ローマ・カトリック教会総本山、バチカン法王庁は大揺れだ。イタリア北部で発生した地震のせいではない。バチカンのロムバルディ報道官が今年2月、“Vatileaks”(ヴァチ・リークス)と呼んだ内部情報の漏洩問題がバチカンの奥深くまで拡大する様相を深めてきたのだ。独週刊誌シュピーゲル誌は「内部情報漏れ問題は、聖職者の未成年者への性的虐待問題よりもローマ・カトリック教会の土台を震撼させる一大事」と指摘したが、状況は次第にその通りとなってきた。

▲バチカンのスキャンダルを報じるオーストリア・メディア。左がベルトーネ国務長官
ローマ法王べネディクト16世の執事、パオロ・ガブリエル(46)が24日、バチカン内部情報を漏洩した疑いで逮捕されたが、同容疑者の単独説を信じる関係者はほぼ皆無だ。執事の背後にそれを操る大物聖職者がいる、という憶測情報が流れている。高位聖職者間の権力争い説も浮上している。イタリア日刊紙ラ・レププリカ紙は内部情報流失に関係した人物と匿名インタビューをしたが、その人物は「今回の内務情報漏洩には多くの人物が関わっている。目的はバチカンの実情を暴露することだ」と主張したという。
ガブリエル執事の弁護士によると、同執事は事件の調査解明に協力する姿勢を明らかにしているという。同容疑者が事件の背景を証言すれば、大物の聖職者名が飛び出すかもしれない。ちなみに、ガブリエル執事のアパートからバチカンの機密文書が詰まった4箱が見つかっている。それらの文書は法王執務室にあったもので、国務省関係者が管理処理する前の資料だ。
ちなみに、ガブリエル執事の容疑は、イタリアのジャーナリスト、ジャンルイジ・ヌッツィ(Gianluigi Nuzzi) が出版した新著「聖性Sua Santita」の中で法王宛の書簡や手紙の内容を暴露したが、その情報をリークした疑いだ。事件の調査はバチカンのピエロ・アントニオ・ボネット判事が担当している。
べネディクト16世はジュリアン・へランツ枢機卿(カトリック教会内の根本主義者組織「オプス・デイ」出身者)をトップとした特別調査委員会を設置し、彼らに犯人探しの全権を付与している。ローマ日刊紙ラ・レププリカ紙が29日報じたところによると、その調査委員会が先日、5人の枢機卿から意見を聞いたと報じた。ただし、5人の枢機卿の尋問は行われていないという。
バチカン法王庁のロムバルディ報道官によると、べネディクト16世はバチカンが目下厳しい状況下にあることを知っているという。換言すれば、調査の進展如何ではバチカンの土台が根底から崩れ落ちてしまう事態もあり得ると感じているわけだ。なお、バチカン日刊紙オッセルパトーレ・ロマーノはこれまでのところ同事件については何の公式見解も掲載していない。
以下は当方の見解だ。内部情報がメデイアに流れ、最もダメージを受ける聖職者はローマ法王ではなく、ベルトーネ国務長官であることは明白だ。例えば、独週刊誌シュピーゲルが先週号でベルトーネ国務長官(枢機卿)が絡んだ不祥事を内部情報から報じている。記事のタイトルは「権勢欲に溺れ、通俗的」だ。ミラノのカトリック系病院の副院長投身自殺やトニオロ研究機関の人事問題について、同長官の独裁的な人事政策を暴露している。また、バチカン側が否定しているが、べネディクト16世が信頼していた通称バチカン銀行(正式には宗教事業協会、IOR)のゴッティ・テデスキー(Gotti Tedeschi)総裁の解任人事の背後には、同国務長官の関与を指摘する声がある。IORはマネーロンダリングの容疑を受けてきた。同総裁はIORのマネーロンダリング法の遵守を強調してきた人物だった。
