(エアロゾル)、ロックダウン、(covid-19の)直径100ナノメートル、抗原検査、抗体検査、実効再生産数(Rt)、集団免疫、FFS2マスクなどだ。その他、国立感染症研究所「ロベルト・コッホ研究所」(RKI)や著名なウイルス学者、クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)などの研究所や専門学者の名前を知った。

 難しいドイツ語の専門用語を辞書を開きながらその意味を掴んでいく。年を取ると記憶力は衰えてきたが、毎回出てくると、自然に頭に入ってくるものだ。新型コロナのおかげで、新しい領域について学ばされてきた。

 その中で「実効再生産数」という用語に心が魅かれた、というか、なるほどと思わされた。病原体の感染力を表示する上で役立つ。まだ感染が広がっていない状況下で、1人の感染者が平均、何人の人に感染を広めるかを数字で表す「基本再生産数」は「RO」で表示。既に感染が広がっている状況下で感染者した人が何人に感染を広めるかは「実効再生産数」と呼ばれ、「Rt」の記号が使われる。感染が猛威を振るっている地域では、Rt=3、ないしは4といった数字となり、感染が下火になった場合は、Rt=0・5というふうに、1人の感染者が広げる感染者数が1人以下を意味する。だから、世界各地の「Rt」を比較すれば、どの地域で感染が広がっているかが一目瞭然となる。

 なぜその「実効再生産数」に興味を感じるかといえば、上記の内容は病原体の感染力を表示するが、1人の人間が何らかの善行をしたとして、その人の善行がその後、何人の人にその善行を広げていくかを数字で表示する「善行再生産数」という用語があってもいいのではないかと考えたからだ。1人の善行が平均、何人の人にその良き影響を増殖、拡散していくか、という考えだ。
 
 「善行再生産数」を「Gt」で表示するとすれば、そのGtが2,3となれば善行は拡大し、社会は良くなってきているといえる。逆に、「Gt」が1以下の場合、社会は悪くなってきていると判断できる。数字が1以下と少なくなれば良かった「Rt」とは逆で、「Gt」は1以上、数字が多いほどいいわけだ。

 「Gt」=100の社会を考えてみてほしい。1人が行った善行が平均100人に広がり、その100人の一人一人が更に100人にその善行を伝えていくことを意味する。そしてまた……、といった具合で一つの善行は宇宙的な広がりをみせていくことになる。「天国は近づいた」と叫んだ洗礼ヨハネの言葉はこのようにして成就されていくわけだ。

 世界でコロナ用ワクチンの接種が始まった。2021年は新型コロナを克服して新しい生活をスタートできる希望が見えてきた。そこで来年は新型コロナの「実効再生産数」(Rt)が1以下となり、「善行再生産数」(Gt)が2以上に飛躍する社会を目指していきたいものだ。

「理想家庭」築く為の3つの言葉

 事の良し悪しは別として、日本人の男性は勤めから家に帰ると、「飯」、「風呂」、「寝る」の3つの言葉しか口に出さないと揶揄われた時期があったと聞くが、家庭生活では「お願い、ありがとう、ごめん」の3つの言葉こそ平和な家庭生活を築く上でのキーワードとなるという。これは今月84歳となったばかりのカトリック教会最高指導者フランシスコ教皇が27日に語ったものだ。同教皇は同時に、来年3月から1年間余りを「家庭の年」とすることを明らかにした。「家庭」がカムバックしてきたのだ。

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▲「家庭の年」を宣言したフランシスコ教皇(バチカンニュース公式サイトから)

 フランシスコ教皇はカトリック教徒の婚姻、家庭観への理解を深める固有の年を宣言した。具体的には、同教皇の回勅「Amoris laetitia」(「愛の喜び」)5周年目を迎える来年3月19日から1年間だ。教皇は、「イエスの聖家族に倣って、家庭への愛を改めて確認するために、1年間、家庭の年とする」という。

 回勅「愛の喜び」はフランシスコ教皇が2014年と15年開催された「家庭に関する公会議」の結果をまとめたもので、その300頁にも及ぶ回勅の中で、教皇は再婚者に対してコミュニオンを認める道を開いた。フランシスコ教皇は来年3月19日から「第10回世界家庭の集い」(2022年6月26日)がローマで開催されるまで、「家庭」を牧会のキーワードとするという。

 フランシスコ教皇が「家庭の年」で強調したいのは「家庭の教育的価値」を再発見することだという。以下はフランシスコ教皇の良きカトリック教徒の家庭へのアドバイスだ。

 「家庭は愛をその土台としなければならない。家庭内の関係は常に希望の地平線を切り開かなければならない」
 「誠実な交わりは可能だ。相互の慈愛と神への変わらない信仰があれば、深く純粋な愛情と間違いを許すことで、日々の困難を緩和できる」
 「激しいいがみ合いや不和が生じた時は眠る前にそれらを解決する努力をすべきだ。さもなければ、翌日はもっと厳しくなるからだ」
 「家庭で共存する上で必要な3つの言葉は、『お願い』、『感謝』、『赦し』だ」(一般的な言葉では、お願い、ありがとう、ごめんなさい)。

 ところで、世界最高峰のエベレストを登頂したことがない人がネパールのエベレストの麓に集まった登山家を前に、どうしたらエベレストを登頂できるかを説明した場合、誰がその説明に耳を傾けるだろうか。同じことが「理想的な家庭づくり」という課題に対し、家庭を築いたことがない人が家庭持ちの人々の前で「どうしたらいい家庭を築けるか」を説明したとしても共感を得ることは難しいだろう。

 フランシスコ教皇が如何に賢者であり、表現力のタレントを有した教皇としても、生涯を神の前に帰依してきた宗教指導者だ。家庭内の具体的な問題で、具体的なアドバイスを提供することは容易ではないはずだ。

