ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2016年11月

敗北者の「その後」の生き方

 自民党総裁選で1972年、田中角栄に敗北した直後、福田赳夫は「日本が福田を必要とする時は必ず来る」と表明、76年に総裁に就任した福田はその2年後の78年、総裁選で今度は対抗候補者大平正芳に敗北、「現職総裁の敗北」という予想外の屈辱を味わった。その時、「民の声は天の声というが、天の声にも変な声もたまにはある」と呟いたという話は有名だ。

 なぜ、今、福田赳夫の話かというと、米大統領選で対抗候補者ドナルド・トランプ氏に敗北したヒラリー・クリントン氏(69)が敗北後、2週間ぶりに外出し、慈善団体の会議で演説したという記事を読んだからだ。クリントン氏の表情からは明らかに敗北の痛みが感じられた。オーストリアの日刊紙はクリントン氏の選挙中の顔と敗北2週間後の顔の写真を並列して掲載していたほどだ。クリントン氏は「外出したくなかった。ここに来て語るのは大変な努力がいった」と正直にその胸の内を明らかにしている。

 当方は政治信条では多分、クリントン氏寄りではなく、共和党に近いと思うが、敗北者クリントン氏に当方の心はより近いのを感じる。人生で勝利よりも多くの敗北を喫してきた当方にとって、敗北者は常に自分に近いのを感じているからだ。だから、敗北者クリントンのことを考えながら、人生の敗北の意味を考える。

 オーストリアの精神科医、心理学者、ヴィクトール・フランクル( Viktor Emil Frankl,1905〜1997年)はジークムンド・フロイト(1856〜1939年)、アルフレッド・アドラー(1870〜1937年)に次いで“第3ウィーン学派”と呼ばれ、ナチスの強制収容所の体験をもとに書いた著書「夜と霧」は日本を含む世界で翻訳され、世界的ベストセラーとなったが、そのフランクルは独自の実存的心理分析( Existential Analysis )に基づく「ロゴセラピー」で世界的に大きな影響を与えた。彼は「誰でも人は生きる目的を求めている。心の病はそれが見つからないことから誘発されてくる」と分析し、「どの人生にも意味がある」と語り、悩める人々の心に光を与えた。勝利者の人生だけではなく、敗北者の人生にも「意味」があるというのだ(「どの人生にも『意味』がある」2015年3月27日参考)。

 当方は米映画「オーロラの彼方へ」(原題 Frequency、2000年)が大好きだ。何度も観た。同映画は人生の失敗、間違いに対してやり直しができたら、どれだけ幸せか、という人間の密かな願望を描いた映画だ。「可能ならば、人生をもう一度やり直したい」という願望だ。
 敗北者は常に「あの時、こうしておけば良かった」「どうしてあのようなことをしたのか」と呟き続ける。クリントン氏もひょっとしたらそうではないだろうか。トランプ氏とのTV討論の場面が、脳裏に駆け巡っているかもしれない。敗北者は敗北を分析し、納得できる答えを見つようと心を砕くものだ。

 広島カープの黒田博樹投手(41)は先月、引退を表明した。記者会見で彼は自分の野球人生に感謝している(日米通算200勝を達成)。その投手人生は勝利だけではなかった。重要な試合で負け投手となり、眠れない夜を過ごしたこともあっただろう。

 クリントン氏は初代の女性米大統領になることを願ってきた。大統領となって米国を偉大な国にしたかったのか、国民の生活をより向上させたかったのか、さまざまな動機があったはずだ。明確な点は、大統領になることが人生の目的ではない。それは本来、目的を実現させるための手段であったはずだ。手段であった大統領ポストが目的となった場合、大統領選の敗北は人生の敗北を意味することになる。

 クリントン氏は賢明な女性だ。大統領になれなかったが、自身が抱いてきた願いは決して失わないだろう。その願いを実現するため、これからも頑張ってほしい。大統領選の敗北にもやはり「意味」があるはずだからだ。

ジェイク・バグと「源氏物語」

 英国のシンガーソングライター、ジェイク・バグ(Jake Bugg、22)のコンサートが15日夜、ウィーン市内で開かれた。それに先立ち、サウンドチェック前のバクと舞台裏で会見できる機会があった。

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▲インタビューに答えるジェイク・バク(2016年11月15日、撮影)

 バグは今年7月、新潟で開催されたフジロックフェスティバルに参加したばかりだ。日本が大好きという。今年6月にリリースした新アルバムOn my oneについてインタビューするつもりだったが、会見の半分ぐらい日本関連の質問に集中した。

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▲ウィーンのジェイク・バグ・コンサート風景

 バグが17歳でデビューした最初のアルバム「ジェイク・バグ」は英国のアルバムチャードでナンバー・ワンとなった。それ以来、バグは“神童”といわれ、「ボブ・ディラン」の再現といわれてきた。

