ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2017年03月

英国から「欧州医薬品庁」が引越しへ

 英国は29日、欧州連合(EU)からの離脱をEU側に正式に通告した。英国のティム・バロウ駐EU大使は同日、ブリュッセルでEUのトゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)に離脱通告書を手渡した。これを受け、EUは2年間、英国と離脱交渉を行うが、EU創設後初の離脱交渉であり、ブリュッセルも英国にとっても未知の分野だ。それだけに何が生じるかは予想できない。

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▲EMAのロンドン本部(EMAの公式サイドから)

 英国はEU離脱による経済的マイナスを最小限度に抑える一方、移民の流入を制限していきたい意向が強い。その一方、EU側は先ず、英国と加盟国分担金(約600億ユーロ)の支払い問題を話し合い、その後、英国との自由貿易協定(FTA)の締結協議に入りたい考えだ。27カ国の加盟国の中には、アイルランドは英国と北アイルランドの和平協定(1998年)の行方を懸念し、東欧の加盟国は分担金の負担増加や補助金削減を懸念している。英国に100万人の労働者が働くポーランドでは離脱後の労働者の残留資格に気を使っている、といった具合だ。

 EU第2の経済国だった英国のEU離脱(ブレグジット)により、ドイツの経済、政治力が一層強まることは必至だろう。英国が抜けた後のEU予算の分担増も加盟国では議論を呼ぶはずだ。スウェ―デン、ドイツ、オーストリアでは分担金の大幅な増加に難色を示す声が高まっている。

 ところで、ロンドンにはEU第2の規模を誇る専門機関、欧州医薬品庁(European Medicines Agency=EMA)が所在しているが、英国のEU離脱後、ロンドンから他の加盟国に引っ越しすることになる。EMAには900人を超える職員が従事しているだけに、他の加盟国からは「わが国にどうぞ」といった誘致外交の声が既に聞かれる。当方が住むウィ―ン市もEMAの誘致に積極的だ。

 そこでEMAについて少し紹介する。EMAの公式サイトによると、「EMAは1995年、既存の国家医療調整行政機関の調和を図り、加盟国からの間接的助成金と同様に、欧州連合と製薬産業からの資金提供を基に設立された」という。EMAが設立されることで、医療品は各国の承認を除き、EMAが中央審査する。例えば、遺伝子治療医薬品や体細胞治療医薬品など先端医療医薬品の審査を統一することで、EU域内の流通を促進させる目的があるわけだ。

 EMAの誘致に力を入れている都市は、ウィ―ンのほか、イタリアのミラノ、フランスのパリ、そしてアイルランドのダブリン市などの都市名が挙がっている。欧州メディアによれば、今夏前までにはEMAの移転先が決定される予定だ。

 有力候補地に挙げられているウィーン市は世界的な観光地であると共に、国連、石油輸出国機構(OPEC)、欧州安全保障協力機構(OSCE)など30を超える国際組織の本部ないしは事務局がある国際都市だ。交通インフラもよく、地理的にも中欧に位置している。ウィーン市のホイプル市長はEMAの誘致を最重要課題として誘致外交を展開中だ。ウィーン市は市内8カ所の不動産をEMAの本部用に用意している。

 27カ国の首脳が結集したEU首脳会談が25日、イタリアのローマで開催された。欧州統合60年を記念して開催されたが、実際は、英国の離脱後のEUの将来について話し合った会談だ。そして「EU統合では共通のテンポに拘らず、加盟国事情を考慮する」ことを明記した「ローマ宣言」が採択されたばかりだ。加盟国の主権を重視した多様なEUを容認したかたちだ。

 英国の離脱は、27カ国のEU加盟国の結束を強化させるか、それともEU解体の先駆けとなるか、EUは大きな分岐点に遭遇している。一方、メイ英首相は29日、「英国はEUと今後とも緊密なパートナーであり続ける」と表明したが、パートナーとメンバーでは大きな違いがあることを英国民は離脱交渉を重ねていくなかで、理解していくことになるだろう。 

北は本来「暴言」より「称賛」が上手い

 韓国紙中央日報(日本語電子版28日付)は「『暴言大王』北朝鮮、トランプ大統領は何と呼ぶ」という見出しの記事を報じた。それによると、北朝鮮は今年1月に米大統領に就任したトランプ氏に対しまだ暴言を発していないというのだ。トランプ氏の対北政策がまだ明らかではないこともあって、北側は暴言を控えているのだろう、と受け取られている。

 当方は「北はトランプ氏に対し既に暴言を発してきただろう」と考えていたから、“まだ”というのにはちょっと驚いた。トランプ大統領自身は暴言を頻繁に発するが、トランプ氏に対して暴言(中傷、誹謗)を発しているのは、北国営メディアではなく、欧米メディアかもしれない。大統領就任100日が過ぎたが、欧米メディアのトランプ氏批判・罵倒は続いている。歴代の米大統領では稀な現象だろう。米国民の中には、「トランプ氏はわれわれの大統領ではない」と批判する声が聞かれるが、これは民主的に選出された米大統領への最大の暴言と思うが、欧米メディアはそれを問題視していない。