 もちろん、フランシスコ教皇も子供時代、両親から家庭の愛を受けた体験があっただろう。「愛」は欠乏していなかったかもしれない。しかし、それは親から来る愛であり、婚姻して夫婦が相互に交換する愛「夫婦の愛」ではなかったはずだ。

 キリスト教会では「教会」は家庭だ。そこでは聖職をする者もそこに集う信者も家庭の一員だ。神を親として兄弟姉妹というわけだ。だから、家庭が抱える諸問題に対して聖職者は語る資格がある。換言すれば、聖職者は羊飼いであり、信者たちは羊だ。羊は羊飼いの声に耳を傾ける。ここまでは分かるが、問題は、家庭に不和が生じた場合、羊が羊飼いの命令に従わなかった場合だ。家庭は崩壊し、教会は混乱に陥る。

 世界に24億人以上のキリスト信者がいる。彼らはイエスを救い主として信じる。そのイエスは33年の生涯、十字架にかかるまで婚姻できずに終わった。イエスの福音を教えとするキリスト教は独身者イエスを頭として始まった宗教だ。その宗教の主要宗派カトリック教会は聖職者の独身制を敷いてきた。イエスがそうであったように、という名目はあるが、カトリック教会は独身者が創設し、独身者の聖職者が教会を運営してきた。そして今日、フランシスコ教皇は「家庭の年」を宣言し、家庭の教育的価値の再認識を呼び掛けている、というわけだ。

 フランシスコ教皇には、「ナザレのイエスの家庭」こそ理想家庭だったという思い込みがあるが、福音書を偏見なく読むと、イエスと母親マリアとの関係は決して理想的だったわけではなかった。マリアは息子イエスを最後まで理解できなかった。イエスが誕生した後に生まれた弟たちとの関係、夫ヨセフとマリアの関係もフランシスコ教皇が信じているような「理想的な家庭」(聖家庭)ではなかったのだ(「『聖母マリア』神聖化の隠された理由」2015年8月17日参考)。

 イエスが漁夫や売春婦に福音を述べている時、弟子が「お母さんが外で呼んでおられます」と言ってきた。その時、イエスは「私の母、私の兄弟とは誰のことか。見なさい、ここに私の母、兄弟がいる。神の御心を行う人こそ、私の兄弟、姉妹、また母なのだ」(マルコ福音書第3章)と返答している。

 ガリラヤのカナの婚礼では、葡萄酒を取りに行かせようとした母マリアに対し、イエスは、「婦人よ、あなたは私と何の係りがありますか」(ヨハネ福音書第2章)と述べ、親族の結婚式のために没頭するマリアに不快の思いすら吐露している。

 家庭は社会の最小単位だ。その家庭が揺れれば、社会も国家も揺れる。だから「健全な家庭」は個人の目標というより、社会、国家が取り組んでいかなければならない最も重要な問題といわざるを得ない。その意味で、フランシスコ教皇の問題意識は間違いないが、先述したように、エベレストを登頂してもいないのに、登山家にアドバイスを与える似非登山家のように、家庭を築かない人が良き家庭づくりの講話をしているような、違和感がどうしても払しょくできないのだ。

 84歳のフランシスコ教皇に「家庭を持ってほしい」とはいわないが、聖職者の独身制は早急に廃止してほしい。そして「家庭問題」で立派な講和ができる後継者を育成して頂きたい。世界の全ての問題は「家庭」から始まっているからだ。

 それにしても、フランシスコ教皇が語った良き家庭のための3つの言葉、「お願い」、「ありがとう」、そして「ごめんなさい」はなんと美しい言葉だろうか。

英野党指導者「中国に損害賠償請求を」

 ナイジェル・ファラージ氏(56)は英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を積極的に推進し、長い間欧州議会議員を務めてきた政治家だ。同氏が12月27日、ニューズウイークに、新型コロナウイルスの感染問題をテーマに「今年のクリスマスを台無しにしたのは中国共産党政権だ」と強調し、新型コロナ感染によって生じた損害の賠償を北京政府に求める記事を寄稿している。同氏の大衆迎合的な姿勢には批判もあるが、新型コロナ感染問題で中国の責任を追及する論調には拍手を送りたい。以下、同氏の主張の一部を紹介する。

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▲中国を厳しく批判するファラージ氏(ウィキぺディアから)

 EUがワクチン接種開始を宣言した直後、英国内で感染力が強い新型コロナウイルスの変異種が見つかり、英仏海峡が一時的に閉鎖されたが、同時に、認可され、接種が始まったワクチンの有効性に懸念を表明する声が飛び出すなど、クリスマスを祝う人々の移動は再び制限されてしまった。

 よほど頭ににきたのだろう。ファラージ氏は、「クリスマスの祝日は中国によってキャンセルされてしまった」と怒りを発し、同時に「驚くべきことは、クリスマスを台無しにされたにもかかわらず、中国への批判の声が余り聞かれないことだ」と指摘する。

 同氏は、「新型コロナウイルスが中国からもたらされたことは明確だ。中国共産党政権はそれを隠蔽し、その間多くの中国人が世界を飛び歩いてきた。中国は嘘をつき、人々は死んでいった」と強調し、「今週、人々の不気味な沈黙の背後に何があるのかをを見つけた」という。そしてジョンソン英首相が国民にクリスマスの日に家族で集まるのをやめ、各自、家に留まるべきだとアピールしているのを聞いて、「高まる怒りを感じた」と吐露。そこでツイッターで「クリスマスはキャンセルされた。中国のせいだ」と発したというわけである。

