ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2010年09月

真偽が検証できない金総書記発言

 朝鮮労働党代表者会が28日、平壌で開催され、金正日労働党総書記が党総書記に再推挙された一方、人民軍大将の称号を前日、父親から受けた後継者の3男・正銀氏は党中央軍事委員会副委員長並びに党中央委員会委員に任命された。これで、正銀氏の後継が初めて公式化した、と一般的には受け取られている。
 党代表者会開催中、不祥事も起きず、計画通りに進展したことは金総書記にとって少なくとも幸いなことだったろう。
 ところで、訪朝したが、金総書記と会見できずに帰国したカーター元米大統領は9月13日、カーター・センターのWebサイドで訪中(9月4日〜10)報告書を掲載し、その中で、「中国の温家宝首相は、金総書記が正銀氏の後継者問題について『西側の間違った噂』と否定した、と述べた」という衝撃的な情報を明らかにしている。
 正銀氏の後継が明らかになった今日、カーター氏の発言などどうでもいいことだ、と諭されるかもしれない。しかし、ここは当方と少し付き合っていただきたい。
 カーター氏が北京からもたらした情報は偽情報だったのか。考えられるシナリオを挙げる。(1)金総書記から冷たい扱いを受けたカーター氏流の仕返し、(2)中国の温家宝首相は米元大統領に故意にニセ情報を流した、(3)金総書記が中国首相らにウソをいった―等の3つの可能性がある。
 党代表者会の開催前に、知人の北朝鮮外交官にカーター氏の情報の真偽を聞いた。知人は「君、中国の首相が米元大統領に意図的に偽情報を流したとは考えられない。外交上、大問題となるよ。発言内容をシリアスに受け取るべきだろう」という。
 これはカーター氏にも当てはまることだ。中国首相の発言といって、語ってもいない内容を自身のHPに掲載すれば、大きな問題だ。その意味で、(1)と(2)のシナリオは脱落だ。
 最後のシナリオは金総書記の「ウソ」発言だ。核問題を想起するまでもなく、金総書記は過去、数多くのウソ情報を流してきた。「ウソ」発言の可能性は、中国首相、カーター氏より数段、大きい。しかし、ウソ発言の前科者とはいえ、金総書記が訪中時に中国首相らにウソをつくだろうか。後日、「ウソ」と分れば、中国側は激怒するだろうし、金総書記も将来、中国首相ら首脳と顔を合わせられなくなる。
 このようにみていくと、上述した3つのシナリオはいずれも非現実的だといわざるを得ない。
 意図的に書かなかったが、もう一つのシナリオがあるのだ。それは金総書記の発言内容が正しい場合だ。
 「しかし、金正銀氏が人民軍大将の称号を得、党中央軍事委員会副委員長並びに党中央委員会委員に任命された。正銀氏の後継は公式化されたばかりだ」といった反論が当然出てくるだろう。
 そこで冷静になる必要がある。韓国統一省は29日の段階で「正銀氏が後継者として公式化された」との判断を保留している。慎重なメディアの中には「初期の公式化」といった見出しを付けている。なぜだろうか。
 金総書記の実妹、敬姫も受け取った人民軍大将の称号は後継者の公式化の裏付けとはならない。新設された党中央軍事委副委員長もその権限はまったく不明だ。党中央委員会メンバーは後継候補者でない人物も入っている。正銀氏が後継者となったことが公式化された、と断定するのには、その内容はちょっと物足りないのだ。韓国統一省が「公式化された」と断言しない理由もここら辺りにあるのではないか。
 残念ながら、金総書記が語った「西側の間違った噂」という発言内容の真偽を判定するには、党代表者会が終わったばかりの現時点では時期尚早かもしれない。
 なお、サプライズがあるとすれば、金総書記の発言が“正しかった時”だ。

金正銀氏はUFO的存在?

