ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2016年05月

AfD副党首の問題発言とその反響

 独サッカー・ナショナルチームの一員で、バイエルン・ミュンヘンに所属するジェローム・ボアテング選手(27)について、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のアレクサンダー・ガウランド副党首は、「サッカー選手としてはいいかもしれないが、隣人にはしたくはない」と語った事が報じられると、サッカー関係者ばかりではなく、与野党の政治家から大きな批判の声が上がっている。同副党首がフランクフルター・アルゲマイネ日曜版(FAS、5月29日)とのインタビュー記事の中で語ったもの。

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▲独サッカー・ナショナルチームのメンバー、ジェローム・ボアテング選手(ウィキぺディアから)

 AfDのフラウケ・ペトリ―党首は、「ガウランド副党首はそのようには発言していないと述べていた。誤解を与えたことに対し、ボアテング選手には謝罪したい」と述べている。その一方、イェルク・モイテン共同党首は、「ガウランド氏の発言が全く誤解されて報じられただけだ。後で発言は訂正されているから、この件は解決済みだ」(独経済紙「ハンデルスブラット」30日付)と、鎮静に務めている。
 また、ラインラント・プファルツ州のAfD党首ウヴェ・ユンゲ氏はボアテング選手に対し、「移民者の社会統合の模範だ」と称賛している。同選手はガーナ人の父親とドイツ女性の間に生まれた。

 ちなみに、ガウランド副党首自身は29日、「自分はそのように言っていない。ボアテング選手を個人的に知らない。だから、同選手の名前を出して発言し、侮辱するといったことは考えられない」と弁明している。一方、FAS側は「ガウランド氏は報じられたように発言した」と再度強調している。FAS記者によれば、インタビューは25日、2人のベルリンの同僚記者と一緒に行ったという。

 AfD副党首の発言について、与野党から厳しい批判の声が出ている。ハイコ・マース法務相(社会民主党出身=SPD)はツイッターで、「無神経な発言で絶対容認されない。あのような発言する者こそ悪い隣人だ」と非難。「キリスト教民主同盟」(CDU)のユリア・クレックナー副党首は、「ガウランド氏よりボアテング選手を隣人にしたい。AfDの政治家の典型的な発言だ。侮辱し、扇動し、後で否定するやり方だ」と述べている。
 また、ガブリエルSPD党首は、「AfDはドイツ人排斥であり、外国人排斥ではない」と皮肉を込めて強調し、「同盟90・緑の党」連邦議会副議長のカトリン・ゲーリング・エッカルト女史は、「ガウランド氏とAfDはドイツをまだ理解していない」と述べ、CDUのアーミン・ラシェット副党首は、「ガウラント氏は純粋に民族主義者だ」と批判している、といった具合だ。

 独サッカー連盟(DFB)のライハルト・グリンデル会長は、「ボアテング選手とナショナルチームの人気を政治標語に悪用するとはまったく俗悪だ」と一蹴している。ちなみに、欧州選手権(ユーロ2016)前の準備試合、ドイツ対スロバキア戦が29日、アウグスブルクで行われたが、サッカーファンたちは「ジェロームは我々の隣人だ」と書いたプラカードを掲げていた。(以上、オーストリア通信参考)

 独週刊誌「シュピーゲル」電子版は30日、ボアテング選手のコメントを紹介している。
「それについては笑う以外にないね。今日でもそのような発言が飛び出すことは悲しい」

 AfDは2013年2月、ベルリンで創設された政党で約2万人の党員(2016年4月現在)を有する。2014年には欧州議会選挙で議席を獲得し、州議会レベルでも議席を確保し、ドイツ政界の台風の目となってきた。欧州統合には懐疑的で、ドイツ・ファーストを標榜し、隣国オーストリアの極右政党「自由党」と連携を深めている。

ユーロ2016のテロ対策大丈夫?

 欧州サッカーのクラブ最高峰を目指した欧州チャンピオンズ・リーグ(CL)の決勝戦は28日、イタリアのミラノでレアル・マドリードとアトレチコ・マドリードの間で行われ、レアル・マドリードが2季ぶり11度目の優勝を果たした。

 欧州のサッカーファンの目はいよいよ来月から始まる第15回欧州選手権(ユーロ2016)に注がれる。フランスで6月10日から7月10日まで欧州サッカー連盟(UEFA)主催で行われ、パリで行われるフランス対ルーマニア戦の開幕試合を皮切りに、10カ所のスタジアムで24カ国のチームが計51試合を行う。開催中に250万人以上の観客やファンがフランスに押し寄せてくると予想されている。

 ユーロ2016について、ビジネス関係者や観光業者は、「記録的な売り上げが期待できる」という声が聞かれる一方、イベントの安全な挙行について治安関係者は神経を尖らしている。

