ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2010年09月

法王と「レクイエム」

 世界に約11億人の信者を有するローマ・カトリック教会の最高指導者ローマ法王べネディクト16世は7日夜、ローマ郊外の夏の離宮、カステルガンドルフォでモーツアルトのレクイエムを堪能したという。
 パデュア、ベネチア交響楽団とトリノ音楽アカデミーのメンバーたちがローマ法王就任5周年を記念するためにコンサートを開いた。
 レクイエムを鑑賞後、べネディクト16世は「この曲を聴く度に自分は昔の教会を思い出す。教会の祝日にモーツアルトのミサ曲が弾かれた。その度に天国の美の輝きを心の中で感じていた。死に対する偉大で劇的で真摯な冥想を聴く度に同じ思いが沸いてくる。モーツアルトは独特の明るさの中で全ての対立、矛盾と和解する。音符、各節、全てが完全な調和の中にある。モーツアルトの曲は神の贈物だけではなく、彼自身の信仰の賜物だ」と絶賛している。
 べネディクト16世のレクイエム称賛はこれが初めてではない。バチカン法王庁で2008年5月7日夜、中国フィルハーモニー管弦楽団がベネディクト16世の前でモーツアルトのレクイエムを演奏したことがある(「中国の『音楽外交』とバチカン」(2008年5月14日)。その時も法王は「モーツアルトの宗教精神の表現であるレクイエムが全く異なった文化圏でも正しく評価されることを実証した。音楽は人間の普遍的な心情を表現するからだ」と感動を吐露しているほどだ。
 モーツアルトの死後、弟子たちによって完成されたレクイエムはモーツアルト自身の最高傑作であり、これまで頻繁に演奏されてきた「死者のためのミサ曲」だ。音楽の世界には疎い当方だが、「レクイエム」を聴くと何か心が揺さぶられる。
 ちなみに、歴代のローマ法王は趣味を持っている。例えば、前任者、故ヨハネ・パウロ2世は山登りとスキーが好きであり、ギター演奏もプロ級だった。べネディクト16世は読書であり、ピアノを心ゆくまで弾くことだという。音楽の世界を享受できる法王は幸せだ。

EUに約3186万人の外国人

 欧州連合(EU)の統計局(EUROSTAT)が7日、公表したところによると、EU27カ国に昨年末現在で約3186万人の外国人が居住している。外国人が社会に占める率(以下、外国人率)は全体の6・4%だ。その内、1194万人は他のEU市民(全体で2・4%)、EU以外の居住者数は約1991万人(約4・0%)だ。
 EU加盟国の中で国内に住む外国人数が最も多い国はドイツで、その数は約718万人で外国人率は8・8%だ。次いでスペインが約565万人(12・3%)。英国の外国人数は約402万人だが、外国人率は6・6%とEUの平均値に近い。そしてイタリアが389万人(6・5%)、フランス約373万人(5・8%)となっている。
 一方、外国人率トップは小国ルクセンブルクで43・5%(外国人数21万人)、ラトビア17・9%(40万人)、キプロス16・1%(約12万人)だ。外国人率が最も低いEU国は、ポーランドとルーマニアで0・1%、それを追ってブルガリアが0・3%だった。東欧諸国の外国人率は西欧諸国より一律に低いのが特長だ。
 ちなみに、EU加盟国で他の加盟国の住む国民数が最も多い国はルーマニアで約200万人だ。それに次いでポーランドが150万人、イタリア130万人、ポルトガル100万人となっている。
 興味を引く点は、EU居住外国人の平均年齢が34・2歳で、EU27カ国の41・2歳よりかなり若いことだ(エストニア、ラトビア、そしてポーランドの3国を除く)。例えば、イタリアでは居住外国人の平均年齢は32・3歳だ。イタリア人のそれは43・9歳だ。10歳以上の差がある。
 なお、少子化と社会の高齢化に直面するEUでは、国内経済、社会福祉制度の堅持のために若い外国人労働者が不可欠となってきた、という考えが広がってきている。その一方、フランスやイタリアでみられるように、不法移住者(難民)に対する取り締まりが強化されてきている。