 本題に入る。中央日報は、「北朝鮮は暴言の大王、名手だ」というが、北の暴言は幼児なレベルなものが多い。北国営メディアは朴槿恵前大統領を「悪女」「雌毒蛇」と呼び、オバマ前米大統領を「アフリカ原始林の中の猿」、ケリー前国務長官を「山犬」といった具合の表現で中傷してきたが、それらの暴言には創意性も乏しく、子供喧嘩の延長に過ぎない、といった印象を受ける。論評に値しないのだ。

 ところで、北が創意性を発揮するのは実は「暴言」ではなく、「称賛」する時だ。すなわち、故金日成主席、故金正日総書記、金正恩党委員長への美辞麗句を並べた「称賛」は限りがなく、年季が入っている。時には文学的香りすら感じさせる独自性、創意性のある「称賛」が聞かれるのだ。

 当方の取材ノートから例を挙げる。

 北当局は党創建65周年の2010年10月10日、「不世出の領導者を迎えたわが民族の幸運」と題した「放送正論」を住民に聴取させたが、そこで「正恩氏は経済・文化だけではなく、歴史と軍事にも精通し、2年間のスイス留学で英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語をマスターし、現在、中国語、日本語、ロシア語を学習中。まさに、語学の天才だ」という。それだけではない。「正恩氏が作成した標準肥料表に従った結果、翌年の収穫が1町歩当たり最高で15トンの稲が収穫された」というから凄い。これが事実ならば、国際食糧農業機関(FAO)にとって朗報だろう。北朝鮮の恒常的な食糧不足は解決したことになる。韓国も米国も北に食糧支援する必要はなくなるからだ。

  正恩氏の父親・金正日総書記には1200余りの呼称があった。ここで1200余りの呼称を全部羅列できないから、代表的な呼称を挙げる。「絶世の偉人」「偉大なる領導者」「先軍思想の具現者」から「完全無欠な軍事家」「不敗の司令官」だ。また「革命の太陽」「わが民族の太陽」「人類の太陽」「21世紀の太陽」と「太陽」が伴う呼称が多い。それだけではない。映画や文学に造詣の深かった金総書記には、「世界的大文豪」「天から降臨した英雄」「音楽の天才」等の呼称も飛び出してくる。金総書記の前では、ドストエフスキーもモーツアルトもタジタジとなるだろう。

 いずれにしても、普通の人ならば顔を真っ赤にするか、「止めてくれ」といいたくなような「称賛」を惜しまない。こんな国が21世紀の今日、まだ存在しているのだ。北は本来、「暴言」より「称賛」が上手い、といった意味を理解していただけたと思う。
  北では連日、国営メディアを中心に指導者への「称賛」が発信されているが、発信側も受け手もその内容を信じている者は誰一人としていないのだ。

 北国営メディアがトランプ米大統領に対し、いつ「暴言」を発するか不明だが、時間の問題だろう。当方は北から「暴言」より、トランプ氏を感動させる意表をついた「称賛」が飛び出せば、と密かに期待している。北の「称賛」に免疫のないトランプ氏が一度で参ってしまうような「称賛」を聞きたいものだ。

ドイツの政治が面白くなってきた

 ドイツで9月24日に実施予定の連邦議会選挙の前哨戦と見なされたザールランド州選挙の投開票が26日実施され、メルケル首相が率いる与党「キリスト教民主同盟」(CDU)が得票率40・7%で前回比(2012年35・2%)で5%以上票を伸ばし、第1党の地位を堅持する一方、シュルツ新党首の社会民主党(SPD)は29・6%と前回比(30・6%)で微減し、予想外の結果に終わった。この結果、支持率で低迷してきたメルケル首相のCDUが活気を取り戻す一方、新党首を迎えて再出発したSPD陣営は少なからずのショックを受けている。

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▲独サールランド州のアンネグレート・クランプ=カレンバウアー首相(ウィキぺディアから)

 同州議会選の1週間前の3月19日、SPDはベルリンで臨時党大会を開き、前欧州議会議長のマルティン・シュルツ氏(61)を全党員の支持(有効投票数605票)でガブリエル党首の後任党首に選出したばかりだ。複数の世論調査では、シュルツ氏がメルケル首相を抜いてトップに走っているという報道も出てくるほど、シュルツ効果への期待が大きかった。それだけに、ザールランド州議会選の結果は、SPDだけではなく、メディアにとってもちょっと想定外だったわけだ。

 シュルツ党首はザール州議会選の結果について、「連邦議会選挙まで長い道が控えている、選挙戦はマラソンであり、100メートル競走ではない」と述べ、新党首をメシアのように考えてきた党員を叱咤激励している。