 どこ処の新聞社もWebサイトで速報ニュースを掲載する一方、「読者のアクセスが最も多かったニュース」といったランキングを紹介している。インターネット時代の企画だ。一種のネット読者へのサービスだ。
 産経新聞の「国際のランキング」(ウィーン時間28日午前10時の時点)を見ると、「ジョンウン大将、28歳の3男が後継……」が堂々と第2位にランクされていた。読者が北朝鮮の後継者問題に強い関心を持っていることを実証している。
 ちなみに、朝鮮中央通信によると、北朝鮮で28日、朝鮮労働党代表者会が開かれ、金正日総書記が党総書記に再推挙されたという。同時に、金総書記の3男の正銀氏が人民軍大将の称号を得たというニュースが流れた。正銀氏の後継が初めて公式の場で確認されたわけだ。
 ところで、「第2位」といったが、それでは金正銀氏の人民軍大将昇格記事より、読者の関心を惹いたニュースは何か。「金正銀氏の昇進」をぬいて、第1位の栄光を勝ち取った記事は「UFO(未確認飛行物体)が核兵器に強い関心!?」だった。正銀氏は得体の知れないUFOの後塵を拝する結果となったわけだ。
 参考までに、第1位の記事はワシントン発の共同通信のニュースだ。それによると、米軍の核兵器施設で勤務していた元空軍大佐らが27日の記者会見で、UFOの飛来が核兵器の管理システムを狂わしたこと、UFOが地球での核開発に強い関心を持っていること、等を語ったという内容だ(詳細は同通信記事を直接読んでいただきたい)。
 第1位の「UFO」の記事と第2位の「正銀氏の昇格」ニュースを並列して読んでいると、「多くの読者にとって、正銀氏は“UFO的存在”かもしれない」といった思いが湧いてきた。UFOの実態は分らない。同じ様に、故金日成主席、金正日総書記、その後継者金正銀氏と3代続く金ファミリーが織りなす世襲世界も第3者には分らないことが多い。特に、正銀氏のプロファイルは全く不明だ。多くの読者にとってUFOとあまり変りがない存在だ。ひょっとしたら、「UFO」と「金正銀」という2つのキーワードは、その“不確かな存在”ゆえにネット世界の読者を一層惹き付けているのかもしれない。
 ただし、前者のUFOは幸い、人類にこれまで災いを与えていないが、“UFO的存在”の正銀氏の金王朝は多くの国民を飢餓に陥れ、数十万人の国民を政治収容所に送る一方、核実験を実施し、周辺諸国を脅かしている。

ウィーンに幽霊が現れた

 こんなことを書いてオーストリア観光局からお叱りを受けるかもしれないが、“音楽の都”ウィーンに最近、頓に幽霊が現れるのだ。
 当方の限られた交流範囲の中でも「幽霊をみたのよ」とか、「台所に一人で料理している時、急に背中が寒くなることがあるのよ。誰かが側で見ているような感じ」といった話を聞く。
 「幽霊をみた」といえば、馬鹿にされると警戒していた紳士淑女も一人が口を開けると、「そうなのよ。実は私も……」といって「幽霊の話」が飛び出してくるのだ。
 21世紀の今日、「幽霊は死んだ」と二ーチェ(Nietzsche)のような台詞が吐く人がいる一方、「幽霊はいる」と確信する人々がいる。「神の存在」と同様、「幽霊の存在」でもコンセンサスは元々期待できない。
 ここでは2、3の例を挙げる。あるウィーンの有名なレストランでの話だ。地下の調理場所で料理をしていると最近、誰かの吐息が聞こえてくるというのだ。それも一定の場所からだ。料理人が勇気をだして吐息が聞こえる方向にいった。そこには鍵が掛かった古い戸がある。レストランの主人もその戸を開けたことがないという。料理人は鍵をもらって戸を開けると、そこには別の地下に通じる階段があったのだ。階段は途中で壊れ、壁も崩れ落ちていた。空襲を受けた跡のようにだ。はっきりとしているのは、そこから吐息が聞こえてくるのだ。
 レストランの場合、「誰が昔、住んでいたか」を土地台帳(Grundbuch)で調べれば、「誰の吐息か」が判明するかもしれない。ちなみに、第2次世界大戦ではそのレストラン一帯は連合軍の空襲を受けた地域だ。空襲で生き埋めとなった人たちの「吐息」かもしれない。
 ウィーン14区にはナチス・ドイツ軍が患者たちを人体実験に利用した精神病院がある。あそこでは、夜な夜な幽霊が出てくるというのだ。
 戦争が終わって65年以上が経過したが、幽霊たちは65年前のままで、時間は止まっているのかもしれない。恨みとその悲しみ、痛みを解放しない限り、浮かばれないのだろうか。
 「幽霊となった人々」のことを考えていると、彼らが当方の側にきて、囁き始めたような、軽い錯覚を覚えた。