イスラエルでキリスト者が微増

 イスラエルで昨年度、キリスト教信者数が前年度比で1%と微増したという。同国中央統計局が6日、公表した。ちなみに、同国人口は昨年度、約760万人で、人口の28%は15歳以下によって占められている。
 もう少し詳細にみると、ユダヤ教徒数は577万人で前年度比で1・7%増、アラブ系住民は2・4%増で156万人。そして約22万人が外国人労働者だ。キリスト者数は微増したが、全体の人口に占める割合は低下した。
 ところで、統計は一見、冷たいが、事実を的確に反映する。イスラエルでキリスト者であることは、仏教国でキリスト信者となるよりも難しいことかもしれない。
 ユダヤ人への伝道団体「ユダヤ人をイエスへ」(JFJ)の創設者モイシェ・ローゼン氏が今年5月19日、78歳で死去したばかりだ。JFJは1973年に設立されたユダヤ人のキリスト者組織で、イエスをメシア(救世主)として受け入れる運動「メシアニック・ジュー」と呼ばれている。
 ユダヤ人に「イエスがメシアであった」と伝道することは安易な業ではないだろう。ユダヤ教徒にとって、イエスは預言者の一人であったかもしれないが、ユダヤ人が待ち続けてきた民族解放者、メシア(救い主)ではなかったからだ。
 イエスを「救い主」と認めれば、ユダヤ人が「救い主」を殺害した大犯罪人となってしまう。キリスト教派の中には、ユダヤ民族がナチス政権時代に受けたホロコーストはメシアを殺害したユダヤ人に対する神の刑罰だ、と考える根本主義者もいる。
 ユダヤ人を弁護するのではないが、「モーセ五書」(旧約聖書の創世記、出エジプト記、レビ記、民数紀、申命記)を信じていた当時のユダヤ人にとって、安息日を破り、売春婦に救いの手を差し伸べるイエスをメシアとして受け入れることは至難の業だった。イエスに従った多くのユダヤ人たちは「モーセ五書」すら読んだ事がない者たちであり、社会の底辺に属する人たちが多かったのは偶然の事ではない。聖パウロもダマスコへの途上、復活したイエスと会合しなかったならば、生涯、イエスを信じる信者たちを迫害する敬虔なユダヤ教徒であり続けたはずだ。
 歴史で「if」はタブーだが、ユダヤ社会が当時、イエス(自身もユダヤ人だった)をメシアとして受け入れていれば、ユダヤ教を中心にその教えがローマへ、そして他の大陸へと伝えられていっただろう。キリスト教という新しい宗派が誕生する必要もなかったはずだ。世界の情勢も今日みられるような複雑な状況ではなかっただろう。中東の「パレスチナ人問題」も生じていなかったことは確かだ。
 なお、9月9、10日はユダヤ暦の新年祭ローシュ・ハッシャーナーに当たる。