 ところで、独西部の小州ザールランド州議会選結果から「メルケル首相、CDUの復活」と早急に予測することは間違いだろう。オーストリア代表紙「プレッセ」は28日付で「ザールランド州議会選結果は即連邦議会選のメルケル首相勝利に繋がらない」とし、その5つの理由を挙げている。

 〕権者に高い評価を享受してきた同州のアンネグレート・クランプ=カレンバウアー首相(CDU)の個人的人気。
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 州選挙の争点は連邦の諸問題とは関係が薄いこと(例・難民問題)
 その「緑の党」は路線問題で対立を抱え、得票率4・0%に終わり、州議会の議席を獲得できなかった。
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 ザールランド州のカレンバウアー首相は党派を超え、評価されている政治家だ。シュルツ効果はその個人的人気を打破出来なかったわけだ。プレッセ紙は「シュルツ効果ではなく、AKK効果の勝利」と表現しているほどだ。また、メルケル首相の難民政策に対する批判の声は高いが、ザールランド州選挙では難民問題より州内の諸問題に有権者の関心があったわけだ。

 ドイツでは5月7日、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州、同月14日にはノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の州議会選挙が行われる。特に、人口最大の州、NRWの選挙動向はシュルツ氏の人気が本物かどうかを占う絶好の機会となる。

 シュルツ党首のSPDは5月の2つの州選挙に向け党内の体制を引き締めなければならない。一方、CDUはザールランド州選勝利の勢いを5月の2つの州議会選につなぎ、9月の連邦議会選に臨みたいところだろう。いずれにしても、ドイツの政治が面白くなってきた。

ブルガリア総選挙で親EU派勝利

 ブルガリア議会選挙(定数240)の投開票が26日実施され、与党第1党でボリソフ前首相が率いる「ブルガリアの欧州における発展のための市民」(GERB)が約32・6%の得票率を獲得し第1党を堅持。政権奪回を目指したブルガリア社会党(BSP)は約26・8%で第2党に留まった。

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▲前倒し選挙で第1党を堅持したGERBのボリソフ党首(GERBの公式サイトから)

 GERB党首のボリソフ前首相は第1回開票結果直後、「選挙結果は我々の政策を勇気づける」と勝利宣言する一方、「次期連合政権の発足に向けて迅速に取り掛かりたい」と述べた。ボリソフ党首(57)は2009年から13年、14年から16年11月まで政権を担当してきた。選挙結果を受け、ボリソフ党首は第3次政権を発足するが、社会党は大連立を拒否しており、連立工作は難航すると予想されている。

 ソフィアの中央選挙委員会が公表した暫定結果(約90%集計段階)によると、GERBと社会党の2大政党の他、議席獲得できる得票率4%のハードルを越えた政党は、愛国者同盟が約9・2%、トルコ系政党DPS約8・9%、そして新党の「Wolji」約4・11%の3党だった。

 昨年11月の大統領選で野党社会党候補者のルメン・ラデフ氏が勝利したことを受け、中道右派政権のボリソフ政権はGERB候補者の敗北責任をとって総辞職。ラデフ新大統領が今年1月就任し、前倒し選挙の実施となった経緯がある。

 過去4年間で3度目の総選挙となった今回、欧州連合(EU)協調路線のGERBとロシア寄りの社会党の路線対立が争点だったが、ボリソフ党首のGERBが第1党を確保したことで、同国のEU路線は継続される見通しだ。社会党はEUの対ロシア経済制裁の早期撤回、ロシアとの協力強化をアピールしてきた。

 ちなみに、ブルガリアにとってロシアとの経済関係は重要。国民経済の3分1はロシア実業家が握っている。エネルギー供給にいたっては95%はロシアからの原油、天然ガスに依存している。ラデフ新大統領は親ロシアで対ロシア制裁の撤廃を主張してきた。次期政権を担当するボリソフ党首は対ロシア政策では実務主義的立場で対応している。

 なお、選挙戦では国内の少数民族、トルコ系住民に対するトルコ側の選挙干渉やモスクワからの内部干渉が大きな問題となった。ブルガリアにはブルガリア系トルコ人(2重国籍者)が約30万人、そしてトルコ系住民約70万人が住んでいる。後者はトルコの与党「公正発展党」(AKP)、エルドアン大統領支持派が多い。

 ブルガリア政府は先週、駐トルコの自国大使を呼び戻す一方、駐ソフィアのトルコ大使を呼び、選挙に対する内部干渉を止めるように強く要請している。一方、ブルガリア国内の民族主義者たちが対トルコ国境を閉鎖するなど、関係を悪化させた。

 ブルガリアは来年上半期、EU理事会議長国に就任するだけに、ブルガリア総選挙で親EU路線を推進するGERBが第1党を維持したことに、他のEU加盟国は一様に歓迎している。

