ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2016年04月

北の核実験は「地震ドミノ」を誘発?

 米韓両国政府関係者によると、北朝鮮は5回目の核実験を実施できる準備を完了済みという。金正恩氏は5月初めに36年ぶりに開催予定の第7回労働党党大会を前に実績作りに腐心するだろうから、核実験を実施する可能性は高いと予想されている。

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▲北の過去4回の核実験ロケーション図(CTBTOのHPから)

 しかし、金正恩氏は今回は核実験を控えるべきだ。もちろん、核実験が国連安保理決議に違反するからだが、それ以上に核実験がさらなる惨事を誘発する危険性が排除できなくなってきたからだ。ズバリ、白頭山の噴火だ。

 熊本県で14日から連日、地震が起きている。マグニチュード7以上の地震が既に2回だ。同時に、同じ環太平洋造山帯のエクアドルでも16日、1979年以来最大となるマグニチュード7.8の地震で多数の死傷者が出ている。環太平洋周辺地殻が大きく動いている時、北朝鮮が地下核実験を実施した場合、白頭山の噴火を誘発するのではないか、といった一抹の不安があるのだ。

 北の核実験の場合、2006年10月9日の1回目の爆発規模は1キロトン以下、マグニチュード4・1(以下、M)、2回目(09年3月25日)の爆発規模は3〜4キロトン、M4・52、3回目(13年2月12日)は爆発規模6〜7キロトン、M4・9だった。今年1月6日の4回目は核実験周辺ではマグネチュード4・8の地震波を観測している。

 中韓地震専門家は中国と北朝鮮の国境に位置する白頭山(標高約2744m)が近い将来噴火する可能性があると久しく予測してきた。5年前の韓国メディアによれば、韓国気象庁は白頭山噴火の“Xデー”対策を既にまとめたという。


  白頭山が噴火した場合、北朝鮮が大被害を受けるだけではなく、韓国、日本、中国など周辺国家にも火山灰が降り、同地域の飛行が不可能となる。ちなみに、北朝鮮では故金正日労働党総書記が白頭山の地で生まれたということから、白頭山を聖地としている(金総書記は実際は白頭山の地で生まれていない)。
 
 問題は、白頭山と核実験予定地の咸鏡北道豊渓里周辺の地盤の関係だ。両者は直線で70キロぐらいしか離れていない。地震専門家に聞かないと詳細なことは分らないが、核実験が白頭山の地盤に何らかの影響を及ぼし、大噴火を誘発するのではないか、という懸念は払拭できないのだ。

 韓国日刊紙「中央日報(日本語版)は「熊本地震、他人事ではない」というタイトルの18日付の社説の中で、「専門家は『超大型地震ドミノ』の前兆ではないかと警戒している。日本、東南アジア、太平洋群島、アラスカ、北・南米海岸とつながる環太平洋造山帯のあちこちで同時多発的な強震が発生しているからだ。14日夜の熊本地震を前後にフィリピンやバヌアツなど広範囲な地域で連鎖地震が発生している」と報じている。

 金正恩氏は、朝鮮半島ばかりかアジア全域に大きな惨事をもたらす危険性のある核実験を行うべきではない。

シャーロックには友達がいない

 名探偵シャーロク・ホームズには友達がない。シャーロク自身も、「自分には友達がいない」と何の心の痛みを感じることなくいう。シャーロクの兄マイクロフトも相棒の捜査官も同じように、「彼には友達と呼べる人間はいない」と認める。

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▲友達がいない名探偵シャーロク・ホームズ(米CBS放送の「エレメンタリ―」から)

 シャーロックは言う。「誤解しないでくれ。自分は優しい人間ではない。冷徹な人間だ。私が優しい人間に変るなんて思わないでくれたまえ」というと、ワトソンは素早く、「あなたは既に変わってきた」と優しく指摘する。シャーロックは少々驚いたような表情をワトソンに向けながら、「君との関係ではそのようになるように努力しているだけだ」と弁明しながら、ワトソンの指摘に少し驚く。

 米CBS放送のシャーロック・ホームズ(ジョニー・リー・ミラー主演)の「エレメンタリ―」(Elementary)の中で最も好きなシーンの一つだ。友達がいないことがどれだけ辛いかを考えると、友達が独りもいないと自他とともに認める人間の存在に新鮮な驚きを感じるからだ。