「批判」への説明責任と期待感

 ウィーンの日本大使館外交官の接待(「日韓外交官の現代『接待事情』2010年8月21日)について書いたところ、いろいろな所から予想外の反響があった。金融危機にもかかわらず、公費で高価な昼食を享受する公使に対して、昼食代すら節約せざるをえない多くの人々にとっては、「許されない行為」「公費の浪費」と受け取られたのだろう。その受け取り方に不満はないが、当方の意図したところとは違っていた。以下は、「批判」した側の当方の説明責任を果たす。
 当方は公使の名前も知っているが、コラムの中には書かなかった。調べれば直ぐ判明することだし、名前を出して公使を批判する考えは元々なかったからだ。
 当方は公使に大きな期待を抱いている。海外で日本の利益を擁護し、国民を保護する立場の公使には本来、昼食云々というより、頑張っていただきたいという思いの方が強い。
 公使はアフリカにも駐在された経験豊富な外交官だ。英語も独語も流暢に話し、大らかな話し振りは日本人離れしているという評価を何度か聞いたことがある。
 日本外交が海外で余りパッとしないのは、その最前線の外交官の政治力がもう一つだからだ、と日頃、感じてきた。決まったレール上を走らせたら問題はないが、自分で判断し、考えることには乏しさや脆弱さを感じてきた。
 だから、というわけではないが、その大らかな“食いっぷり”からも感じられる器の大きさを当方は密かに評価していたほどだ。
 なお、当コラムの影響とは思わないが、ここ1カ月ほど、豪華な昼食を控えられてきた、という噂がウィーンの日本人社会で流れている。
 どうか、つまらないことに躓かれることなく、本来の外交官としての使命を全うしてほしい。日本は今日、多くの難問に直面している。日本の代表の一人として、その経験と手腕を大いに発揮していただきたいのだ。
 もちろん、「公費の浪費」は決して小さな問題ではない。それは是正されなければならない。しかし、軌道修正された後は本来の公務に全力を投入していただきたい。公使に対する期待は大きい。忘れないでいただきたい。

