ドイツのローマ・カトリック教会で信者の教会離れが加速してきた。19日公表された教会統計によると、独教会の昨年教会脱会者数は21万6078人で前年比で29%増だった。昨年の脱会者数は戦後、2番目に多い。最高は2014年で、脱退者数は21万7716人だった。
▲教会の告解室は空だ(バチカンニュースHPから)
ドイツ教会司教会議(DBK)のハンス・ランゲンデルファー書記は、「最新の統計は深刻な懸念だ。統計は飾ることができない。教会で過去、顕著となってきたトレンドを反映しているからだ。教会側はネガティブな統計を自己批判的、建設的に向かいあって、真剣に考えていかなければならない」と述べている。
5月に公表された教会信者数の動向に関する研究によると、ドイツのカトリック教会は西暦2060年までに現在の半分に縮小するという予測が出ている。同書記は「今回の教会脱会者数はその予測を裏付けている」と受け取り、「『マリア2・0イニシャティブ』が示すように、信者たちは教会の刷新を願っている」と強調する。
ちなみに、ドイツのカトリック教会で「マリア2・0」運動と呼ばれる女性グループが男性主導の教会組織から脱皮し、女性たちにも聖職の道を要求して1週間(5月11日から18日)の「教会ストライキ」を行ったばかりだ(独教会の女性信者が『スト』に突入」2019年5月14日参考)。
教会脱会者数以外の教会統計では、教会婚姻4万2789人で前年比で微増する一方、洗礼者、初聖体拝領、堅信礼、教会葬儀数は微減した。一方、昨年6303人が教会に戻ってきている。前年はその数は6685人だった。教会に初めて入会した信者数は2442人で2017年の2647人より約8%減少した。日曜礼拝参加の割合は9・3%で過去最低を記録した。17年は9・8%だった。10人の信者のうち、日曜礼拝に参加する信者は1人弱ということになる。教会はクリスマスと復活祭といったイベント以外はがら空きの寒々しい風景というわけだ。
参考までに、ドイツではローマ・カトリック教会の信者数は昨年末現在、2300万2128人だった。ドイツ全人口の約28%がカトリック信者ということになる(2017年2331万1321人)。一方、、プロテスタント教会では昨年、22万人が教会を脱会して、17年比で11・6%増だった。ドイツでは新旧教会の信者数はドイツ全体で53・2%。正教徒や他のキリスト教徒数を含めばその割合は56・1%(17年57・6%)。
教会の信者たちが教会から背を向けるのはある意味で当然だろう。聖職者の未成年者への性的虐待事件が発覚し、教会上層部がその性犯罪を隠蔽してきたことが明らかになり、教会への信頼が大きく崩れたからだ。教会という世界最古の機関がその土台から崩れ出したのだ。
ドイツ教会のDBKが昨年9月公表した聖職者の未成年者への性的虐待事件の調査結果によると、1946年から2014年の68年間で3677人の未成年者が聖職者によって性的虐待を受け、少なくとも1670人の神父、修道院関係者が性犯罪に関与した。また、「聖職者の性犯罪では関連書類が恣意的にもみ消され、操作されていた」という(「独教会『聖職者の性犯罪』をもみ消し」2018年9月14日参考)。
世界最古の少年合唱団として有名なドイツの「レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊」(Domspatzen)内で1953年から1992年の間、総数422件の性的暴行・虐待事件が起きていたことが報じられた時、ドイツ国民は大きなショックを受けたことはまだ記憶に新しい(「独教会の『少年聖歌隊』内の性的虐待」2016年10月16日参考)。
信頼を構築するのには時間と忍耐が必要だが、失った信頼を取り戻すためにはそれ以上の時間が必要となる。多くの信者が「教会」から出ていくが、彼らが「神」を捨てて出ていくというより、「教会」という組織の拘束から解放され,個人で神への信仰を深めていく傾向が出てきたのではないか。信仰の民営化現象だ。実際、多くの若者は物質的な世界から霊的な世界に関心を持ち出してきている。
インターネットの発展で情報・知識を入手する機会は均衡化してきた。学校へ行かなくても知識や情報は入手できる。同じように、教会に行かなくても神との対話は可能だ。神はキリスト教初期時代、迫害に耐え、結束を堅持するために守りの館として教会を創設したが、教会が神から離れていく時、教会は神への信仰の手助けとなるどころか、障害となってきている。教会の現状はそれに近いだろう。