北の建国祝賀会も「昔は良かった」

 駐オーストリアの北朝鮮大使館で7日午後5時半(現地時間)から同国建国62周年(9月9日)の祝賀会が開催された。金光燮大使(金正日労働党総書記の義弟)が平壌に帰国中ということもあって、ゲスト数は30人程度。VIPと呼ぶことができるゲストは駐オーストリアの中国大使館の参事官一人で、寂しい祝賀会だった。
 「寂しい祝賀会」と書いたが、「寂しくない活気溢れる祝賀会」が開催されたことがあっただろうか、と考えた。金日成主席が1994年に心臓病で死去して以来、その息子・金正日労働党総書記が実権を掌握してからは「寂しい祝意会」が続いてきたからだ。
 オーストリア・北朝鮮友好協会の古メンバーが「金主席時代はこんなものではなかったよ」と嘆くのを当方は何度か聞いたことがある。
 その「昔はよかった」という台詞は老人の口癖だが、この場合、それなりの理由がある。金主席が提唱した主体思想はオーストリアの知識人を魅惑し、インスブルック大学の哲学教授たちが平壌詣でした時代があった。その理由の一つは、南チロル問題を抱えていたオーストリア知識人たちには、北の主体思想がその解決の道を提供していると感じたからだといわれる。
 北朝鮮の国民経済成長は70年代から80年代にかけ韓国経済を凌ぐほどだった。だから、主体思想もそれなりに説得力があったが、旧ソ連・東欧諸国の共産政権が崩壊してからは、南北両国間の経済力は大逆転、今日は北の経済水準は韓国の何十分の一ともいわれるほどになった。人工衛星が撮影した夜の朝鮮半島の写真をみると、光が溢れる韓国に対し、北側は闇の中に沈んでいる。理屈ではなく、南北間で大きな格差が出来てしまったわけだ。
 これもあれも全て金総書記時代に入ってからだ。金主席時代に友好協会に所属した古メンバーが「あいつ(金総書記)が北を悪くした」と受け取っても不思議ではない。だから、親北派の間でも人気がない。人気がなければ、祝賀会にも顔を出さなくなるし、距離を置くようになる。祝賀会が年々、寂しくなるのは当然の結果だろう。
 ちなみに、北の労働党機関紙・労働新聞は6日、論文の中で「伝統は継承してこそ光り輝く」と強調していたが、金主席から金正日総書記への伝統の継承は光り輝くどころか、凋落の道を切り開いてしまった。

金正男氏も党代表者会に参加?

 44年ぶりに北朝鮮労働党代表者会がまもなく開催され、金正日党総書記の後継者として3男の正銀氏(29歳)が初めて公式の場に登場するのではないかと推測されているが、2001年5月の日本密入国問題を起こし後継者レースから脱落したといわれてきた長男の正男氏(39歳)がマカオから平壌に戻ってきていることが明らかになった。
 北朝鮮消息筋は「正男氏の帰国目的は不明だが、同党代表者会に参加する可能性も完全には排除できない」と予測した。正男氏(39)は金正日労働党総書記と故成恵琳夫人との間の長男だ。正銀氏(27)は金総書記と故高英姫夫人との間の次男だ。
 同消息筋はまた、「金総書記の義弟、金光燮大使(駐オーストリア・ハンガリー大使)が同様に同党代表者会に出席する可能性がある」と述べた。同大使は6月末、既にウィーンから平壌に帰国中だ。ちなみに、同会には地方代表者を含めると約5000人が参加するという。
 党代表者会では金総書記の実妹・敬姫の夫で今年6月7日に国防委員会副委員長に任命された張成沢氏が党書記に選出されると予想されているが、「今回の党代表者会で金ファミリーが総動員され、重病後の金総書記を内外共に支えていく金ファミリー体制が確立されるのではないか」(同消息筋)との憶測が流れている。
 日韓の「党代表者会」関連報道では、金総書記の「後継者体制」の確立に焦点が注がれているが、「大病後の金総書記の支援体制の強化が本来の狙いで、後継者体制はその後だ」(同消息筋)といった見方がここにきて浮上してきているわけだ。