 フランスは約7万2000人の警察官と1万3000人の民間警備員を総動員してユーロ2016の安全開催を守るという。その詳細な警備体制は公表されていないが、「フランスの警察官は長期化した非常事態宣言下で疲れ切っている。その上、政府の労働改正法案に反対する労組のストが予定されているなど、警備体制は万全とはいえない」という。
 カズヌーブ仏内相は、「100%安全だとしても、不測の事件が発生する危険性は常に付きまとう」「欧州の都市で絶対安全な都市など存在しない」という。

 フランスは昨年2度、イスラム過激派のテロに遭遇したばかりだ。昨年1月7日、風刺週刊紙「シャルリー・エプト」本社が襲撃された。イスラム過激派テロリストのターゲットは「シャルリ―・エブト」紙でイスラム教創設者ムハンマドの風刺を書いたジャーナリストたちだった。同年11月13日のテロ事件は市民を狙った無差別テロだった。130人が犠牲となった。後者をソフト・ターゲットのテロ事件と呼ばれ、パリ市民は自分たちがテロに遭遇する恐れがあることを肌で感じたテロ事件だった。そしてイスラム過激派がユーロ2016で計画しているのが後者のテロだ。

 政府建物や公共施設の場合、既に常時警備されているうえ、訓練は行われているが、サッカー試合場の場合、完全にテロの危険を排除するのは難しい。スタジアムだけではない。大型の映像装置を利用して観戦するパブリックビユーイング(Public Viewing)には数万人が観戦する。私服警察官が警備し、不審な行動をする者を拘束するが、観客の数に対し、警備する私服警察官の数は限定される。治安関係者は頭が痛いわけだ。 

 開催日が近づいてきたが、テロ対策と共に懸念される問題は、祝日の削減や最低賃金の事実上の引き下げなどを含む政府の労働市場の改革案に対して労組が反対デモを実施中のことだ。開幕式の6月10日も労組関係者はデモを継続する考えという。労組関係者は「ユーロ2016を楽しみたいのは当然だが、自分たちの生活を守ることはもっと大切だ」と、強硬姿勢を崩していないという。

 開幕まで10日余りを残すだけとなった今日、フランスはホスト国の面子をかけテロ対策に全力を投入する意向だ。課題は欧州各国が保有するテロ関連情報の迅速な交換だ。ユーロ2016に参加する選手たちがテロの懸念なく全力でプレイできることを期待したい。

 なお、ブックメーカーによると、2014年W杯覇者ドイツとホスト国フランス両チームが優勝候補に挙げられているが、イギリス、イタリア、ベルギーも強い。当方はオーストリア・チーム(グループF)の健闘を密かに期待している一人だ。

ブラウナウの人々の憂鬱

 オーストリア内務省は27日、オーバーエスタライヒ州西北部イン川沿いのブラウナウ・アム・イン(Braunau am Inn)にあるアドルフ・ヒトラーの生家を家主から強制収用できる法案の審査に入ったことを明らかにした。国がヒトラーの生家を強制的に買い取ることを決定した背景には、ヒトラーの生家がネオ・ナチ関係者のメッカとなることを恐れたからだという。ヒトラーは1889年4月20日、ブラウナウ(人口1万7300人=2009年)で生まれた。

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▲ヒトラーの生家があるブラウナウ(ウィキぺディアから)

 オーストリア側は1972年以来、生家の家主との間で借用契約をしてきたが、購入は家主側の反対で実現できなかった経緯がある。オーストリア通信(APA)が27日、報じた。

 当方は1990年頃、ヒトラーの生家を訪ねたことがある。生家を訪ねたのはその時が初めてだった。ウィーンから電車で当時、5時間以上はかかったと思う。地理的に遠いこともあったが、ブラウナウを再度訪問することはなかった。

 30年以上経過したので当方の記憶は完全でないが、ブラウナウの駅に着いて直ぐに町の情報センターを訪ね、「ヒトラーの生家はどこですか」と聞いた。すると、関係者は当方の顔を見ながら、「知らない」と答えるだけで、それ以上何も説明しない。ブラウナウは小さな町だ。そこで外国人旅行者が足を踏み入れるとすればヒトラーの生家を見学することぐらいだろう。ヒトラーの生家を訪ねたのは当方が初めてではないはずだ。しかし、情報センターの関係者は「知らない」という。「それ以上、聞くな」といった響きを感じたので、歩き出して路上の人に聞いた。数回、尋ねた後、ヒトラーの生家にようやくたどり着いた。

 オーストリア国民で独裁者ヒトラーを誇らしく感じる人が少ないのは分かるが、その生家の住所すら外部の人間に隠そうとするブラウナウの人々に驚かされた。民族の誇りだったら、看板やパネルでその生家の場所を記すだろう。例えば、モーツアルトがオペラ「フィガロの結婚」を作曲した場所を示すパネルはシュテファン大聖堂近くにかかっている。もちろん、モーツアルトとヒトラーを同列に扱うべきではないが……。