 ファイスブックに数百人の友達がいると自慢する若者が増えてきたが、友達が誰もいないと公言できるシャーロックの強靭な精神力に脱帽せざるを得ないのだ。

 シャーロック・ホームズの周囲には実際、友達と呼べるような人間はいる。ニューヨーク警察の捜査官、身近には元外科医のワトソンだ。しかし、シャーロックは、「彼らは友達ではない。ワトソンは僕のパートナーだ。決して友達ではない」と説明する。ワトソンはシャーロックにとって事件の解決で助け合う相棒であって、友達ではないという。
 シャーロック自身は友達がどのような人間かを説明していない。ワトソンが友達ではなく、パートナーに過ぎないとすれば、どのような人間がシャーロックの友達と呼べるのだろうか。

 誰にも友達が必要だ。独りで歩む人生は淋しい。苦難を理解してくれる真の友達がいれば、どれだけ救いとなるだろうか。その一方、「困った時の友こそ真の友」(friend in need is a friend indeed)という諺があるが、真の友達を持つことは現代社会では贅沢な願望となってきた感がする。その場、その場の駆け引きと、利益のやり取りで理解しあっても、人間として相互理解し合う友達を見つけることは難しくなった。

 「自分には友達がいない」というシャーロックの台詞は、飛び抜けた知性と強靭な意思力を持つシャーロックだから言えるのかもしれないが、そのシャーロックの横顔に時として寂しさがにじみ出てくるのはどうしてだろうか。

大統領選より「その後」の政情に関心

 アルプスの小国オーストリアで24日、大統領選挙が実施される。社会民主党出身のハインツ・フィッシャー現大統領は2期12年を終え7月、退陣する。6人の候補者が大統領府のホーフブルク宮殿入りを目指して選挙戦を展開中だ。オーストリア大統領選にどれだけの意義と価値があるかは別問題として、ウィーンに居住する外国人ジャーナリストの一人としてその見通しをまとめた。

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▲大統領選を報道する日刊紙エステライヒ4月14日付

 ズバリ、誰が大統領(任期6年)になってもオーストリアはいうまでもなく、欧州の政治に影響はない。名誉職であり、その政治権限は限られているからだ。それでも紹介しようと考えたのは、大統領選挙後のファイマン連立政権に影響が出てくると予測されるからだ。すなわち、大統領選そのものではなく、「その後」の政情に関心があるからだ。

 まず、簡単に6人の候補者を紹介する。与党「社会民主党」からはルドルフ・フンドストルファー前社会相(64)が出馬し、政権パートナーの「国民党」はアンドレアス・コール元議会議長(74)を擁立。第1回投票で過半数を獲得できる候補者が出ないだろうから、候補者は4週間後に実施される決選投票(5月22日実施)に進出できる上位2名入りを目指すが、与党擁立の両者とも決選投票へ進出は難しいと予測されているのだ。与党候補者が第1回選挙で敗北を喫することは過去の大統領選ではなかった。

 世論調査で上位に予測されている候補者は、野党第一党の極右政党「自由党」のノルベルト・ホーファー第3国会議長(45)、それに野党「緑の党」のアレキサンダー・バン・デ・ベレン元党首(72)、イルムガルド・グリス元最高裁判所長官(69)の3人だ。難民受入れ問題で強硬姿勢を主張してきた「自由党」擁立のホーファー議長の票が伸び、トップを走っていたバン・デ・ベレン氏と肩を並べている。6番目の候補者はリハルド・ルーグナー氏(83)だ。実業界出身で社交界の変わり者で有名だが、泡沫候補者に過ぎない。

 そこで決選投票に与党候補者が進出できない場合を考えてみたい。ひょっとしたら、社民党と国民党から構成されるファイマン連立政権が大揺れになるかもしれないのだ。

 大統領選の敗北を受け、その責任が党内で追及されるだろう。特に、国民党のラインホルド・ミッターレーナー党首(副首相)は責任を取って党首を辞任する可能性が高い。国民党は本来、ニーダーエストライヒ州のプレル知事を擁立する予定だったが、同州知事が土壇場で出馬を断念。その為、コール氏を急遽擁立した経緯がある。
 国民党指導部と州国民党内で権力争いが展開されていると噂されている。そこに、ヨハナ・ミクルライトナー内相が今月10日、突然辞任を表明し、出身地のニ―ダーエステライヒ州に戻るということになったのだ。内相の辞任表明をメディアから聞いたというミッターレーナー党首はプレル州知事に対して、かなり不満が溜まっているはずだ。
 そこで大統領選後、国民党党首(副首相)は大統領選の敗北の引責で辞任し、党首にラインホルト・ロパトカ院内総務を抜擢し、国民的人気の高いセバスチャン・クルツ外相を副首相にする人事が国民党内で呟かれているという。