 ファラージ氏によれば、4万5000の人々がリツイートしてきたという。同氏は、「私への膨大な支持は多くの人々が新型コロナウイルスへの中国側の対応やウイグル人への残虐な政策に怒り、この残虐非道な政権に対して可能な限り関わらないことを願っていることを端的に示している」と解説したうえで、「それにしてもなぜ西側の政治指導者は中国共産党政権に批判の声を挙げないのか」と問いかけている。

 同氏のツイート後、中国国営メディアの「チャイナ・デイリー」記者から同氏への攻撃的で下品な言葉の非難が飛んできたという。たとえば、「マスクを着けて、話すのを止めろ」、「トランプのような民族主義者め」といったものだ。

 このコラム欄では海外に派遣されている中国外交官の品性のなさ、ヤクザのような言動について「戦狼外交」と呼んで報告してきたが、中国外交官だけではなく、中国人ジャーナリストにも「戦狼ジャーナリスト」がたむろしているわけだ(「世界に恥を広める中国の『戦狼外交』」2020年10月22日参考)。

 中国のメディアでは、「中国は素晴らしい政府のおかげで国民の日常生活は正常化したが、西側民主主義国では新型コロナ感染で国民経済は完全に混乱している」といった揶揄ったトーンがある。ファラージ氏は、「自分は批判や中傷には慣れているが、問題は、公の立場にある多くの人々がこの種の中傷批判を避けるために沈黙という安易な選択に陥っていることだ」と指摘している。

 ファラージ氏は、「私は今、中国の監視網に入ったので、今後様々な嫌がらせが来るだろう。私のケースは細やかな例に過ぎない。東南アジア地域では中国の覇権の手が伸びてきているから、懸命にそれに応戦している。トランプ米政権は台湾や東南アジア諸国に巨大な支援をしている。ジョー・バイデン氏のホワイトハウスは中国に対し、はっきりと対抗姿勢を見せることができるだろうか」と述べている。

 同氏は、「私が恐れることは、西側政府の中に中国の横暴な強権政治に対して立ち上がる勇気のある政府がないことだ。我々は中国に依存してきた。中国共産党政権は自国民さえ無慈悲に殺害し、一党独裁政治に従わせている国だ。実際、西側の多くの政治家は中国に買われている」と批判する。

 そして最後に、「このパンデミックは中国のせいだ。西側は世界経済に与えた損害の賠償を要求すべきだ。これこそ私の2021年、追及していきたいテーマだ。中国共産党政権が私を嫌うことはハッピーだ。私に対する称賛を意味するからだ。しかし、どれだけの人々が中国と対抗し、北京から非難を浴びても耐えられる準備があるだろうか」と、重ねて問いかける。

 ジグマ―ル・ガブリエル独外相(当時)が2018年2月17日、独南部バイエルン州のミュンヘンで開催された安全保障会議(MSC)で、中国の習近平国家主席が推進する「一帯一路」構想に言及し、「新シルクロードはマルコポーロの感傷的な思いではなく、中国の国益に奉仕する包括的なシステム開発に寄与するものだ。もはや、単なる経済的エリアの問題ではない。欧米の価値体系、社会モデルと対抗する包括的システムを構築してきている。そのシステムは自由、民主主義、人権を土台とはしていない」、「現代で中国だけが世界的、地政学的戦略を有している。一方、欧米諸国はそれに対抗できる新しいグローバルな秩序構築のアイデアを提示していない」と語り、大きな反響を呼んだことを思い出す。ファラージ氏の今回の記事は、それに匹敵する鋭い中国批判だ。(「独外相、中国の『一帯一路』を批判」2018年3月4日参考)

コロナ時代の「集中治療室の神」

 独カトリック教会のラインハルド・マルクス枢機卿は25日、ミュンヘンのクリスマス記念礼拝で、「神はコロナ時代、集中治療室(ICU)におられ、看護ハウスやホームレスの孤独な人々、レスボス島の難民キャンプの子供たちの傍におられる」と述べた。多分、その通りだろう。それにしても、なぜ神は幸福な人々の傍には訊ねてこられないのだろうか。

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▲ミケランジェロの作品「アダムの創造」(ウィキぺディアから)

 その疑問に対し、キリスト教は過去、答えてきた。幸福な人には慰めや励ましの言葉は必要ないので、神はそれらの人々の前では手持ちぶさたになって、何もすることがないからだという。マルクス枢機卿のように、少し神を研究した人は、「神自身が集中治療室におられ、理解されず路上を放浪しているから、神はそれらの人々に心が魅かれるのではないか」という。文学的に表現する神学者は「悲しみの神」という。

 ちなみに、ユダヤ民族はディアスポラと呼ばれるが、彼らは「神も放浪する我々と共におられる」と考え、「放浪する神」と呼ぶ。実際、ユダヤ民族は神が宿る幕屋を運びながら放浪してきた。 

 イエスは山上の説教で「悲しんでいる人は幸いだ。彼らは慰められる」と語っている。キリスト教は「愛の宗教」といわれるが、むしろ悲しんでいる人々の「慰めの神」というべきかもしれない。そんな表現をすれば、冷静な人ならば、「ヘーゲル法哲学批判」の中で「宗教は民衆のアヘン」と述べたマルクスの主張を取り出してきて、「神は、現世の苦しみ、悲しみを忘れるためのアヘンのような役割を果たしている」と指摘するかもしれない。

 「宗教はアヘンだ」という表現は少々、攻撃的過ぎるが、間違っているわけではない。厳しい人生を生き抜くためにはシラフでは難しいから、酒に手が伸び、麻薬類を摂取する人々が出てくるように、宗教に頼る人も出てくるからだ。