イランはタキーヤを放棄すべし

 9月に入ると途端に忙しくなるのはどの職場でも同じかもしれないが、国連記者たちも例外ではない。7月下旬から8月末までは静かだったが、9月に入ると国際原子力機関(IAEA)の定例理事会が13日から、翌週の20日から第54回年次総会がそれぞれ一週間続き、その後、再び理事会が開かれる。国連記者にとって9月は文字通り“IAEA漬け”の月となる。
 そしてここ数年、イランの核問題が理事会の焦点となってきた。新鮮な点は、これまで議題すらならなかったイスラエルの核問題がアラブ理事国の強い圧力もあって議題化してきたことだろうか。
 ところで、イランの核問題を考える時、2点に注意を払わなければならない。第一は「ホメイニ師の遺訓」だ。イラン革命を主導したホメイニ師は生前、「大量破壊兵器を製造してはならない」と述べていたという。
 イラン側は核問題を追求する欧米諸国に対して、「わが国は核兵器を製造しない。これはホメイニ師の遺訓だ」と説明し、「われわれの核計画は平和利用が目的だ」と、繰り返し主張してきた。
 イラン最高指導者のハメネイ師はホメイニ師の弟子であり、後継者だ。アハマディネジャド大統領にとってもホメイニ師は大先生だ。同師の遺訓は権威があり、無視できない。
 と、考えてきたが、肝心のホメイニ師が亡くなる1年前の1988年、「イラク戦争に勝利するためには核兵器が必要だ」という内容の書簡を送っていたことが判明したのだ。
 この書簡が事実とすれば、「ホメイニ師の遺訓」はイラン側の弁明に過ぎず、「内容のない嘘」だったということになる。
 「嘘」はイスラム教の教えでも許されない不義だ。ところがそうではないらしい。第二だが、イスラム教の教えには「タキーヤ」(Taqiya)という概念があるのだ。「タキーヤ」とは、イスラム教徒が自身の信仰ゆえに生命の危険にさらされた場合、「自分の信仰を隠しても赦される」という内容だ。
 ただし、「タキーヤ」について、イスラム教グループによって見解が一致していない。タキーヤを認めているのはシーア派だけであり、スン二派は認めていない。イランはシーア派のイスラム国だ。
 欧米から強い圧力を受けるイラン指導者たちが「平和利用と弁明する一方、イスラム諸国で初の核兵器を密かに製造し、イスラエル、米国ら異教徒に対抗する」と考えている可能性があるわけだ。
 13日から始まるIAEA理事会で欧米理事国はIAEA担当のソルタニエ・イラン大使を掴まえ、「イランは核問題でタキーヤ(真意を秘匿)しているのか」と問い詰めるべきだろう。もちろん、ソルタニエ大使がその時もタキーヤを駆使する可能性は排除できないが……。

欧州初の「北芸術展示会」が閉幕

 ウィーン市のオーストリア応用美術博物館(MAK)で5月18日から一般公開中だった北朝鮮の芸術・建築作品の展示会は昨日(5日)、閉幕した。最終日の前日(4日)、当方は「もう一度観てみよう」と考え、MAK に足を運んだ。同展示会は「平壌民族ギャラリー」とMAKの共催で約100点の絵画と約30点のポスターが出品されていた。展示会のタイトルは「金日成主席への花、北朝鮮からの芸術と建築」だ。今回のような大規模な北芸術展示会は「海外で初めて」というキャッチフレーズが功を奏したのか、現地のメデイアでも結構話題を呼んだ。
 土曜日は入場無料の日だったので、展示場会場はかなりの訪問者で埋まっていたが、同時に、警備員の数の多さには改めて驚いた。故金日成出席と金正日労働党総書記が描かれた絵画前にはロープが張られ、警備員が目を光らせていた。
 警備員に「この展示会期間、何かハプニングは生じなかったですか」と聞くと、「幸い、不祥事はなかった」「それにしても警備員の数は多いですね」と尋ねると、「この程度の提示会の場合、普通は4人か5人の警備で十分だが、今回はその4倍ぐらいの数が動員された」という、「どうしてですか」と改めて聞くと、「われわれには分からないよ」と笑いながら答えた。
 当方が知る限りでは、MAK前で5月29日午後(現地時間)、オーストリア居住の韓国人らが北朝鮮による韓国哨戒艦「天安」爆破に抗議するデモ集会を開いたことぐらいで、北の展示会開催に抗議したデモや集会はなかった。
 会場では駐オーストリアの北朝鮮外交官、ハン一等書記官に会った。多分、書記官は何十回も展示会会場に来たことだろう。
 いずれにしても、大きな不祥事もなく北の展示会は幕を閉じた。この期間、何人の訪問者があったかは目下、不明だが、「この種の展示会としては悪くなかった」という。オーストリア文化省が来年公表する「文化報告書」を見れば、詳細な数が分かるだろう。ただし、MAKの場合、毎年、訪問者の3人のうち2人は無料で展示会を観ている。北朝鮮の芸術展示会でも同じだろう。入場券(9ユーロ)を買ってまで独裁国家・北朝鮮の芸術展示会を観ようと考えるウィーン市民は少ないだろう。
 ウィーンも9月に入り、秋らしい涼しい風が吹き出した。40度に迫る「猛暑の日々」から「嵐の日々」と変化に富んだ今夏もようやく去ろうとしている。6日から長い夏休みが終わった子供たちが再び学校に通い出した。
 平壌では労働党代表者会が開かれ、そこで金総書記の後継者、正銀氏が初めて公式の場に登場するといわれている。北でも変化の時を迎えようとしているわけだ。そのような「政治のシーズン」を迎える前に、ウィーンで開かれた欧州初の「北芸術展示会」は幕を閉じた。
 「次回の展示会が開催される頃には北の指導者も変わっているだろうな」と考えながら、MAKを後にした。