 ヴェルナー・ファイマン首相(社民党党首)も無傷では済まないだろう。首相の難民政策の揺れを批判する声が社民党左派から聞かれる。党首の辞任要求が出てくるかもしれない。
 ただし、、連立政権の解消、早期総選挙実施は目下、考えられない。現時点で総選挙をすれば、難民問題で支持を拡大する野党「自由党」に政権を奪われる事態が予想されるからだ。

 大統領選の予測というより、その後の政情について多く言及したが、先述したように、大統領選の選挙結果より「その後」の政情に関心が集まっているのだ。

「風刺」はどこまで許されるか

 風刺はどこまで許されるか……、このテーマは昨年1月、フランスで起きた仏風刺週刊紙「シャルリーエブド」本社襲撃テロ事件の時も提示された。イスラム教の預言者ムハンマドを風刺した仏週刊紙の本社がテロリストの襲撃を受け、10人のジャーナリストが殺害されたテロ事件だ。その直接の契機は「シャルリーエブド」誌がムハンマドを風刺し、イスラム側の反発を誘発したことだ。

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▲エルドアン大統領を風刺したべ―マ―マン氏(独週刊誌「シュピーゲル」最新号4月16日号の表紙から)

 今度はドイツ公営放送(ZDF)の風刺コメディアン、ヤン・べーマーマン氏(Jan Bohmermann)が3月31日、"Neo Magazin Royale"の番組の中でトルコのエルドアン大統領を揶揄った風刺詩(Schmahgedicht)を披露。その内容に怒った同大統領はドイツ側に即抗議すると共に、同氏を名誉棄損で告訴した。

 べ―マ―マン氏の風刺「詩」を読んだ。当方はエルドアン大統領の政治には反発を感じる点が多いが、風刺詩はきわどい表現と侮辱に満ち、「言論の自由」の錦を掲げて保護すべき内容とはどうしても思えない。以下、べ―マ―マン氏の風刺詩‘Schmahkritik‘だ。

 Sackdoof, feige und verklemmt,
ist Erdogan, der Prasident.
Sein Gelot stinkt schlimm nach Doner,
selbst ein Schweinefurz riecht schoner.
Er ist der Mann, der Madchen schlagt
und dabei Gummimasken tragt.
Am liebsten mag er Ziegen ficken
und Minderheiten unterdrucken,

 Kurden treten, Christen hauen
und dabei Kinderpornos schauen.
Und selbst abends heists statt schlafen,
Fellatio mit hundert Schafen.
Ja, Erdogan ist voll und ganz,
ein Prasident mit kleinem Schwanz.

 Jeden Turken hort man floten,
die dumme Sau hat Schrumpelkloten.
Von Ankara bis Istanbul
weis jeder, dieser Mann ist schwul,
pervers, verlaust
und zoophil -
Recep Fritzl Priklopil.
Sein Kopf so leer wie seine Eier,
der Star auf jeder Gangbang-Feier.
Bis der Schwanz beim Pinkeln brennt,
das ist Recep Erdogan, der turkische Prasident.


 フランスの場合も同じだった。他宗派の宗教指導者とはいえ、それを侮辱し、茶化すことはやはり間違いだ。それは「言論の自由」というより、「言論の暴力」と言わざるを得ない。今回も同様に感じた。べーマーマン氏の詩を「言論の自由」として擁護することには抵抗を覚える。

 メルケル首相は15日、刑法(StGB)103条に基づき同氏へのマインツ検察当局の捜査を認可すると表明した。刑法103条では、外国の国家元首に対する名誉毀損事件の捜査にはドイツ政府による捜査権付与が必要と明記されている。
 エルドアン大統領はべーマーマン氏を名誉棄損で訴えているから、中傷誹謗を罰した刑法185条に基づきマインツ検察当局が捜査に乗り出すことになる。どのような判決が下るかはもちろん不明だ。ドイツ政府もトルコ政府も司法側の捜査権には干渉できないからだ。

 メルケル首相が風刺コメディアンの捜査を司法側に認可したというニュースが流れると、予想されたことだが、ドイツ国内外で批判の声が上がっている。欧州に殺到する難民、移民問題でトルコ側の協力が不可欠だから、メルケル首相はトルコ側の要求に屈した、といった憶測が流れている。その一方、トルコ内で反政府、野党側のメディアを弾圧している張本人が他国のジャーナリストや芸術家にまでその横暴なやり方を広げている、といった批判が聞かれる。
 メルケル政権内でも社会民主党のシュタインマイヤー外相やマース司法相はメルケル首相の決定に不満を表明している。同外相は「言論、報道、芸術の自由はわが国の基本法の中でも至上の問題だ」と述べている。
 