 慰めではなく、苦境から脱出する解決策を願う人々は「慰めの神」に飽き足らず離れていく。しかし、一生涯慰めや温かい愛の言葉を必要としない人は少ない。時が来れば、多くの人々は神の懐に戻ってくる。アイルランドの劇作家オスカー・ワイルド(1854〜1900年)は「放蕩息子は必ず戻ってくるものだ」と述べている。「宗教はアヘン」と誹謗してきた共産主義者も死の床で神父から懺悔と終油の秘跡を受け、キリスト者として回心した人々がいる。ただし、これは神の勝利というより、悲しみ、苦しみの痛みが「宗教はアヘン」といった言葉に勝利したというべきかもしれない(「グスタフ・フサークの回心」2006年10月26日参考)。

 「信仰の祖」と呼ばれるアブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教は砂漠で生まれた。だから、宗教学者は「砂漠の宗教」と呼んでいる。砂漠では生きていく上で必要なものすら見つからない。生死に彷徨う人は天を仰ぎ、救いを求め、ある時は怒りを発する。そこから唯一の神を信仰する宗教が誕生した。そしてその神は「私は妬む神だ」(出エジプト記20章5節)と述べ、自身への完全な帰依を要求する。

 なぜ宮殿生活では唯一信仰が生まれてこなかったのだろうか。彼らにも拝む対象はあった。モーセが60万人のイスラエル人を引き連れてカナンに向かったが、モーセが住んでいたエジプトのパロ宮廷ではさまざまな神々が拝む対象となった。砂漠の宗教の神ではなかったから、「私は妬む神」といった強迫はしない。自分たちが豊かに楽しむ喜びを得るために、それらの神々は拝まれてきた。その意味で、「宮殿の神」は拝む人々に奉仕する神であり、賞味期限付きの神といえるわけだ。

 それでは「宗教」はいつ始まったのか、誰がその創始者だったのか。旧約聖書の「失楽園の話」(創世記3章)によれば。神の戒めを破ったアダムとエバは「エデンの園」から追放される。アダムとエバの間にカイン(長男)とアベル(次男)の2人の息子が生まれたが、兄は弟を殺害した。人類の始祖アダムの家庭で姦淫と殺人が起きた。

 神はアダムとエバの間に第3の息子を与える。その名をセツと呼ぶ。そしてセツには1人の男の子エノスが生まれた。エノスはヘブライ語で「弱さを持った人」を意味する。ドイツの著名な神学者オイゲン・ドレヴェルマン氏によると、アダムは「人」を意味するが、エノスは(本来の人ではない)「小さな人」を示唆している。そのエノスが生まれた時から、「人々は主の名を呼び始めた」(創世記4章26節)。ドレヴェルマン氏は、「この時から宗教が始まった」と指摘している。「宗教」が誕生した瞬間だ。現代風に表現すれば、神のグレート・リセットだ。

 ちなみに、聖パウロは「コリント人への第2の手紙」12章で、「むしろ、喜んで自分の弱さを誇ろう。なぜならば、私が弱い時にこそ、私は強いからである」と語っている。「弱さを持った人」を意味するエノスから「宗教」が始まったのは決して偶然ではないわけだ。

 「砂漠の宗教」、「悲しみの神」、そしてコロナ時代の「集中治療室の神」はエノスから派生した「弱さを持った人々」の神といえるかもしれない。ただし、自身の弱さを正しく理解しなければ、自己憐憫になって傲慢の罠に陥る危険性が出てくる。

EUの対中「マグニツキー法」に期待

 欧州連合(EU)と英国間の自由貿易協定(FTA)交渉が24日、合意し、EUは来年1月1日に暫定発効させる予定だ。英国のEU離脱後、長い交渉の末、無協定といったカオス状況を回避できたわけだ。EUは喜んでいる時間がない。次はEUと中国との間の投資協定の締結が差し迫ってきている。EUと中国はドイツが今年下半期の議長国をやっている間に投資協定を合意することを目指してきたからだ。

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▲習近平国家主席、欧州連合首脳とビデオ会談(2020年6月23日、新華社サイトから)

 EUにとって中国は米国に次いで2番目の通商相手国だ。中国から欧州市場に落とされる投資の半分以上は中国国営企業からのものだ。彼らは戦略的に重要な分野に巨額の資金を投入する。例えば、インフラ分野だが、中国の投資内容には不透明なものが多く、その全容が掴めない状況だ。

 中国はEU市場に積極的に進出する一方、欧州の企業は中国共産党政権の強権政治の下、様々な障害があって自由な投資が出来ない、といった不満の声が絶えなかった。EUはここにきて「投資協定の締結」と「中国の人権改善」をリンクさせる政策を取り出した。それを受け、中国側の反発も強まってきている。

 ところで、EUの中でもドイツのメルケル首相はこれまで12回訪中するなど、中国共産党政権と友好関係を構築し、ドイツ企業の中国進出を促進してきたことで知られている。そのメルケル首相が聞いたらショックを受ける中国外交官の発言が報じられた。

 ドイツは国連安保理の非常任理事国とした活躍してきたが、ドイツ大使が離任する前日の安保理での話だ。ドイツ大使が会場で中国代表団に拘束中の2人のカナダ人の釈放を求めた。すると、中国大使代理はドイツが安保理メンバーから離れることに言及し、「ドイツが(国連安保理メンバーから)去って、嫌な奴がいなくなってせいぜいするよ(Good riddance)」と発言したというのだ。ロイター通信が12月22日報じている。

中国外交官は「戦狼外交」と呼ばれ、北京から派遣された外交官は相手が中国側の要求を受け入れないとリングに上がったボクサーのように拳を直ぐに振るい始める。罵声、中傷発言をも躊躇せず、相手をこき下ろす暴言を吐くことで知られているが、同大使代理もその仲間の一人だったわけだ。