100年目迎える「ファティマの予言」

 ローマ・カトリック教会のローマ法王フランシスコは5月12日から13日にかけ、ポルトガルの聖母マリアの降臨の地ファティマを訪問する。「3つの予言」で世界的に有名な巡礼地ファティマで聖母マリアが再臨して今年5月で100年目だ。それを記念してフランシスコ法王は就任後初めてファティマを訪ね、「ファティマの予言」を聖母マリアから受けた羊飼いの子供たちの2人、フランシスコ(1908〜1919年)とヤシンタ(1910〜1920年)の列聖式を挙行する予定だ。

 キリスト教の教義では、「神の啓示」や予言はイエス時代の使徒たちで終わる。それ以降の「啓示」はあくまでも「個人的啓示」と見なされ、「神の啓示」とは一定の距離を置いて扱われてきた。その意味から言うならば、ファティマの「聖母マリアの予言」はカトリック教会でも異例の啓示と受け取られていることが分る。世界から毎年多くの巡礼者がファティマを訪ねてくる。


 以下、「ファティマの予言」を簡単に紹介する。

 聖母マリアは1917年5月13日、ファティマの3人の羊飼いの子供たちに現れ、3つの予言をした。特に「第3の予言」については世界の終末を予言しているという憶測が流れたが、新ミレニアムの西暦2000年、教理省長官であったヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿(前法王べネディクト16世)が「第3の予言はヨハネ・パウロ2世の暗殺(1981年)を予言していた」と発表し、「ファティマ」問題に終止符を打った。しかし、それ以降も「バチカンは第3の予言を依然、封印している」として公表を求める声が教会内外にある。当方は「聖母マリアの顕現80周年」の1997年、ファティマを取材したことがある。

 聖母マリアは6回にわたり出現し、3つの「ファティマの予言」を3人の羊飼いに伝えた。第1の予言は通称「地獄の幻想」と呼ばれている内容だ。「地上は火の海となり、悪魔や人間の形をした魂が燃える炭のようになり、痛みのために叫び、うめき、絶望の中に陥っている」と地獄の様相が描かれている。
 第2は「汚れなきマリアの魂の崇拝」といわれている内容だ。「地獄にいる無数の魂を救うためにも、私の汚れなき魂を崇拝しなければならない。私はロシアを汚れなき魂に奉納するために来る。もし私の願いが聞かれれば、ロシアは改心し、世界に平和が訪れる。もしそうでなかった場合、世界中に誤った教えが広がり、戦争、教会の迫害がさらに広がる。そして多数の民族が消滅する。しかし、最後には私の汚れなき魂が勝利する」


 それから“第3の予言”だ。前述したように、ヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿は西暦2000年、「第3の予言はヨハネ・パウロ2世の暗殺を予言していた」と公表した。ちなみに、聖母マリアの予言を受け取った3人の羊飼いの生き証人だったルチア(1907〜2005年)は、「第3の予言は喜ばしい知らせです。世界の終わりを告げたものでありません」と親戚関係者に漏らしている。第3の予言はヨハネ・パウロ2世の暗殺計画ではないことを強く示唆しているのだ。

 問題は、なぜバチカンは「第3の予言」を公表できないのかだ。考えられる唯一の論理的推測は第3の予言が「イエスの再臨」を予言していたからだ。聖母マリアは当時、ルチアに「第3の予言は1960年前には公表してはなりません」と伝えている。換言すれば、イエスの再臨は遅くとも1960年以降には誰の目にも見える形で表れてくることを示唆したわけだ

 この推測が正しいとすれば、バチカンが第3の予言の全てを公表できない事情が理解できる。偽イエスの出現を恐れるからだ。ルチアが述べたように、その知らせは喜ばしいものだ。世界の終わりでもない。しかし、公表すれば、世界の至る所に偽イエスが出てくる恐れがある。

 「第3の予言」を公表しなかったラッツィンガー枢機卿はヨハネ・パウロ2世の死去後、第265代ローマ法王に選出されたが、生前退位を強いられたことはまだ記憶に新しい。

 パウロ6世(在任1963〜1978年)、ヨハネ・パウロ2世、前法王ベネディクト16世と歴代ローマ法王はファティマを訪ねた。そしてフランシスコが5月12日、13日にファティマを訪ねるわけだ(「ファティマの予言」2010年5月7日、8日9日10日参考)。歴代のローマ法王がファティマの巡礼に拘るのには理由があるからだ。

人類は“ホモデウス”に進化できるか

 世界的ベストセラー「サピエンス全史」の著者、イスラエルの歴史家、ユバル・ノア・ハラリ氏(Yuval Noah Harari)が独週刊誌シュピーゲル(3月18日号)のインタビューに応じている。ハラリ氏(41)は「人類(ホモ・サピエンス)は現在も進化中で将来、科学技術の飛躍的な発展によって“神のような”存在『ホモ・デウス』(Homo Deus)に進化していく」と考えている。同氏はエルサレムのヘブライ大学で教鞭をとっている歴史学者だ。以下、シュピーゲル誌とのインタビューの概要だ。