 そのバグが大の日本ファンで、「源氏物語」を読んだりしていると聞いたので、音楽関連の質問をする前に聞いてみた。バグは「本屋で見つけ、著者と本のことについてちょっと読んでとても興味を持った。中世時代の日本が舞台で、その中にある詩で宮廷の生活がイメージできる。その時代の人間の生活が分かるのはクールで面白い」

 英国ノッティンガム生まれのジェイク・バグはサッカーが大好きな平均的少年だったが、12歳の時、米国のシンガーソングライター、ドン・マクリーン(Don Mclean)のヴィンセント(Vincent)を聴いて感動、「僕も人の心を慰め、感動させる曲を作りたい」と思ったという。12歳の時、ヴィンセントに感動するところは、バグが普通の子供ではなかったことが分かる。それ以来、ギターを常に傍に置いてきた。バグのギターの演奏力は卓越しているといわれる。その能力を生かしてこれまで多くのソングを作曲してきた。

 「僕は一定のスタイルには拘らない」という。実際、第3アルバムにはさまざまな形式が入っている。今までのファンの中で3番目のアルバムを聞いて去っていった人もいるが、これまで以上に若いファン層がコンサートを聴きにきてくれるようになったよ」という。ちなみに、第3アルバムの中で最も個人的なソングは‘Never wanna dance’という。「自分にとって寂しい曲だ。しかし、個人的な思いが込められた曲だ」ということを初めて明らかにしてくれた。

 音楽以外の芸術では絵画に惹かれるという。「さまざまな解釈が自由にできる芸術が好きだよ」という。ヴィンセントでシンガーソングライターの道を行こうと決意したというだけに、絵画にも特別の関心があるのだろう。

 会見が終わって、コンサートのチケットにサインをお願いしたら、バグは「チケットを買ってくれてありがとう」といって喜んでサインをしてくれた。

「隠れホーファー票」って何

 オーストリアで来月4日、大統領選が実施される。当コラム欄で数回、報じたが、今回は5月22日の決選投票のやり直し選挙だ。「緑の党」元党首アレキサンダー・バン・デ・ベレン氏(72)と、極右政党「自由党」議員で国民議会第3議長を務めるノルベルト・ホーファー氏(45)の2人の候補者の間で争われる。

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▲大統領選のプラカードが並ぶウィーン市内(2016年10月30日、撮影)

 ドナルド・トランプ氏が米大統領選でヒラリー・クリントン氏を破ったばかりだ。その余勢(?)を駆って、ホーファー氏が「わが国でも……」と威勢がいい一方、バン・デ・ベレン氏は、「わが国に欧州最初の極右派大統領を選出してはならない」と有権者に警告を発している。
 情勢は、リベラル派代表だったクリントン氏にトランプ氏が挑戦した米大統領選に少し似てきた。米大統領選では、世論調査では潜伏していた「隠れトランプ票」の存在に注目が集まったが、オーストリア大統領選でも「隠れホーファー票」が勝敗を決定する可能性があると囁かれだしているのだ。その点、少し説明が必要だろう。

 米大統領選ではニューヨーク・タイムズなど主要メディアがクリントン氏を支援する一方、トランプ氏を酷評してきた。トランプ氏はメディアの批判にさらされ、ほぼ全ての世論調査がクリントン氏の勝利を確信していた。そのような雰囲気の中で、「自分はトランプ氏を応援している」と口に出せなくなった有権者が多数いたという。世論調査の予想を裏切り、トランプ氏が勝利した背後には、世論調査には反映されなかっら「隠れトランプ票」があったからだというわけだ。

 ホーファー氏の場合、極右政党「自由党」の幹部だ。同党はネオナチとの関係が久しく囁かれ、ドイツやオーストリアのメディアでは機会がある度に批判にさらされてきた経緯がある。同党はオーストリア・ファースト、反ユダヤ主義、外国人排斥を掲げ、難民の収容には消極的な立場をとってきた。左派系メディアや与党社会民主党の影響が強い国営放送は「自由党」批判の先頭にたってきた。しかし、「自由党」は選挙の度に得票率を伸ばしていった。「隠れ自由党票」の存在を示唆していたわけだ。

 その「自由党」の大統領候補者、ホーファー氏の場合、国営放送を中心にホーファー氏嫌いのジャーナリスがTV議論などで同氏を厳しく追及する。ホーファー氏を支持するといえば、「君はネオナチスか」と疑われるのを嫌う国民も結構多い。学生など若い層の知識人の中には「ホーファー氏を支持する」と公言することを避ける傾向がある。民族主義者と受け取られ、その世界観が狭いと見られることを恐れるからだ。その点、米国人の「隠れトランプ支持者」と似ているわけだ。