 中国外交官は国内の人権問題に言及されると、その素性が飛び出す。昔は「内政干渉は許さない」で終わったが、ウイグル人問題や法輪功迫害問題に言及されると、狼の素性が飛び出す(「世界で恥を広げる中国の『戦狼外交』」2020年10月22日参考)。

 ルクセンブルク市に本部を置く欧州会計監査院(EuRH)が9月10日、EU域内の中国の国営企業の投資状況に関して分析した報告書を公表した。それによると、「中国の国営企業は北京の共産党政権の管理下にあるため、EU市場の経済規律を無視し、歪めることが多い」と指摘。中国国営企業はEUでは通常の企業に適応される国家補助金や助成金の規制の適応外に置かれていると強調。その上、「中国企業がEU加盟国でどの分野に投資したのか、その内容や規模に関する信頼できる情報がまったくない。加盟国も国益を最優先するから中国企業の投資に関する詳細な情報を提供しない。そのため、EUは共同の対中投資戦略が構築できない」と嘆いている。

 EUは2016年、中国の鉄鋼ダンピングを受けて反ダンピング関税引き上げ措置をとり、中国が久しく要求してきた市場経済ステータスの承認を拒否するなど、中国を「パートナーであると同時に、体制的ライバル(systemic rival)」と位置付けてきた。EU委員会は7月24日、次世代の移動通信システム「5G」の導入に当たり、重要な通信システムを外国企業に委ねてしまっては安全保障上のリスクが大きすぎると判断している。中国企業の直接投資(FDI)に対するスクリーニング制度の導入など、中国の投資への警戒心が欧州に広がってきている。

 習近平国家主席は2012年、政権を掌握すると積極的な覇権外交を進め、新マルコポーロと呼ばれる「一帯一路」構想を打ち出し、アジア・アフリカなどに甘い言葉をかけ、参加後は相手国を債務支払い不能にして、中国のいいなりにする、まるでマフィア、ヤクザのようなやり方を行ってきた。それだけではないのだ。EU27カ国中15カ国が「一帯一路」プロジェクトに関連した投資で北京政府との間で意向書に署名しているのだ

 EUは中国と2013年から企業の投資保護、市場参入の規制緩和について投資協定を交渉してきたが、ここにきて中国の人権問題を投資協定とリンクさせて、北京に圧力を強めてきている。EUのジョセップ・ボレル外交・安全保障上級代表(外相に相当)は今月21日、中国の著名な人権派弁護士の高智晟氏らを直ちに釈放するよう求めたばかりだ。

 そしてEU27カ国は今月8日、人権侵害を行った個人・団体を制裁対象とし、EUへの渡航禁止措置や資産凍結などを行う経済制裁法を施行させた。同内容は欧州版「マグ二ツキ―法」と呼ばれている。

 ちなみに、「マグニツキ―法」とは、ロシアの弁護士セルゲイ・マグニツキー氏の名前からとったもの。同弁護士は同国税務当局をめぐる巨額横領事件を告発後、拘留され、獄中死した。米国は2012年、「マグニツキー法」を制定している。EUの欧州版「マグニツキ―法」は中国を狙ったものだ。

 中国共産党政権の人権蹂躙は幅広い。「言論・報道の自由」から「信仰の自由」、法輪功メンバーに対する「強制臓器移植問題」から少数派民族「ウイグル人弾圧政策」までだ。ウイグル人問題では100万人以上が強制収容所で同化政策を強いられ、女性には不妊手術が行われている。

 欧州は中国の人権蹂躙問題には余り声を大にして北京を批判してこなかったが、中国当局が今年、香港で「国家安全維持法」を施行させ、民主派議員の資格はく奪や、民主活動家の逮捕などを相次いで行ってきていることで危機感を感じ出してきたわけだ。

 EUが中国と投資協定の締結問題で人権問題をリンクさせ、中国側に圧力を行使することは賢明だ。人権蹂躙が中国側にも大きな代価を強いることを知らせるべきだ。中国との投資協定の締結は、中国の人権状況の改善後でも遅すぎることはないからだ。

コロナ・ワクチン接種希望者が減少?

 欧州医薬品庁(EMA)から承認勧告の知らせを受け、欧州連合(EU)欧州委員会は21日、米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品企業ビオンテックが共同開発したワクチンの「条件付き販売承認」を決定し、クリスマス休日明けの今月27日から接種を開始すると表明した。ファイザー社の広報関係者によると、ワクチン輸送は同社の欧州拠点、ベルギーのプールス市を既にスタートした。

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▲ファイザー社とビオンテック社が開発したコロナ・ワクチン(ファーザー社の公式サイトから)

 中国武漢発の新型コロナウイルス(Covid-19)が欧州に飛び火して、10カ月余りが経過するが、欧州でようやくコロナ・ワクチンを接種できるということで、コロナ禍の出口が見えてきたと喜ぶ声が政治家や国民から聞かれる一方、ワクチン接種を拒否する声がここにきて増えている。

 オーストリアでは27日午前9時、ウィーン医科大学で最初の5人が「オーストリア・ワクチン委員会」のウルズラ・ヴィーダーマン・シュミット会長と医師会のトーマス・セカレシュ会長らの立ち合いのもとワクチン接種を受ける。オーストリア保健省によると、来年第1四半期分として100万人分のワクチンが送られてくる。ファイザー・ビオンテック社は、「ワクチン輸送はフル回転中だ。初回輸送を成功させるために関係者は最善の努力を払っている」という。ただし、安全問題もあって、詳細な輸送計画については公表を控えている。同社によると、2021年、13億人分のワクチンを製造する予定だ。

 ちなみに、ファイザー社の説明では、マイナス70度の超低温冷凍庫で保管された場合、ワクチン(「BNT162b2」)は半年間は有効性を失わないという。ただし、接種のために冷凍庫から取り出された場合は、2度から8度の状況下で120時間、ワクチンはその効力を維持できるという。なお、同超冷凍庫は1台1万ユーロもする。ウィ―ン市では同種の超低温冷凍庫は3台しかない。