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▲ユバル・ノア・ハラリ氏(ウィキぺディアから)

 人類は長い歴史を経ながらさまざまな進化を重ねてきた。ネアンデルタール人、ホモ・エレクトス 、ホモ・デ二ソワ人を経て、ホモ・サピエンスが生まれ、今日まで生き残ってきた。
 ハラリ氏は、「人類の進化は続いている。科学技術の発展によって、人類は神のような存在に進化していく」と主張し、注目を呼んでいる。ニーチェの「超人」を思い出させる発想だ。

 「人類は今、新しい目標に向かっていくべき時を迎えている。なぜならば、人類はこれまで飢え、戦争、病気といった3つの人類の敵を克服してきたからだ。紛争や飢餓は依然あるが、人類歴史上はじめて、飢えで死ぬ人より肥満が原因で死ぬ人間の数の方が多い。過去の人類史では見られなかった状況だ。2010年、世界で300万人が肥満による様々な病気で死去したが、その数は飢え、戦争、紛争、テロで亡くなった数より圧倒的に多い。欧米人にとって、コカ・コーラはアルカイダより脅威だ」

 「20世紀までは労働者が社会の中心的役割を果たしたが、労働者という概念は今日、消滅した。新しい概念はシリコンバレーから生まれてくる。例えば、人工知能(AI)、ビックデータ、バーチャル・リアリティ(VR)、アルゴリズムなどだ。労働者という言葉はもはや聞かれない。労働者が今も有しているのは選挙権だけだ。そしてその選挙権すら余り意味がない。世界は余りにも急速に変化しているので、人間は方向性を失ってしまった。過去20年間で最大の変化はインターネットだ。誰もインターネットを拡大すべきだと話し合ったわけではない。全ての変化は政治とは関係なく決定されてきた。それは大変化の初めに過ぎない。今後、我々の生き方、職場、人間関係、人間の肉体すら変える変化に直面するだろう。そのプロセスでは政治や民主主義は大きな役割を果たさない」。

 そして人類が神のような存在に進化するホモ・デウス時代について、「数世紀後ではなく、数十年後に到来するだろう。既にその進化は始まっている。人類もその領域に突入してきている。.丱ぅ・エンジニアリング、▲汽ぅ棔璽、L亀\弧紳里澄それらの領域で成果をもたらすならば、われわれは神のようになるだろう。例えば、20万年前の人類は石斧を作ることもできなかったのだ。人類は今日、宇宙船やコンピューターを作る。そして遺伝子の解明も進んでいる」

 「一部の人間は神のようにスーパー記憶力を有し、知性、抵抗力を有するようになる一方、大部分の人類はその段階まで進化できずに留まるだろう。19世紀、工業化によって労働者階級が出てきたが、21世紀に入ると、デジタル化が進み、新しい階級が生まれてくる。それは“無用者階級”だ」

 「製造工程の自動化で多くの労働者は職場を失っていく。軍隊でも同様だ。戦いはサイバー戦争であり、無人機が動員される。3D印刷機の登場で繊維労働者はいらなくなる。アルゴリスムスやロボットは工業分野だけではなく、サービス業でも人間から職場を奪っていく。タクシーもトラック運転手も同じだ。安全で安い自動操縦車が出てくるからだ」

 興味深い点は、同氏の宗教観だ。
 「人類は昔、病の癒しや農業の収穫などで神に祈ってきたが、21世紀に入り、科学技術の発展でそれらの問題は解決されるようになった。そこで宗教は科学がまだ解明できない世界、あの世の事象にその重点を移してきている。宗教は過去、人類に人生の価値を提供してきたが、それはコンピューター・ゲームに似ている。イエスの教えを守ったら得点を得、罪を犯したら減点される。そして人生の終わりにそれを清算をし、プラスであれば、一定の高いレベルに入れるというものだ」

 ハラリ氏はインタビューの最後に、「人類の未来はまだわれわれの手にある」と述べている。同氏の未来像には不明な点も少なくない。例えば、“神のような存在”という時の“神”の定義だ。単なるスーパー知性の持ち主を意味するのか、それとも別の概念も含まれているのかだ。いずれにしても、若きイスラルの歴史家は我々に大きなテーマを投げかけている。

ウィ―ンの“タンポポ”は美味しいか

 友人の記者が菜の花について心温まるコラムを書いていた。花の話をテーマにコラムを書ける記者に出会う度に当方は羨ましくなる。犬の話ならば何度も書いてきたが、花の話となると、筆が進まない。厳密にいえば、花の名前すら十分に知らないのだから、当然かもしれない。当方はこれまで4000本余りのコラムを書いてきたが、花のコラムといえば、ウィーン市内のフォルクス庭園のバラ園の話ぐらいだろう(「『星の王子さま』とウィーンのバラ園」2016年3月20日参考)。

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▲ベランダの敷石の間に咲いたタンポポ(2017年3月13日撮影)