 べーマーマン氏の風刺問題では、「言論の自由」論争以上にドイツ国内に住むトルコ系住民の動向が懸念材料だ。今回の件ではドイツ国内のトルコ系社会がエルドアン大統領支持派と反政府派に分かれている。風刺問題がドイツのトルコ系住民内の対立を一層激化する危険性があるのだ。
 それだけに、メルケル政権は検察当局の捜査動向に強い関心を持たざるを得ないだろう。風刺コメディアンの「詩」がドイツとトルコ両国政府を巻き込んだ“国家事件”にまで発展してきたのだ。

独大学でイスラム用礼拝室の閉鎖

 ドイツ与党「キリスト教民主同盟」(CDU)内では「国内のイスラム教寺院(モスク)内では説教者はドイツ語で話すべきだ」という声が高まってきている。“モスク内のドイツ語義務化”だ。

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▲イスラム系学生の祈祷禁止を描いた独週刊誌「シュピーゲル」大学生版の表紙

 それに対し、ドイツ最大の少数民族トルコ系グループ代表のGokay Sofuoglu議長は日刊紙「Neue Osnabrucker Zeitung」の中で、「モスク内での説教はドイツ語で行うべきという主張は宗教活動への干渉だ。カトリック教会ではラテン語が使用されているではないか。ドイツ基本法では宗教の自由が保証されている。特定の宗教に対して言語を強制することは明らかにそれに違反する」と主張し、CDUの提案を人気取り政策と一蹴している。

 イスラム教のモスク一般に対し、国民の疑惑の目が注がれ出した。特に、イスラム派過激派テログループによる「パリ同時テロ」「ブリュッセル同時テロ」などを目撃した欧州では、イスラム教一般に対して批判的になってきている。

 ドイツでは昨年、シリア、イラク、アフガニスタンなどから100万人を超える難民・移民が殺到し、難民歓迎政策を取ってきたメルケル首相への批判の声が国民の間で高まってきた。同時に、難民・移民への襲撃事件や放火事件が多発。特に、旧東独のザクセン・アンハルト州(州都マクデブルク)やザクセン州(州都ドレスデン)では外国人排斥犯罪が急増している。前者では14年94件が昨年335件に、後者では182件から509件とそれぞれ急増した。通称「イスラム・フォビア」(イスラム嫌悪)と呼ばれる社会現象が見られる。

 ここにきてドイツの大学でイスラム系学生用の礼拝室を閉鎖する大学が出てきている。独週刊誌シュピーゲルの「大学シュピーゲル」最新号によると、ドルトムント工科大、デュースブルグ・エッセン大、ベルリン工科大(TU Berlin)ではイスラム系学生が使用してきた礼拝室を閉鎖、ないしは閉鎖予定だ。その理由としては、改築予定、「ドイツは政治と宗教を分離している」、「イスラム系学生にとって祈祷する場所は大学周辺にもあるから、大学内に礼拝室を置く必要がない」などさまざまだが、その背後には、大学内のイスラム系学生用礼拝室がイスラム過激派に利用されるのではないか、といった警戒心がある(イスラム教徒は一日、5回、メッカのカアバ神殿の方向に向かって礼拝(サラ―ㇳ)する義務がある)。

 ちなみに、ドイツの大学が過去、イスラム過激派の拠点として利用されたことはある。米国内多発テロ事件(2001年9月11日)のテロ実行犯の一人、Mohammed Attaはハンブルク=ハーブルク工科大を会合の場所として利用していた。また、ダルムシュタット工科大の学生がイスラム過激テロ組織「イスラム国」を宣伝していた、として最近逮捕されている。アルカイダの指導者ウサマ・ビン・ラディンのボディーガードだったイスラム過激主義者Sami・Aはボーフム専門大学に通い、学内の礼拝室で扇動活動していた、といった具合だ。

 ドイツの隣国オーストリアでもモスクへの監視強化を要求する声が聞かれる。リベラルなイスラム教を提唱し、イスラム教徒に西欧社会への統合を訴えるオーストリアのイスラム教問題専門家アミール・ベアティ氏は「モスク内で西欧社会への憎悪を爆発させるイスラム指導者が少なくない。モスクがイスラム教過激派の拠点となっている。モスクで説教できる指導者はアラブ・イスラム教国から派遣されたイスラム教指導者ではなく、西欧社会で教育を受けたイスラム教指導者が担当すべきだ」と主張しているほどだ。

