ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2018年05月

パーティ・ハリーが涙を流した日

 英国ロンドン近郊のウィンザー城内の聖ジョージ礼拝堂で19日、英王室のヘンリー王子(33)と米女優のメーガン・マークルさん(36)の結婚式が挙行された。ウインザー周辺では10万人以上の人々がヘンリー王子夫妻の新しい門出を祝った。

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▲ヘンリー王子とマークルさんの結婚式(2018年5月19日、英BBC放送の中継から)

 当方は朝早くからテレビをつけ、結婚式を追った。オーストリア国営放送は朝10時過ぎから欧州の王室を紹介する番組を流していた。どの局も王室問題専門家が招かれ、さまざまなエピソードなどを紹介していた。当方は地元英BBC放送を中心にヘンリー王子とメーガンさんの結婚式を観た。

 王室の結婚式を見る楽しみの一つは、招かれたゲストの面々を見ることだ。ヘンリー王子(愛称ハリー)の場合、独身時代の広範囲な交流もあってか、いろいろな職種の人々が招かれていた。元サッカーイングランド代表のデビット・ベッカム氏夫妻、ヘンリー王子の母親ダイアナ妃が亡くなった時(1997年8月31日)、追悼する歌「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」を作曲し、歌ったエルトン・ジョンの姿も見られた。

 今回はヘンリー王子の意向もあってか、現職の政治家は誰も招かれなかった。当方がゲストの中で見つけた唯一の政治家は英国元首相のジョン・メージャー氏(在位1990〜97年)だけだった。また、メーガンさんが米女優だったこともあってハリウッドから多数の俳優が招かれていた。代表的なところでは、ジョージ・クルーニーさんと奥さんの人権弁護士アマルさん夫妻が見られた。

 マークルさんがヘンリー王子と知り合った時に米テレビシリーズ番組「スーツ」(2011年開始、7シーズン)でパラリーガルのレイチェル・ゼイン役で出演中だったこともあって、そこに出演していた主要な俳優たちがほとんど招かれていた。
 大手法律事務所ピアソン・ハードマンで展開される物語「スーツ」(SUITS)の中で結婚するマイク役のパトリック・J・アダムスさん、主人公の敏腕弁護士ハーヴィーを演じたガブリエル・マクトさん、脇役を演じた弁護士ルイス・リット役のリック・ホフマン氏、ハーヴィーの女秘書ドナのサラ・ラファティさんといった具合だ。まるでウインザー城にスーツのスタッフ、俳優たちが総動員されたみたいだった。

 メーガンさんの母親がアフリカ系ということもあって、ヘンリー王子との結婚では様々言われたが、世論調査によると、英国民は、米女優で離婚歴があり、母親が非白人系というメーガンさんに抵抗感は少なく、歓迎する声の方が圧倒的に多かった(「急変する欧州の王室」2010年12月28日、「欧州王室に『幽霊』と『天使』が現れた」2017年1月6日参考)。

 ところで、ヘンリー王子の兄、ウィリアム王子のキャサリン妃(愛称ケイト)はウィリアム王子と結婚することが学生時代からの彼女の人生目標だった。だから、王室入りするため彼女の両親も財政支援など多方面で応援したという。同じように、メーガンさんも若いころから王室入りを夢見ていたというのだ。ヘンリー王子と知り合う前には、付き合っていた男性がいたがヘンリー王子と知り合うと直ぐその男性と別れ、男性から電話がきても決して取らなかったという。それほどメーガンさんは英王室入りを願っていたわけだ。故ダイアナ妃の2人の息子のお嫁さんはいずれも王室入りを願い、それを実現した女性というわけだ。

 ヘンリー王子にはメーガンさんと知り合う前、長く付き合ってきた女性がいたが、彼女は堅苦しい王室生活を嫌い、ヘンリー王子の結婚申し出を断ったという。若い一般の女性にとって英王室に入るということは簡単ではないわけだ。なお、メーガンさんはヘンリー王子と結婚後はサセックス公爵夫人と呼ばれる。

 蛇足だが、英国人は賭けが大好きでなんでも賭ける。同国の代表的ブックメーカー「ウィリアムヒル」は「式でヘンリー王子がメーガンさんと結婚するかと聞かれた時、“ノー”と答える」という賭けをした。そのオッズは100倍以上だった。もちろん、ハリーは「イエス」と答えた。ヘンリー王子は式中、度々涙を拭いていた。あのパーティ王子と呼ばれ、少々、型破りな行動が多かった王子の頬に涙が流れたわけだ。

 英国王室はその規模と歴史から言っても欧州王室を代表している。そこに新しい女性が入ってきた。それを「近代化した英王室」と評する声が聞かれる。多分、そうだろう。サセックス公爵夫妻に幸があることを祈る。

金正恩体制の保証を誰がするのか

 日韓メディアによると、トランプ米大統領は北朝鮮に対し、「体制の保証」を約束し、無条件の非核化要求を撤回したという。これは、日米が強く主張してきた「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」(CVID)、制裁解除、経済支援は非核化の後という路線の修正を意味する。金正恩朝鮮労働党委員長は武装解除、白旗を掲げることを意味するリビア方式の非核化には絶対に応じないことは分かり切っていた。トランプ氏もようやく理解したわけだ。

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▲朝鮮半島の非核化を確認した「板門店宣言」に署名した金委員長と文大統領(南北首脳会談プレスセンター提供、2018年4月27日)

 トランプ氏は南北首脳会談開催前後までは押せ押せムードで強気だったが、ここにきてトランプ氏と金正恩氏の力関係が逆になってきた。金正恩氏は中国との関係修正に乗り出し、中朝両国は歩み寄り始めた。一方、トランプ氏には11月の中間選挙が間近に迫っている。米朝首脳会談でなんとか得点を挙げたい。ジョン・ボルトン大統領補佐官らの意向より、中間選挙の動向の方がトランプ氏にとって重要だからだ。