 友人記者に刺激されたわけではないが、今回,ウィ―ンのタンポポについてコラムを書いてみた。家人がベランダにタンポポを見つけたのだ。種を撒いてもいないし、招待した覚えもない。いつの間にか咲いていた。この“招かざる花”タンポポは当方に挨拶もなく、ベランダの敷石の隙間に入って定住している。家人曰く「もうすぐ花が咲くわ」という。

 当方は仕事部屋に戻り、早速、タンポポをサーチした。友人の菜の花のコラムを読んだばかりだったので、「タンポポのことを調べて、小さなタンポポの話を書いてみたい」という衝動が湧いてきたのだ。

 タンポポはキク科で、多年生、ユーラシア大陸に主に分布しているという。「タンポポは生命力が強く、アスファルトの裂け目からでも生まれてくる」という個所を読んで、「なるほど、その通りだ。わが家のタンポポはベランダの敷石の間に定着している。生命力はすごい」と納得した。

 わが家では第1外国語はドイツ語だが、ドイツ語でタンポポを何と呼ぶのか息子に聞くと、「ライオンの歯」(Loewen Zahn)と呼ぶという。フランス語でも同じだ。いずれにしても、ドイツ語とフランス語では闖入者のタンポポの呼称が動物の王様、ライオンの歯というのだ。ベランダのタンポポを思い出しながら、「すごい名前だな」と思わず呟いてしまった。歯のような葉が横に広がり、花がライオンの冠のようだからだという。決して名前負けしていない。昔の人は上手く名前をつけたものだ。

 家人はタンポポを見ながら、「よく来たわね」と話しかけている。当方はタンポポを見ながら敷石の狭い間にもかかわらず文句の一つも言わず、咲いているタンポポに小さな感動を覚えた。

 わが家のベランダは幸い、朝の光が入り、雨が降れば、ベランダを濡らす。野生の植物にとっては絶好の場所かもしれない。家人は毎年4月ごろ、花屋さんからベラゴニアを買って窓際に飾る。友人からもらったシソを小さな箱に入れる。料理用という。シソは香りがいい。

 ところで、タンポポも負けていない。その葉や根は薬草に利用されるという。サーチによると、根には利尿、健胃、催乳などの効果がある。根を乾燥して炒ってコーヒーもできる。タンポポ・コーヒーだ。一度飲んでみたい。

 当方には2匹のモルモットがいるが、彼らはタンポポの葉や根が大好物だ。家人は外でタンポポを見つけると、採ってきて彼らにやる。モルモットはタンポポが健康にいいことを分かっている。彼らは当方より植物を良く知っているのだ。

 いずれにしても、当方のタンポポの話は、花を観賞し俳句でも、といった粋なコラムではなく、どうしても実用的なストーリーになってしまう。当方の限界だ。

政治家が「弁当」を持参する時

 韓国人は食事を大切にする。「ご飯を食べたか」があいさつ言葉の国民性だ。だから、というのではないが、韓国のメディアには食事に関連する記事が結構多い。

 最近では、ソウル中央地検に出頭した朴槿恵前大統領の昼食のことが書いてあった。朴前大統領は21日、ソウルの中央地検に出頭し、聴取を受けた。前大統領の友人の崔順実被告(60)による国政介入事件に絡む収賄などの容疑に対する事情聴取だ。同日午前の聴取が終わった後、朴前大統領は昼食に持参した弁当を食べたという。弁当の中身はキムパプ(海苔巻き)だった。

 聯合ニュースは検察の聴取を受けた過去の人物の食事メニューも紹介していた。それによると、「崔順実被告が昨年10月に検察の聴取を受けた際には、夕食に近くの飲食店からコムタン(牛煮込みスープ)の出前を取って食べ、故盧武鉉元大統領は2009年4月に検察の聴取を受けた際に同様にコムタンを食べた。1995年11月に検察の調べを受けた盧泰愚元大統領は、日本料理店に注文して持ち込んだ弁当を食べた」という。

 政治家の弁当持参は決して通常ではない。外から注文するほか、レストランやホテルで関係者と会食する機会が俄然多い。だから、政治家が弁当を持参するということは、ある意味で特殊なケースだ。
 朴前大統領にしても検察側の取締りに対し納得いく返答が要求されるから、頭の中はそのことで一杯だろう。ゆっくりと食事を楽しむといった状況ではない。しかし、食事抜きはよくない。そこで自宅や事務所で作った弁当を持参したというわけだろう。

 弁当といえば、小泉純一郎首相(当時)が2002年9月、日本人拉致問題の解決のために訪朝した際、弁当を持参したというニュースを思い出す。日本国民を拉致した国が用意した食事を口にはできない、という小泉首相の考えがあったはずだ。そこで弁当(幕の内弁当)の持参となったのだろう。