ウィーンの「中秋の名月」

 年をとったせいか、夜中に目を覚ましてトイレに行く回数が増えた。その日もそうだった。家人が飼っている2匹のモルモットが餌を漁っている音がする。
 「元気か」と声をかけた後、窓を開けてバルコニーに出た。新鮮な空気を吸いたくなった。夜空をみたら、整った上品な顔をした満月が目に飛び込んできた。
 その話を朝食時に家人に話すと、妻は「今月22日は中秋の名月に当たる」と教えてくれた。日本ではさまざまなお月見のイベントが開かれるという。韓国では多くの国民が故郷に戻り、家族と一緒に秋夕(チュソク)を祝う習慣があるという。
 日本にいた時、「中秋の名月」を楽しんだことがなかった。だから、「日本の中秋の名月」とベートーヴェンやモーツァルトも鑑賞しただろう「ウィーンの中秋の名月」を比較できない。「名月はどこでも名月だ」といわれるかもしれない。
 その翌日の夜中、目を覚ました。9月に入ると急速に涼しくなった。「ウィーンの中秋の月」はひんやりとした秋風の中、穏やかな月光を放っていた。
 「ベートーヴェンにはピアノソナタ第14番、『月光』という曲があった」と思い出した。「彼は中秋の名月を鑑賞しながら、あの美しい『月光』のメロディを作曲したのだろうか」と漠然と考えた。
 ベートーヴェンはハイリゲンシュタットの町を散策しながら、地元の教会に通い、あの有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた。ベートーヴェンが「月光」を作曲した1801年頃は耳鳴りで苦悩していた時代だ。当方は「月光」を聴く度に不思議と心が落ち着く。
 「ウィーンの中秋の名月」をベートーヴェンは「月光」の中で表現し、その中で全ての苦悩を昇華していったのだろうか。
 ハイリゲンシュタットは現在、ウィーン市19区だ。高級住宅街だ。当方が現在住んでいるオッタクリングは16区だ。通称、労働者の町だ。朝が早いこともあって、市民は早くベットに着く。バルコニーから「ウィーンの中秋の名月」を楽しむ住民など多くはいないだろう。
 日本で鑑賞の機会がなかった「中秋の名月」を当方はここウィーン市の「労働者の町」でやっと鑑賞するチャンスを得た。

「死」は新たな世界への出発

 世界基督教統一神霊協会(通称・統一教会)の創設者、文鮮明師は人間の死が悲しいことではなく、新たな霊界への出発の瞬間だと指摘し、従来の葬式を変革し、昇華式なるセレモニーを開拓した。それから黒色が覆っていた葬式から白色の礼服で輝く昇華式が確立された。
 人類はこれまで「死」を宿命とし、回避できないものと受け止めてきた。死者とはコミュニケーションができないと考え、生きている者は死者のことを忘れていく努力をしてきた。
 文師はいう。人間は胎児、地上生活、そして霊界と3つの世界を体験しながら完成へと成長していくという。胎児の時は母親の羊水で生き、地上では万物を摂取し、霊界では神の愛を呼吸して生きていくというのだ。
 新井満作曲の「千の風になって」が多くの人々に歌われ出す前に、文師は霊界の存在を語り、米映画「Frequency」(2000年作、デニス・クウェード主演)が上映される前から霊界の実相を説明してきた。
 米国TV番組に「Ghost Whisperer」というヒット番組があった。主人公の女性はこの「死んだ人々」と交信できる。彼女は死んだ人々の悲しみ、恨みを聞き、それを解き明かすことで、彼等を所定の霊界に送る、というストーリーだ。文師はその教えの中で、霊界に行った霊人復活のメカニズムを克明に久しく明らかにしている。
 文師の霊界の証明はわれわれの意識の大変革をもたらすメッセージだ。私たちは永遠に生き、亡くなった父母、友人、恋人と再会できることを、これほど確信を持って語り続けてきた宗教指導者が過去、いただろうか。
 「愛する」ことが哀しい行為となったのは、ある日、その愛する人と決別の時を迎えるという「不安」が払拭できなかったからだ。
 誰も気がつかない時、文師は愛からこの決別の宿命を解放し、愛が死を乗り越えたとして、「愛勝日」という祝日を設けている。
 文師は霊界の世界を説明し、われわれに提示してきた。その間、数多くの批判と中傷を受けながらも、倦むことなく語り続けてきた。
 そのような人が過去、いただろうか。

