ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2010年02月

独司教会議の「性犯罪防止」計画

 独ローマ・カトリック教会司教会議は25日、フライブルクで開催した春季会議でイエズス会系学校などで発覚した聖職者(修道僧)の未成年者への性犯罪問題について協議し、聖職者の性犯罪防止の「4項目計画」(VierーPunkte−Plan)を採択した。


 以下、「4項目計画」の概要を紹介する。


1)真実の暴露
 未成年時代に性犯罪の犠牲となった者はその後、生涯にわたってその傷を抱え苦悶していく。先生や教育者が若き人間の信頼を傷つけ、裏切る。その犯罪人が聖職者の場合、問題はより深刻である。聖職者の性犯罪はその聖職目的に真っ向から反対する行為だ。われわれドイツ教会の司教たちは教会の兄弟たちによって行われた犯罪行為に強い衝撃を受ける。われわれは誤った配慮を持たず、犯罪の真摯な解明を望む。

2)基本ガイドラインの適応
 われわれは8年前(2002年9月26日)、聖職者の未成年者への性犯罪に対応する基本ガイドラインを採択した。その方針は全ての司教区に適応される。ドイツ修道会責任者も同方針を受け入れた。聖職者の性犯罪をもみ消したり、隠蔽することを阻止するものだ。犠牲者とその家族に心療治療など支援を提供し、各司教区の相談担当官は疑惑問題などで相談に乗る準備をする。同時に、早期に検察側に始動を求める。われわれは関係当局に対し万全の協力を惜しまない。


3)防止策の強化
 性犯罪を行った聖職者の聖職の再開許可を下す前に、われわれ教会側は公認された専門家の意見を求める。将来に同じことが生じないため、教会側は学校関係者や未成年者の教育担当官と連係を強化していく。
 ドイツ国内にも子供や青少年への性犯罪に対応する公共や民間の機関が多く存在する。教会側は「教会内での性犯罪防止」のためどのような対策が必要かをそれらの機関から学びたい。同時に、われわれ司教は犠牲者との対話を行い、どうしたら傷を癒すことができるかなどについて話し合いたい。
 専門家たちが指摘しているように、神父の独身制は、未成年者への性犯罪の主因ではない。独身制はそれを実施できる、必要な人間的、情的成熟を有するものにだけ課せられたものだ。性犯罪を防止するために慎重な神父教育が必要だ。だから、独身制が課せられた神父候補者へ心理的成熟を強化するため、これまで以上に支援を提供していく。


4)司教会議内の責任者任命
 トリーア教区のシュテファン・アッカーマン司教(Stephan Ackermann)を聖職者の性犯罪問題担当の司教会議特使に任命した。特使の職務を支援するため司教会議事務所内にオフィスを開設。同時に、教会内の聖職者の性犯罪に関する連邦全土にインフォメーションのホットラインを開く。



 この「4項目計画」を一読すると、独司教会議関係者が聖職者によって繰り返された未成年者への性犯罪に大きな衝撃を受けていることが分る。「4項目計画」が履行され、聖職者の性犯罪が再発しないことを願うが、残念ながら、聖職者の性犯罪は1979年代、80年代だけではない。今も行われている。性犯罪対策の指針が決定された後も多発しているテーマだ。
 第3項目で「専門家も指摘しているように、神父への独身制が性犯罪を誘発する主因ではない」と説明している。その背後には、揺らぐ「聖職者の独身制」を必死に堅持しようとする教会側の思惑が色濃く反映している。聖職者の独身制がその性犯罪の要因と認めた場合、教会という機関が致命的欠陥を内包していることを認めることになる。だから、絶対、回避しなければならないわけだ。
 「独身制はそれを堅持できる能力がある聖職者だけに課せられている」というが、それではオーストリア・カトリック教会最高指導者だったグロア枢機卿の性犯罪はどうなのか。彼は一神父ではなく、教会最高ポストの枢機卿だったのだ。枢機卿でも守ることができない独身制をどうして神父候補生にその堅持を要求できるか。
 改革や改善には痛みが伴うと共に、財政負担も増える。しかし、バチカン法王庁教理省長官を長く務めたローマ法王べネディクト16世も認めているように、聖職者の独身制は教義(ドグマ)ではないのだ。変えられる慣習だ。教会指導者がこれ以上「謝罪」表明を強いられない為にも、悪習は即変えるべきだ。