なぜ人は「腐敗」するか

 ウィーンのホフブルク宮殿で「国際アンチ腐敗アカデミー」(本部ラクセンブルグ、IACA)の創設会議が2日から2日間、潘基文・国連事務総長や多数の閣僚たちを招いて開かれた。
 それに先立ち、オーストリア内務省で2日午前、関係省の3大臣とIACAのある二ーダー・エストライヒ州のプレル知事が出席して記者会見が行われたので参加した。
 フェクター内相は「IACAの設立というわが国のイニシャティブが実現して嬉しい」と述べ、IACAがアンチ腐敗対策の国際シンクタンクと発展することに期待を表明した。
 シュピンデルエッガー外相は「腐敗対策はこれまで各国が実施してきたが、IACAが設立されたことで、腐敗対策の国際ネットワークが確立される」と、その意義を説明し、同アカデミーで今後、警察官、検事、裁判官ばかりか、銀行マンなど民間人もセミナーに参加し、腐敗対策を学ぶことができるという。
 一方、バンディオン・オルトナー法相は「腐敗は社会の毒だ」と指摘し、腐敗対策の効率化や連帯強化の必要性を主張した。ちなみに、世界銀行によると、「腐敗」による被害総額は毎年、1兆ドル以上にも達するという。
 オーストリア側は、IACAが近い将来、国連の専門機関として発展していくことを願っている。そこでウィーンの国連の「国連薬物犯罪事務所」(UNODC)と連係を強化する一方、欧州のアンチ詐欺事務所(OLAF)の支援を受けて腐敗対策の専門機関を目指すわけだ。IACA関係者によると、既に23カ国が共同創設国となることを表明したという。
 記者会見では、新しく出発するIACAに対するオーストリア側の意欲は伝わってきたが、「新しい機関の創設はその地域の経済的効果と雇用促進に繋がるが、腐敗対策に効果があるだろうか。結局、新しい機関がまた一つ生まれた、というだけで終わるのではないか」といった懐疑的な思いが湧いてきた。
 どのような機関やシステムが構築されたとしても、その主人は人間だ。人間が良くならない限り、どのような枠組みが出来たとしても、同じ結果ではないか。「創価学会」風にいえば、「人間革命」が本来、先決すべきだ。
 「社会の毒」という「腐敗」に対し、国際機関やアカデミーがその毒素を解毒できるとは思えない。もし可能というのならば、UNODCが発足した段階(1991年)で腐敗問題は既に解決されていなければならないはずだ。
 結局、「なぜ人は腐敗するか」「どうしたら人は良くなるか」などの問題を考えざるを得ない。それらを単なる哲学上の問題ではなく、現実上の課題として取り組んでいかない限り、如何なる腐敗対策も成果をもたらさないのではないか。
 IACA創設の日、当方はそのように考えた。