 上記の内容はもちろんファイザー・ビオンテック社のワクチンの話だ、他のワクチンでは常温下で保管でき、接種は1度でいい場合もある。ファイザー社の場合、2度の接種が必要となる、といった具合で、製造先のワクチンによって接種から保管まで条件は異なる。

 オーストリアのクルツ首相は23日の記者会見で、「26日にはドイツ・オーストリアの国境パッサウを通過してわが国に入る。連邦軍と医薬輸送関係者がその後、運ばれたワクチンを全州(9州)に公平に配分する」と説明した。

 ところで、ワクチン接種が可能となったが、オーストリアではワクチン接種に消極的な声が広がってきたという世論調査結果が明らかになった。ウィ―ン大学の「オーストリア・コロナ・パネル・プロジェクト」が実施した調査結果によると、ワクチン接種を希望する人は全体の約3分の気卜韻泙辰討い襦5月に実施された同種の調査では接種希望者は全体の48%だった。ワクチンが接種可能となった時点でワクチン拒否者が増加したことになるわけだ。

 インフルエンザのワクチンの割合も接種率は高くないが、世界で12月24日現在、約7800万人が感染し、約173万人が犠牲となった新型コロナに対しては多くの人がワクチンの完成を願ってきただけに、ワクチン接種を拒否する人が増えてきているのはなぜだろうか。

 考えられるのは、.灰蹈福Ε錺チンだけではなく、ワクチン一般に対する警戒心があること、▲錺チンの安全性。英国や米国ではワクチン接種が開始されているが、接種を受けた人にアレルギー症状などの拒否反応が出たケースが報告されている。ワクチン接種を政治的ショーとする政治家への反発。世界で最初のワクチンという名誉を得るためにワクチン接種(ロシア国産スプートニクV)を急がせたロシアのプーチン大統領、ワクチンの第1号接種(12月8日)を政治ショーとした英国のジョンソン首相らの姿を見て、政治家の道具となっているワクチン接種に拒否反応が働いている。た祁織灰蹈粉鏡拡大当初、ワクチンの完成は早くても来年前半と予想されていた。それが突然、年内にワクチン接種可能となったことに対し、「なぜ早く製造できたのか」といった不信感を抱く人がいる。

 EUがワクチン接種開始を宣言した直後、感染力が強い新型コロナウイルスの変異種が英国で見つかり、英仏海峡が一時的に閉鎖されたが、同時に、認可され、接種が始まったワクチンの有効性に懸念を表明する声もある。

 それに対し、世界保健機関(WHO)は21日、「英国以外で5カ国、新型コロナの変異種が発見されている」と確認する一方、「変異種は従来より感染力は強いが、感染者を重症化させ、致死率を上げたりする証拠は現時点で見つかっていない」と説明するだけに留めている。

 中国武漢発の新型コロナウイルスでは、その発生源問題で武漢ウイルス研究所から漏れたと主張する米国に対し、中国共産党政権が猛烈に異議を唱えるなど、米中間で対立、コロナ問題は最初から政治問題の様相を深めてきた経緯がある。そしてコロナ・ワクチンの接種が始まると、中国は自国産ワクチンを広めるためにワクチン外交に乗り出してきている、といった具合だ。そのような中、コロナ・ワクチンに対し、世界の多くの人々は無条件で喜ぶことができなくなってきているのかもしれない。

アムネスティ願う世界の大統領たち

 モスクワからの外電によると、ロシアのプーチン大統領は退職した大統領に対して刑事責任を終身免除する法案に署名した。同内容は退職した大統領の家族関係者にも当てはめられる。同法は退職した大統領とその家族へのアムネスティ(不逮捕特権)を意味し、ロシアが現在進めている憲法改正の一環であり、プーチン大統領が2036年まで大統領職を継続できるように法を改正する狙いがあると受け取られている。

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▲退職後の身の安全を模索するロシアのプーチン大統領(2020年12月21日、クレムリン公式サイトから)

 同国では大統領の刑事責任免除は現職時代だけに限定されていたが、新法は退職後もその特権を認めるもので、警察や検察関係者から聴取されたり、自宅捜査を受けることはなくなる。例外事項は大統領が国家反逆罪やそれに類似する重犯罪を犯し、憲法裁判官が要請した時だけ。その場合、連邦議会が審議するが、最終的判定は国家評議会が下す。プーチン氏の場合、大統領を退職した場合、終身国家評議会議長に横滑りするものと予想されており、プーチン氏の意向に反する決定は下せない、といった具合だ。

 プーチン氏が退職後の身の安全を懸念しているということは、同氏がクレムリンから様々な不法な命令や蛮行を指令してきたことを裏付けている。身の潔白な大統領ならば、退職後に刑務所に送られるといった恐れを抱く必要はないから、プーチン氏には身に覚えのある過去が少なからずあるのだろう。プーチン氏の前任者ボリス・エリツイン氏(初代ロシア大統領職任期1991〜99年)も職を退く条件として、自身へのアムネスティを要求している。プーチン氏が発布した最初の大統領令には、エリツイン氏に対する刑事責任を終身問わないことが明記されていた。

 欧米メディアは、ロシアの新法が可決されたのが、毒殺未遂事件後、ドイツのベルリンのシャリティ大学病院で治療中のロシアの反体制派活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)が21日、ロシアの安全保障当局者になりすまし、自身を殺害しようとしたロシア連邦保安庁(FSB)工作員から犯行告白を聞き取り、それを公表した直後だった点に注目している。新法では、国家公務員との会話(この場合、FSB工作員)やそのデータの公表は不法となっている。