崩れる権威と「イワンの叙事詩」

 ドイツの新旧両教会で過去の不祥事が次々と明らかになってきた。既に報じたが、ベルリンのイエズス会系学校で過去、修道僧が100件を越える未成年者への性犯罪を繰り返していたことが発覚したが、バイエルン州ミュンヘンのべネディクト修道院でも同様、修道僧が性犯罪を犯していたことが判明した。聖職者の犯罪が今後も飛び出してくる可能性は十分考えられる。
 一方、ドイツ福音主義教会(EKD)協議会議長、マルゴット・ケスマン監督(ハノーファー福音ルター派州教会監督)は24日、アルコールを飲んだ後、運転して捕まったことを理由に議長職辞任を表明した。同議長は「議長としての権威が失われた」と自ら述べている。
 キリスト教会聖職者の問題だけではない。程度の差こそあれ、政界、スポーツ界、ビジネス界でもこれまで隠されてきた汚点や不祥事が次第に明らかになってきた。換言すれば、既成の権威が積み木の家のように崩れ落ちてきたのだ。
 現代人が感じている“時代の閉塞感”は、古い権威が崩れる一方で、新しい権威を見出せないところから生じるのかもしれない。
 しかし、新しい権威(者)は遅かれ早かれ現れるだろう。例えば、2000年前、「権威ある者」(マルコによる福音書)としてイエスが登場したが、古い権威に生きていたユダヤ社会はその新しい権威を受け入れることができなかった。もちろん、それなりの理由はあった。イエスが語り、行った内容は「モーゼの五書」の内容に反しているように思われたからだ。
 もう一つの例を挙げる。ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の中でイワンが自作の「大審問官」という題の叙事詩を説明する個所がある。舞台は16世紀のスペイン。恐ろしい異端審問が席巻していた時代だ。キリストが現れてきて多くの奇跡を行う。群集は彼に救いを求める。その状況を見ていた大審問官の枢機卿は顔を曇らして「キリストを捕らえよ」と命令する。牢獄に入れられたキリストの前に大審問官が来て、「お前はキリストだろう。お前にはもう昔言ったことを付け加える権利はない。何故今頃になってわれわれの邪魔をするのだ。われわれはもはやお前にではなく、彼(悪魔)についているのだ。これがわれわれの秘密だ」(新潮文庫「カラマーゾフの兄弟」原卓也訳)という。
 「イエスの生涯」と「イワンの叙事詩」は非常に重要な内容を含んでいる。新しい権威(者)が現れた時、同じ様なことが起きるかもしれないのだ。
 「新しい権威」と標榜し、登場した者が既成の権威から歓迎されるのを聞いた時、警戒しなければならない。新しい権威(者)は既成の権威(者)から歓迎されることはないのだ。「歓迎される」とすれば、それは古い権威の中に留まっていることを証明するだけだ。
 逆に、多くの迫害、弾圧、中傷、誹謗を受ける者が登場した場合、われわれは注意しなければならないだろう。ひょっとしたら、その者こそ新たな「権威ある者」かもしれないからだ。