 しかし、「隠れ自由党・ホーファー支持者」はここにきて隠れる必要がなくなりつつあるのだ。なぜならば、「自由党」がネオナチ党のイメージ払しょくのため努力を重ねてきたからだ。シュトラーヒェ党首とホーファー氏は今年に入りイスラエルを訪問し、イスラエルとの関係改善に乗り出し、反ユダヤ主義を公の場で批判している。欧州連合(EU)との関係でも、英国のEU離脱を問う国民投票後の英国民の反応を配慮し、EU離脱シナリオをひっこめるなど、「自由党」はそのイメージの修正に乗り出しているからだ。外観ではソフトなイメージのホーファー氏を大統領候補者に担ぎ出したことで、「自由党」は得している面も否定できない。

 それに対し、バン・デ・ベレン氏は、「極右政党出身の大統領はわが国の恥となる」と主張し、極右派大統領誕生の阻止を有権者に懸命にアピールしている。「自由党」は過去、国民に不安や恐怖を訴えて得票率を伸ばしてきた。「緑の党」はその「自由党」を「国民の不安を恣意的に煽っている」と批判してきた経緯がある。その「緑の党」代表のバン・デ・ベレン氏が今度、「ホーファー氏は危険人物だ」と国民に不安を煽っているわけだ。不安を煽る政党は代わったが、不安は常に有権者獲得の武器として政治家に悪用されることを今回も端的に実証しているわけだ。

「地位」は人を作るか

 読売新聞電子版(16日)は「大統領になれば誰でも目を覚ます」という見出しのオバマ大統領の発言を報じていた。

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▲「横綱の責任」と「孤独」を感じさせる大横綱・白鵬(ウィキぺディアから)

 オバマ米大統領は14日の記者会見の中で、次期大統領のドナルド・トランプ氏について、選挙中の過激な主張から現実路線へ軌道修正していくとの期待感を示し、「大統領になれば誰でも目を覚ます。現実とそぐわない立場や性質は変える必要があることにすぐに気づくだろう」とも述べたという。

 「大統領になっても目を覚まさない人はいた」なんて皮肉をここで言うつもりはない。オバマ大統領の発言内容は簡単にいうと「地位が人を作る」ということだろう。大相撲で横綱になった関取が次第に最高地位の横綱に相応しい風格と人格を醸し出す姿を「横綱の地位が彼を成長させた」といって評することがある。会社社長に就任した直後、「あの人物で会社は大丈夫か」といわれた人物が立派な社長になったケースは経済界ではよく聞く。「地位が人を作る」ということは確かだ。

 世界大国の米最高指導者に選出されたならば、その地位の責任は他と比較できない。会社社長や横綱の地位どころではない。オバマ大統領は先輩の責任もあってか、後輩の次期大統領トランプ氏に対して、「ドナルドよ、ホテルや大学のオーナーどころではない。世界の指導国家の米大統領の責任は計り知れないほど大きい」と警告し、「選挙中の暴言や失言も修正されるだろう」と述べ、少し皮肉を込めて「目を覚ますだろう」という表現となったわけだ。

 米大統領の場合、「地位の責任効果」だけではない。「情報量の効果」も大きい。次期大統領に選出された直後から、米情報機関が世界から集めた機密情報のブリーフィングを受ける。シリアのアサド大統領関連情報、ロシアや中国、北朝鮮に関する機密情報は大統領に就任しない限り、聞くことができないものだ。その大量の機密情報がトランプ氏の外交政策を変えさせたとしてもある意味で当然といわざるを得ない。

 与党関係者が入手する世界情報と野党政治家が知る外交情報とでは雲泥の差がある。その差が地位の責任と関連して「目を覚ます」効果をもたらすのだろう。情報量と責任が密接な関係を持っているわけだ。

 これまで実業界一筋で生きてきたトランプ氏の世界情勢に関する理解は日々、拡大するとみて間違いない。北大西洋条約機構(NATO)に対する評価、対ロシア政策で変化が既にみられる。それが最終的に伝統的な共和党の外交路線に落ち着くか、それとも“トランプ外交”と呼ばれるような新しい外交政策となって展開されるか、それを判断するまでにはもうしばらく時間が必要だろう。

 最後に、会社社長や横綱の地位に就いた人物が異口同音に言うのは、その「責任の大きさ」と共に「指導者の孤独」だ。米大統領は米軍最高司令官でもある。その命令一つで多くの生命が左右する。米大統領はホワイトハウスにある祈祷室で祈らざるを得なくなるというのだ。「トランプ氏がホワイトハウスの祈祷室に入った」という情報がワシントンから流れてきたら、「彼も変わった」と断言できるかもしれない。

イエスはどのような男だったか

 音楽の都ウィーンで12日午後、欧州最大のクリスマス市場のクリスマス・ツリーがライトアップされた。待ちに待ったクリスマス・シーズンの開幕だ。子供だけではなく、大人もこのシーズンに入るとワクワクする人が多い。小さな子供を持つ家庭ではプレゼント探しが始まる。賢明なお母さんならば既にショッピングを開始しているだろう。12月に入ってからでは遅すぎるからだ。クリスマス・プレゼントも毎年のことだから、アイデアが浮かばなくなり、頭を抱える親たちも少なくない。

