中国は空母を建設し、核戦略を増強している。同国は核兵器を運搬する長距離弾道ミサイルの増強に力を入れており、昨年7月に最新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風41」の発射実験を行った。東風41は最大10発の核弾頭を搭載し、それぞれ異なる標的を攻撃できるという。その軍事大国・中国が恐れているには米国の近代兵器だけではない。隣国の北朝鮮人民軍が製造している化学兵器だ。

▲風になびく北の国旗(2013年4月11日、ウィーンで撮影)
脱北者らの情報では国内に少なくとも5カ所、化学兵器を製造する施設がある。中国が恐れているのは両国国境近くにある北の化学工場だ。
北消息筋によると、2008年11月と09年2月の2度、中国の国境都市、丹東市でサリン(神経ガス)が検出されたという。中国側の調査の結果、中朝国境近くにある北の新義州化学繊維複合体(工場)から放出された可能性が高いというのだ。北の化学兵器管理が不十分だったり、事故が発生した場合、中国の国境都市が先ず大きな被害を受けるわけだ。
中国の知識人の中に、「北朝鮮切捨て論」の意見がここにきて勢いを得てきたが、北の金正恩政権が北京の意向に反して核実験をし、長距離ミサイルを発射するからだけではない。化学兵器用の神経ガスを中国側にばら撒くからだ。大きな被害はまだ報告されていないが、「中国側の懸念は非常に現実的だ」という。
もちろん、問題は神経ガスだけではない。当方はこのコラム欄で残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs)について報告したが、残留性有機汚染物質は、毒性が強く、分解が困難で長期間、人体や環境に悪影響を与える化学物質だ。例えば、ダイオキシン類やDDTだ。DDTは有機塩素系の農薬でPOPsの規制対象物質だ。日本では1971年に使用が禁止されたが、同条約に加盟している北朝鮮はDDTをまだ使用している。
残留性有機汚染物質の怖さは、悪影響が一国だけに留まらず、地球全土に拡大することだ。平壌がDDTの使用を中止しなければ、土壌が汚染し、その影響は時間の経過と共に他国にも拡大する。簡単にいえば、北朝鮮の汚染物質は偏西風やグラスホッパー現象などを通じて日本や中国にも影響を与える。日本で久しく使用されていないDDTが国内の土壌から検出されたということが度々起きる理由だ。
だから、中国は隣国北の残留性有機汚染物質の影響に神経を尖らしてきたわけだ。その上、北製の化学兵器用神経ガスが風に乗って中国国土に降り注いできたら、たまったものではない。
これで「軍事大国・中国が北朝鮮の化学兵器を恐れている」という意味をご理解されたと思う。どこに飛んでいくか不明な北の長距離ミサイルや暴発するかもしれない核兵器と共に、中国は今、国境沿いにある北の神経ガス製造工場の管理事故や不祥事を恐れ出しているのだ。

▲風になびく北の国旗(2013年4月11日、ウィーンで撮影)
脱北者らの情報では国内に少なくとも5カ所、化学兵器を製造する施設がある。中国が恐れているのは両国国境近くにある北の化学工場だ。
北消息筋によると、2008年11月と09年2月の2度、中国の国境都市、丹東市でサリン(神経ガス)が検出されたという。中国側の調査の結果、中朝国境近くにある北の新義州化学繊維複合体(工場)から放出された可能性が高いというのだ。北の化学兵器管理が不十分だったり、事故が発生した場合、中国の国境都市が先ず大きな被害を受けるわけだ。
中国の知識人の中に、「北朝鮮切捨て論」の意見がここにきて勢いを得てきたが、北の金正恩政権が北京の意向に反して核実験をし、長距離ミサイルを発射するからだけではない。化学兵器用の神経ガスを中国側にばら撒くからだ。大きな被害はまだ報告されていないが、「中国側の懸念は非常に現実的だ」という。
もちろん、問題は神経ガスだけではない。当方はこのコラム欄で残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs)について報告したが、残留性有機汚染物質は、毒性が強く、分解が困難で長期間、人体や環境に悪影響を与える化学物質だ。例えば、ダイオキシン類やDDTだ。DDTは有機塩素系の農薬でPOPsの規制対象物質だ。日本では1971年に使用が禁止されたが、同条約に加盟している北朝鮮はDDTをまだ使用している。
残留性有機汚染物質の怖さは、悪影響が一国だけに留まらず、地球全土に拡大することだ。平壌がDDTの使用を中止しなければ、土壌が汚染し、その影響は時間の経過と共に他国にも拡大する。簡単にいえば、北朝鮮の汚染物質は偏西風やグラスホッパー現象などを通じて日本や中国にも影響を与える。日本で久しく使用されていないDDTが国内の土壌から検出されたということが度々起きる理由だ。
だから、中国は隣国北の残留性有機汚染物質の影響に神経を尖らしてきたわけだ。その上、北製の化学兵器用神経ガスが風に乗って中国国土に降り注いできたら、たまったものではない。
これで「軍事大国・中国が北朝鮮の化学兵器を恐れている」という意味をご理解されたと思う。どこに飛んでいくか不明な北の長距離ミサイルや暴発するかもしれない核兵器と共に、中国は今、国境沿いにある北の神経ガス製造工場の管理事故や不祥事を恐れ出しているのだ。