宗教改革者ルターは固陋な伝統と腐敗に陥った教会から飛び出し、信仰の原点・聖書に戻れと叫んだ。あれから500年以上が過ぎた。21世紀に入り、教会が「神」を独占した時代は過ぎ去ろうとしている。
▲教会の告解室は空だ(バチカンニュースHPから)
ドイツ教会司教会議(DBK)のハンス・ランゲンデルファー書記は、「最新の統計は深刻な懸念だ。統計は飾ることができない。教会で過去、顕著となってきたトレンドを反映しているからだ。教会側はネガティブな統計を自己批判的、建設的に向かいあって、真剣に考えていかなければならない」と述べている。
5月に公表された教会信者数の動向に関する研究によると、ドイツのカトリック教会は西暦2060年までに現在の半分に縮小するという予測が出ている。同書記は「今回の教会脱会者数はその予測を裏付けている」と受け取り、「『マリア2・0イニシャティブ』が示すように、信者たちは教会の刷新を願っている」と強調する。
ちなみに、ドイツのカトリック教会で「マリア2・0」運動と呼ばれる女性グループが男性主導の教会組織から脱皮し、女性たちにも聖職の道を要求して1週間(5月11日から18日)の「教会ストライキ」を行ったばかりだ(独教会の女性信者が『スト』に突入」2019年5月14日参考)。
教会脱会者数以外の教会統計では、教会婚姻4万2789人で前年比で微増する一方、洗礼者、初聖体拝領、堅信礼、教会葬儀数は微減した。一方、昨年6303人が教会に戻ってきている。前年はその数は6685人だった。教会に初めて入会した信者数は2442人で2017年の2647人より約8%減少した。日曜礼拝参加の割合は9・3%で過去最低を記録した。17年は9・8%だった。10人の信者のうち、日曜礼拝に参加する信者は1人弱ということになる。教会はクリスマスと復活祭といったイベント以外はがら空きの寒々しい風景というわけだ。
参考までに、ドイツではローマ・カトリック教会の信者数は昨年末現在、2300万2128人だった。ドイツ全人口の約28%がカトリック信者ということになる(2017年2331万1321人)。一方、、プロテスタント教会では昨年、22万人が教会を脱会して、17年比で11・6%増だった。ドイツでは新旧教会の信者数はドイツ全体で53・2%。正教徒や他のキリスト教徒数を含めばその割合は56・1%(17年57・6%)。
教会の信者たちが教会から背を向けるのはある意味で当然だろう。聖職者の未成年者への性的虐待事件が発覚し、教会上層部がその性犯罪を隠蔽してきたことが明らかになり、教会への信頼が大きく崩れたからだ。教会という世界最古の機関がその土台から崩れ出したのだ。
ドイツ教会のDBKが昨年9月公表した聖職者の未成年者への性的虐待事件の調査結果によると、1946年から2014年の68年間で3677人の未成年者が聖職者によって性的虐待を受け、少なくとも1670人の神父、修道院関係者が性犯罪に関与した。また、「聖職者の性犯罪では関連書類が恣意的にもみ消され、操作されていた」という(「独教会『聖職者の性犯罪』をもみ消し」2018年9月14日参考)。
世界最古の少年合唱団として有名なドイツの「レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊」(Domspatzen)内で1953年から1992年の間、総数422件の性的暴行・虐待事件が起きていたことが報じられた時、ドイツ国民は大きなショックを受けたことはまだ記憶に新しい(「独教会の『少年聖歌隊』内の性的虐待」2016年10月16日参考)。
信頼を構築するのには時間と忍耐が必要だが、失った信頼を取り戻すためにはそれ以上の時間が必要となる。多くの信者が「教会」から出ていくが、彼らが「神」を捨てて出ていくというより、「教会」という組織の拘束から解放され,個人で神への信仰を深めていく傾向が出てきたのではないか。信仰の民営化現象だ。実際、多くの若者は物質的な世界から霊的な世界に関心を持ち出してきている。
インターネットの発展で情報・知識を入手する機会は均衡化してきた。学校へ行かなくても知識や情報は入手できる。同じように、教会に行かなくても神との対話は可能だ。神はキリスト教初期時代、迫害に耐え、結束を堅持するために守りの館として教会を創設したが、教会が神から離れていく時、教会は神への信仰の手助けとなるどころか、障害となってきている。教会の現状はそれに近いだろう。
宗教改革者ルターは固陋な伝統と腐敗に陥った教会から飛び出し、信仰の原点・聖書に戻れと叫んだ。あれから500年以上が過ぎた。21世紀に入り、教会が「神」を独占した時代は過ぎ去ろうとしている。