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▲ウィーン市庁舎前広場の「クリスマス市場」風景(2016年11月12日、撮影)

 欧州経済の景気は決して良くない。失業率も依然高いし、難民問題で治安も少々落ち着きを失ってきている。それでもクリスマスはクリスマスだ。どうしても財布の紐を緩めなければならなくなる。

 ところで、オーストリア通信(APA)によると、欧州最大のクリスマス市場を誇るウィーンでは今年、オープンされるクリスマス市場は25カ所で、昨年の22カ所より3カ所多い。ただし、市場で開かれる店舗総数は今年は973店で1000店を下回っている。その理由として、ウィーン市当局関係者は「クリスマス市場の需要も限界に達したからだろう」という。

 10店以上の店舗が公共な場所で開かれる市場を正式に「クリスマス市場」と呼ぶ。その市場では飲食店の店舗数は最大で全体の3分の1と制限されている。市当局はクリスマス期間、クリスマス市場で店を開く飲食店の衛生度を調べる抜き打ち検査を実施する。

 一方、市場で店舗を開く業者も大変だ。その場所代が最高で3万ユーロ、安い所で月2000ユーロと結構高い。天候が悪く、売り上げが上がらなければ元手も取れなくなる。ちなみに、クリスマス市場を訪れる客は1人平均20ユーロは使うというデータがあるという。
 ウィーン市庁舎前広場のクリスマス市場では、今回は市場の傍に仮アイススケート場が設置され、市場のイベントを盛り上げている。

 クリスマス市場では子供連れの夫婦や若いカップルが店のスタンドを覗きながら、シナモンの香りを放つクーヘンやツリーの飾物を買ったり、クリスマス市場で欠かせない飲物プンシュ(ワインやラム酒に砂糖やシナモンを混ぜて暖かくした飲み物)を飲む風景が12月24日まで続く。クリスマスが過ぎれば、欧州の人々にとって1年は終わり、新年を迎える準備に入る。

 クリスマスは復活祭と共に、キリスト教会にとって重要な祝日だ。クリスマスが人類の救い主イエス・キリストの誕生日ということは誰でも知っているが、33歳で十字架に亡くなったイエスの生涯には多くの謎がある。

 最近では、「クリスマス市場」(Weihnachtsmarkt)という表現をやめ、「冬の市場」(Wintermarkt)と呼ぼうといった声が飛び出すほど、欧州のキリスト教社会の世俗化は急速に進んできた。もはや多くの時間は残されていないかもしれない。イエスはなぜ十字架の道を行かざるを得なかったか、なぜイエスは再臨すると約束されたのか、などをもう一度、じっくりと考えてみたいものだ。

 ところで、サウロはダマスコへの途上、復活したイエスにあって回心したが、クリスマス市場でイエスと会った人はいるだろうか。

バチカン放送の「不都合な写真」

 フランシスコ法王は11日、教会の聖職を断念し、結婚した若い元神父たちを訪ねた。バチカン放送独語電子版が同日、写真付きで報じた。

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▲子供をフランシスコ法王に紹介する元神父(バチカン放送独語電子版11日から)

 それによると、フランシスコ法王は同日正午、ローマ近郊の一軒の住居で7人の元神父たちの家庭と会った。7人は同じ宿命を持っていた。彼らはローマ・カトリック教会の神父だったが、聖職者の道を諦め、結婚したのだ。「法王は彼らに暖かい手を差し伸ばした」という。なぜならば、独身制を破り、家庭をもった元神父たちは教会から「堕ちた神父」と受け取られ、周辺の人々から冷たくみれてきたからだ。

 バチカン放送によると、彼らは数年間、教区の聖職に従事したが、孤独と無理解に遭遇、牧会に全力を投入したが疲れを覚え、聖職者の決心が揺れ出したという。そのような状況が数年間続き、不確かさと疑惑が高まり、「神父となったのは間違った決定だった」という思いが高まっていったという。そして聖職を断念し、家庭をもったわけだ。

 バチカン放送の記事はそれで終わっている。聖職を断念し、家庭を持ってから子供ができた。その元神父は今、何を感じているかという点には何も報じていないのだ。

 聖職を断念するまでの元神父の内的葛藤世界は理解できる。聖職の道を神の召命と信じて、神父の道を歩み出した人間にとって、如何なる理由からにせよ、それを断念することは大変だ。葛藤は当然だろう。

 繰り返すが、バチカン放送は元神父の聖職断念までの苦悩の日々を描写したが、教会を離れ、家庭をもった後の元神父の心の世界には何も言及していない。普通のジャーナリストならば、「あなたは今、幸せか」と聞くだろう。