「イラン核兵器製造」疑惑を考える

 国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は18日、「イラン核査察協定履行報告書」を理事国35カ国に提出した。天野氏はそこで初めて「イランの核兵器製造の可能性」について言及した。それに対し、イランのIAEA担当ソルタニエ大使は「報告書ではウランの濃縮度が3・5%から20%に高められたという事実だけが新しい。その以外の内容はこれまで明らかになった内容の繰り返しに過ぎない。天野氏の報告は米国の見解をコピーしただけだ」と反論した。
 3月1日から今年最初の定例理事会が開催されるが、そこで天野事務局長の「イランの核兵器製造」の懸念について、理事国間で激しいやり取りが予想される。
 そこで全10頁からなる「イラン報告書」の中で、天野事務局長が「イランの核兵器製造の可能性」を言及した「あり得る軍用次元」を紹介する。天野氏の「イランの核兵器製造への懸念」に正当性があるか、それとも「米国のプロパガンダのコピーに過ぎない」と主張するイラン側が正しいか、読者と一緒に考えてみたい。


E. Possible Military Dimensions

40. In order to confirm, as required by the Safeguards Agreement, that all nuclear material in Iran is in peaceful activities, the Agency needs to have confidence in the absence of possible military dimensions to Iran’s nuclear programme. Previous reports by the Director General have detailed the outstanding issues and the actions required of Iran, including, inter alia, that Iran implement the Additional Protocol and provide the Agency with the information and access necessary to: resolve questions related to the alleged studies; clarify the circumstances of the acquisition of the uranium metal document; clarify procurement and R & D activities of military related institutes and companies that could be nuclear related; and clarify the production of nuclear related equipment and components by companies belonging to the defence industries.

41. The Information available to the Agency in connection with these outstanding issues is extensive and has been collected from a variety of sources over time. It has also broadly consistent and credible in terms of the technical detail, the time frame in which the activities were conducted and the people and organizations involved. Altogether, this raises concerns about the possible existence in Iran of past or current undisclosed activities related to the development of a nuclear payload for a missile related aspects, run by military related organizations.


42. Among the activities which the Agency has attempted to discuss with Iran are: activities involving high precision detonators fired simultaneously; studies on the initiation of high explosives and missile re- entry body engineering; a project for the conversion of UO2
to UF4, known as “the green salt project”, and various procurement related activities. Specifically, the Agency has, inter alia, sought clarification of the following: whether Iran was engaged in undeclared activities for the production of UF4 (green salt) involving the Kimia Maadan company; whether Iran’s exploding bridgewire detonator activities were solely for civil or conventional military purposes; whether Iran developed a spherical implosion system, possibly with the assistance of a foreign expert knowledgeable in explosives technology; whether the engineering design and computer modelling studies aimed at producing a new design for the payload chamber of a missile were for a nuclear payload; and the relationship between various attempts by senior Iranian officials with links to military organizations in Iran to obtain nuclear related technology and equipment.

43. The Agency would also like to discuss with Iran: the project and management structure of alleged activities related to nuclear explosives; nuclear related safety arrangements for a number of the alleged projects; details relating to the manufacture of components for high explosives initiation systems; and experiments concerning the generation and detection of neutrons. Addressing these issues is important for clarifying the Agency’s concerns about these activities and those described above, which seem to have continued beyond 2004.

44. Since August 20078, Iran has declined to discuss the above issues with the Agency or to provide any further information and access (to locations and/or people) to address these concerns, asserting that the allegations relating to possible military dimensions to its nuclear programme are baseless and that the information to which the Agency is referring is based on forgeries.

45. With the passage of time and the possible deterioration in the availability of information, it is important that Iran engage with the Agency on these issues, and that the Agency be permitted to visit all relevant sites, have access to all relevant equipment and documentation, and be allowed to interview relevant persons, without further delay. Iran’s substantive engagement would enable the Agency to make progress in its work. Through Iran’s active cooperation , progress has been made in the past in certain other areas where questions have been raised; this should also be possible in connection with questions about military related dimensions.