 トランプ氏が無条件の非核化というリビア方式を交渉テーブルからひっこめたことを受け、6月12日の米朝首脳会談の実現の見通しは少し明るくなった。トランプ氏と金正恩氏の第1ラウンドのディールは若い金正恩氏に軍配が挙がった感じだ。

 問題は体制保証だ。金日成主席、金正日総書記、そして金正恩委員長と続く3代の世襲独裁国家の北朝鮮に対し、民主主義世界の指導的地位を誇ってきた米国が独裁体制の継続を容認することを意味するからだ。 もちろん、外交は綺麗事だけでは済まない。ある時には撤退も必要であり、譲歩も不可欠だ。だから、絶対に独裁政権を認めない、だから、体制保証はできないといえば、米朝首脳会談はもともと不可能だろう。

 独裁国家の北の体制保証は即、国内の政治収容所にいる数十万人の反体制派、宗教家の人権を無視することだ、という批判の声が上がるだろう。幸い、彼らは米朝首脳会談の開催など知らないし、米大統領が独裁者・金正恩氏に対し体制保証を約束したなどとは夢にも考えないだろう。だから、北国内の反体制派の声にトランプ氏は余り心を痛める必要はないわけだ。

 問題は誰が、どの国が独裁国家の指導者に向かって「私はあなたの国の体制を保証する」といえるかだ。そのような権利と能力を有している指導者、国家が存在するかだ。例えば、トランプ氏と金正恩氏の間で体制保証を明記した何らかの外交文書を署名するとしよう。トランプ氏の任期はあと2年半だ。それが経過すれば、再選出馬するが、再選の可能性は不明だ。すなわち、誰が次期米大統領として登場するかは分からない。一方、北朝鮮は多分、金正恩氏が当分は独裁者の位置を維持するだろう。

 問題は次期米大統領が前大統領が任期中、署名した外交文書を死守するかどうかだ。トランプ氏自身、大統領に就任すると直ぐに前大統領(オバマ氏)の任期中の功績をことごとく破棄していった。トランプ氏の後任大統領がトランプ氏の米朝首脳会談で合意した内容に疑義を投げかけ、破棄を強いるかもしれない。

 米国は民主主義国家であり、その指導者は選挙で決定される。一方、北は一人の独裁者が全てを決定できる。このアンバランスの両国間で如何なる外交文書も永遠に維持される保証など考えられないのだ。

 ちなみに、金正恩氏が体制の維持を考えるならば、可能性は皆無ではない。同じ独裁体制の国家との間ならば体制の保証は獲得できるからだ。具体的にいえば、中国共産党独裁政権とならば、双方が体制の維持を願っている限り、合意できる。もちろん、強い独裁国家(中国)が弱い立場の独裁国家(北朝鮮)を吸収併合するといったシナリオは排除できないが。

 トランプ氏が提案する「体制保証」は簡単な内容ではない。金正恩氏に申し出る「体制の保証」とは、米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)による「金正恩斬首作戦」の中止を意味するだけではないのだ。最終的には、朝鮮半島の非核化だ。遅かれ早かれ朝鮮半島に駐留する2万5000人以上の米軍兵士の撤退もアジェンダに浮上してくる。なぜならば、米軍のプレゼンスは北にとって体制への脅威と受け取っているからだ。

 トランプ氏は北の非核化を短期間に実現したい意向というが、焦りは禁物だ。日米韓3国との綿密な話し合いが不可欠だからだ。いずれにしても、トランプ氏は史上初の米朝首脳会談という魅力に抗することができず、大統領専用機「エア・フォース・ワン」に乗り込みシンガポールへ飛び立つだろう。その旅が吉と出るか、凶と出るかは分からない。日本を含む朝鮮半島の周辺国家は固唾を飲んで見守ることになるわけだ。

グローバル時代の「敵」とは誰?

 欧州連合(EU)首脳会談がブルガリアのソフィアで16、17の両日、開催された。そこでの主要テーマは米国のイラン核合意離脱後の対応、米国の対イラン経済制裁再導入への防衛策だ。

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▲ドナルド・トゥスク欧州大統領(ウィキぺディアから)

 EUのドナルド・トゥスク大統領(理事会議長)は16日、(同じドナルドだが)トランプ米大統領に対し、「なんとコロコロ変わる大統領だろうか」と珍しく本音を吐き、「あなたのその変わりやすさ(不可測性)は敵に対応する時には都合はいいが……」と述べ、同盟国のEUに対して貿易制裁を実施するトランプ大統領を「気分屋で強引」と厳しく批判した。

 ポーランド出身のトゥスク大統領の発言は現代的なテーマを提示している。すなわち、21世紀のグローバル時代で敵(国)とは誰かというテーマだ。まだまだ試行錯誤だが、国境、民族、文化の違いを超え世界は統合の方向に向かって緩やかだが動き出している。その時代に、どの国、どの民族が「敵」といえるか、それとも「敵」という概念自体が次第に消滅に向かっているのだろうか、等々考えさせるからだ。

 冷戦時代はある意味でシンプルだった。「敵」と「味方」がはっきりとしていたからだ。共産主義陣営と西側民主主義陣営が大量破壊兵器をもって対立した時代だ。そこに登場した第40代米国大統領、ロナルド・レーガン大統領(任期1981〜89年)は共産主義を「悪」と断じ、西側を「善」と宣言して戦った。

 冷戦時代で勝利した善側の西側民主主義陣営が勝利者らしく、さらに発展していったならば問題は生じなかったが、西側民主主義陣営がその後、揺れ出した。ポスト冷戦時代の問題は多くはそこから生じてきたものだ。勝利者は勝利者らしい栄光を輝かすことができず、敗北者のような様相を呈してきたからだ。その主因の一つは「敵」を見失ったことだ。

 その混乱時に、イスラム教諸国から国際テロ組織「アルカイダ」やイスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)、そして「ボコ・ハラム」(西洋式の非イスラム教育は罪)が登場してきた。彼らは「何が善」で「何が悪」かをはっきりと宣言し、西側資本主義の腐敗、逸楽に戦いを挑んできたのだ。
 彼らがポスト冷戦時代に台頭し、拡大できた主因は、冷戦時代の勝利者、西側資本主義の腐敗、堕落があったからだ。イスラム過激派はそれを成長の糧として拡大していった。