 ヒトラーの生家は当時、福祉更生施設だった。施設の人々が作業していたのを思い出す。当方は外から写真を撮ったが、施設内は撮影できなかった記憶がある。欧州全土を戦火に巻き込んだ独裁者の生家が福祉関連の更生施設となっているのに驚いた。もちろん、ヒトラーの生家は歴史博物館ではないので、ヒトラー関連資料などはまったくなかった。

 当方がオーストリアに住みだした当初、国民はヒトラーに対して極度に神経質な時だった。「オーストリア人はベートーベンをオーストリア人だといい、ヒトラーをドイツ人と主張している」と皮肉っていた知人もいた。「モスクワ宣言」で“オーストリアはヒトラーの犠牲国だった”となって以来、国民はナチス・ドイツの犠牲国の立場を死守してきた。その歴史観を根底からひっくり返したのがあのワルトハイム大統領(1986〜92年)のナチス・ドイツの戦争犯罪容疑問題だ。世界ユダヤ人協会が世界のメディアを動員してワルトハイム氏を糾弾したことはまだ記憶に新しい。その後、フランツ・フラニツキー首相(任期1986〜1997年)が「わが国もヒトラーの戦争犯罪に責任がある」と表明し、犠牲国から加害国であったことを初めて認めている。

 ブラウナウはイン川沿いの町だが、川を渡るとドイツのバイエルン州に入る。もし、ヒトラーがイン川を渡った数百メートル離れたバイエルン州で生まれていたら、ヒトラーは生粋のドイツ人となり、ブラウナウの人々もヒトラーに対しまったく別の思いを抱くことが出来たかもしれない。当方は当時、ブラウナウの人々の憂鬱さが少し理解できたように感じた。

 今年は戦後71年目だ。当方が今、ブラウナウを訪問し、ヒトラーの生家のアドレスを聞くならば、彼らは何と答えるだろうか。

「平和の祈り」は魔法の杖でないが……

 オバマ大統領は27日午後(日本時間)、米大統領として初めて被爆地広島の平和記念公園を訪問し、安倍晋三首相と共に原爆資料館を見学した後、原爆死没者慰霊碑に献花した。

 第2次世界大戦時に大量破壊兵器の原爆を世界で初めて投じた国の最高指導者として被爆地広島を訪ねたという事実は大きな意味をもつ。オバマ大統領は2009年4月、チェコの首都プラハで核フリーの世界実現を訴え、同年10月、ノーベル平和賞を受賞している。

 オバマ氏は被爆者の慰霊碑の前で祈った。被爆者への慰霊であると共に、「第2次世界大戦中に命を落としたすべての人々を忘れない」と追悼する瞬間だったという。日本人の一人として、広島訪問を決定したオバマ大統領に改めて感謝したい。

 平和は祈りやアピールだけでは実現できないことは知っているが、「平和の祈り」がなくして、やはり平和は実現できないこともまた事実だ。平和への痛切な願いがあってこそ、その夢は近づいてくる。願いのないところに世界の平和はあり得ない。

 オバマ大統領の広島訪問2日前、フランシスコ法王は25日、一般謁見の場で、「祈りは魔法の杖ではない。神は子供たちの祈りを、彼らが願う時、願うやり方で常に応じるということはない。祈りは神への信仰が難しい時、助けとなる」(バチカン放送独語電子版)と語った。

 同時に、法王は祈りが即聞かれない例としてイエスが十字架刑に処される前夜祈った“ゲッセマネの祈り”を挙げている。イエスは、「わが父よ、もしできることでしたらどうか、この杯(十字架の道)をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、私の思いのままにではなく、みこころのままになさって下さい」(「マタイによる福音書」26章)と祈っている。

 しかし、イエスの祈りが無駄でなかったことは、歴史が物語っている。33歳という短い生涯、実質3年間の歩みが世界の歴史に大きな影響力を与えてきたことは間違いないからだ。イエスの祈りは聞かれたわけだ。

 私たちは、クリックすれば、探している情報を即得られるインターネット時代に生きているが、フランシスコ法王は「祈りは魔法の杖ではない」として、祈りが実現するまで一定の時間を経過せざるを得ないケースがあると示唆している。だから、私たちは平和のために倦むことなく祈り続けなければならないわけだ。その意味で、オバマ大統領の広島での慰霊は「平和の祈り」の継承だったといえる。
 なお、任期末のオバマ大統領に願うテーマではないかもしれないが、米国が包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准することを願う。

 アッシジの聖フランチェスコの「平和の祈り」の一部を紹介する。当方がまだ日本に住んでいた20代の時、よく歌った歌詞だ。
 
 主よ、私を平和の器とならせてください
 憎しみがあるところに愛を
 争いがあるところに許しを
 分裂があるところに一致を
 疑いのあるところに信仰を
 誤りがあるところに真理を
 絶望があるところに希望を
 闇あるところに光を
 悲しみのあるところに喜びを