 ただし、バチカン放送のサイトに掲載された元神父の顔はいずれも笑顔だ。自分の娘をフランシスコ法王に見せる若い元神父の姿はどう見ても幸せそうなのだ。写真は元神父の心を鮮明に語っている。

 元神父が、「神父時代より自分は今幸せであり、子供は喜びだ。家庭を築くことはいろいろな困難さも伴うが、それを妻と共に乗り越えて行くため努力している」と答えたならば、その記事を読んだ多くの若い神父たちは考え出すだろう。バチカン側が恐れているのはその点かもしれない。
 バチカン放送にとっては、教会から“堕ちた神父”と受け取られている元神父たちに慈愛の手を差し伸べるローマ法王の姿を示すだけで十分だったのかもしれない。


 世界には聖職を断念し、結婚した元神父たちが数万人いるといわれる。彼らの多くは教会から独身制を破った「堕ちた聖職者」と受け取られ、冷たく扱われるケースが少なくない。
 カトリック教会では通常、聖職者は『イエスがそうであったように』という理由から、結婚を断念し、生涯、独身で神に仕えてきた。しかし、キリスト教史を振り返ると、1651年のオスナブリュクの公会議の報告の中で、当時の多くの聖職者たちは特定の女性と内縁関係を結んでいたことが明らかになっている。カトリック教会の現行の独身制は1139年の第2ラテラン公会議に遡る。聖職者に子供が生まれれば、遺産相続問題が生じる。それを回避し、教会の財産を保護する経済的理由が(聖職者の独身制の)背景にあった。

ロゴスを失った政治の世界

 米大統領選の敗北が決まった翌日の10日午前、ヒラリー・クリントン氏がニューヨークのホテルで選挙運動をしてくれた支持派の前で敗北演説をした。それをCNNで聞いたが、感動的な内容だった。当方はクリントン氏の支援者ではない。政治信条では共和党寄りだが、クリントン氏の演説内容は素晴らしかった。特に、若い世代に向けたアピールはクリントン氏の政治的遺言のような響きすら感じたほどだ。

 「正しいと信じていることを信じ続け、辞めるべきではない。人生には時にはセットバックを甘受せざるを得ない瞬間もあるが、自身の信念を捨てないで邁進してほしい」という内容だったと記憶している。クリントン氏の後ろには主人のビル・クリントン元大統領が目頭を熱くしていた。彼も夫人の演説に感動を覚えていたのだろう。

 それに先駆け、ドナルド・トランプ氏は支持者の前で勝利演説を行った。トランプ氏はメラニア夫人を含む全ての家族を連れ、舞台に立った。次期副大統領となった米インディアナ州のマイク・ペンス知事の紹介を受けて演壇に立ったトランプ氏は、「偉大な勝利だ。これはみんなの勝利だ」と述べる一方、「米国国民の全ての大統領になるように努力していく」と述べた。その後は自身の両親を含む家族一人ひとりに支援を感謝している。

 正直言って、トランプ氏の勝利演説内容はそれが全てだった。大統領選の勝利演説とは思えないほど個人的な思いが中心だった。次期大統領のビジョンもトランプ氏の口からは出てこなかった。

 トランプ氏の勝利演説を聞いた後、クリントン氏の敗北演説を聞いた人は、後者の演説内容が非常に素晴らしかった一方、前者の勝利演説の内容には物足りなさを感じたのではないだろうか。換言すれば、クリントン氏の演説は哲学的、論理的であり、まとまりがあった。一方、トランプ氏の演説はダラダラしていて、そこには哲学的思考も洗練された表現もなかった。

 大統領選が演説コンテストだったならば、トランプ氏はクリントン氏に完敗するだろう。しかし、大統領選は演説コンテストではない。口下手でもその候補者の人格、品性が感じられれば有権者の心を捉える一方、名演説者でも感動を与えることができないケースがある。

 それでは、米国民はクリントン氏にはなく、トランプ氏にはある「何」に惹かれ、同氏を選んだのだろうか。

 「有権者は候補者の演説やその政治能力などどうでもいい。自身が抱えている問題や困難を解決してくれればいいだけだ」と諭されれば、そうかもしれない、と納得せざるを得ない。候補者の演説力、政治キャリア、品格などはひょっとしたらどうでもいいのかもしれない。
 米国民の多くは、8年間続いたオバマ民主党政権に飽きたので、次は共和党大統領でもやらせてみようか、といった安易な思いがあったのかもしれない。それをさまざまな理屈と一方的な根拠を挙げて説明してもインテリは自己満足できたとしても、多くの人から「そんな理屈で投票したのではないよ」と一蹴されてしまうかもしれない。