 現実の世界をみる。世界超大国の米国にとって、軍事的、経済的にみて最大の敵国は今日、中国だろう。それにプーチン大統領が率いるロシアが続く。ただし、その対立構造は冷戦時代のようにはっきりしていない。一貫性がなく、揺れ動いている。

 実例を挙げて考えてみる。トランプ氏の中国への経済政策だ。米政府は4月中旬、中国通信大手・中興通訊(ZTE)が対イラン禁輸措置を破ったとして、米企業に対してZTEへの部品販売を7年間禁止するように命じたが、トランプ大統領は今月13日、ZTEへの制裁の解除を商務省に指示した。曰く「中国の習近平国家主席との人間的関係を考慮した」というのだ。トランプ氏にはレーガン大統領のような明確な「敵・味方」「善悪」といった判断基準は当てはまらないのだ。

 トゥスク大統領の発言には、「ドナルドよ、欧州は米国の同盟国ではないか。敵ではない欧州に対して経済制裁を施行するとはどうしたことか」といった思いが滲んでいる。一方、同じドナルドのトランプ氏は、「ジャン・クロード(ユンケルEU委員長)とドナルドよ、お前たちはいいやつだが、米国に対してハードだ。欧州は米国からさまざまな恩典を享受してきた。欧州と米国間の貿易収支がどんなものか思い出してみろ。米国の農産物は欧州市場に輸出できないのだ」と反論している。

 トランプ大統領にとって、「いいやつだが、もはや見過ごすことはできない」といった論理だろう。そこには「敵・味方」といった概念より、純粋な経済的「損得」の概念が優先している。だから、トゥスク氏が米国に対し、冷戦時代の戦略的「敵・味方論」を振りかざしたとしても、経済的「損得論」で応戦するトランプ氏のハートを掴むことは難しいわけだ。日米間の最近の通商問題を思い出すまでもないだろう。

 ちなみに、トゥスクEU大統領は、「トランプ大統領の不可測性は敵に対しては強みだ」と述べたが、これは正論だ。例えば、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長はトランプ氏の変わりやすさに戸惑いを感じている一人かもしれない。「チビデブ」、「ロケットマン」と酷評したかと思えば、「賢明な指導者だ」といったように、その人物評が180度変わるトランプ氏に対し、米朝首脳会談を控えた金正恩氏は対応に苦慮しているだろう。

 参考までに、スンニ派の盟主サウジアラビアにとって最大の「敵」は久しくイスラエルだったが、もはやそうではない。シーア派大国のイランこそサウジの最大の「敵」となった。汎アラブ主義が席巻していた時代には考えられない政治情勢がアラブ諸国の間でも生まれつつある。
 具体的には“アラブの春”以降、アラブ諸国の指導者の汎アラブ主義は失せ、自国の国益ファーストが優先し、昔の「敵」はある日突然「同盟」となり、その逆も出てきた。欧州と米国との関係だけではない。

 まとめる。トゥスク大統領の米大統領評には、21世紀のグローバルな時代の共通の価値観は何か、われわれにとって本当の「敵」は誰か、等々を改めて考えさせる重要な内容が含まれているのだ。

ああ、パレスチナ、パレスチナよ

 イスラエルは今月、建国70年を迎えたが、パレスチナ自治区のガザ地区に拠点を置くハマス(イスラム根本主義組織)は3月30日以来、70年前のイスラエル建国で追放されたパレスチナ人難民の帰還を要求する抗議デモを呼び掛けてきた。デモ集会を取り締まるイスラエル側との衝突でガザ地区だけでも既に60人以上が死去、数千人が負傷している。犠牲者数では2014年のガザ紛争以来の規模だ。

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▲ウィーン国連で掲揚されたパレスチナ国旗(2015年10月12日、ウィーンの国連広場で撮影)

 ガザ地区でイスラエルの治安部隊に追われるパレスチナ人の姿が放映される。その場面を見ていて不思議に感じたことがあった。怪我した幼児を抱えて父親らしい男性が逃げ惑っている場面が映し出された時だ。抗議デモ集会にどうして幼児がいるのか。治安部隊との衝突で怪我する危険性がある場所に幼児をわざわざ連れ出してデモに参加する親がいるだろうか、という疑問だ。

 オーストリア代表紙「プレッセ」の記事(5月16日付)を読んで分かった。危険な場所に幼児を連れだし、逃げ惑う場面をメディアに流すことが狙いだったからだ。親はハマスから報酬を受け取っているというのだ。

 ハマスはイスラム側の壁を突破するために若者たちを集め、壁に設置された監視カメラを壊すよう、けしかける。もちろん、ここでも報酬を払う。一方、壁に近づいてきたパレスチナ人に対し、イスラエル側は警告を発する共に、必要な場合、襲撃する。壁が壊され、パレスチナのテロリストがイスラエル領内に侵入するのを防ぐための「防衛手段だ」(イスラエル側の主張)というのだ。

 トルコのエルドアン大統領はイスラエルを「テロ国家」と断言し、米国とイスラエル両国に駐在する同国大使を帰国させる一方、トルコ駐在のイスラエル大使に退去を要請。その上で「イスラエル軍の大虐殺」を糾弾するためにイスラム協力機構(OIC)の緊急会議の招集を要求したばかりだ。
 エルドアン大統領自身は国内のクルド人を弾圧するためにトルコ軍を出動させ、多くのクルド人を殺害してきたが、同大統領はそんなことは都合よく忘れて、パレスチナ人の保護者のように振舞う。
 トルコで6月24日、大統領選と国会総選挙が前倒しで実施されるが、エルドアン大統領の最近の言動は全て選挙向けだ。パレスチナ人の権利を擁護し、OIC緊急会議を招集することで、イスラム教諸国の指導者としてのイメージ作りというわけだ。