 ああ、主よ、慰められるよりも慰める者としてください
 理解されるよりも理解する者に
 愛されるよりも愛する者に

金正恩氏の公約と「現実」との深い溝

 36年ぶりに開催された第7回北朝鮮労働党大会は、新設された党最高位の党委員長に金正恩氏が就任したことを報じ、幕を閉じた。
 金正恩党委員長は開幕の演説で「核開発」と「国民生活の向上」を主要課題とした「並進政策」を掲げ、2016年から2020年の「国家経済発展5カ年戦略」を発表した。

 30歳代の若き独裁者は野心的な課題を掲げたが、当たり前のことだが指導者の真価はそれらの公約が実行できるかどうかにかかっている。核開発は別の機会に論じるとして、ここでは国民生活、国民経済の改善について少し考えてみた。

 基本的な疑問は、独裁者は国民の生活向上に本当に関心があるか、という点だ。金正恩氏は2011年12月父親の金正日総書記の死後、政権を継承して以来、「人民」の生活向上を機会ある度に強調してきた。
 具体的には、金正恩党委員長は政権就任直後、綾羅人民遊園地を完成し、平壌中央動物園の改修、そして世界的なスキー場建設など、国家プロジェクトと遊戯用インフラの整理に腐心してきた。空の玄関、平壌国際空港が近代的に改築オープンしたばかりだ。全ては「人民生活の向上」のため、という名目付のプロジェクトだった。


 2番目の疑問は、「空腹に悩まされる一般市民が遊園地やスキー場に足を運ぶか」であり、「海外旅行の自由もない人民に、国際空港の近代化はどんな意味があるか」だ。

 だから、金正恩氏の「国民の生活向上」は、「大多数の生活苦にあえぐ人民のためというより、指導部エリート層の生活向上のためのインフラ整備といった傾向が強い」という意地悪な批判も飛び出してくるわけだ(「金正恩の『ゲティスバーグの演説』」2015年10月14日参考)。

 ところで、オーストリア第2の都市グラーツ出身の映画監督 Pirmin Juffinger 氏は先日、4人の国際スノーボード選手らと共に北朝鮮を訪問し、金正恩氏が世界に誇るスキー場、馬息嶺スキー場を訪ねて撮影した。その後日談がグラーツの日刊紙「クライネ・ツァイトゥング」( Kleine Zeitung )に掲載された。記事のタイトルは「グラーツから北の幽霊スキー場へ」だ。金正恩党委員長が国民生活の向上のために党と軍に発破をかけ取り組んできた国家プロジェクトの“現実”を知るうえで参考となる。

 馬息嶺(Masikryong)スキーリゾートは平壌から東へ175km、元山市に近いところにある。2014年1月にオープンしたばかりだ。11本のコースが造成され、ゲレンデの下には、プール、カラオケバーなどが完備された高級ホテルがある。
 「5000人の観光客で一杯と言われたホテルは幽霊が出てきてもおかしくないほど、閑古鳥が鳴いていた」という。それだけではない。「滑降コースでスキーを滑っている人を見なかった」というのだ。また、一行が乗ったリフトは「今にも壊れそうな不気味な音を出していた。正直いって怖かった」という。帰路の高速道路には雪が積もっていたが、数百人の労働者が原始的なスコップで除雪しているのが目撃されたという。

 ちなみに、オーストリア国営放送は先日、北朝鮮現地取材のルポを報道したが、取材班が平壌のアパートメントを訪ねるシーンが放映された。北側の随伴者がその家の子供にバナナをあげた。北の子供はバナナも自由に食べられることを見せたかったのだろうが、バナナをもらった子供はその果物をどのように食べていいか分からず戸惑った。随伴者は慌てて、「早くバナナの皮をむいて子供に食べさせて」と、促す場面が映っていた。

 金正恩氏のやる気は評価しなければならないが、国民が今、何を求めているか、彼らの日常生活はどうか、などの基本的な情報が同氏には致命的に欠けている。「どこにあっても独裁者はいつもそうだよ」というならば、それまでだが……。心が痛くなるほど、金正恩氏の公約と現実の間には深い溝が横たわっているのだ。

大統領選の本当の敗北者は誰か

 オーストリア大統領選挙は3万1026票の僅差で「緑の党」前党首のアレキサンダー・バン・デ・ベレン氏(72)が極右政党「自由党」候補者ノルベルト・ホーファー氏(45)を破り、当選したことは報告済みだ。同大統領選は文字通り、国民を完全に2分した。メディアは「極右」対リベラル派、右翼対左翼といった構図から報じたほどだ。