法王訪英の成果とBBC

 ローマ・カトリック教会の最高指導者ローマ法王べネディクト16世の歴史的訪英イベント(9月16日〜19日)を4日間、中継した英国放送協会(BBC)に国民から約750件の苦情が届いたという。同国日刊紙デーリー・テレグラフが22日、報じた。
 それによると、約400件は「放送時間が余りにも多かった」というもの。約150件は「放送内容がローマ法王寄りだった」、100件は「法王に批判的過ぎた」という反対意見だ。ちなみに、「放送は良かった」と評価した数は100件に過ぎなかった。
 BBCは公共放送として国賓ローマ法王べネディクト16世の4日間の訪英期間中、終始中継してきた。ロンドンやバーミンガムの法王野外礼拝も中継した。その中継放送の総時間はサッカーワールドカップ(W杯)南アフリカ大会のそれを凌いだというから、カトリック信者ではない英国民にとって確かに「余りにも中継時間が多かった」という苦情が飛び出すのだろう(BBC放送はBBC2でも放送し、ラジオ4でも流した)。
 それに対し、BBC側は「ローマ法王の訪英は非常に歴史的意義がある。英国民にとって重要なイベントだった」と説明している。
 一方、ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁のロンバルディ報道官は「法王の訪英が成功したのはテレビ局の徹底した中継放送のお陰だ。英国国民は番組を通じてローマ法王への偏見を無くしていった」と分析している。
 バチカンによると、法王の訪英が終わった直後から、数百人の国民が英国カトリック教会インフォメーション事務所に電話するなど、カトリック教会への関心が高まってきたという。
 ちなみに、訪英前は、「べネディクト16世の訪英は、カトリック教会聖職者の未成年者への性的虐待問題や英国国教会との関係修復問題など難問が多い」として、厳しい司牧が予想されていた。英国メディアでもドイツ出身のローマ法王に対して批判的な記事が多かった。無神論者グループは「聖職者の性的虐待問題の総責任者であるローマ法王を逮捕すべきだ」と主張していたほどだ。
 ところが、英国のリベラル派日刊紙インディペンデントは20日付で、「法王の訪英は予想した以上に良かった」と評価しているほどだ。
 83歳のべネディクト16世は聖職者の性犯罪の犠牲者に会い、謝罪を表明する一方、「神を追放し、多くに人々、特に、ユダヤ人を迫害したナチス独裁政権に対する英国の抵抗運動を高く評価する」と述べるなど、その低姿勢な言動が英国民のドイツ出身のローマ法王への偏見を克服させたのかもしれない。

「イスラエルの核能力」決議案

 国際原子力機関(IAEA)第54回年次総会で中東諸国は議題20「イスラエルの核能力」に対し、前回と同様に決議案を提出した。ここでは総会最終日に討議予定の議題20の決議案を先駆けて読者に紹介する。決議案内容は当日、一部修正されたり、議長声明に取って代わられるかもしれないが、読者に中東諸国の見解を紹介したい。

 (同決議案は21日現在、アルジェリア、バーレーン、エジプト、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モーリタニア、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエメンの18カ国が共同提案国)

 年次総会は……

 ……年次総会で採択された決議、特に、この問題で第53回年次総会が採択した決議と議長声明を想起し
 ……イスラエルに対しその核関連施設をIAEAの核査察協定に置くよう求めた国連安保理決議487(1981年)の想起も求める。
 ……1995年のNPT再検討と拡大会議で採択された中東に関する決議を思い出して欲しい。そこで中東地域に非核査察の核関連施設の存在を懸念している。
 ……イスラエルを除いて全ての中東諸国がNPTの加盟国という事実を歓迎した2000年のNPT再検討会議を想起し、2010年の再検討会議では、中東でのNPTの普遍性を実現するためには、イスラエルのNPT加盟とその核施設をIAEAの包括的核査察協定下に置く事の重要性を確認したことを想起、
 ……NPTに加盟し、地域の全ての核施設をIAEAの包括的核査察協定下に置くことが、中東地域の核フィリー地帯の設置のためには不可欠な事だということを認識し
 ……核フリー世界への最近の国際的イニシャテブを歓迎する。