 実際、20年以上のプーチン氏の政権時代にはチェチェン紛争からウクライナ内戦まで多くの軍事衝突があった。それだけではない。▲英国で2018年3月4日、亡命中の元ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)スクリパリ大佐と娘の毒殺未遂事件(「英国のスクリパリ事件の『核心』は?」2018年4月21日参考)があった。▲また、ソ連国家保安委員会(KGB)、ロシア連邦防諜庁(FSK)の職員だったアレクサンドル・リトビネンコ氏は英国に亡命後、2006年11月23日、ロンドンでポロ二ウム210によって毒殺された。▲ジャーナリストであり人権活動家だったアンナ・ポリトコフスカヤ女史は2006年10月7日、射殺された。▲エリツィン大統領時代に第1副首相を務めたボリス・ネムツォフ氏は2015年2月27日、モスクワ川にかかる橋の上で射殺された、等々、メディアで報じられた暗殺(未遂)事件だけでも多数生じている。欧米社会からクレムリンの関与を追及される度に、プーチン大統領は「西側の反ロシアキャンペーン」と一蹴してきた(「ナワリヌイ事件が示したロシアの顔」2020年9月6日参考)。

 ちなみに、プーチン氏の懸念を最もリアルに感じるのは韓国大統領ではないだろうか。韓国では歴代大統領はほとんど刑事責任を問われている。存命では全斗煥、盧泰愚、朴槿恵、李明博の各大統領経験者が全員、実刑の確定判決を受けている。そんな国は世界でも韓国しかないだろう。

 クレムリン宮殿と青瓦台と名称こそ違うが,ロシアと韓国両国では大統領府の住人は退職後、悠々自適な日々を過ごすことが難しいのだ。韓国の大統領とプーチン氏の違いは、後者は法を改正しても自身の安全を守ろうと腐心するが、前者の場合、政治風土が問題だから、法改正云々ではどうしょうもない面があることだ。

 もちろん、ロシア、韓国だけではない。フランス大統領のジャック・シラク氏(任期1995〜2007年)やニコラ・サルコジ氏(任期2007〜12年)も現職時代の不祥事で刑事責任が問われるなど、案外、世界の大統領の退職後の人生はハッピーな日々からは程遠い。

 事の真偽は不明だが、米国のリベラルなメディアによると、トランプ大統領はホワイトハウスを去る前に現職時代の過去4年間の不祥事などに対する刑事責任を負わないために、現職大統領が自身にアムネスティを与えることが出来るかを法の専門家に聞いた、という話が報じられた。

 いずれにしても、政治の世界がクリーンでないことは明らかだ。その最高指導者となればダーティな決定も下さなければならない。敵も増える。退職後のアムネスティを願う大統領が出てくるという事実はそれを裏付けている。

「コロナ・ワクチン接種」と倫理問題

 中国武漢発の新型コロナウイルスが欧州にまで感染を広めて既に10カ月余り経過したが、ここにきてCovid-19に対するワクチンが開発され、欧州医薬品庁(EMA)の承認勧告を受け、欧州連合(EU)欧州委員会は21日、米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品企業ビオンテックが共同開発したワクチンの条件付き販売承認を決定した。フォンデアライエン欧州委員長は、「今月27日から接種が開始される」と述べた。

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▲「コロナ・ワクチンの接種は道徳的に受容」と報じるバチカンニュース(2020年12月21日)

 オーストリアのアンショーバー保健相は、「ワクチンは大きなチャンスだ」と指摘し、クルツ首相は、「ワクチン接種が進めば来年夏には再び新型コロナ感染前の正常な日常生活に戻れるだろう」と期待を表明している。

 その一方、感染力が強い新型コロナウイルスの変異種が英国で見つかり、英仏海峡が一時的に閉鎖され、物流の停滞が広がっている。同時に、認可され、接種が始まったワクチンの有効性に懸念を表明する声が既に聞かれる。

 世界保健機関(WHO)は21日、「英国以外で5カ国、新型コロナの変異種が発見されている」と確認する一方、「変異種は従来より感染力は強いが、感染者を重症化させ、致死率を上げたりする証拠は現時点で見つかっていない」という。

 世界的に著名なドイツのウイルス学者、クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)は、「ドイツでも既に変異種が見つかっている。もう暫く監視しなければならないが、既に認可されたワクチンの有効性に支障が出てくるとは現時点では考えていない」と語っている。

 ところで、認可されたワクチンには、人工妊娠中絶された胎児の細胞株がワクチン開発段階で使用されていることが明らかになると、バチカン教理省は21日、「胎児の細胞株がワクチン開発の段階で使用されていたとしても、問題のない、完全なワクチンがない段階では受容可能だ」と指摘、開発研究過程で胎児の細胞株が使用されているワクチンに道徳的な問題はないとの立場を明らかにした。ちなみに、開発段階で使用された胎児の細胞株は1960年代に接取されて保管されていたものという。

 バチカン教理省は、「ワクチンの効果や安全性について評価できない。なぜならば、それは生物医学者が責任もって答えるべき問題だからだ。ただしワクチンを接種するか否かの選択権が国民にない場合は、道徳的には受容できない」と述べ、ワクチンの接種義務化には異議を唱えた。

 フランシスコ教皇が今月17日に認め、バチカン教理省が21日に公表した覚書によれば、「一般の国民、特に高齢者や疾患者を守るワクチンである限り、支持する。同時に、ワクチン接種は道徳的な義務ではなく、あくまで自主的な判断に基づくものでなければならない」と説明。その上で「医薬品製造メーカーと各国保健関係者は倫理的に認可され、患者に接取できる受容可能なワクチンの製造に努力すべきだ」と強調。また、「貧しい国に対してもワクチンを提供すべきだ」と付け加えている。