 アラブ諸国は過去、パレスチナ側に被害が出るとイスラエルを激しく批判してきた。アラブ連盟の大使級会合が16日、エジプトのカイロで開催された。そこでは米国大使館のエルサレム移転への批判と共に、パレスチナへの支援継続で一致したが、加盟国の対イスラエル政策には明らかに温度差がある。

 サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は米国のトランプ政権から支援を受けるイスラエルへの批判を避け出してきた。イスラエルがシリアのイラン軍基地を攻撃した時には密かに歓迎するなど、スンニ派の盟主サウジの第一の敵はもはやイスラエルではなく、シーア大国イランだからだ。また、エジプトとハマスとの関係もここにきて冷えてきている。

 中東・北アフリカ諸国で“アラブの春”(民主化運動)が勃発して以来、汎アラブ主義は後退し、アラブ諸国ではパレスチナ問題への関心が薄れてきた。外交的にはパレスチナ人の権利を擁護するが、パレスチナ人のために国益を無視しても支援するアラブ諸国は少なくなってきた。全ては“自国ファースト”だ。

 イスラエルとパレスチナは2国家共存で一致していたが、国家建設で不可欠な国境線の設定の見通しはない。エルサレムの地位問題、難民帰還問題、入植地問題、イスラエルの安全保障問題など主要課題は未解決だ。トランプ大統領が今月14日にエルサレムに米国大使館を移転させたことで、「米国は中東問題の中立的調停役の立場から離れた」(アッバス議長)と受け取られている。

 世界最大の収容所と呼ばれるガザ地区に住むパレスチナ人は未来への希望はなく、自由に移動する権利すら奪われている。多くのアラブ諸国はパレスチナ問題をイスラエル批判の武器として利用するだけだ。パレスチナの中でもハマスと自治政府のアッバス議長らファタハとの間で権力争いが絶えない。ああ、パレスチナ、パレスチナよ!

「イラン(核合意)は今、集中治療室」

 独週刊誌シュピーゲル(電子版)を開いたら、ドイツ通信(DPA)配信の写真が目に飛び込んできた。トランプ米大統領のイラン核合意離脱表明(5月8日)を受け、その対応を協議するために欧州連合(EU)の本部ブリュッセルに集まった関係国の外相たちの記念写真だ。

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▲米国のイラン核合意離脱後の対応を協議する5カ国代表(欧州委員会公式サイトから、2018年5月15日)

 左からEUのフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表、イランのモハンマド・ ジャヴァード・ザリフ外相、ジャン=イヴ・ル・ドリアン仏 外相、ハイコ・マース独外相、そしてボリス・ジョンソン英外相の面々だ。

 核協議はイランと米英仏中露の国連安保理常任理事国に独が参加してウィーンで協議が続けられてきた。そして2015年7月、イランと6カ国は包括的共同行動計画(JCPOA)で合意が実現した経緯がある。
 15日にブリュッセルに集まった外相たちはEU上級代表に独英仏とイランの4カ国外相だ。その中で3年前の核合意の交渉の場に居合わせた外相はモゲリーニEU外務上級代表とザリフ外相の2人だけで、後の3外相はいずれも新顔だ。つまり、ウィ―ンで繰り広げられた外交協議のテーブルにはいなかった面々だ。

 前書きはこれまでとして、15日ブリュッセルで開催されたイラン核合意関係国外相会議の成果をまとめる。テーマは明確だ。米国抜きで2015年7月の核合意は如何に存続できるかだ。

 モゲリーニ上級代表は、「非常に生産的な会合だった。EUは核合意の堅持で結束している」と話し、イランのザリフ外相は、「われわれは正しい方向に向かって動いている」と述べ、3年前の核交渉を体験した両者は外交交渉の成果の核合意の堅持で一致したと強調した。

 イラン核協議に外交デビューしたマース独外相は、「イラン核合意は欧州の安全に直接関係する問題だ。核合意がなければ、欧州の安全は一層不安となる」と警告し、「米国の核合意離脱で生じる経済的ダメージをどのようにして補填するかをイラン側と話し合わなければならない」と指摘している。

 具体的な対応は2点だ。。釘佞魯ぅ薀鵑暴斗廚文玉輸出が今後も可能となるような対応を取らなければならない。さもなければ、イラン経済は破綻してしまう、▲ぅ薀鵑国際支払い取引から排除されることを阻止しなければならない。米国はイラン中央銀行のヴァリオラ・セイフ頭取をテロリストと断言し、イランとの如何なるビジネスも処罰する考えだからだ。

 シュピーゲル誌によると、EU委員会が目下考えている対策は、1996年の米国の対キューバ、イラン、リビア経済制裁時に導入した防衛法 の再活用だ。米国の反トラスト法の外国への域外適用を遮断する、米国以外の国の国内規則、ブロッキング・スタチュート(Blocking Statute)だ。欧州企業を米国の制裁から保護する手段だ。

 一方、イラン側がEU側に要求している内容は「保証」だ。イランの最高指導者ハメネイ師は、「欧州が我々が要求する保証を与えることができない場合、今のままの状況を継続できない」と警告している。ちなみに、この発言はEU向けというより、ロハニ大統領ら現政権関係者への警告と受け取られている。
 なお、イランのアラグチ外務次官は13日、欧州との協議は「45日から2カ月」で打ち切る意向を表明している。

 核合意によると、関係国(米国)が国連安保理に合意離脱を通告した場合、30日後には核合意前に施行されてきた全ての対イラン制裁は自動的に再履行される。他の常任理事国もそれに対し拒否権を行使して阻止することができない。

 写真の話に戻る。5人の外相の面々を見ていると、写真には登場していないトランプ米大統領の顔が浮かんできた。「トランプ氏は今、何を考えているのだろうか」。

 シュピーゲル誌のクリストフ・シュルツ記者は、「われわれの親戚(イランと核合意)は今、集中治療室(ICU)にいる」と語ったモゲリーニ上級代表の発言に言及しながら、「(ブリュッセルでの緊急外相会議後も)患者は生死の境を彷徨っている」と書いている。