「オアシス」再結成の日は来るか

 英国の伝説的なロックバンド(Britpop)「オアシス」のシンガ―ソングライターだったノエル・ギャラガーが率いるロックバンド「ハイ・フライング・バーズ」は12日、ウィーンのガソメーター(Gasometer)でコンサートを開いた。ノエル一行は欧州コンサート・ツアーのさなか。ウィーンの前日はスイスのチューリヒで、14日にはドイツのミュンヘンでコンサートを控えているといった具合だ。

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▲ウィーンのコンサートで歌うノエル(2016年4月12日、ウィーンのGasometerで撮影

 ウィーンのコンサートには約2500人のファンが集まった。「オアシス」時代の曲と新曲を混ぜて20曲を一気に歌った。ノエルのコンサートの前座には米国のロックバンド「Augustines」が担当した。

 ノエルが舞台に登場すると「ノエル、ノエル」の大喝采がファンから飛び出した。第1曲は「オアシス」解散後作曲した新曲「Evrybody‘ On The Run」を披露。新曲と懐かしい「オアシス」時代の曲を歌い終え、舞台から去った。
 ファンのアンコールに応じ、舞台に再び上がると、ノエルは笑顔で「僕のチームが今夜勝ったんだ」とファンに報告した後、「オアシス」時代の大ヒット曲「「Don't  Look Back in Anger」など3曲を気分良く歌って、2時間余りのコンサートを閉じた。

 ノエルは小さい時から英プレミアリーグのサッカーチーム「マンチャスター・シテイFC」の大ファンだ。シティFCが今夜、「パリ・サンジェルマン」と対戦で1対0で勝利、チャンピオンリーグ(CL)の準決勝進出が決まったのだ。ノエルは嬉しかったのだろう。最後に歌った「Don't Look back in anger」は気分が乗っていた。

 ビートルズ後のBritpopの後継者といわれた「オアシス」は世界的なヒット曲を次々と発表した。ヒット曲のほとんどはノエルが作曲し、弟のリアム・ギャラガーがボーカルを主に担当した。

 アイルランド系の労働者家庭出身のギャラガー兄弟のロックバンド「オアシス」は1991年に結成され、2009年に解散したが、その原因はノエルとリアムの兄弟関係がうまくいかなくなったからといわれている。

 末っ子で5歳違いの弟リアムとは「オアシス」時代からたびたび衝突してきた。リアムがコンサートを突然キャンセルして姿を消すなど、リアムの奇行にノエルは頭を痛めることが多かったことは事実だ。

 母親が工場で遅くまで仕事をしなければならない時、幼いころのリアム少年は2人の兄が留守で独りで母親の帰りを待っていた時、寂しくなって母親が働いている工場まで泣きながら走っていった、というエピソードが伝わっている。当方はそのリアムが作曲した「Songbird」が大好きだ。リアムの心の世界が伝わってくる。

 ノエルは「昔と比べ、ロックバンドも経済的に厳しくなった」と吐露している。多くのファンはアルバムを買わなくても簡単に音楽をコピーできる。だから、ロックグループはコンサートを頻繁に開いて収入を確保しなければならない。ファンはスターと直接に接する機会が増えるからハッピーだが、長い間家庭を留守にしなければならないコンサート・ツアーはバンド・メンバーにとって時として大変だという。

 難しいことは知っているが、ノエル・リアムのギャラガ―兄弟が「オアシス」を再結成し、その素晴らしい音楽を披露してくれることを願っている。

スロバキアでヒトラーの亡霊が……

 今回のコラムのテーマに入る前に、スロバキア総選挙の結果とその後の連立政権発足までの経緯を紹介する。

 スロバキアで先月5日、国民議会の総選挙が実施され、与党「方向党・社会民主主義」(SmerーSD)が得票率を前回(2012年、約44・4%)比で大幅に失ったが、第1党の地位(得票率約28・3%)をキープ。
 総選挙の結果を受け、キスカ大統領はフィツォ首相に迅速な組閣を要請。その結果、Smer -SD、急進右派政党「スロバキア国民党」(SNS)、少数民族のキリスト教民主派政党MOST−HID、それに保守派新党「ネットワーク」(Siet)の4党から構成された連立政権(150議席中、85議席を占める)が発足されたばかりだ。

 前回の総選挙で大勝し、同国初の単独政権を発足させたフィツォ首相は今回、守勢を強いられてきた。難民・移民の受け入れでは、「わが国はイスラム系難民、移民は受け入れない」と表明し、難民の殺到で不安を持つ国民にアピール。反難民受入れ政策が功を奏して第1党は死守出来たが、前回より得票率を大きく減らした。その一方、急進右派政党SNSとネオナチ政党「国民党・われらのスロバキア」(LSNS)が躍進した。