それでは内部情報をメディアに流すグループの目的は何か。彼らが主張するように「バチカンを刷新する」ためか、それとも「高位聖職者間の権力闘争に過ぎない(ベルトーネ枢機卿の追放)」か、現時点では依然、不明だ。「秘密の宝庫」と呼ばれるバチカン内の事件調査は時間の経過と共に迷路に陥る危険性がある。今こそ、名探偵コロンボの登場が期待される。

▲バチカンのスキャンダルを報じるオーストリア・メディア。左がベルトーネ国務長官
ローマ法王べネディクト16世の執事、パオロ・ガブリエル(46)が24日、バチカン内部情報を漏洩した疑いで逮捕されたが、同容疑者の単独説を信じる関係者はほぼ皆無だ。執事の背後にそれを操る大物聖職者がいる、という憶測情報が流れている。高位聖職者間の権力争い説も浮上している。イタリア日刊紙ラ・レププリカ紙は内部情報流失に関係した人物と匿名インタビューをしたが、その人物は「今回の内務情報漏洩には多くの人物が関わっている。目的はバチカンの実情を暴露することだ」と主張したという。
ガブリエル執事の弁護士によると、同執事は事件の調査解明に協力する姿勢を明らかにしているという。同容疑者が事件の背景を証言すれば、大物の聖職者名が飛び出すかもしれない。ちなみに、ガブリエル執事のアパートからバチカンの機密文書が詰まった4箱が見つかっている。それらの文書は法王執務室にあったもので、国務省関係者が管理処理する前の資料だ。
ちなみに、ガブリエル執事の容疑は、イタリアのジャーナリスト、ジャンルイジ・ヌッツィ(Gianluigi Nuzzi) が出版した新著「聖性Sua Santita」の中で法王宛の書簡や手紙の内容を暴露したが、その情報をリークした疑いだ。事件の調査はバチカンのピエロ・アントニオ・ボネット判事が担当している。
べネディクト16世はジュリアン・へランツ枢機卿(カトリック教会内の根本主義者組織「オプス・デイ」出身者)をトップとした特別調査委員会を設置し、彼らに犯人探しの全権を付与している。ローマ日刊紙ラ・レププリカ紙が29日報じたところによると、その調査委員会が先日、5人の枢機卿から意見を聞いたと報じた。ただし、5人の枢機卿の尋問は行われていないという。
バチカン法王庁のロムバルディ報道官によると、べネディクト16世はバチカンが目下厳しい状況下にあることを知っているという。換言すれば、調査の進展如何ではバチカンの土台が根底から崩れ落ちてしまう事態もあり得ると感じているわけだ。なお、バチカン日刊紙オッセルパトーレ・ロマーノはこれまでのところ同事件については何の公式見解も掲載していない。
以下は当方の見解だ。内部情報がメデイアに流れ、最もダメージを受ける聖職者はローマ法王ではなく、ベルトーネ国務長官であることは明白だ。例えば、独週刊誌シュピーゲルが先週号でベルトーネ国務長官(枢機卿)が絡んだ不祥事を内部情報から報じている。記事のタイトルは「権勢欲に溺れ、通俗的」だ。ミラノのカトリック系病院の副院長投身自殺やトニオロ研究機関の人事問題について、同長官の独裁的な人事政策を暴露している。また、バチカン側が否定しているが、べネディクト16世が信頼していた通称バチカン銀行(正式には宗教事業協会、IOR)のゴッティ・テデスキー(Gotti Tedeschi)総裁の解任人事の背後には、同国務長官の関与を指摘する声がある。IORはマネーロンダリングの容疑を受けてきた。同総裁はIORのマネーロンダリング法の遵守を強調してきた人物だった。
それでは内部情報をメディアに流すグループの目的は何か。彼らが主張するように「バチカンを刷新する」ためか、それとも「高位聖職者間の権力闘争に過ぎない(ベルトーネ枢機卿の追放)」か、現時点では依然、不明だ。「秘密の宝庫」と呼ばれるバチカン内の事件調査は時間の経過と共に迷路に陥る危険性がある。今こそ、名探偵コロンボの登場が期待される。