イスラエルの70年は成功したか

 イスラエルで14日、建国70年の記念式典や行事が挙行された。エルサレムでは米国大使館がテルアビブからエルサレムに移転した式典が約800人のゲストを迎え行われた。同時期、イスラエルのパレスチナ自治区で米大使館のエルサレム移転に抗議するパレスチナ人や市民のデモが行われ、それを取り締まる治安部隊と衝突し、ガザ地区だけで少なくとも58人が死去、2700人を超える負傷者が出た。2014年のガザ紛争以来の最大の犠牲者数だ。

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▲エルサレムに米大使館を移転したトランプ米大統領に感謝するネタニヤフ首相(2018年5月14日、エルサレムで、米CNNの中継から)

 ところで、イスラエルの過去70年間はサクセス・ストーリーだったか。経済協力開発機構(OECD)の経済統計を見る限りでは、イスラエルの国民経済は急成長し、特に、IT部門など先端科学技術で先進国入りしている。
 例えば、イスラエル生まれのハイテク系のスタートアップ(Start-up )企業数は多く、国民1人当たりのベンチャー投資額は高く、「イスラエルはスタートアップ大国(Start-up Nation)」と呼ばれているというのだ。

 民族、宗派間の対立が激しい中東でイスラエルは軍事力で周辺国のそれを大きく凌いでいる。同国は公表していないが、200基を超える核兵器を既に保有している。人口は建国時と比較すると14倍に膨れ上がり、2017年5月現在、約868万人だ。

 世界から移民してきたユダヤ人のアイデンティティ問題など、社会、文化的問題は横たわっているが、イスラエルが過去70年間で達成してきた実績は経済分野ではサクセス・ストーリーといえるだろう。

 問題は、アラブ諸国に取り囲まれているイスラエルが依然、エジプトなど数カ国を除くと敵対する国が多いことだ。アラブ諸国との共存からは程遠い。

 独週刊誌シュピーゲル(電子版、14日付)は興味深い記事を配信していた。イスラエルの「建国の父」、初代の首相ダヴィド・ベン=グリオン(1886〜1973年)が1948年5月14日の独立宣言の中で「目指す国家像」について語っている部分だ。曰く「全ての国民は宗教、民族、性差の区別なく、社会的、政治的な平等が保証される」と述べているのだ。ベン=グリオンはパレスチナ人を含むアラブ諸国との共存を願っていたことが分かる。

 ベン=グリオンは生来の社会主義者であり、彼はイスラエルが地中海の農業立国となることを夢見ていた。実際は、70年後のイスラエルは農業立国ではなく、先端技術を誇る近代国家に成長している。
 シュピーゲル誌は「ベン=グリオンら37人(35人男性、2人女性)が当時、独立宣言に署名したが、彼らは70年後の現在のイスラエルを想像できなかっただろう」と述べている。

 ネタニヤフ首相は14日、エルサレムでの米大使館移転祝賀式典で、「米国が大使館をエルサレムに移転させたことに感謝する。エルサレムは3000年前以上からユダヤ民族に属していた」と強調し、エルサレムをイスラム教の聖地と主張するパレスチナ人と真っ向から対立する発言をしている。すなわち、ネタニヤフ首相はパレスチナ人と共存することよりも、イスラエルが管理する統一エルサレムが重要と考えているわけだ。建国の父ベン=グリオンが願っていた国家像とは異なっている。

 イスラエルでは2019年11月に総選挙が実施されるが、リクード主導の現連立政権(第4次ネタニヤフ政権)から労働党が政権を奪い返すことができるかが焦点だ。シュピーゲル誌は「左派政党の政権奪取のチャンスはある」と見ている。ラビン首相が1995年、暗殺されて以来、低迷してきた労働党が“若きオバマ”と呼ばれるアビ・ガベイ新党首(50)を迎え、飛躍が期待できるからだという。

 70年間の年月はイスラエルを変え、その国民をも変えていった。しかし、イスラエルを取り巻く周辺国家との関係は依然、緊迫している。パレスチナ人との和平交渉はこれまで以上に混沌としてきた。イスラエルが更に飛躍するためにはアラブ諸国との関係正常化が急務だ、という点で中東ウォッチャーの意見は一致している。

イスラエル建国と「アブラハム」

 イスラエルは14日、建国70年目を迎えた。世界のディアスポラ(離散)だったユダヤ人は1948年、パレスチナに結集し、イスラエル国の建国宣言をした。

 その後、追放されたパレスチナ民族の帰還問題が中東情勢を揺り動かす台風の目となってきたが、ここにきてユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の世界3大唯一神教の発祥の地・中東は再び一触即発の状況に直面している。

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▲米国大使館のエルサレム移転を歓迎するネタニヤフ首相(2018年5月13日、イスラエル首相府公式サイトから)

 中東情勢を再び緊迫させた直接の契機は、.肇薀鵐彿涜臈領が昨年12月6日、イスラエルの米大使館をテルアビブからエルサレムに移転すると発表、イスラエルの首都をエルサレムとする意向を表明、▲肇薀鵐彗臈領は今月8日、ホワイトハウスで演説し、2015年7月に合意したイランとの核合意から離脱し、核合意で解除した対イラン制裁を再実施していく旨の大統領令に署名、イスラエル軍は今月10日、イラン軍が9日夜、イスラエル北部の占領地ゴラン高原(1967年併合)に向けてロケット弾やミサイル約20発を発射したこと受け、報復としてシリア内のイランの軍事拠点50カ所以上をミサイル攻撃したこと、などが挙げられる。

 イスラエル建国70年を前に、米大使館のエルサレム移転でイスラエルとパレスチナ間で再び、緊張が高まる一方、イスラエルとイラン両国関係には軍事衝突の危機が差し迫ってきた。ネタニヤフ首相は2月18日、ミュンヘンで開催された安全保障会議(NSC)で「わが国は必要ならばイランを攻撃することに何も躊躇しない」と強調している。