 しかし、それが事実ならば、事は深刻だ。国民が自身が抱える問題の解決策を提示してくれる候補者ならばそれで十分で、政治家の能力、キャリアなどもはや意味を失ってしまったことになるからだ。「政治不信」では表現できない世界だ。政治家を含む「言葉」(言霊)がもはやその意味を失ってきたことを意味するからだ。実際、大統領選に勝利したトランプ氏自身、選挙後と選挙前の「言葉」は同一ではなくなってきている。それをトランプ氏の柔軟性と評価するか、首尾一貫しない公約違反者とみるかは、立場によって異なるだろう。

 政治家は実行力であり、演説力ではない。不言実行で十分かもしれない。米国民はクリントン氏の政治キャリアを知っているが、政治家のトランプ氏の実行力、政策力を知らない。しかし、米国民は全く政治家としてはニューカマーのトランプ氏を選んだ。特に、主要メディアがトランプ氏を批判し続け、「悪い悪い」と報じてきたので、かえってトランプ氏を選んだ有権者も少なくなかったはずだ。「言葉」の仕事であるメディアも有権者からその「言葉」を無視されたのだ。それに気づいているメディア関係者がどれだけいるだろうか。

 エスタブリュシュメントといえば、クリントン氏もトランプ氏も同じだ。一方が政界のエスタブリッシュメントに、他方が経済界のエスタブリッシュメントに属している。両者とも少数民族出身者、貧困者、失業を恐れる労働者ではない。事実はその逆だ。どのエスタブリッシュメントを選ぶかを、如何なるエスタブリッシュメントにも属さず、むしろ彼らに怒りと一種の羨望を感じる非エスタブリッシュメントの有権者が決めるわけだ。選挙は一種の“ガス抜き”のような機能を果たしている。それ以上でも、それ以下でもないとすれば、民主主義の選挙そのものの意義を再考せざるを得なくなるのだ。

欧州極右派とトランプ氏の「関係」

 欧州の極右派政治家と呼ばれる政治家はドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利をあたかも自身の勝利のように歓迎している。オーストリア代表紙「プレッセ」は11日、「フランスの極右政党『国民戦線』のマリーヌ・ル・ペン党首は、『今日は米国で、明日はフランスだ』と述べ、来年実施予定の大統領選での政権掌握への決意を固めている。オランダの極右政党『自由党』のヘルト・ウィルダース党首は、『トランプ氏の行進は決して孤立した現象ではない。欧州でも多くの国民が真の政治転換を願っている』とツイッターで述べ、英国の右派政党『独立党』の欧州議会議員ナイジェル・ファラージ氏は、『2番目の革命が生じた』と英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の勝利とトランプ氏の当選を重ね合わせている」と報じている。

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▲トランプ氏の勝利の波及を恐れるバン・デ・ベレン氏(オーストリア「緑の党」の公式サイトから)

 当方が住むオーストリアでも極右政党「自由党」のシュトラーヒェ党首はツイッターで、「左翼や特権を享受するエスタブリッシュメントは今回、有権者によって制裁を受けた。わが国でも米国と同様、メディアは最初からトランプ氏を批判し、ヒラリー・クリントン氏を支援し続けてきたが、彼らも有権者に制裁を受けた」と強調している。

 欧州の極右派政治家とトランプ次期大統領との間には確かに共通点がある。トランプ氏は「アメリカ・ファースト」を標榜する。同じように、例えば、オーストリアの「自由党」も「オーストリア・ファースト」を叫んでいる。両者は、EU・米国間の包括的貿易投資協定(TTIP)に反対し、難民の受け入れに消極的であり、イスラム教徒を含む外国人への排斥傾向が強い、といった具合だ。その米国でトランプ氏がクリントン氏を破り、勝利した。欧州の極右派政治家たちが「次は自分の番だ」と意気が上がっても不思議ではない。

 世界を驚かせた「トランプ勝利」の風が欧州の政界にまで及ぶかを占る絶好のイベントが来月4日にある。オーストリア大統領選だ。野党「緑の党」元党首のアレキサンダー・バン・デ・ベレン氏(72)と、極右政党「自由党」議員で国民議会第3議長を務めるノルベルト・ホーファー氏(45)の2人の間で行われる。興味深い点は、ホーファー氏の対抗候補者バン・デ・ベレン氏がトランプ氏の勝利に危機感を高めていることだ。

 バン・デ・ベレン氏は、「トランプ氏の勝利を尊重するが、米大統領選の批判・中傷合戦は到底、受け入れられない。わが国が欧州で先駆けて極右派政党出身の大統領を選出するといった不名誉なことが絶対生じてはならない」と述べ、ホーファー氏がトランプ氏の勝利の勢いに乗って当選しないように国民に警告を呼びかけている。

 一方、ホーファー氏は、「トランプ氏の勝利を驚く人を見て、驚かざるを得ない。米大統領選は民主的に行われ、トランプ氏を選出したのだ。その結果を尊重するのが民主主義国家であり、法治国家の基本ではないか」と強調し、当選したトランプ氏をこき落とすバン・デ・ベレン氏を批判し、「バン・デ・ベレン氏はわが国と米国との関係を険悪化させている」と述べている。

 トランプ氏の衝撃が欧州の政界にどのような影響を与えるか、オーストリア大統領選はそれを知る格好のテスト・ケースだ。リベラル派、左派知識人らが結束を固め、極右派政党の躍進を阻止するか、ホーファー氏が‘欧州のトランプ‘となるか、あと3週間余りでその答えが出る。

「世論調査」に死刑宣言が下された?