 1)中東地域の安全と安定にとって核拡散で生じる脅威に懸念を表明
 2)イスラエルの核能力に懸念を表明、同国がNPTに加盟し、全ての核関連施設をIAEAの包括的核査察協定下に置く事を要求
 3)IAEA事務局長にはこの目的を実現するために懸念国と連携を取ることを要求
 4)同議題を今後とも継続することを決め、事務局長が理事会、第55回年次総会で決議履行に関する報告をするよう求める。

(同決議案の内容は前回の年次総会のそれと酷似している)


 参考までにイスラエル側の返答を紹介しておく。イスラエル原子力エネルギー委員会のシャウル・ホレフ事務局長(Shaul Chorev)は21日、中東アラブ諸国の批判に対し返答している。

 1)NPTに加盟することを要求するが、イラン、イラク(フセイン時代)、シリア、リビアの4カ国はNPT加盟国だが、その国際義務を無視して未申告の核関連活動を行ってきたことが明らかになっている。NPTメンバーという覆いに隠れて核兵器の製造を目論んでいる。すなわち、NPT加盟が即、中東の安全、安定を保証するものでないことを明確に実証している。

 2)わが国はIAEAのMESA国メンバーだが、中東アラブ諸国はわが国の帰属を拒否している。一国の主権と権利を認めない中東アラブ諸国に取り囲まれたわが国の安全こそ脅かされている。イスラエルの権利が否定されている中で、どうして大量破壊兵器フリー地帯を設置できるだろうか、

 3)わが国への批判は、国際社会の関心を危険な核拡散の真なる挑戦から逸らすための戦略だ。


【短信】

   不法な核・放射性物質の取引件数

 国際原子力機関(IAEA)が22日、記者会見で明らかにしたところによると、1993年から2009年12月までに確認された核・放射性物質の不法な取引総件数は1773件だった。
 IAEAは1995年、「不法な核関連物質の取引」対策と「核物質の安全強化」のため、核関連物質の不法取引に関するデータベース(ITDB)を設置し、「不法取引と他の未公認活動の不祥事に関する情報システム」を構築してきた。同システムに今年9月現在、111カ国が加盟している。
 IAEA関係者によると、1773件の核関連物質、放射性物質の不法取引に関係した不祥事(確認済み)のうち、351件は未公認の核関連物質の所有、不法な取引と使用、それに関連した犯罪活動だ。その内、15件は高濃縮ウラン(HEU)やプルトニウムが関与していた。
 また、500件は核・放射性関連物質の「窃盗と損失」した不祥事だ。また、870件は他の未公認な活動だ。
 ちなみに、昨年7月から今年6月の期間に222件の不祥事がITDBに既に報告されている。その内、21件は不法な核関連物質の所有とそれに関連した犯罪活動、61件は窃盗と損失、140件は未公認の活動だ。なお、この期間、5件はHEU,ないしはプルトニウムが関与していた。
 ちなみに、トレントとしては、核・放射性物質の「不法な所有、取引件数」は1994年をピークに下降傾向にある一方、核関連物質の「窃盗や損失件数」は2006年をピークに減少、「他の不法な活動件数」は2000年に入って増加傾向にある。

金正哲氏はどこに?