 シーア派の大国イランはシリアのアサド政権を軍事支援し、レバノンではヒズボラを支援、イエメンでは反体制派武装勢力「フーシ派」を支援し、スンニ派の盟主サウジアラビアを激怒させている。イスラエルの周辺で軍事活動を強めるイランの存在はイスラエルにとって最大の軍事的脅威であることは疑いない。

 ところで、両国の歴史を紐解くと、両国は常に対立してきたわけではない。イスラエルとイラン両国の関係は現代史に限定すれば犬猿の仲だが、ペルシャ時代まで遡ると、異なる。現在のイラン人は「地図上からイスラエルを抹殺する」(マフムード・アフマディネジャド前大統領)と強迫するが、同じ民族の王が約2550年前、ユダヤ人を捕虜から解放した。ペルシャ王がユダヤ民族を救済したのだ。

 ヤコブから始まったイスラエル民族はエジプトで約400年間の奴隷生活後、モーセに率いられ出エジプトし、その後カナンに入り、士師たちの時代を経て、サウル、ダビデ、ソロモンの3王時代を迎えたが、神の教えに従わなかったユダヤ民族は南北朝に分裂し、捕虜生活を余儀なくされる。北イスラエルはBC721年、アッシリア帝国の捕虜となり、南ユダ王国はバビロニアの王ネブカデネザルの捕虜となったが、バビロニアがペルシャとの戦いに敗北した結果、ペルシャ帝国下に入った。そしてペルシャ王朝のクロス王はBC538年、ユダヤ民族を解放し、エルサレムに帰還させたのだ。

 イスラエルのユダヤ教の発展は、ペルシャで奴隷の身にあったユダヤ人に対し、クロス王がユダヤ人の祖国帰還を許してから本格的に始まった。繰り返すが、クロス王が帰還を許さなかったならば、今日のユダヤ教は教理的にも発展することがなかった。

 次に、「エルサレム問題」を振り返ってみる。エルサレムは1947年の国連決議に基づき、東西に分割され、西エルサレムはイスラエルが、東エルサレムはヨルダンがそれぞれ管理することになっていた。しかし、イスラエルは6日戦争で勝利し、ヨルダンから西岸ヨルダン、東エルサレム、ガザ地区を、エジプトからシナイ半島、シリアからゴラン高原を奪った。ダヤン国防相(当時)は嘆きの壁の前で、「分断されたエルサレムが再び統合され、われわれの聖地が取り戻された。今後は決して失うことはない」と述べた。

 その後、国連安保理が東エルサレムのイスラエル併合を無効と宣言し、今日に至っている。なお、イスラエル国会は1980年、完全で統合されたエルサレムをイスラルの首都とすることを記述した通称「エルサレム法」を採決している。

 「エルサレム問題」は、政治的観点からだけではなく、その宗教的背景を考慮して3宗派の統合を図るべきだ。預言者洗礼ヨハネは、「自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。お前たちに言っておく、神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起こすことができるのだ」(「マタイによる福音書」第3章9節」と諭している。エルサレムを管理する者は神の前に謙虚でなければならない、という意味だ。その内容を現代に当てはめるとすれば、「イスラエルは自分たちの背後にトランプ米大統領がいるなどと奢ってはならない」ということだ。

 「イスラエルが失った国を再建する時、イエスが再臨する時期を迎える」という預言が久しく囁かれてきた。そのイスラエルが建国されて70年を迎えた。エルサレム問題、パレスチナ人帰還問題、そしてイスラエルとイラン両国関係、スンニ派盟主サウジとシーア大国イランの対立など、中東情勢は今、危機に瀕している。
 砂漠の地で派生したユダヤ教、キリスト教、イスラム教を信奉する国々は今こそ、信仰の祖「アブラハム」に立ち返り、共栄共存の道を模索すべき時だ。

IAEA高官の辞任報道から学ぶ

 ロイター通信は11日、ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)のナンバー2で査察局トップ、テロ・バルヨランタ事務次長が辞任したと報じた。IAEAはバルヨランタ査察局長の突然の辞任については、「個人に関することは公表しない」という原則に基づいて理由を明らかにしていないが、トランプ米大統領が8日、2015年7月に合意したイランとの核合意から離脱し、解除した対イラン制裁を再実施していく旨の大統領令に署名したばかりの時だけに、さまざまな憶測が流れている。

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▲イラン核合意について報告するIAEAの天野之弥事務局長(IAEA公式サイトから)

 イラン核交渉は国連常任理事国(米英仏中露)の5カ国にドイツを加えイランと協議されてきた。そして2015年7月、イランの濃縮ウラン活動を25年間制限し、IAEAの監視下に置き、遠心分離機数は1万9000基から約6000基に減少させ、ウラン濃縮度は3・67%までとするなどを明記した包括的共同行動計画(JCPOA)で合意した経緯がある。
 その合意内容をイランとの間で履行する立場がIAEAだ。そのIAEAの査察局トップ、フィンランド出身のバルヨランタ査察局長(61)が突然辞任したのだ。

 バルヨランタ査察局長の辞任はトランプ大統領のイラン核合意離脱表明3日後だったということで、タイミングをめぐり憶測が流れている。それだけではない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は4月30日、テルアビブの国防省で、イランが核兵器開発計画を有していたことを証明する文書を入手したと発表したばかりだ。同首相は、約5万5000頁に及ぶ核開発関連文書とデータが入った183枚のCDを今年1月、イランのテヘランからイスラエル諜報特務庁(通称モサド)が密かに入手したと公表した。すなわち、IAEA査察局長の辞任は、2つのタイミングと重なり、何らかの関わりがあるのではないか、といった憶測から逃れられなくなる。

 以下は当方の憶測だ。ある意味で「国連の高官が突然そのポストを辞任する時」の一般的なパターンについて考えてみた。バルヨランタ査察局長のケースとは直接関係がないことを断っておく。

 それでは始めよう。
 先ず、大きく3点に分けて考えてみる。
 仝朕妖事情。自身の健康問題、家族の動向などがそれに当てはまる。この場合、辞任に追い込まれるケースは考えられるが、上司と相談し、職務の重要度などを考慮して対応を決定する。イラン担当の査察局長の場合、職務の重要度を考えれば、「突然」辞任するということは避けるだろう。