 大統領選の両候補者は政治的信条では確かに右と左だ。ホーファー氏は「バン・デ・ベレン氏とは政治的立場が好対照だ。それだけに、戦いやすい」と述べていた。

 決選投票では、与党第1党の「社会民主党」、「緑の党」、「ネオス」などの政党がいち早く反ホーファーを掲げ、バン・デ・ベレン氏を支援した。政党の中で唯一、支持候補者を明確に表明しなかったのはキリスト教系保守政党「国民党」だけだ。しかし、同党の中にも元党首のエルハルト・ブセック氏や欧州連合(EU)の元農業担当委員フィッシャー氏は「ホーファー氏を大統領にしてはならない」として、バン・デ・ベレン氏支持を個人的に表明するなど、国民党内で意見が分かれていることが明らかになった。

 国民党はドイツの「キリスト教民主同盟」(CDU)の姉妹政党だ。CDUがメルケル首相の下で依然、第1党の力を維持しているが、国民党は社民党の連立パートナー政党に過ぎず、その勢力は選挙戦ごとに得票率を下げてきた。国民党は大統領選では保守派論客のアンドレアス・コール氏(元国民議会議長)を擁立したが、6候補者中、5番目の結果(得票率約11%)で惨敗してしまった。

 保守政党「国民党」の低迷は深刻だ。「国民党は本来の世界観を失い、リベラルな社会に迎合していった結果、その求心力を失っていった」と受け取られている。例えば、家族観でも従来の男と女の家庭観から同性婚容認の声が党内で支配的となってきている。ちなみに、同性婚問題ではっきりと反対を主張しているのは極右政党「自由党」だけだ。バン・デ・ベレン氏が所属している「緑の党」は同性婚を積極的に支持する立場だ。だから、伝統的保守派の有権者は選挙では極右政党に票を投じる以外に他の選択肢がなくなってきたのだ。

 国民党の低迷化は同国の主要宗教、ローマ・カトリック教会の現状とも密接な関連性がある。オーストリアは国民の約63%がカトリック教徒の国だったが、ここ数年、聖職者の性犯罪の多発などで影響力を失い、教勢が急速に失われている。

 日本の読者には理解できないかもしれないが、候補者の宗教問題は有権者に依然、大きな影響力を持っている。だから、選挙戦のTV討論では必ず、司会者から宗教関連の質問が飛び出す。

 新大統領に選出されたバン・デ・ベレン氏は無宗教だ。TV討論で司会者から「あなたの信仰は」と聞かれる度、「信仰はない」と短く答えてきた。一方、ホーファー氏は「当然、信仰を持っている。カトリック教会信者だったが、今はプロテスタント教会の信者だ」と答えた。ちなみに、7月初めに2期12年間の任期を満了して退任するフィッシャー現大統領は不可知論者を自任している左翼知識人の代表だ。

 国営放送の討論では司会者が「教室に十字架を掛けるべきか」という質問を出した。ホーファー氏は「当然だ」と答え、バン・デ・ベレン氏は「教室内の十字架問題をテーマ化することは避けたい。十字架が掛かっているのならそのままにしておけばいい」と消極的容認論を展開させている。キリスト教徒の有権者の支持を失いたくないからだ(同国の学校法では、生徒の過半数以上がキリスト教徒の場合は十字架を掛けることになっている)。

 バチカン放送独語電子版は23日、「大統領選はカトリック信者にとってカタストロフィーだった」という「オーストリア・カトリック・アクション」のGerda Schaffelhofer会長のコメントを掲載していた。同会長は、「選挙戦は最初から大統領に相応しい候補者を探すというより、現連立政権への抗議だった」と述べている。この指摘は多分、正論だろう。
 
 興味深い点は、オーストリアのカトリック教会でもホーファー支持派とバン・デ・ベレン氏派に分裂していたことだ。例えば、ザルツブルク大司教区のラウン司教補佐は、「バン・デ・ベレン氏を支援する人々は過激な左翼の人間だ。教会としてはホーファー氏を支持すべきだ」と主張。一方、「カトリック教会女性同盟」はバン・デ・ベレン氏を支持表明する一方、ザルツブルク大学神学部教授陣は「ラウン司教補佐の発言は他の信条を持つ人々との対話促進を明記した第2バチカン公会議の合意内容に反する」と批判している、といった具合だ。  

 ラウン司教補佐の発言が報じられると、同国最高指導者シェーンブルン枢機卿が、「教会はどの候補者を支持すると表明する立場ではない」と述べ、ラウン司教補佐の発言を教会関係者としては相応しくないという立場を示唆している。

 まとめる。大統領の決選投票は、国民党とローマ・カトリック教会が自身の信条を代表する候補者を失い、その求心力を急速に失っていったことを端的に示す機会となった。その意味で、両者は大統領選の本当の敗北者だった。

“ホーファー旋風”恐れる欧州政界

 オーストリアで22日、大統領選挙の決選投票(有権者数約638万人)が実施され、野党第2党「緑の党」前党首のアレキサンダー・バン・デ・ベレン氏(72)が23日、郵送票での差で、得票率50・35%を獲得、極右政党「自由党」のノルベルト・ホーファー氏(45)を僅差(3万1026票)で逆転し、当選した。