    


 上記の内容を一読すれば、イランの一連の核関連活動が「核兵器製造の疑惑を誘発する」と推測し、懸念を表明することは核エネルギーの平和利用を掲げるIAEAとしては当然の対応といえるだろう。イランの「核兵器製造疑惑」は、「限りなく黒に近い灰色」だ。
 イランが「わが国の核計画は核エネルギーの平和利用を目的としたものだ」と主張し続けるためには、IAEAが提示した未解決問題に対し、早急に返答すべきだろう。国際社会の一員として、イランには「説明責任」がある。

「デート・レイプ薬」の拡大に警告

 国際麻薬統制委員会(INCB)は24日、ウィーン市内で2009年度年報を公表した。年報では今回、性犯罪目的で使用される通称デートレイプ薬(Date−Rape Drugs)に言及し、「性犯罪目的で薬物が使用されるケースが増加してきた」と警告、「加盟国は薬品メーカーと連係し、厳格な管理強化を実施すべきた」と強く要求している。
 デートレイプ薬として、ロヒブノールと呼ばれる催眠鎮静薬やカンナビスなどが利用され、水やアルコール類に入れて、相手の意識を失わせる。
 また、「処方薬物」の乱用にも大きな懸念を表明、「処方薬物の乱用は隠された問題だ」と強調し、その危険性の啓蒙を説いている。
 特に、米国で「処方薬物」の乱用が著しいと指摘し、処方薬物の過剰摂取で昨年死去したポップス界の著名人の突然死を挙げ、「若い世代に処方薬物の乱用が拡大してきた。処方薬物の恐ろしさを正しく伝える必要性がある」と訴えている。
 また、インターネットを利用した薬物の売買が不法密売に利用されることを阻止するために、政府に「インターネットによる薬物類の売買の禁止、ないしは厳格な管理の実施」を求めている。
 地域別報告では、世界の最大アヘン生産国アフガニスタンのアヘン栽培面積、生産量は昨年度、前年度について減少したが、「アフガンは依然、世界最大の不法ヘロイン生産国であり、不法栽培カンナビス生産国という事実には変らない」と記述し、国際社会にアフガンの支援継続を求めている。同国のアヘン生産量は昨年度、約6900トンで前年度比で約800トン減少した。
 なお、昨年は不法アヘンを監視する「国際アヘン委員会」が設置されて100年目だった。年報では、「1909年の国際アヘン委員会の設置は不法麻薬対策で国際社会が一体化した最初の出来事であった」と評価している。

脱北者の叫び、「私は馬鹿だった」

 北朝鮮情報誌「デイリーNK」(日本語版)は米紙ワシントン・ポスト紙の脱北者オ・キルナム氏とのインタビュー記事(2月22日)を紹介している。「デイリーNK」のタイトルは「家族を残して脱北したオ・キルナム氏、『私は馬鹿だった』」だ。
 この記事を読んで、当方は涙を禁じ得なかった。オ氏が北に残してきた妻、娘のような国民が15万人以上、北の政治犯収容所で今、この瞬間も生きている、という現実に強い憤りを感じる。
 読者には米紙を直接読まれるか、「デイリーNK」を読んでいただくことを願う。ここではオ氏のプロフィールを「デイリーNK]の記事から抜粋して紹介する。
 韓国の留学生オ氏はドイツに留学していた1985年、妻と2人の娘と共に北朝鮮に亡命した。韓国の権威主義的政治に批判的だったオ氏は「肝炎にかかっていた妻に治療を受けさせるとともに、仕事を保証する」と誘ってきた北工作員の話を信じ、北に亡命した。
 しかし、北ではオ氏の妻は治療を受けることもできず、山岳地帯の部隊に連行された。オ氏の妻は最後まで「北朝鮮に行きたくない」といっていたが、オ氏は「妻の声を無視していた」と苦渋の思いで述懐している。
 北朝鮮はオ氏に「ドイツに戻り、韓国留学生を北朝鮮に亡命させよ」と指示したという。オ氏は1992年、ドイツに行く途上、デンマークのコペンハーゲンの韓国大使館に自首したという。オ氏の亡命直後、オ氏の妻と2人の娘は15号収容所に収監された。
 「19年前にオ氏は、ドイツにいる非公式の北朝鮮機関員を通じて、妻の自筆の手紙と雪が積もっているところで撮った写真、娘の声が録音されたテープを渡された。娘は、お父さんに会いたいと涙声で訴えていたという」(「デイリーNK」)。
 ドイツでは1980年代、オ氏のような韓国留学生が北の工作員にオルグされ、反韓運動に駆り出されていた。オ氏はそのような韓国留学生の一人だった。
 「私は馬鹿だった」というオ氏の叫びを、北の凍てつく収容所にいる妻と2人の娘はどのように受け取るだろうか。