 引責の場合。査察局には査察関連情報が保管されている。関係者は機密情報の守秘義務を負う。第3者に漏らした場合、責任が出てくる。IAEAでは機密保持の義務について明記された文書に職員は署名を求められる。現職時代に得た情報は退職後も漏らしてはならない。

 リクルートの場合。バルヨランタ査察局長の前任者、オリ・ハイノネン氏は2010年8月末、退職後、ボストンのハーバード大の教鞭ポストを得ている。給料も悪くない上、社会的名誉も手に入れる。もちろん、査察経験豊富なハイノネン氏をスカウトしたのは米国側だ。同氏は北朝鮮の寧辺核関連施設の査察体験を有しているからだ。ただし、の場合、突然の辞任は考えにくい。

 以上の3点の中では、突然の辞任の場合、△浮上する。もちろん、,両豺腓盥佑┐蕕譴襦0貅錣離弌璽鵐▲Ε半標群(燃え尽き症候群)だ。職務を続行する気が突然消滅する。緊張が長期間続いてきた人が陥りやすいケースだ。責任感が強い人が陥る。生命の危険の場合もあり得るからだ。

 △両豺隋⊂霾鵑領出問題だ。そのパターンは2通り出てくる。イランへの情報流出か、モサドへの情報提供かだ。約5万5000頁と183枚のCDのイラン機密文書に何が書いてあったかが重要となる。モサドは今年1月にそれらを入手している。その中にはIAEAの査察活動に関する報告も明記されていただろう。イラン側にダメージとなる情報だけではなく、IAEAや第3者にとっても不都合な情報が明記されていた可能性も排除できない。

 IAEA職員の中には多くの問題が山積していることも事実だ。過去には地下鉄の電車に飛び込み自殺した職員もいた。上司から評価されず、窓際族になった末、アルコール中毒となったベテラン査察官もいた。シリアの核問題で米国寄りの上司と口論した査察官がいた。その上司もアルコール中毒寸前だった。

 なお、今回のIAEA査察局長の突然の辞任報道を最初に報道したのはロイターだ。IAEAのフレドリック・ダール報道官は元ロイター通信の敏腕ジャーナリストだった。不都合な情報をロイターなどにいち早く流すことで、情報の拡大と憶測防止という狙いがあったものと考えられる。

 もちろん、今回の査察局長の辞任は、IAEAの査察・検証作業への信頼性を疑うトランプ大統領への抗議意思の表現という見方も排除できないが、高給ポストをトランプ大統領への抗議のため捨てる人は少ないだろう。

 現代人は情報を無視して生きていけないが、情報との正しい付き合い方がこれまで以上に求められてきた。今回のIAEA高官の辞任報道は多くの教訓を含んでいる。

“トランプ外交”に不満高まる欧州

 トランプ米大統領は8日、2015年7月に合意したイランとの核合意から離脱し、解除した対イラン制裁を再実施していく旨の大統領令に署名した。トランプ氏の決定は予想されてはいたが、米国のイラン核合意離脱は関係国に大きな波紋を投じている。特に、欧州では核合意の堅持を主張する声が強く、トランプ氏の一方的な核合意離脱表明には強い反発の声が挙がっている。以下、独週刊誌シュピーゲル(電子版)とオーストリア通信(APA)の関連記事を参考に、欧州の声をまとめた。

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▲イラン核合意離脱を表明したトランプ米大統領(2018年5月8日、ホワイトハウスの公式サイトから)

 欧州連合(EU)の盟主ドイツのメルケル首相は11日、訪問先のミュンスターで米国のイラン核合意離脱について、「大きな懸念であり、遺憾だ」と指摘、「核合意は理想からは程遠いかもしれないが、国連安保理事会決議で採択された合意を一方的に離脱することは正しくない。米国のイラン核合意離脱は国際社会に大きなダメージを与え、国際秩序への信頼を破壊している」と述べた。トランプ大統領に対してはこれまで自制してきた面があったメルケル首相だが、今回ははっきりと批判している。

 フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン外相は、「イランとビジネスをしている企業に対し、米国が制裁で脅迫することは受け入れられない」と強い口調で批判している。
 欧州の企業はイランとのビジネスを停止するために6カ月の期限を与えられている。ル・ドリアン外相は仏紙ル・パリジャンの中で、「制裁が国境を越え適応されることは受け入れられない。欧州は米国の制裁のために代価を支払うが、米国自身は支払わない」と不満を爆発させている。イラン核合意では欧州はロシアと中国と共に最初からその堅持を主張してきた経緯がある。

 欧州の銀行はトランプ氏のイラン核合意離脱表明前から世界の金融界を支配する米国の制裁を恐れ、米国当局との対立を避けるためにその活動を抑制してきた。トランプ大統領の離脱宣言で世界の金融界は揺れ動き、原油価格は高騰してきた。

 ハイコ・マース独外相は11日、独週刊誌シュピーゲルとのインタビューの中で、「欧州は米国と協議し、交渉する用意がある。欧州と米国の不協和音はイラン核合意の離脱表明前から表面化してきた問題だ」と指摘している。

 トランプ氏は、昨年1月には環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱、同年6月、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱を表明、同年10月にはパリに本部を置く国連教育科学文化機関(ユネスコ)から脱退するなど、欧州などが積極的に支持してきた国際協定から次々と脱退し、「外交交渉の勝利」(オバマ前米政権)と言われたイラン核合意の離脱を今回決定したわけだ。欧州側はトランプ氏の一方的なやり方に不満が溜まりに溜まってきているわけだ。


 米国のイラン核合意離脱で最初に困難に直面する欧州の大企業はエアバス社だ。エアバス社やボーイング社はイランへの旅客機販売ライセンスを剥奪されるだろう。その結果、イラン航空への200機の商談(総額383億ドル)はパーになる可能性が出てきたわけだ(受注は100機はエアバス社、80機ボーイング社、残り20機はターボプロップ機メーカー ATR社)。受注時の契約書には契約解除の場合といった項目がなかったという。