 選挙前の世論調査ではLSNSの躍進は予想されていたが、得票率8%を得るとは誰も予想していなかったから、他の政党ばかりか、国民も大きなショックを受けた。

 LSNSはホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を否定するなど反ユダヤ主義を標榜し、少数民族ロマ人を誹謗中傷。そして、欧州連合(EU)脱退を要求する一方、難民・移民の受け入れを強く反対してきた。

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▲ネオナチ政党「国民党・われらのスロバキア」党首、マリアン・コトレバ氏(ウィキぺディアから)

 ヒトラー崇拝者のマリアン・コトレバ(Marian Kotleba)党首(39)は欧州で最も過激なネオナチとして有名。普段はユニフォームを着ている。同党首は2005年以来、何度も起訴されているが、これまれ逮捕を逃れてきた。同党の前身は2006年に禁止させられた極右政党「スロバキア同盟」だ。コトレバ党首は2013年、同国中部のバンスカ―・ビストリツア県知事に就任して以来、党の基盤を強化してきたといわれている。

 フィツォ第2次政権がスタートしたが、LSNSの議会進出の衝撃は依然、続いている。独週刊誌シュピーゲル電子版(4月12日)によると、スロバキアでは政治家や知識人たちの間で、「なぜ、わが国でネオナチ政党が台頭してきたか」というテーマで議論が湧いているという。マルクスとエンゲルスの共著「共産党宣言」の冒頭の一節に倣って表現するなら、「スロバキアで幽霊が出る。ネオナチという幽霊だ」。 

 極右派政党の躍進は欧州諸国では今日、至る所で見られるが、明確な反ユダヤ主義を唱えるネオナチ政党が議会に進出したのはスロバキアが初めてだ。
 スロバキアは東欧諸国の中でも国民経済は順調に発展。昨年の経済成長率は3・6%だ。失業率も10%の2桁を割った。外国投資も増加、特に自動車産業が大きな経済成長の原動力となっている。もちろん、問題はある。貧富の格差が拡大していることだ。

 極右政党「スロバキア国民党」とLSNSの躍進の背景には、難民殺到による欧州の混乱があることは間違いないだろう。興味深い点は、スロバキアでは昨年、難民として受け入れられた数が限りなくゼロに近いという事実だ。国内に居住するユダヤ人が急減したが反ユダヤ主義は益々激しくなるポーランドとある意味で似ている。難民がいないのに難民、移民への憎悪が拡大する。そして移民・難民のシンボルとしてユダヤ人への憎悪が高まる、といった現象だろうか。

 ちなみに、スロバキアは今年下半期の議長国だ。難民、移民の受け入れを拒否するスロバキアが議長国に就任することで、EUの難民政策が一層難しくなる、と受け取られている。同時に、ヒトラーの亡霊に操られたネオナチ政党の台頭はEUの統合を一層混乱に陥れる危険性がある。

サプライズのない「パナマ文書」

 タックスヘイブン(租税回避地)での取引実態を記した膨大な「パナマ文書」が暴露され、世界に大きな影響を与えている。同文書を分析した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によると、法律事務所「モサック・フォンセカ」が租税回避地に法人設立の業務を支援し、200カ国・地域以上に顧客を抱えているという。租税回避地では海外で得た収入は非課税であるから、マネーロンダリング(不法資金の洗浄)に利用されるケースが少なくない。

 世界最大キリスト教会、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は5日、ゲストハウス「サンタ・マルタ」の朝拝の中で「パナマ文書」問題に言及し、「キリスト社会での調和はどのようでなければならないか」「何がその調和を破壊するか」をテーマで説教し、「金は調和を阻害する敵だ」と主張している。南米出身の法王にとっては、資本主義の危機はモラルの危機ということになる。だから、フランシスコ法王は、「キリスト教社会では全ての富は本来、共同の財産だ。調和とは、誰も貧困に苦しまず、全ての富を共有する状況だ」と説明し、資本主義社会の現状を批判している。

 ところで、独週刊誌シュピーゲル最新号(4月9日号)には、スロベニアの哲学者スラヴォイ・ジジェク(slavoj Zizek)の興味深い記事「金融ポルノ」というコラムが掲載されていた。ジジエク氏は「パナマ文書」の教訓は、「資本主義は腐敗無しには機能しないことだ」と主張している。同氏は新著「新しい階級闘争、敗走とテロの本当の理由」を出している。