独州裁判所内の「十字架」論争

 独ノルトライン・ウェストファーレン州で公共建物内で十字架をかけるか否かで議論が起きている。その直接の契機は同州のデュッセルドルフ州裁判所のハイナーブレシング長官が「新しい州裁判所建物内ではもはや十字架をかけない」と決定したことだ。同長官はその根拠として、公共建物内の磔刑像(十字架)を違憲と判決した独連邦裁判所の判例(1995年)を挙げている。
 被告人が裁判の法廷内の十字架を「不快に感じる」といえば、裁判所側はそれを撤去しなければならない。そこで「裁判によって、かけたり、外したりすることはキリスト教のシンボル(十字架)にとっても良くない」(ブラシング長官)ということで、十字架を最初から外そうというわけだ。
 仏ストラスブールにある欧州人権裁判所(EGMR)が昨年11月3日、フィンランド出身のイタリア人女性の訴えを支持し、彼女の息子が通う公共学校内で十字架をかけてはならないと「十字架違法判決」を下して以来、欧州各地でさまざまな十字架論争が展開されている。独州裁判所内の「十字架」論争もその一つだ。
 ところで、日刊紙ヴェルト紙(20日付)によると、独イスラム評議会アリ・キジルカヤ会長が「裁判所内の十字架を支持する。欧州社会の伝統であり、そのシンボルを尊敬しなければならない」と述べたという。イスラム評議会が独国内の十字架論争に参戦してきたわけだ。
 もちろん、同評議会会長の発言はあくまで個人の見解であり、約350万人と推定される独内イスラム系住民の統一見解とはいえない。むしろ、十字架問題で守勢を強いられているキリスト教会へのイスラム側の援護、と解釈できないわけではない。
 当コラム欄で報告済みだが、例えば、ケルン居住のイスラム作家ナビッド・ケルマ二(Navid Kermani)がスイス日刊紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(昨年3月14日付)に寄稿した記事の中で、「十字架は神への冒涜であり、偶像崇拝だ」と語り、ドイツ国内のキリスト教会関係者から強い反発を引き起こしたことはまだ記憶に新しい。
 なお、バチカン放送(独語電子版)によると、同州裁判所の約1300ある法廷のうち、十字架がかけられている法廷は50から60カ所だけという。

「神父はパートタイマーではない」

 ローマ・カトリック教会の聖職者による性犯罪の多発で教会への社会的信頼は大きく揺れてきたが、神父や修道僧の不祥事の多発に業を煮やしたわけではないだろうが、ローマ法王べネディクト16世は18日、ローマ教区で神父たちを前に「神父はかくあるべき」と説教をしている。
 ベネディクト16世は新約聖書の「ヘブル人への手紙」を引用しながら、「社会のために倦む事なく努力してほしい。神父の聖業は決してパートタイマーではない」と強調し、「神父たちは常に悩める人々の側に立ち、神と人間の仲保者でなければならない。神父たちは苦悩と痛みを背負ったキリストに似るべきだ」と語っている。
 教会の信頼失墜とも関連し、神父不足が深刻だ。世界的には依然、アフリカやアジア地区で聖職者数は微増しているが、欧州では神父が一人もいない教区すらあるほどだ。例えば、欧州カトリック主義の模範国だったポーランドではカトリック教会の聖職者の数や聖職者候補(神学生)の数が減少してきている(参照「ポーランドで神学生の数が急減」2008年1月29日)。
 聖職者不足だからといって、「誰でもいい」というわけにはいかない。ウィーンの神父養成セミナーでは、聖職者の性犯罪を事前防止するため神父候補者たちの精神分析を実施している。そのポイントは、「性生活の統合」、そして「ストレスへの耐久力」だ。神父という職業への適正検査だ。
 当方は20代の時、日本の田舎のカトリック教会の神父さんにお世話になったことがある。神父さんは既に50歳を超えていたと思う。教会にいくと、すごく歓迎され、夕食を招待されたりもした。当方が帰ろうとすると、「もう少し、話がしたい」といって、引き止められたものだ。夕拝が終わり、信者たちが帰ると、ガランとした教会に一人立っている神父さんの周辺から「孤独」が溢れ出ていたことを思い出す。
 神父職は神への召命感によって裏づけされたものだが、実際の生活では「孤独」に強くなければ全うできないだろう。それにしても、カトリック教会の「聖職者の独身制」は非情な制度だ。神がそのことを願っておられるとは、どうしても考えられない。

