北朝鮮の金正日労働党総書記が26日未明、専用列車で中朝国境を越え、中国吉林省を訪れ、父親の故金日成主席が2年間通った毓文中学校など所縁の場所を訪問し、翌日の27日に吉林省長春市の迎賓施設「南湖賓館」で胡錦涛中国国家主席と首脳会談をした。そして28日夜に吉林省長春市の長春駅を出発し、同省の延辺朝鮮族自治州に向かった。30日には黒竜江省ハルビン市のハルビン駅を出発した、という一連のニュースが流れてきた(中国外務省は30日午後、「金総書記の訪中と胡錦涛中国国家主席との首脳会談開催」を公式に確認した)。
ここでは訪朝したカーター元米大統領との会見をすっぽかした金総書記の意図と、北京から約1000キロも離れた地方都市で金総書記との会見に応じた中国側の事情を考えてみた。
金総書記は今年5月にも訪中している。3カ月後の再訪中にもかかわらず、中国側が地方都市で首脳会談に応じた理由として、中国の対北配慮説がある。また、9月上旬の党代表者会で表舞台に登場する金総書記の後継者、3男の正銀氏との顔見せ説もあった。
上記の2説は、残念ながら、根拠が薄い。特に、後継者問題のためわざわざ地方都市で首脳会談を開く必要はない。正式に発表された段階で北京で会見できる。そもそも後継者問題は北の国内問題であり、中国側がその是非を主張できる立場ではない。
それでは何故、胡錦涛主席は金総書記と会見したのか。ズバリ、中国側は「北朝鮮が危ない」との情報を入手していたからだ。多分、駐平壌の中国大使を通じて「北朝鮮が韓国に対して戦争を仕掛ける危険性が高まった」という電文を受け取っていたのではないか。
北朝鮮は韓国哨戒艦「天安」爆破事件、国連安保理制裁決議などで国際社会から一層孤立化する一方、今夏の豪雨による水害などで食糧不足は深刻化してきた。国民の忍耐も限界にきている。その上、9月上旬の党代表者会では後継者正銀氏が公式に表舞台に登場する時期だ。
金総書記としてはなんとか国内の経済状況を急速に改善しなければならないが、多くの選択肢はない。国際支援は期待薄。唯一の道は中国からの大規模な経済支援だ。
しかし、北京側は「6カ国協議の進展と非核化の公約」を条件に挙げ、対北支援を渋ってきた。5月の中朝首脳会談がうまくいかなかった主因は、中国側が経済支援に難色を示したからだ。
金総書記に残されたカードは「戦争」だ。対韓戦争となれば隣国・中国も無関係ではいられない。金総書記は「国際制裁下で厳しい一方、韓国は米国と一体化してわが国の崩壊を目論んでいる」と主張、「わが国は主権保持のため韓国に対して戦争を仕掛ける。軍事支援を宜しくお願いしたい」と中国側に要請したのではないか。
それを聞いた中国側はビックリだ、朝鮮半島で戦争が再発すれば、南北両国だけではなく、中国も大きな被害を受けることは必至だ。6カ国協議のホスト国の面子が潰れるだけではない。中朝軍事協力に基づき、北朝鮮の防衛義務すらでてくる。世界の経済大国の道を邁進してきた中国にとっては最悪のシナリオだ。
金総書記は中国側のこの弱点を巧みに利用することを決め、カーター米元大統領の訪朝には目をくれず、中国の地方都市での首脳会談に臨んだはずだ。
ちなみに、金総書記が故金主席の所縁の地を巡礼したのはあくまでも国内向けだ。総書記の訪中の主要目的は中国からの緊急大量経済支援の獲得にあったはずだ。それも「戦争」カードを駆使してだ(金総書記は、対韓戦争が北側の崩壊を意味することを誰よりも知っている)。
それに対し、中国側は「戦争は絶対支持できない」との立場を強調する一方、北側の暴発を回避するために最終的には大規模な経済支援を緊急実施すると約束せざるを得なかったのではないか。
この推測が正しかったとすれば、カーター元米大統領との会見をすっぽかしたために生じる対米不協和音という代価を払ったとしても、金総書記の再訪中は成功したわけだ。
ここでは訪朝したカーター元米大統領との会見をすっぽかした金総書記の意図と、北京から約1000キロも離れた地方都市で金総書記との会見に応じた中国側の事情を考えてみた。
金総書記は今年5月にも訪中している。3カ月後の再訪中にもかかわらず、中国側が地方都市で首脳会談に応じた理由として、中国の対北配慮説がある。また、9月上旬の党代表者会で表舞台に登場する金総書記の後継者、3男の正銀氏との顔見せ説もあった。
上記の2説は、残念ながら、根拠が薄い。特に、後継者問題のためわざわざ地方都市で首脳会談を開く必要はない。正式に発表された段階で北京で会見できる。そもそも後継者問題は北の国内問題であり、中国側がその是非を主張できる立場ではない。
それでは何故、胡錦涛主席は金総書記と会見したのか。ズバリ、中国側は「北朝鮮が危ない」との情報を入手していたからだ。多分、駐平壌の中国大使を通じて「北朝鮮が韓国に対して戦争を仕掛ける危険性が高まった」という電文を受け取っていたのではないか。
北朝鮮は韓国哨戒艦「天安」爆破事件、国連安保理制裁決議などで国際社会から一層孤立化する一方、今夏の豪雨による水害などで食糧不足は深刻化してきた。国民の忍耐も限界にきている。その上、9月上旬の党代表者会では後継者正銀氏が公式に表舞台に登場する時期だ。
金総書記としてはなんとか国内の経済状況を急速に改善しなければならないが、多くの選択肢はない。国際支援は期待薄。唯一の道は中国からの大規模な経済支援だ。
しかし、北京側は「6カ国協議の進展と非核化の公約」を条件に挙げ、対北支援を渋ってきた。5月の中朝首脳会談がうまくいかなかった主因は、中国側が経済支援に難色を示したからだ。
金総書記に残されたカードは「戦争」だ。対韓戦争となれば隣国・中国も無関係ではいられない。金総書記は「国際制裁下で厳しい一方、韓国は米国と一体化してわが国の崩壊を目論んでいる」と主張、「わが国は主権保持のため韓国に対して戦争を仕掛ける。軍事支援を宜しくお願いしたい」と中国側に要請したのではないか。
それを聞いた中国側はビックリだ、朝鮮半島で戦争が再発すれば、南北両国だけではなく、中国も大きな被害を受けることは必至だ。6カ国協議のホスト国の面子が潰れるだけではない。中朝軍事協力に基づき、北朝鮮の防衛義務すらでてくる。世界の経済大国の道を邁進してきた中国にとっては最悪のシナリオだ。
金総書記は中国側のこの弱点を巧みに利用することを決め、カーター米元大統領の訪朝には目をくれず、中国の地方都市での首脳会談に臨んだはずだ。
ちなみに、金総書記が故金主席の所縁の地を巡礼したのはあくまでも国内向けだ。総書記の訪中の主要目的は中国からの緊急大量経済支援の獲得にあったはずだ。それも「戦争」カードを駆使してだ(金総書記は、対韓戦争が北側の崩壊を意味することを誰よりも知っている)。
それに対し、中国側は「戦争は絶対支持できない」との立場を強調する一方、北側の暴発を回避するために最終的には大規模な経済支援を緊急実施すると約束せざるを得なかったのではないか。
この推測が正しかったとすれば、カーター元米大統領との会見をすっぽかしたために生じる対米不協和音という代価を払ったとしても、金総書記の再訪中は成功したわけだ。