 既に報道されているように、「パナマ文書」には ロシアのプーチン大統領から英国のキャメロン首相、イラン、北朝鮮、そして中国の習近平国家主席まで、世界の指導者やその親族関係者の名前が掲載されていたという。
 ジジェク氏は「我々は兄弟だ」と皮肉に指摘している。クリミア戦争で対立するプーチン大統領とウクライナのポロシェンコ大統領の名前が「パナマ文書」には掲載されている。クリミア半島の主権問題で激しく対立する両者だが、自身の資金の貯蓄方法では同じ、というわけだ。その意味で、スロベニア人哲学者は「兄弟たち」と呼んでいるわけだ。「パナマ文書」は、イデオロギーや国体の違い、キリスト教やイスラム教といった宗教の違いを超え、我々は結局は同じだということを端的に示している。

 資本主義の暗躍世界で、貧富の格差が拡大し、富める者は政治権力を駆使し、その富を死守しようとする。フランシスコ法王は「資本主義の危機ではなく、モラルの危機だ」と主張する一方、ジジェク氏のように「新しい階級闘争が展開されている」と考える哲学者もいるわけだ。

 自分の利益を守り、それを合理的なやり方で増やすこと事態は間違いでないかもしれない。オーストラリアのメルボルン出身哲学者ピーター・シンガー氏(Peter Singer)のように、利他的な言動が自身をより幸福にすると信じている人間は少数派に過ぎない。現実は、利己的な利益を追及する“兄弟たち”によって資本主義社会は運営されている。ジジエク氏は嘆息しながら、「『パナマ文書』の唯一のサプライズは同文書に何もサプライズがないという事実だ」と述べている。

平壌の亡命対策と脱北者の“心痛”

 中国の北朝鮮直営レストランで働いていた13人の北従業員が今月7日、集団で離脱し、韓国入りしたことが明らかになった。脱北者は、「国際社会の制裁でレストラン経営が難しくなる一方、平壌への上納金要求は変わらないから、レストラン関係者は絶望的となった」と証言する一方、平壌からスパイ活動を強制されたこともあったと暴露している。なお、韓国メディアによれば、北朝鮮人民軍偵察総局大佐が昨年脱北していた事実が確認されたという(「ウエーターが工作員に変身する時」2016年3月10日参考)。

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▲UNIDO総会に出席した北朝鮮使節団(中央が金光燮大使)=2015年11月30日、ウィーン撮影

 当方は欧州で北朝鮮動向を取材してきたが、北外交官が亡命を考えている、と直感したことが数回ある。実際、その確認の為に密かに取材もした。その取材内容は後日、「キムさんの亡命意思を確認せよ!」というタイトルのルポ記事を月刊誌「知識」(1992年3月号)に掲載した。
 取材の直接契機は西側外交筋から、「北外交官が帰国を拒み、国際機関に就職先を密かに探している」という情報を入手したからだ。北外交官の動きを追った。外交官の子供が通っていたウィーンの学校関係者から、「校長宛てに退学届けが出ている」という情報を得たことから、同外交官の亡命意思が真剣だと判断した。それから、取材を一層慎重に進めていった。北側に感知されれば、北外交官家族が危険にさらされるからだ。

 脱北を願う外交官の動向を追うのは至難だ。当事者は絶対に口を割らないし、亡命と受け取られるような行動をとらないからだ。彼らが一番警戒するのは、北大使館内に派遣されている治安関係者だ。治安関係者は外交官の動向に不審が見られたら、平壌に即連絡する。大使もその治安担当外交官の監視対象に入っている。落ち度などがあった場合、その内容が平壌に通達され、解任されるだけではなく、生命の危険性も排除できなくなる。他の外交官は誰が治安関係出身者かを薄々知っているから、その関係者の前では言動を抑制する。

 平壌の「大聖銀行」から出向した若い銀行マンが投資の結果、大きな損失を出した。北から2人の財政専門家がウィーン入りして、その銀行マンを尋問。直後、同銀行マン夫妻は高麗航空で平壌に強制的に帰国させられた。亡命する危険性があると判断されたわけだ。同銀行マンとビジネスをしていたオーストリア人実業家は、「銀行マンの夫人が帰国する前、私に『帰国するのが怖い』と述べていた」と証言している。

 北側の亡命対策で一番効果的なのは親族関係者を少なくとも1人は平壌に留めさせることだ。在オーストリアの金光燮大使(Kwang Sop KIM)も敬淑夫人(故金日成主席の2番目の妻、金聖愛夫人との間の娘)と1人の息子を平壌に残している。だから、亡命は考えられない。
 金大使はウィーン赴任後、公用以外でも必ず運転手が付いた。1人で車を運転することはなかった。5、6年が経過した頃から、金大使が1人でベンツを運転している姿を目撃した。金大使は北当局から亡命の意思はないという認知を受けたのだろう。大使はその後、1人でベンツを運転している。北外交官は通常、1人で車を運転することは少なく、常に助手席には誰かが座る。亡命対策の一つだ。