 「欧州初の極右政党出身大統領の誕生」は回避されたが、極右政党の候補者が得票率49・65%を確保したという事実に欧州政界はショックを受けている。1カ月後の英国の欧州連合(EU)の離脱を問う国民投票の行方や、2017年に実施されるフランス大統領選にも少なからずの影響を与えるのは必至と受け取られているからだ。

 オーストリアの大統領職は名誉職的ポストであり、政治実権は少ない。その大統領選にメディアはこれまで余り関心を払わなかったが、今回は200人余りの外国人ジャーナリストがウィーン入りし、決選投票の行方を取材した。オーストリア大統領選の結果が欧州全土に影響を与えると受け取られたからだ。米紙ニューヨーク・タイムズは「ホーファー氏の大統領選出は欧米諸国への警告を意味する」と報じていたほどだ。

 4週間余りの決選投票選挙戦では、ホーファー氏の当選を阻むために、社民党、「緑の党」、「ネオス」など他政党が早々とバン・デ・ベレン氏支持を表明し、辞任したフィアマン首相の後任、ケルン新首相(社民党出身)も就任直後、バン・デ・ベレン氏支持を明らかにするなど、自由党を除く与・野党が結束してホーファー落としに腐心した。

 同国で2000年2月、自由党が参加したシュッセル連立政権が発足した際、EUがオーストリアとの外交関係を制限するなど制裁を行使したことがある。当時と今回では欧州の政治情勢は異なるが、極右政党の大統領誕生はその悪夢を再現させる危険性がある、といった不安が国民の中にはある。

 自由党はブリュッセル主導のEU政策には批判的で、EU・米国間の包括的貿易投資協定(TTIP)に反対し、TTIPを問う国民投票の実施を要求する一方、難民問題では、“オーストリア・ファースト”を前面に出し、外国人排斥を選挙戦では訴えて、躍進してきた。欧州レベルでは、フランスの ジャン= マリー・ル・ペン党首が率いる「国民戦線」、オランダのヘルト・ウィルダース党首の「自由党」など欧州の極右政党との連携を深めている。

 その一方、自由党はナチス・ヒトラーの戦争犯罪を批判し、明確な距離を置いてきた。シュトラーヒェ党首は先日、イスラエルを訪問し、イスラエルとの関係を深め、「ネオナチ党」のイメージ払拭に努力、イェルク・ハイダー党首時代(1986〜2005年)の路線から決別し、政権担当能力を有する新しい右派路線を模索し出している。ただし、党員の中にはネオ・ナチを彷彿させるメンバーも加わっていることも事実だ。ホーファ―氏自身はドイツ民族への憧憬心が強い民族主義的学生組合(Burschenschaft)の名誉メンバーだ。


 独週刊誌シュピーゲル(電子版)は24日、「ドイツでホーファー旋風に不安」というタイトルの記事の中で。「200万人以上の有権者が大統領選で極右政党の候補者に票を投じた事実は看過できない」と指摘、「ホーファー氏の成果がドイツにも影響を与えるか」と自問し、「十分考えられる」と答えている。具体的には、ドイツの極右派勢力「ドイツの為の選択肢」(AfD)への影響だ。2013年2月、ベルリンで設立されたAfDは難民受入れに批判的であり、イスラム・フォビアが強い。

 ガウク独連邦大統領は23日、「ドイツ社会の過激化」に警告を発する一方、社会民主党(SPD)のオッパーマン議員は「オーストリアで起きたことをドイツで再現させてはならない」と強調している。

 ホーファー氏は敗戦後、「大統領にはなれなかったが、次期総選挙でシュトラーヒェ党首を連邦首相にさせる」と決意を新たにしている。欧州政界にとって、吹き荒れる“ホーファー旋風”にどのように対応するかが大きな政治課題だ。

消去法で“極右”大統領を回避

 オーストリアで22日、大統領選挙の決選投票(有権者数約638万人)が実施され、野党第2党の「緑の党」前党首のアレキサンダー・バン・デ・ベレン氏(72)が23日の郵送投票分の集計後、極右政党「自由党」が擁立したノルベルト・ホーファー氏(45)を逆転し、得票率50・35%を獲得し、当選した。新大統領の就任式は7月8日、任期は6年間。

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▲オーストリア決選投票は国民を完全に2分した(2016年5月23日、国営放送から撮影)

 ハインツ・フィッシャー現大統領(社会民主党出身)が2期12年間を満了し、7月退任するのを受けて実施された大統領選の第1回投票(4月24日)では、「社会民主党」や「国民党」の2大連立与党が擁立した候補者が惨敗。決選投票は得票率約35%を獲得してトップとなったホーファー氏と、21%で2位となったバン・デ・ベレン氏の野党出身の2人の政治家の戦いとなった。