「トリノの聖骸布」巡礼の予約殺到

 2000年前のイエス・キリストの遺骸を包んでいた布といわれる「聖骸布」の展示会が4月10日から5月23日の間、イタリア北部のトリノ市で開かれる。10年ぶりの聖骸布展示会を見るために既に100万人が予約したという。オーストリアのカトリック通信が17日、報じた。日本の観光会社も巡礼ツアーを計画中だ。
 通称「トリノの聖骸布」と呼ばれる布は縦4メートル・35センチ、横1・1メートルのリンネルだ。その布の真偽についてはこれまでさまざな情報があり、多種多様の科学的調査も行われてきた。現時点では、「その布が十字架で亡くなったイエスの遺体を包んだもの」と100%断言はできない。
 例えば、1988年に実施された放射性炭素年代測定では、「トリノの聖骸布」の製造時期は1260年から1390年の間という結果が出た。すなわち、イエスの遺体を包んだ布ではなく、中世時代の布というわけだ。そのニュースが流れると、世界のキリスト教信者たちから「その調査結果は間違いだ」といった批判の声が挙がった。「トリノの聖骸布」の真偽問題では、考古学者や科学者の間でも意見が分かれている。
 例えば、聖骸布に映る人物を詳細に調査した学者は「手、首、足には貫通した跡があった」と説明し、「遺体は180センチの男性であった」と指摘、「トリノの聖骸布は本物」と主張している。
 最近、「黄金のマスク」で有名な古代エジプトのファラオ(王)、ツタンカーメン(新王国第18王朝、BC1333〜BC1324年在位)がアクエンアテン(アメンホテプ4世)とその姉妹の1人との間に誕生した子供で、マラリアで死亡したことが判明した、というニュースが報じられたばかりだ。エジプトの考古学チームが欧州の専門家と協力し、DNA鑑定やコンピューター断層撮影装置(CT)を使用して調査した結果という。
 「トリノの聖骸布」の真偽問題でも近い将来、全ての科学者が納得できる調査結果が明らかになることを期待したい。
 なお、ローマ・カトリック教会のローマ法王べネディクト16世は5月2日、トリノの聖骸布展示会を訪ねる予定だ。