 北側の亡命対策を潜り抜けて脱北した北外交官は多くの犠牲を払っている。人質として平壌に留まっている家族を犠牲にせざるを得ないからだ。黄長元朝鮮労働党書記が1997年、韓国に亡命したことがあったが、同書記は韓国で亡命生活中も北に残してきた夫人や家族関係者の動向に心を痛めていたという。
 家族全員が海外に赴任するケースは非常に稀だ。家族の誰かが北に留まるのが通常だ。脱北者を出した大使館やその上司は当局から厳しい制裁を受け、責任者は再教育キャンプに送られることがある。

 ちなみに、海外の北大使館では通常、毎土曜日に外交官のほか、学生やビジネスマンたちを集めて主体思想学習会が開かれる。そこで平壌からの通達や思想チェックを受ける。金正恩氏が政権に就いて以来、中国との国境地帯の監視は強化され、一般国民の脱北者は減少したといわれている。しかし、国際社会の制裁下で北の国民の生活は更に厳しくなっている。北高官、外交官ばかりか、一般の国民も今後、脱北を試みるケースが増えてくるだろう。

遺跡保存かショッピングモールか

 パレスチナのガザ地区で発見された初期キリスト教会のビザンチン教会跡にショッピングセンターが建設中だ。バチカン放送独語電子版がカトリック系通信社フィデス(Fides)の報道として伝えた。ショッピングセンターの建設中に、少なくとも1500年前の同教会跡が発見されたが、建設続行のためにブルドーザーで破壊されたという。

 そのニュースが伝わると、パレスチナのキリスト信者たちから怒りの声が出ているという。ヨルダン川西岸地区のアングリカン(聖公会)系教会のイブラヒム・ナイロウツ神父はパレスチナ自治政府宛てに抗議の書簡を送っている。
 一方、イスラエルのメディアは「ショッピングセンターが建設中の敷地にイスラム寺院やシナゴーグや古代の遺跡などが見つかっていたとすれば、今回と同じようなことが行われただろうか」と問いかけている。その論調には、ガザ地区の少数宗派キリスト教会関連の敷地跡だったから破壊された、といった批判が含まれていることは明らかだ。

 歴史的遺跡や建物を破壊するといえば、われわれは直ぐにイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の蛮行を想起する。ISは昨年8月21日、シリアで西暦4世紀ごろ建立された修道院マール・エリアン( Mar Elian )をブルドーザーで破壊した。シリアの砂漠に立つ修道院はこれまで多くの紛争や戦闘を目撃してきたが、生き伸びてきた。しかし、ISは修道院破壊の理由を、「同修道院には3世紀のキリスト教の殉教者聖人エリアンが祭られている。これは神の神性を蹂躙するものだ」と説明している。要するに、「偶像崇拝」というのだ。

 ISはイラク内の占領地でも世界的遺産を次々と破壊している。ISは昨年2月、イラク北部のモスル博物館に収蔵されていた彫像を粉々に破壊し、古代ローマの主要都市ハトラでも破壊を繰り返した。同年4月には、イラク北部にある古代アッシリアのニムルド遺跡を爆発した、といった具合だ。
 
 もちろん、ISの蛮行とガザ地区の教会跡にショッピングセンターを建設することを同列に扱うことはできない。ISは破壊魔であり、何も建設しない。ガザ地区の場合、ショッピングセンター建設中に教会遺跡が発見された結果だ。想定外だった。

 人類の歴史を記した遺跡を保管することは現代に生きている人間の責任だ。だから、歴史的遺跡を可能な限り保管すべきだが、昔の遺跡や建物を破壊し、その敷地に新しい建物や施設を建設することが全て良くないとはいえない。現在、生きている人間の生活を改善するためにどうしても必要なケースが考えられるからだ。また、全ての歴史的遺跡を完全に保管することは物理的にも出来ない。だから、歴史家、遺跡専門家たちを交えて慎重に話しあわなければならないだろう。遺跡を移動させるとか、その一部を保管するといった処置も今日、可能だからだ。

 明確な点は、イスラエルとパレスチナ間で紛争が続いている時、少数宗派の遺跡破壊は紛争を煽る危険性があるということだ。ガザ地区の場合、ブルドーザーで教会跡を破壊する前に、ショッピングセンター建設側はその地域の少数宗派のキリスト信者たちと話し合いを持つべきだった。
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