 決選投票の集計は22日中に勝者が判明せず(50% 50%)、有権者の14%に相当する郵送分約88万票の行方で決せられることになった。最終投票率は約72・7%だった。

 決選投票の選挙戦では、ホーファー氏の当選を阻むために、社民党、「緑の党」、「ネオス」など他の政党が早々とバン・デ・ベレン氏支持を表明し、辞任したフィアマン首相の後任、ケルン新首相(社民党出身)も就任直後、バン・デ・ベレン氏支持を明らかにするなど、反ホーファー氏陣営が構築されていった。

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 有権者の1人は、「彼なら当選しても何もしないだろうから、彼に投票したよ」と少々皮肉に聞こえるコメントをしていた。彼とはバン・デ・ベレン氏(72)のことだ。一方、「ホーファー氏が当選すれば、何をするか予想できない不安がある」というのだ。

 この有権者は大統領職そのものに余り期待していないことが推測できる。実際、オーストリアの大統領職はあくまで名誉職であり、政治的実権は少ない。政権や閣僚の任命が最大の仕事であり、あとは外国を訪問し、ゲストを迎え、オーストリアのイメージを高めることぐらいだ。

 民主主義の要は国民に選挙権が付与されていることだ。国民は自分が信じる人に投票できる。複数の政党、候補者から可能な限り、最善の候補者を選び出し、自身の票を投じる。しかし、オーストリア大統領選では少々違っていた。換言すれば、ベストを選ぶのではなく、最悪を回避する消却法で投票する有権者が多かったことだ。すなわち、ホーファー氏を大統領に当選させないため対抗候補者のバン・デ・ベレン氏に票を入れた有権者が多かったわけだ。

 ホーファー氏は極右政党のナンバー2であり、自由党は外国人排斥政治を標榜し、欧州連合(EU)にも非常に懐疑的な政党である。フランスの ジャン= マリー・ル・ペン党首が率いる「国民戦線」、オランダのヘルト・ウィルダース党首の「自由党」などと同じだというわけだ。ホーファー氏の大統領就任はオーストリアを欧州社会から孤立化させる、といった反ホーファー陣営のアピールが成功した。

 ちなみに、国営放送(ORF)が依頼して実施された投票動機に関する調査で、バン・デ・ベレン氏に投票した有権者の約48%は、「ホーファー氏の大統領勝利を阻止したいから」と答えている。

 バン・デ・べレン氏しか選択肢がなかったことはオーストリア有権者にとって不幸だった。「緑の党」前党首が大統領職に相応しいと考えた有権者は少なかった。政治信条も過去、共産党、社会党、そして「緑の党」と何度も転身してきたバン・デ・ベレン氏を理想的大統領と考えた人は少なく、白紙のまま投票する有権者も少なくなかった。

 一方、ホーファー氏は勝利できなかったが、自由党の大統領候補者が約50%の得票率を獲得したという事実は無視できない。極右政党の躍進は、難民対策、失業者の増加など社会情勢が背景にあることは確かだが、最大の主因は欧州の政界を主導してきた2大政党、キリスト教民主系政党(独、キリスト教民主同盟、オーストリア国民党など)と社会民主党系政党の政治に対する国民の批判票だ。
 キリスト教価値観をなし崩しに捨て、リベラルなトレンドに迎合する国民党、労働者の代表といいながら、社民党幹部たちが独裁国家の大統領顧問に就任し、巨額の顧問料を得ている実態、それらの現状への批判が極右政党の台頭を許してきた。これこそ大統領選で有権者の選択肢をホーファー氏かバン・デ・ベレン氏かに縮小させ、有権者に消却法的な選択を強いた最大の原因だ。

なぜ私たちは明日を思い煩うか

 イエスは、明日を思い煩うな、明日は明日自身が思い煩うからだ、という。空の鳥すら神は養っていて下さるのだ。そして「人間は空の鳥よりはるかにすぐれた者ではないか」と、私たちに問いかける(「マタイによる福音書」6章)。

 実際の私たちは明日だけではなく、次の瞬間ですら自信がなく、思い煩う。空の鳥よりはるかに進化した存在だと思ってきたが、実際は空の鳥ほど明日への確信がないのはどうしてだろうか。

 釈尊は「一切が苦だ」(苦諦)という。私たちが思い煩うのはまず衣食住だ。そして病だ。煩いを少なくするために、多くの人々は朝早くから仕事に出かけ、日々の糧を得る。健康を維持するため走り出し、屈伸運動に励む。

 時間の経過に伴い人間の煩いが少なくなる保証はない。働いていても近い将来、衣食住の保証を失うばかりか、老年を迎えたとしても、積み重ねてきた年金がいつまで支給されるかは分からなくなってきた。老年の貧困化が予測されている。それに拍車をかけるのは少子化と核家族化で、寂しい老人が増えた。