金総書記が教会を訪問した「理由」

 北朝鮮最高指導者の金正日労働党総書記は先月26日から中国を非公式訪問したが、吉林市では現地のカトリック教会を訪問していたという。バチカン放送が2日、伝えた。
 米国務省が毎年発行する「宗教の自由報告書」では、北朝鮮は世界最悪の宗教弾圧国にランクされて久しい。その国の独裁者が外遊先とはいえ、カトリック教会に足を踏み入れていたというのだ。北朝鮮当局が近い将来、宗教政策を緩和する兆しではないか、といった楽観的な憶測も流れ出した。
 それに対し、韓国カトリック教会の広報官は「金総書記の教会訪問を過大評価することは危険だ。金総書記は父親の金日成主席が2年間通った東北地方の吉林市にある毓文中学校を訪問したが、その枠組みで同市の教会にも足を向けたのだろう」と説明し、金総書記の教会訪問を冷静に受け止めている。
 ちなみに、北朝鮮では昨年6月、聖書を配布したという理由で1人のキリスト信者が公開処刑された。同国では法的には「信仰の自由」は保障されているが、現実は最悪の弾圧国だ。迫害されるキリスト者救援組織「オープン・ドアーズ」(本部・米カリフォルニア州サンタアナ)の最新報告書によると、7万人のキリスト者が国内30カ所以上の労働収容所に送られている。
 北朝鮮の首都、平壌はかつて“東洋のエルサレム”と呼ばれ、キリスト教活動が活発な時代があったが、故金日成主席が1953年、政権を掌握して以来、現在まで宗教者への弾圧は続いている。その北の宗教政策が改善されるといった兆候は、残念ながら、今のところない。
 それでは金総書記はなぜ、訪問先の吉林市のカトリック教会を訪ねたのか。金総書記の今回の訪中は、故金主席の聖地巡礼と共に、中国の地方都市の経済発展状況を視察することにあったといわれる。とすれば、金総書記の教会訪問も少なくともその目的と合致していなければならない。
 ここまで考えてくると、結論は近い。当方は先月、「中国で現在、2300万人以上のキリスト教信者がいる。中国歴史でもこのようにキリスト信者が増えたことはなかった」という中国社会学アカデミーの調査結果を紹介したが、金総書記は中国のキリスト教会の発展を肌で感じたかったのだ。なぜか。「経済の自由化促進がもたらす宗教の台頭」というテーマを考えていたからだ。
 そこで、金総書記は中国の地方都市で近代的工場を視察するように、吉林市の教会に足を踏み入れていったのだ。

IAEA査察局長後任選出が難航

 国際原子力機関(IAEA)のフィンランド出身オリ・ハイノネン(Olli Heinonen )査察局長(事務次長)が先月31日付けで退職したが、その後任の選出が難航している。
 IAEA関係者は「査察局長の選出は天野之弥事務局長の権限だが、まだ見つかっていないと聞く」というだけだ。ハイノネン氏自身が「容易ではないだろう」と退職前に語っていたことを思い出す。
 査察局Aのマルコ・マルゾ部長は「後継者が見つかるまでは暫く代理を置くことになっている。新しい査察局長は12月の定例理事会前には就任できるのではないか」と述べ、9月13日から開かれる理事会、その直後の年次総会には間に合わない可能性が高いことを示唆した。
 なお、同部長によると、局長代理は、査察局Bのヘルマン・ナッケルツ部長(Herman Nackaerts)が務めることになっているという。
 ハイノネン氏はイラク、イランの査察活動で経験を積み、IAEA内では「ウラン濃縮活動を最も知っている専門家」という評価があった。イランの核問題が重要な分岐点を迎えている時だけに、同氏の退職はIAEAにとって大きな痛手だ。
 一方、IAEA代表のイランのソルタニエ大使は「誰が局長に就任するかは大きな問題ではない」と冷静を装っているが、無関心ということはないだろう。
 天野事務局長は就任後初のイラン報告書で「テヘランの核計画の軍事転用の危険性」を強く示唆した経緯がある。それだけに、イランばかりか反欧米理事国から風当たりが強い。理事会、年次総会ではイラン問題は焦点の一つだ。
 なお、IAEAを構成する6局の内、ハイノネン査察局長のほか、谷口富裕・核安全保安局長も今夏退職したばかりだ。天野事務局長は早急にIAEA内の体制を確立し、イラン問題、イスラエル問題などの難問に専心したいところだろう。
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