 北朝鮮で28日、「党最高指導機関選挙」のため歴史的な朝鮮労働党代表者会が開催されるはずだ。一旦、平壌に上京した地方の党代表者も帰郷した後、再び旅路の準備をしなければならない。
 参勤交代ならば2度も上京すればかなりの出費となる。謀反者にとって重荷だが、都の殿様にとっては好都合だ。北朝鮮の場合はどうだろうか、と考えていた。
 その時、「そういえば彼はどうしているだろうか」という思いが突然、湧いてきたのだ。「彼」というと、かなり知り合いの感じを与えるが、当方は彼とは一面識もない。「彼」とは金正哲氏のことだ。金正日労働党総書記の次男で今月25日、29歳の誕生日を迎えるはずだ。「はずだ」と書いたのは、確認が取れないからだ。「正哲氏がいま、何をしているのか」「ひょっとしたら、亡くなってはいないか」など、いろいろな推測が飛び出してくるが、ある意味で当然かもしれない。
 韓国メディアの情報では、正哲氏は「女性ホルモン過多分泌症」に悩んでいるといわれ、健康問題が指摘されて久しい。
 金総書記の料理人を13年間務めた藤本健二氏はその著書「金正日の料理人」(扶桑社)の中で「金正日は、正哲王子のことを、『あれはダメだ。女の子みたいだ』と、よく言っていた」と紹介している。また、正哲氏がバスケットボールが好きなうえ、映画「マトリックス」が大好きなこと、高級車ジャガーを運転していたこと、などを伝えている。
 いずれの情報も不確実性は払拭できない。正哲氏について知られていることは、(1)スイスのインターナショナルスクールに偽名で留学していたこと、(2)2006年6月、欧州を訪問し、エリック・クラプトンのファンでコンサートを何度も訪れたこと、ぐらいであろうか。
 金総書記には3人の息子がいる。後継者としては3男の正銀氏が決定したという。しかし、訪中したカーター元米大統領によると、中国の温家宝首相が「金総書記が正銀氏の後継者問題について『西側の間違った噂』と否定した」という情報が流れてきたばかりだ。
 ということは、後継者レースはまだ終了していないのかもしれない。日本密入国問題(2001年5月)でハンディを背負う長男の正男氏を除くと、俄然、正哲氏が急浮上してくる。ただし、ここでも「正哲氏は政治に関心はなく、後継者になる意思はない」という情報が昔、流れていたことを思い出す。
 大方の見方では、正銀氏の後継は「既定の事実」だが、正哲氏の誕生日の25日を間近に控えたこの時、正哲氏の置かれた立場や事情について考えてみても悪くないかもしれない。

前・現独外相が発信したニュース

 独メディアが報道したところによると、メルケル連立政権に参画している独自由民主党(FPD)の党首、ギド・ウェスターウェレ副首相兼外相(48)が17日、ボンで長年のボーイフレンド、実業家ミヒャエル・ムロンツさん(43)と正式に結婚したという。
 同外相は自身が同性愛者であることを既に公表している。ムロンツさんを公務の外遊に随伴したことが明らかになり、メディアに叩かれたばかりだ。2人は今回、正式に結婚したわけだ。同国では「登録パートナー法」に基づき、婚姻登録した同性カップルは異性間結婚とほぼ同等の権利が認められる。
 10年前だったら、同性愛同士の結婚はもっとセンセーショナルに報じられたかもしれない。ただし、現職閣僚が同性愛者と正式に結婚したケースはドイツの政界では初めてだ。FPDと連立を組むキリスト教民主同盟(CDU)のメルケル首相は外相の結婚式には出席していない。
 一方、ウェスターウェレ外相の前任者、フランク・ヴァルター・シュタインマイヤー前外相(現・社会民主党=SPD=院内総務)は先月23日、「腎臓移植を待つ妻に腎臓を提供するために移植手術を受ける。そのため、数週間、政治職務から遠ざかることになる」と記者会見で公表した。シュタインマイヤー氏(54)は2005年から09年まで外相を務め、07年から09年までは副首相も兼任してきた。
 同氏の妻エルケ夫人とは学生時代から知り合いで1995年に結婚。夫人は行政裁判官として活躍してきたが、腎臓を悪化し、腎臓移植を登録したが症状が悪化し、提供者が見つかるまで待機できなくなった。そのため、同氏は自分の腎臓を夫人に提供することにしたという。
 なお、シュタインマイヤー氏と同じ様に、夫人に自分の腎臓を提供したオーストリアの政治家を一人、知っている。10年間政権を維持した社民党フラ二ツキ元首相(1987年〜97年)だ。同元首相も退任後、クリスチーネ夫人に自分の腎臓を提供している。
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