 確かに、外的な生活環境は便利になってきている。医療も急速に進展して再生医学が間もなく臨床の場を独占する時代が到来する。一方、医療費の高額化が進み、健康保険は老人の長寿を願わなくなってきた。

 昔は神が依然、その光を放っていたから、煩いは神に委ねて、煩いを忘れることはできた。21世紀に入り、既成の世界観、人生観が揺れだし、新しい煩いも生まれてきた。神の存在は久しく抹殺され、価値は相対化し、確かなものは少なくなってきたと感じてきた。

 私たちが生きている21世紀はイエス時代の空の鳥ですら想像できないほど煩いが多くなってきたのだろうか。「明日を思い煩うな、明日は明日自身が煩う」と諭したイエスは、弟子たちに虚言を発したのだろうか。

 視点を変えれば、上記の状況もそのカラーは少し変わってくる。現代人に修道者、修道女を目指せ、と勧める気はないが、物に執着する心を少なくすれば、本来、全ては整えられていることに気が付く。空気も水もあるし、愛も努力すれば見つかる。
 それ以外、何が絶対に必要だろうか。手に入れればいいものは多く、買えば快適なものも少なくない。しかし、絶対に必要か、と問われれば、そうだとは言えなくなる。ひょっとしたら、私たちが思い煩っている内容はほぼ全てがそのようなもので占められているのではないか。

 人間は関係存在だから、家庭を含む人間関係を大切にしなければならない。自身だけの喜びを求めすぎると関係がうまくいかなくなる。逆に、人間関係がうまくいけば、多くの問題は解決できる。

 イエスは2000年前、正しいことを言っていたことに気が付く。「敵を愛し、隣人を愛せよ」は関係存在としての人間のあり方を端的に指摘した内容だ。イエスは包括的な経済論を語っていないが、その教えの神髄は非常に包括的だ。難しい経済理論を振りかざさず、シンプルに語っている。彼の教えは賞味期限がなく、いつまでも新鮮なインパクトを与えるのはそれが正しいからだろう。

 思い煩っている人は空の鳥の生き様を観察するのもいいだろう。彼らは生まれ、死ぬまで懸命に生きている。彼らが有している本能は神の愛の間接的な表現とすれば、私たちにはそれ以上の愛が与えられているはずだ。それは生命保険より確かであり、年金より確実なものではないか。自信を取り戻し、思い煩いを少なくして生きていきたいものだ。

北、党大会公報を外国代表部に郵送

 36年ぶりに開催された第7回北朝鮮労働党大会は「核保有国」を改めて強調する一方、国民経済の発展を掲げた「核開発」と「経済発展」の「並進政策」を世界に向かって宣言し、党大会最終日に金正恩第1書記を党最高位として新たに設置された党委員長に奉って幕を閉じたばかりだ。

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▲北が外国代表部に郵送した第7回党大会の「公報」(2016年5月21日撮影)

 ところで、海外の北朝鮮大使館が党大会の決定事項をまとめた公報(Bulletin)を現地の外国代表部(大使館)に郵送していたことが明らかになった。北大使館が他国の大使館宛てに公報を郵送するということはこれまでなかったことだ。それだけに、北側の意図についてさまざまな憶測が流れている。

 北大使館から公報(2頁)が届いた外国代表部は何事かと驚いたといわれる。当方が住むオーストリアの日本大使館にも公報が送られたはずだ。金正恩党委員長は、海外の自国大使館を通じて外国代表部に自分が党委員長に就任し、「金正恩党委員長時代」に入ったことを宣布する狙いがあったはずだ。

 具体的には、朝鮮中央通信(KCNA)の10日平壌発の記事だ。KCNAの記事は日本でも既に報じられているが、ここでその概要を簡単に紹介する。

 記事のタイトルは「Kim Jong Un Elected Chairman of  WPK」(金正恩氏を朝鮮労働党委員長に)だ。「第7回朝鮮労働党大会は尊敬すべき指導者金正恩氏をわが党の最高位に選んだ決定を公布した」という書き出しで始まる。

 金正恩氏はわが党と国民を主体思想の革命的道に導く最高指導者であり、故金日成主席、金正日総書記の功績を永遠化する新たな章を開き、偉大な指導者の革命的な歴史を継承した指導者という。
 興味深い点は、金正恩氏が継承した革命的な道を「金日成主義―金正日主義」(KimilsnugismーKimjongilism)と表現していることだ。そして「彼の指導の下で党の結束が強化された。全ては金正恩氏の偉大な指導の尊い成果だ」というわけだ。

 そして公報の最後では
「Absolute is the prestige of Kim Jong Un boundlessly respected and praised by our people and progressive mankind」と、「法王の不可謬説」を主張してきたローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁も思わず赤面するのではないかと思うほどの美辞麗句で金正恩党委員長を称賛し、「偉大な白頭山民族の神々しい未来は金正恩党委員長に忠誠を尽くすことで実現される」というわけだ。
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