ウィーンに事務局を置く包括的核実験禁止条約(CTBT)機関が公表した統計によると、米国が1945年、広島に人類初の原爆を降下させから1998年まで、世界で2053回の核実験が行われた。国別にみると、米国が1032回、旧ソ連715回、フランス210回、英国45回、中国45回、インド4回、パキスタン2回だ。その後、北朝鮮が2回(2006年10月、09年5月)実施している(南アフリカとイスラエル両国の核実験が報告されているが、未確認だ)。
それによって、どれだけの放射性物質が放出されたかは正確なデーターはないが、チェルノブイリ原発事故(1986年)や今年3月の福島原発事故で大気に流出したそれよりも圧倒的に多いことは確実だ。
そして、ヨウ素のように半減期が8日間とは違い、プルトニウムの場合、その半減期は2万年以上だ。ということは、1945年から98年の間に実施された2053回の核実験で放出された放射性物質は依然、世界の土壌を汚染しているとみて間違いがないわけだ。
例えば、旧ソ連政府は冷戦時代、カザフのセミパラチンスク核実験場で456回の核実験を実施した。具体的には、大気圏実験86回、地上実験30回、地下実験340回。その総爆発力は広島に投下された核爆弾の2500倍という。
フランスの場合、核実験はアルジェリアのサハラ砂漠などで実施されてきた。アフリカ大陸での核実験の影響について正確な報告はないが、サハラ地域の土壌は相当量の放射性物質で汚染されているという。
スーダン北部では最近、放射性物質の影響と考えられるがん患者の急増がみられる。サハラ砂漠地域には核廃棄物の貯蔵地域があるが、その周辺住民にもがん患者が急増しているという報告がある。
冷戦時代は終焉した。そこで核実験禁止や兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)だけではなく、核保有国の軍事核施設に対し、国際原子力機関(IAEA)の査察履行を認めるべきだ。ちなみに、IAEAは核拡散防止条約(NPT)に基づき核保有国の軍事施設に対しては査察できない。査察は発電用原発に限定されている。
当コラム欄で紹介したが、旧ソ連のキシュテム(Kyshtym)で実際、核事故(1957年)が起きている。原子炉の発電プロセスではなく、軍用原子炉の使用済み核燃料の再処理施設(軍用プルトニウム生産)で爆発事故が起き、膨大な放射線が広大な地域に飛散した。
福島原発を襲った大震災が、軍用核関連施設と発電用原子炉を区別し、後者だけをターゲットするとは考えられない。
原発大国フランスのサルコシ大統領は訪日時、「5月のG8(サミット主要国首脳会議)で原発の安全問題を話す」と発表したが、それだけでは十分でない。軍事、発電の区別を問わず、世界の全ての核関連施設のチェック体制の強化を話し合うべきだ。福島原発事故の教訓は本来、そこにあるのではないだろうか。「核保有国」の責任について考えるべき時だろう。
それによって、どれだけの放射性物質が放出されたかは正確なデーターはないが、チェルノブイリ原発事故(1986年)や今年3月の福島原発事故で大気に流出したそれよりも圧倒的に多いことは確実だ。
そして、ヨウ素のように半減期が8日間とは違い、プルトニウムの場合、その半減期は2万年以上だ。ということは、1945年から98年の間に実施された2053回の核実験で放出された放射性物質は依然、世界の土壌を汚染しているとみて間違いがないわけだ。
例えば、旧ソ連政府は冷戦時代、カザフのセミパラチンスク核実験場で456回の核実験を実施した。具体的には、大気圏実験86回、地上実験30回、地下実験340回。その総爆発力は広島に投下された核爆弾の2500倍という。
フランスの場合、核実験はアルジェリアのサハラ砂漠などで実施されてきた。アフリカ大陸での核実験の影響について正確な報告はないが、サハラ地域の土壌は相当量の放射性物質で汚染されているという。
スーダン北部では最近、放射性物質の影響と考えられるがん患者の急増がみられる。サハラ砂漠地域には核廃棄物の貯蔵地域があるが、その周辺住民にもがん患者が急増しているという報告がある。
冷戦時代は終焉した。そこで核実験禁止や兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)だけではなく、核保有国の軍事核施設に対し、国際原子力機関(IAEA)の査察履行を認めるべきだ。ちなみに、IAEAは核拡散防止条約(NPT)に基づき核保有国の軍事施設に対しては査察できない。査察は発電用原発に限定されている。
当コラム欄で紹介したが、旧ソ連のキシュテム(Kyshtym)で実際、核事故(1957年)が起きている。原子炉の発電プロセスではなく、軍用原子炉の使用済み核燃料の再処理施設(軍用プルトニウム生産)で爆発事故が起き、膨大な放射線が広大な地域に飛散した。
福島原発を襲った大震災が、軍用核関連施設と発電用原子炉を区別し、後者だけをターゲットするとは考えられない。
原発大国フランスのサルコシ大統領は訪日時、「5月のG8(サミット主要国首脳会議)で原発の安全問題を話す」と発表したが、それだけでは十分でない。軍事、発電の区別を問わず、世界の全ての核関連施設のチェック体制の強化を話し合うべきだ。福島原発事故の教訓は本来、そこにあるのではないだろうか。「核保有国」の責任について考えるべき時だろう。