 ルクセンブルクのジャン・アセルボーン外相は11日、「欧州は米国に服従すべきではない。われわれは5億人の欧州国民に義務を負っている。商談の破綻を阻止しなければならない」と警告し、「米国がイラン核合意から離脱したいのなら、それは米国の問題だ。われわれは合意を維持する。われわれには後継人は必要ではない」と強調している。

 アセルボーン外相の発言は多くの欧州人の本音を言い表している。曰く「欧州は今こそ結束して米国と向かい合うべきだ。しかし、米国を敵に回すのではなく、トランプ大統領の政治ポジションに反対するためだ」というのだ。


 フランスンのブリュノ・ル・メフレー経済・財務相 は5月末、ドイツのオーラフ・ショルツ財務相と英国のフィリップ・ハモンド財務相と共に米国のイラン制裁について緊急協議する予定だ。

 ちなみに、ブリュノ・ル・メフレー経済・財務相は11日、米国のスティーブン・ムニューシン財務長官と電話協議し、フランス企業を制裁対象から外してほしいと要請したという。フランスの場合、総合石油会社トタルや自動車メーカーのルノー社が制裁の影響を受ける危険性があるからだ。

  EUのフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表よると、イラン核合意を締結した欧州3国(英国、フランス、ドイツ)の外相とイランのモハンマド・ ジャヴァード・ザリフ外相が15日、ブリュッセルで会合し、 米国のイラン核合意離脱への対応について協議するという。メルケル首相は近日中に、ロシアのプーチン大統領とソチで会談するという。欧州指導者がトランプ大統領の外交政策に対抗するため蜂起してきたのだ。

イラン強硬派の動きに要注意

 イスラエル軍は10日、イラン軍が9日夜、イスラエル北部の占領地ゴラン高原(1967年併合)に向けてロケット弾やミサイル約20発を発射したこと受け、報復としてシリア内のイランの軍事拠点50カ所以上をミサイル攻撃したと発表した。シリア領内に駐留するイラン軍がイスラエルを攻撃したのは今回が初めて。

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▲ロシアのプーチン大統領と会談するイスラエルのネタニヤフ首相(2018年5月9日、モスクワで、イスラエル首相府公式サイトから 、Amos Ben Gershom記者撮影)

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▲トルコのエルドアン大統領と電話会談するイランのロハニ大統領(2018年5月10日、イラン大統領府公式サイトから)

 一方、イスラエル軍のイラン軍空爆としては近年で最大規模。ネタニヤフ首相は「イランはレッドラインを越えた」と指摘した。ロシア国防省によると、イスラエル軍は28機(F−15とF−16)の戦闘機を出動させ、70発のロケット弾を発射したという。

 情報機関は「イランからの報復攻撃がある」とイスラエル側に警告を発してきた。4月9日の空爆でシリア駐在の7人のイラン軍関係者が殺害されたが、シリアとイランはイスラエル軍の責任と断定し、 テヘランはイスラエルに報復を宣言したからだ。そのため、イスラエル軍は警備体制を敷いていた。

 イスラエル軍によると、ゴラン高原への攻撃はイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」によると断定。イラン軍はロケット弾(Grad型と Fadschr-5 型)を発射したが、犠牲者は出なかった。

 リーベルマン国防相は10日、「シリア領内のイラン拠点のほぼ全てを攻撃した」と語った。具体的には、秘密情報拠点、 宿泊場所、軍哨兵隊、貯蔵所、偵察所などだ。
 シリア政府軍からも攻撃があったが、イスラエル側は、「アサド政権にはイラン軍との戦いに干渉するなと警告した。イスラエル軍はエスカレートを願わないが、相手がイスラエルを攻撃すれば黙っていない」と強調。国営シリア・アラブ通信(SANA)によると、シリア側にもレーダー監視網や弾丸倉庫などに被害が出たという。


 ちなみに、イスラエルはロシアにシリア内のイラン軍への空爆を事前に連絡したという。ネタニヤフ首相は9日、モスクワを訪問し、プーチン大統領と会見したが、「ロシアがイスラエルの軍活動を妨害することはないと信じている」と述べている。


 イラン外務省のバフラム・ガセミ報道官は11日、シリア内からイラン軍がゴラン高原を攻撃したという情報に対し、「イスラエル側のでっちあげだ」と否定した。それに先立ち、イラン国家安全委員会は10日、「わが国はシリア内に軍拠点を有していない。軍事アドバイスが目的だからだ」と説明、イスラエルの主張を「プロパガンダだ」と同じように一蹴している。


 イランはロシア、レバノンのヒズボラと共にアサド政権を軍事支援している。イランはシリア内に軍事拠点を構築している。イスラエルにとってシリア内にイラン軍の拠点ができることには強い警戒心がある。ネタニヤフ首相は「イランがシリア国内で軍事的プレゼンスを構築することを許さない。イスラエルを攻撃する者はその7倍の報復を受けることを覚悟すべきだ」と強調している。


 メルケル独首相は10日、独アーヘンでマクロン仏大統領の本年度カール大帝賞授賞式の祝賀演説の中で中東の状況について言及、「過去数時間の出来事は、文字通り戦争かそれとも平和か、といった感じがする。状況は非常に複雑だ。関係国は自制して事に当たるべきだ」とアピールした。


 今回の軍事衝突が1回きりか、イスラエルとイランの本格的な軍事衝突の幕開けかはまだ不明だ。トランプ米大統領が8日、イラン核合意の離脱を発表したこともあって、イスラエルとイラン両国の関係は一層緊迫化してきた。
 懸念材料はイラン国内の強硬派の動きだ。ゴラン高原にミサイルを発射したのもイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」だ。米国がイラン核合意から離脱を宣言したことから、穏健派のロハニ大統領の立場は苦しくなってきている。それだけに、イラン国内の強硬派が主導権を奪うようなことがあれば、イスラエルとの正面軍事衝突といった最悪のシナリオは現実味を帯びてくることにもなる。
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