 米大統領選の結果は非常にドラマチックなものだった。英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票(今年6月23日)の結果を凌ぐほど、サプライズな結果だった。トランプ氏の勝利を予測したメディアは少なく、大多数の欧米の主要メディアはクリントン氏の勝利を信じていた。残念ながら、当方もトランプ氏の勝利は「想定外」と受け取ってきた一人だ。

 米大統領選後、「世論調査」一般に対する風当たりが急速に高まってきた。当然の反応だろう。「世論調査」をバッシングする前に、なぜ「世論調査」がその精確性を失っていったのかを少し考えてみた。

 「世論調査」の場合、過去の選挙データ、有権者の地域、職種、年齢、所得、学歴等のデータをもとに、最近の世論の動きを予測していく。その「世論調査」は多少の誤差が生じたとしても大きな間違いはない、と受け取られてきた。
 「世論調査」は社会の動向を知るうえで不可欠な手段と受け取られ、メディア機関も率先して独自の「世論調査」を実施して、世間のトレンドをいち早く分析し、報道してきた。文字通り、「世論調査」は黄金時代を迎えていた。

 それが英国のEU離脱を問う「世論調査」ごろから風向きが変わり、米大統領選の結果は「世論調査」への死刑宣告が下されたような状況に陥っているのだ。

 「世論調査」の方法は本来、科学的だ。決してサイコロを転がして予測するわけではない。統計学上の知識と社会学的分析を駆使し、社会の動向を解明していく。そのプロセスに大きな問題はないはずだ。
 しかし、最新の動向を分析しようとすれば、過去のデータのほか、直接情報を収集しなければならない。過去のビック・データではもはや社会の変化を正確には予測できなくなってきたからだ。そこに落とし穴が控えているわけだ。

 時代は迅速に変化する。短期間に情報を入手し、それを解析しなければならない。どうしてもミスが出やすい。ゴミ・データの処置も必要だ。しかし、それらのミスは努力すればクリアできる課題だ。問題は、その新しい情報を提供する側に見られ出したことだ。

 「世論調査」は、人間は正直に答えるという「性善説」に基づいている。その情報提供者が何らかの理由から恣意的にうそ情報を語るケースは考えていない。うそ情報に対する「世論調査」側の対応は十分ではないのだ。もちろん、標本調査による誤差(標本誤差)を計算に入れるが、うそ情報による誤差が大きくなれば、その「世論調査」の信頼性は土台から大きく揺れる。

 考えてみてほしい。「世論調査」(標本調査)で人が皆うそを答えた場合、「世論調査」はその瞬間、存続できない。「人が皆、正直に答えた」という前提がなくして「世論調査」は成り立たないからだ。換言すれば、「世論調査」は過去のデータを分析、それに基づく予測は可能だが、新しい変化、動向を予測することは難しくなる。そして多くの人が「世論調査」に期待しているのは本来、後者だ。

 今回の米大統領選では「隠れトランプ票」といわれる支持者がいた。世間から激しいバッシングを受けるトランプ氏を支持すると答えられない有権者が多数存在していたという。悪評価の高いトランプ氏を支持すると表立っていえば、自身が誤解される恐れがあるからだ。一種の自己防衛だ。

 その責任はトランプ氏だけではなく、同氏をバッシングしたメディア側にもあることは明らかだ。メディアが特定人物、候補者を支援する一方、その対抗者、候補者を容赦なく批判する。だから、「隠れトランプ票」のような現象が出てくるわけだ。それは同時に、「世論調査」の精確性、信頼性を傷つける。特定な候補者を支援するあまり、どうしてもデータを正しく解説できなくなる。中立性、客観性に問題が生じる。ましてや、メディアが誘導質問し、恣意的に操作した場合、世論調査は元共産政権下の旧ソ連・東欧の国家官製メディアになってしまう。「世論調査」の客体選択で無作為抽出ではなく、有意抽出の場合、その危険性はもちろん拡大する。

 残念ながら、情報時代の今日、正直に答える代わりににうそ情報を提供し、自身のプライバシーを守ろうとする人が増えてきている。皮肉なことだが、情報社会が過度に発展すれば、情報を隠蔽しようとする動きが同時に高まってくるのだ。
 「世論調査」は冬の時代を迎えてきた。人はうそをつく存在だ。これからは人間性悪説に基く「世論調査」を開発していかなければならなくなるわけだ。

 (上記の内容は、当方の一方的な「世論調査」に関する悲観的な見通しを述べただけに過ぎない)