 コロナ・ワクチン製造で中絶された胎児の細胞株が製造段階で使用されている問題について、バチカンが立場を表明した背景にはカトリック教会内外で中絶された胎児の細胞株の利用で強い批判の声があるからだ。バチカン教理省は過去、「生物倫理」に関するテーマで見解をまとめた文書などを発表している。

 バチカンニュース独語版は21日、「コロナ・ワクチンは道徳的に受容可能だ」と大きく報道し、「コロナ・ワクチンを接種することは中絶を認めることを意味しない」と、ワクチンの接種は中絶を正当化するものではないと重ねて強調している。

イエス降臨目的は「女性神」探しだった

 イエスの誕生を祝うクリスマスが近づいてきたので、このコラム欄の慣例として「イエスの降臨」について、クリスマスツリーに集まってプレゼントを交換する前にもう一度考えてみたい。

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▲天の川銀河の中心部に発見されたブラックホール・バウンティ NASA提供

 今回は、イエスは人類救済のためではなく「女性神」を探すために降臨したのではないか、というテーマだ。キリスト教の伝統的な教えでは、神は独り子イエスを地上に降臨させ、人類を救おうとされたと考えてきた。それに対し、イエスの降臨目的は、男性神が失った自身のベストハーフ(伴侶)をもう一度見出すために、人間の姿(イエス)となってこの地上に降臨したという主張がある。男性神が失った女性神を見つけることができれば、人類救済は自動的に達成できるので、イエス降臨の究極の目的は本来、「妻」を探すことであって、人類救済ではなかった、という主張だ。以下、少し説明する。

 男性神と女性神が存在するという考えは一神論の立場のキリスト教の基本的神観とは異なるが、神が男性神と女性神であるという主張は聖書に基づいている。女性神の存在は聖典の中には至るところで見いだせる。

 ベルギーの考古学者、ネル・シルバーマン氏やテルアビブ大学のイスラエル・フィンケルシュタイン教授によると、シリアの砂漠で紀元前800年頃の石碑が発見されたが、そこには、「イスラエル民族の神ヤウェとその妻アシェラ」と記述されていたという。アシェラは多神教の信仰が広がっていたカナン(現イスラエルの辺り)の地に登場する女神の名前と同じだ。「エレミヤ書」では女神を「天の女王」と呼んでいる。

 神は男性神と女性神だという話は旧約聖書の創世記を読めば明確に理解できる。聖書の記述者は、「神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された」(創世記第1章27節)と記述し、神にも男性と女性の2性が存在することを示しているからだ。キリスト教の「神」は基本的には男性格要素が強いが、聖霊が降臨して女性神的な役割を果たすことで、キリスト教神学の欠損部分を補填してきたわけだ(「男性と女性の2性を有する『神』とは」2019年1月2日参考)。

 問題は、男性神と女性神が宇宙を創造した後(ビックバーン)、何等かの理由から対立し、女性神は地上に追放されたことだ。著名なユダヤ教文化史専門家、クラウス・ダビッドビィツ教授によれば、女性神は「生命の木」の下に男性神と共にいたが、堕落してからは追放された。女性神はその後、聖典には“淫乱の神”として登場する。旧約聖書の「ホセア書」には神が伴侶の女性神と離婚したことが示唆されているというのだ。

 例えば、「ホセア書」第2章には「彼女は私の妻ではない。私は彼女の夫ではない。彼らの母は淫行をなし、彼らをはらんだ彼女は恥ずべきことを行った」と記述されている。ルター訳聖書では、神の妻を「売春婦」と訳していたほとだ。

 創世記の「失楽園」の話を読めば、人類の最初の過ちは最初の女性エバから始まったことが分かる。「神学大全」の著者のトーマス・フォン・アクィナス(1225〜1274年)は「女の創造は自然界の失策だ」と言い切っている。

 ちなみに、「女性神」については昔からさまざまな伝説がある。古代中国神話では女媧(じょか)と呼ばれる「女神」が人類を創造したという話が伝わっている。「女神」がどうして人類を繁殖できたかについてはいろいろな説があるが、老子の「万物は陰を負い、陽を抱いている」という陽陰説を適用すれば、「女神」の女媧は単性生殖ではなく、自身の陽陰で万物を創造したことになる。

 人間の姿として降臨した男性神(イエス)は別れた女性神との和合を模索するが、この世の神となって巨大な力を有していた女性神を説得できず、逆に十字架にかかり、その願いを果たすことが出来なくなった。「私はもう一度くる」というのは再び人間の姿で男性神が失った妻を探しに来るというメッセージだったというのだ。

 だから、再臨主が降臨した場合、彼の最大の使命は女性神を探し出すことにある、という見方ができるわけだ。そして男性神と女性神が和合できれば、そこから新しい人類が繁殖できるから、人類の救済祝福は自動的に実現できる、となる。

 以上、この話はイエスの誕生を祝うクリスマスの伝統的な考え方とは異なっているが、イエスが誕生された目的を考える上で、新しいインスピレーションを与えるのではないだろうか。

 明確なことは、男女が和合しない限り、男性格と女性格から成る「神」は自身を表すことができないということだ。「男性が強い世界」でも「女性が強すぎる世界」でも「神」は安住できないわけだ。

 蛇足だが、当方はこのコラム欄でイエスの33歳までの生涯の再考を試みた。「イエスの父親はザカリアだった」(2011年2月13日参考)、「イエスの十字架裁判のやり直し?」2013年8月4日参考)、「『償い方』の時代的変遷とその『恩恵』」2014年7月10日参考)、そして「『聖母マリア』神性化の隠された理由」2015年8月17日参考)。この4本のコラムを時間が許せば再読してほしい。イエスの降臨の意義を知るための細やかな試みだ。
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