 朴前大統領も小泉元首相も課題は異なるが、戦場に出陣するといった緊張感が漂っていたはずだ。それが弁当の持参となったわけだ。当方の解釈だが、身内が作った弁当は心を和らげるのに最適のメニューだ。

 少々話は飛ぶが、ティラーソン米国務長官が今月17日、訪韓したが、歓迎の夕食会がなかったことで、米韓両国外交筋で異なった解釈が報じられ話題となったばかりだ。米国側は「韓国側から招待がなかった」と説明する一方、韓国側は「国務長官の日程などから判断して夕食会の開催は難しいと考えた」というのだ。

 安倍晋三首相が2015年11月2日、訪韓し、朴大統領と首脳会談した後、韓国側から昼食会の声はかからず、安倍首相一行はソウルの焼き肉店で「韓国牛の霜降りロースのセットと味付けカルビ」を食べた(「安倍(首相)さんのソウルの『昼食』」2015年11月4日参考)。
 韓国では食事の意味は大きい。本来、ゲストを食事でもてなすことが上手い国のはずだ。それだけに政治や外交でも食事に込められた意味があるとみなければならない。それとも、韓国の政治家たちはゲストとゆっくりと食事を楽しむ余裕を失ってきたのだろうか。

シュルツ氏選出と「ユダヤ人の知恵」

 ベルリンで19日開催された独社会民主党(SPD)の臨時党大会でマルティン・シュルツ氏(61)は全党員の支持(有効投票数605票)、すなわち100%の支持を得てガブリエル党首の後任党首に選出された。投票結果が報じられると、党員たちから驚きと大歓声が沸いた。「戦後の党史で党首が100%の支持を得て選出されたことはなかったことだ」というのだ。

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▲100%の支持を得て党首に選出されたシュルツ氏(SPDの公式サイドから)

 SPD臨時党大会の結果を知った当方はユダヤ人の箴言(旧約聖書)を直ぐに思い出した。全員が賛成した案は否決されるというのだ。ユダヤ人は全員が同じ意見であることに危険を感じるからだという。当方はシュルツ氏の選出に反対ではないが、100%の党員が支持したということに、ユダヤ人ではないが、ちょっと危なさを感じたのだ。

 ドイツではこの秋、9月24日、連邦議会選挙が実施される。第1与党「キリスト教民主同盟」(CDU)を率いるメルケル首相は4選を目指す一方、第2与党のSPDは第1党の位置を確保して首相のポストを奪還することを目標に、欧州議会議長を5年間勤めた後、ドイツ政界に戻ってきたシュルツ氏を党筆頭候補者、首相候補者に担ぎ上げたばかりだ。
 シュルツ氏が党の看板となって以来、SPDの支持率が20%台から30%台に突入し、1万3000人の新党員が加わったという。トップの座をCDUから奪う勢いを示しているのだ。「社民党のカムバック」といった見出しが独メディアに見られ出した。

 シュルツ氏は20年余り欧州議会議員、そして議長を務めるなど、大部分の政治活動をブリュッセルで過ごしてきた。5カ国語に堪能でブリュッセルでは“ミスター・ヨーロッパ”と呼ばれてきた。ベルリンの独政界から久しく遠ざかっていたこともあって、社民党の党刷新のイメージにマッチする利点がある。複数の世論調査では次期首相候補者としての支持率でシュルツ氏がメルケル首相を破ってトップを走っている。ゲアハルト・シュレイダー首相(任期1998〜2005年)以来の社民党首相が生まれるという希望が党に活気を与えているわけだ。

 一方、11年間、首相の座に君臨してきたメルケル首相は難民・移民の歓迎政策で国民の支持を失ってきた。それだけに、SPDの政権奪還の夢は現実的だ。

 ただし、総選挙まであと半年ある。シュルツ氏の政治家としての鮮度が果たして投票日まで続くか。社民党はメルケル政権下の連合パートナー政党だった。メルケル政権下の問題点は社民党の責任でもある。例えば、難民問題の時、メルケル首相のウエルカム政策を正面から批判した社民党閣僚はいなかった。

 シュルツ氏はその批判の矛先を民族主義的な右派新党「ドイツのための選択肢」(AfD)に向けている。その上で、シュルツ氏はシュレーダー氏が2003年3月に発表した改革プロジェクト(通称・アゲンダ2010)を修正し、所得の格差是正に乗り出す姿勢を強調している。
 アゲンダ2010とは、失業者への給付金、援助金支給期間の短縮、労働コストの削減、人材派遣業への規制緩和などだ。その結果、SPDの支持基盤の労働組合などから激しい批判を受けてきた経緯がある。シュルツ氏は「所得の格差の拡大、低所得労働の拡大で労働者の生活は苦しくなってる」としてその修正をアピールしている。


 シュルツ旋風がいつまでも吹き続ける保証はない。ドイツでは今月26日ザールラント州、5月7日にはシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州、同月14日にはノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州で州議会選挙が行われる。特に、人口最大の州、NRWの選挙動向はシュルツ氏の人気が本物かどうかを占う絶好の機会となる。NRW州選挙でSPDが飛躍するようだと、メルケル首相の4選に赤ランプが灯る。