「強い米国」と「強いロシア」は吉か凶か

 ロシアのプーチン大統領が“強いロシア”の回復を願い、そのために腐心していることはよく知られている、そして次期米大統領に選出されたロナルド・トランプ氏も大統領選では「強い米国を取り戻す」と主張してきた。冷戦時代のライバル、米国とロシアの両国指導者は偶然にも共に、「強い国」を標榜しているわけだ。

 プーチン大統領は9日、トランプ氏の勝利が確定すると直ぐに、「米国とロシアの関係再建に共に取り組もう」とエールを送っている。同大統領は、シリア内戦やイランの核問題で強硬姿勢が目立つヒラリー・クリントン氏よりも、トランプ氏のほうが交渉しやすいと判断、密かに同氏を応援してきたことは周知の事実だ。

 その願いがかなって、トランプ氏が次期大統領に選ばれた。ロシア指導者は大喜びかというと、決してそうとも言えないのだ。トランプ氏の外交政策が読み取れないからだ。どの方向にいくのか、トランプ氏自身も選挙戦では詳細には何も言及していない。吉と出るか、凶となるか、さすがのプーチン氏も予測できないのだ。

 ちなみに、トランプ氏の勝利は予想外の結果だった。特に、ヒラリー氏の勝利を疑わなかった多くの欧米メディアにとってショックだった。それに対し、ロシアのメディアは最初からトランプ氏の勝利を疑わず、同氏に肩を入れて報道してきた。だから「大多数のロシア人にとって、トランプ氏の勝利はショックではなかった」(オーストリア日刊紙プレッセ10日付)という。

 シリア内戦は既に5年目に入ったが、アサド政権とそれを支援するロシア、イラン陣営に対し、米国は反アサド政府陣営を支援してきたものの、反政府側が分裂状況であり、支援も効果が出ていない。ウクライナ問題ではクリミア半島を支配下に置いたプーチン氏の作戦勝ちが目だつ。米国はロシアの蛮行に対し経済制裁を実施しているが、ウクライナ問題の解決の見通しは目下、ない。

 オバマ政権の平和志向の弱腰外交の結果、ロシアの外交攻勢が目下、優勢だ。そこに「強い米国を取り戻す」と表明するトランプ氏が登場する。大統領選ではトランプ氏を支援したプーチン氏がトランプ新政権と対立するケースも完全には排除できないわけだ。

 トランプ氏は日本、韓国に対し、「自国の防衛は自国でカバーすべきだ」と主張し、財政負担だけではなく、軍事負担も要求している。日韓両国だけではない。欧州でも「トランプ氏の米国では、欧州の防衛に対して欧州が責任を負うべきだという声が飛び出すだろう」(オーストリアのラインホルト・ミッターレーナー副首相)と予想する声が聞かれる。欧州連合(EU)の盟主ドイツのメルケル首相は9日、「トランプ氏の米国との協調は民主主義の基本的価値観を尊重するという前提で行われるべきだ」と主張。フランスのオランド大統領は、「欧州もしばらくは不安定な時を迎えるかもしれない」と指摘し、欧州諸国の結束を訴えている。

 東欧諸国ではトランプ氏の勝利を歓迎する声が支配的だ。欧州のチェコのミロシュ・ゼマン大統領(71)は9月20日付 Dnes 電子版で、「自分が米国民だったら、トランプ氏に投票する」と述べている。ハンガリーのオルバン首相は9日、「米国から偉大な知らせが届いた」とトランプ氏の勝利を称賛している。ポーランド、チェコ、スロバキア、そしてハンガリーのヴィシェグラード・グループ(V4)首脳は難民・移民政策では、メキシコからの移民殺到の阻止を主張するトランプ氏と同一路線だ。意気投合するのも当然かもしれない。

 東欧国民は一般的に親米派が多数を占める。共産党政権から解放し、民主化を支援してくれた米国への感謝があるからだ。それだけに、レーガン、ブッシュ時代(任期1989〜93年)の“強い米国”への思いが強い。だから。「強い米国を取り戻す」と主張するトランプ氏の登場に期待せざるを得ないわけだ。ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は「わが国に駐在する米軍兵士の増員約束を忘れないでほしい」と述べているほどだ。

 なお、トランプ氏は大統領選当選の翌日から米情報機関関係者から世界の情勢、治安、テロ情報などの国家機密に関するブリーフィングを受ける。トランプ氏はそこで世界の政治がどのように動いているかの生々しい情報を聞くわけだ。ロシア、中国、シリア、北朝鮮などに関する機密情報を知ることで、トランプ氏の外交政策に変化が出てくるかもしれない。
 CNNは、「トランプ氏は国家の機密情報を知ることで、選挙前に語った政策に修正を余儀なくされる可能性がある」と指摘、トランプ氏への“大統領教育”の重要性を強調している。
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