欧州駐在北外交官の証言

 欧州駐在の北朝鮮外交官に電話した。同外交官は金正日労働党総書記の長男、金正男氏の親戚に当たる。以下は同外交官との一問一答だ。


 ――聯合ニュースは15日、中国共産党の王家瑞対外連絡部長が今月初め訪朝した際、北朝鮮が中国から総額100億ドル以上の投資誘致に成功したと報じた。100億ドルといえば、北朝鮮の国内総生産(GDP)の約70%にも相当する。この投資計画は事実か。
「公式には何も聞いていない」
 ――誤報の可能性もあるか。
「その可能性は十分考えられる」
 ――北朝鮮の都市部で食料不足から飢餓者が出ているという。確認できるか。
「飢餓者が出るほど食糧不足が深刻とは思っていない」
 ――金正日労働党総書記は今月16日で68歳となったが、総書記の健康状況はどうか。
「悪化したという情報は聞いていない。安定しているのではないか」
 ――金総書記の長男、金正男氏は昨年1月以後、帰国できず、マカオに留まっているというニュースが流れた。昨年1月は金ジョンウン氏の後継者決定が下されたといわれる時期と重なる。
「金正男氏が過去1年間、マカオに留まり、帰国できないという情報は誤報だ。事実は逆だろう。正男氏はほぼ1年間、平壌に留まっている。彼がマカオに留まっているとすれば、自由に外遊できただろうし、連絡も取れたが、事実は連絡が取れない。ということは、正男氏はマカオではない」
 ――金ジョンウン氏の後継決定が事実とすれば、正男氏への迫害や弾圧が出てくるのではないか。
「そういうことはまったくない」
 ――朝鮮中央テレビが13日、金ジョンウン氏の歌といわれる「パルコルム」の歌詞を合唱する農民たちの姿を紹介したという。ジョンウン氏への後継者決定がより一歩公式化されたと受け取っていいのか。
「それは韓国や日本メディアの憶測に過ぎない。歌詞の内容と後継者問題はまったく関係ない。繰り返すが、後継者問題に関する如何なる公式発表もこれまでのところはない」



 もっと、もっと聞きたいことがあったが、いつものことだが、それは出来なかった。同外交官が答えてくれた、ということで満足しなければならないだろう。同外交官の発言内容の真偽は確認できないが、当方の過去の経験から、「かなり正しい情報」と受け取っている。

「地位の重さ」とその「振る舞い方」

 国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は17日の昼食時、ウィーンの国連職員レストランで女性スタッフと話していた。前事務局長エルバラダイ氏が国連職員レストランで食事をする姿を見たことがなかったIAEA職員たちは、遠巻きから好奇心溢れる目で新事務局長を見ていた。
 当方は食事を終え、記者室に戻り、友人記者に早速、「職員レストランで天野事務局長を見たよ。彼はスタッフと昼食をしながら、談笑していた」というと、友人は真顔で「エルバラダイ前事務局長は絶対、職員レストランで食事しなかったよ。事務局長室に食事を運ばせたからね。天野氏は事務局長というポストの重さをまだ認識していないのかもしれないね。しかし、もう少し時間が経過すれば、新事務局長も地位に相応しい対応をするだろう」という。
 当方は「天野氏は職員との交流を重視し、事務局長と職員間の壁をなくそうと努力している」として、職員レストランの天野氏の行動を密かに評価してきた。当ブログ欄で天野氏の職員レストラン出現をテーマにコラムを書いたほどだ。それだけに、友人の「地位の重さを知らない」という発言に少々驚いた。
 彼は「エルバラダイ氏は職員と交流したり、談笑はほどんどしなかった。だから、事務局長が職員に話かけたりすると、その職員は非常に感動したぐらいだ。彼はIAEA事務局長のポストに相応しく振る舞っていた。もちろん、少々王様のような傲慢さもあったがね」と説明しながら、「天野氏は事務局長前の生活様式で振る舞っているのかもしれないが、それは大きな間違いだ。ここでは、地位に相応しい振る舞いが求められているからね」と指摘した。
 友人の目からみたら、「天野事務局長はその地位の重さを測りかねている」といった状況に映るのかもしれない。「天野氏が事務局長室で食事を取るようになれば、地位に相応しい振る舞い」ということになり、事務局長として合格点を得るわけだ。日本人の当方の感覚とは少し違う。
 外国、特に、西欧のビジネス社会では地位を重視し、高給を得、他者から尊敬されるポストを得ようと奮闘する若きビジネスマンたちが少なくない。
 「大企業の社長が毎日、社員食堂で社員たちと一緒に食事するようになれば、社長の地位を目指して懸命に努力する社員が出てくるだろうか」
 友人の説明を聞きながら、「是非は別として、彼の見解は一理ある」と思わされた次第だ。
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