 最後に、シュルツ氏が100%の党員の支持で党首に選出されたことに当方がなぜ「危なさ」を感じたかを簡単に説明する。「ユダヤ人の知恵」を過大評価しているからではない。605人の党代表者がいながら誰一人としてシュルツ氏に反対票を投じた者がいなかったという事実は、社民党の結束をアピールする点では成功したかもしれないが、シュルツ氏旋風におんぶするだけで、政党としての思想的貧弱さを反映しているように感じるからだ。

北に近代的な「眼科クリニック」出現

 「金正男暗殺事件」がウィ―ンの北朝鮮外交官たちにどのような影響を与えているかを取材するために、ウィーン市14区の北朝鮮大使館まで足を延ばした。大使館の写真展示を見ると、多くの写真は故金正日総書記と息子、金正恩氏が一緒に現地視察をしているところを撮ったものだった。

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▲北の近代的な「眼科クリニック柳京」=駐オーストリアの北朝鮮大使館設置の写真展示から(2017年3月20日、撮影)

 金正日総書記の直系で異母兄の金正男氏を暗殺した直後だけに、金正恩氏の複雑な心情世界が写真展示にも反映しているのを感じた。「自分は金正日総書記の直系の息子だ」という叫びとでも表現できるかもしれない。金正恩氏の金正男氏に対する出自の負い目だ。写真は金正恩氏と父親・金正日総書記の親子関係を懸命にアピールしていた。

 親子同伴の写真は別として、興味深い写真が展示されていた。非常にモダンな眼科クリニック「柳京」の写真だ。ウィ―ンでも見たことがないほど近代的な外観で、2階には眼をモチーフにした窓ガラスが設置され、メガネフレームの売り場も見える。若い女性が百貨店のように患者を案内している。もちろん、近代的な「眼科クリニック」ができても眼科医がいなければならないし、設備が重要だ。写真ではその点は不明だ。

 「眼科センター」の写真をみて先ず考えたことは、「金正恩氏は最近、目を悪くしたので、欧米最新の眼科クリニックを作らせたのだろう」ということだ。金正恩氏の掛け声がなければ、全てが始まらない独裁国家だから当然かもしれない。

 36年ぶりに開催された北朝鮮の朝鮮労働党大会で昨年5月6日、金正恩第1書記はスーツとネクタイの姿で登壇し、開会の辞を述べたが、その時、眼鏡をかけていた。平壌の執務室で夜遅くまで書類に目を通し過ぎたのか、それともビデオ・ゲームを深夜までプレイして視力を弱めたのか、詳細な事情は知らないが、30代に入って眼鏡を付けだしたのだろう。

 当方がその眼科クリニックの写真をデジカメで撮っていると、監視カメラで当方の姿を見つけた外交官夫人が飛び出してきた。何をしているのか、といった顔で当方に近づいてきた。
 「この眼科クリニック柳京は凄くモダンですね」というと、外交官夫人は急に誇らしくなって笑みを見せ、「平壌にある」と説明してくれた。

 眼科センターの話を北事情に通じた知人に話すと、彼は「近代的な眼科クリニックに誰が行くのか知っているのか。一般国民には全く関係がないね。党幹部やその家族たち用の眼科クリニックだよ」という。

 知人の批判は正しいだろうが、当方は少し違った視点から考えている。独裁国家のプロジェクトは全て独裁者の意向が反映されているから、新しい建物や関連施設が突然、出現した場合、独裁者が今、何を考えているか、などを読み取れるチャンスだからだ。
 金正恩氏の視力が2・0だったら、平壌には絶対、近代的な「眼科クリニック」は建てられなかったはずだ。「眼科クリニック」の出現は、金正恩氏が眼鏡を必要とし、ひょっとしたら糖尿病に関連した眼病にかかっているかもしれないことを推測させるのだ。

 金正恩党委員長は政権就任直後、綾羅人民遊園地を完成し、平壌中央動物園の改修、そして世界的なスキー場建設など、遊戯用インフラの整理に腐心してきた。全ては「人民生活の向上」のため、という名目付のプロジェクトだったが、実際は新婚の金正恩・李雪主夫妻に必要なものを完備していったわけだ。結婚し、子供ができるので遊園地と動物園が必要であり、夫人と休暇を楽しむためにスキー場を建設していったわけだ。
 
 蛇足だが、平壌に現代的なフィットネスセンターが出現した時、当方はそのセンターの写真を見て驚いた(「北にもフィットネスセンター!」2014年1月4日参考)。食糧不足で、国民は満足に食事できない国にモダンなフィットネスセンターが必要とはどうしても考えられないからだ。多分最も必要としていたのは金正恩氏(170センチ、130キロ)だったはずだ。
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