ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2009年05月

「天使(エンジェル)の存在」

 映画「ダ・ヴィンチ・コード」の続編として注目を集める「天使と悪魔」(ロン・ハワード監督と主演トム・ハンクス)は目下、日本でも上演中という。
 ここでは映画の内容を紹介するつもりはない。当方は当ブログ欄で「悪魔(サタン)の存在」(2006年10月31日)についてコラムを書いたことがある。その時から「天使(エンジェル)の存在」についてもいつか書きたいと思っていた。映画「天使と悪魔」の話題を聞いた時、「天使の存在」について所感を述べる機会が到来した!と思った次第だ。
 「神の存在」を問う人々は結構いるが、神に対峙する「悪魔」(サタン)の存在を深刻に考える人は案外少ない。一方、「天使の存在」については、漠然とだが、「わたしの守護神」といった表現で受け止める人々が今日、増えてきている(「天使」と「守護神」は同一存在ではないが、ここでは詳細に言及しない)。
 聖書の中で悪魔について約300回も言及されている。例えば、「悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうとする思いを入れていた」(ヨハネによる福音書13章2節)とか、十字架に行く決意をしたイエスを説得するペテロに対し、イエスは「サタンよ、引きさがれ」(マルコによる福音書8章33節)と激怒している、といった具合だ。
 前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世は「悪魔は擬人化した悪」と規定しているが、世界のカトリック教会では今日、「悪魔」について話すことを避ける傾向が強い。バチカン法王庁が1999年、1614年の悪魔払い(エクソシズム)の儀式を修正し、新エクソシズム儀式を公表した時、教会内で大きな動揺が起きたほどだ。
 一方、「天使」も聖書の中で頻繁に登場してくる。天使は「神の使い」として創造され、さまざまな役事を行っている。例えば、聖母マリアの受胎告知は天使ガブリエルの業だった。
 一般的に「天使」といえば、愛らしい存在と考えやすいが、残念ながらそれは事実ではない。17世紀の英国詩人・ジョン・ミルトンの「失楽園」(Paradise Lost)の中で記述されているように、天使(ルシファー)は人類始祖を罪に誘っている。すなわち、“堕落した天使”が存在するのだ(悪魔とは、堕落した天使だった、という結論が出てくる)。
 著名なエクソシスト、ガブリエレ・アモルト神父は「悪魔の憑依現象は増加しているが、聖職者はそれを無視している」と警告したが、「悪魔」(落ちた天使)が実際に存在するとすれば、それらの事実に口を閉じたり、否定する聖職者や神学者は、悪魔にとって心強い味方、といえるわけだ。
 いずれにしても、「天使か、それとも悪魔か」といった視点からではなく、「悪魔となった天使」という観点から、聖書66巻の世界の謎解きを始めるべきだろう。

音楽の都は世界一の離婚都市

 オーストリア統計局が公表した2008年度統計によると、同国で昨年度7万7752人の新生児が誕生、前年度比で約2%微増し、5年連続、同年の死者数(7万5083人)を上回ったという。
 長期的予測によると、同国の人口は移住者の増加もあって増える一方、医療技術の向上などで同国社会の高齢化は急速に進み、2030年には国民の3人に1人以上が60歳以上となる。現在は5人に1人だ。
 さて、新生児の内容をみると、婚姻外の新生児が全体の28・8%に増加したという。同時に、女性の結婚年齢は平均28歳1カ月だ。1970年代は21歳だったから、女性の結婚年齢の高齢化が浮かび上がる。結婚件数は昨年度3万5223件で前年度比で773件少なかった。
 問題は離婚率だ。首都ウィーン市の離婚率は64・2%で、夫婦3組に2組が離婚している。音楽の都ウィーン市(特別州)は多分、世界一の離婚都市だろう。ちなみに、2006年度の離婚率は65・85%であった(同国9州の平均離婚率は49・5%だ。2組に1組の離婚となる)。
 オーストリア政界を振り返っても、グーゼンバウアー前首相は結婚せず同棲生活をし、前社会相は離婚して独身だった、といった具合で、正式に結婚し、家庭を築いている政治家は少ない。未婚、同棲、離婚といって社会生活で不利を被るといった雰囲気は久しくない。
 「家庭の崩壊」は決してメディア報道機関専属のキャッチフレーズではなく、久しく現実となっている。コール独元首相が警告を発しているが、「家庭の崩壊」は金融危機以上に深刻な地球レベルのテーマだ。

オバマ政権がUNIDO復帰?

 米オバマ政権は核軍縮に非常に意欲的で、来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議開催前後に包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准するだろうと予想されている。
 世界の目が米国のCTBT批准時期に注がれている中、「オバマ政権は国連工業開発機関(UNIDO)に復帰する可能性がある」といった噂がウィーン国連外交官の間で流れているのだ。
 UNIDO憲章第1条によれば、UNIDOの使命は「経済に関する新たな国際秩序の確立に資するため開発途上国における工業開発の促進及び加速を図ること」となっている。
 米国は1996年、UNIDOから脱退したが、その当時、「UNIDOの腐敗と非能率な運営」を理由に挙げていた。
 それ以降、米国のUNIDO復帰の噂はあったが、マガリニョス事務局長時代は「もちろん、ウエルカムだが、その前に滞納している分担金を払って欲しいものだ」と、UNIDO側も軽くかわし、真剣には受け止めていなかった。
 ところが、シエラレオネ出身のカンデ・ユムケラー氏が2005年、後任の事務局長に選出され、UNIDOの刷新に乗り出してきたこともあって、噂が復活してきたわけだ。
 今回の噂は以前より現実味を帯びている。なぜならば、UNIDOの主要活動がアフリカ大陸の開発支援であり、オバマ大統領の先祖がアフリカのケニア出身だからだ。今回の噂にはそれなりの根拠があるわけだ。
 ちなみに、UNIDOのジョージ・アサフ報道官は20日、当方の質問に答え、「もちろん、世界最大の経済国・米国の復帰は大歓迎だが、噂に関連した情報を入手していないのでコメントはできない」と述べるのに留めた。

どうして朝鮮半島に渦が巻くか

 朝鮮日報のワシントン支局長、楊相勲(ヤン・サンフン)記者の「盧前大統領の悲劇と『渦巻政治』」(日本語版)という題のコラムを読んだ。韓国国民が、前大統領の自殺という衝撃的な出来事の直後、今度は同民族の隣国・北朝鮮が核実験を実施するというニュースに接し、民族の運命を切実に感じていることが良く理解できるコラムだった。
 同記者によると、「渦巻政治」という表現は、日本の植民地支配から解放された直後の混乱した韓国政治を目撃した米外交官が名づけたという。「今の韓国社会は地域間、階層間、世代間、利害集団間の衝突が生み出す大きな渦巻きそのものだ」と指摘している。
 当方は先月13日付の当コラム欄で「世界の行方の鍵を握る北朝鮮」というタイトルで「われわれは、朝鮮半島の小国・北朝鮮が21世紀の世界の行方に大きな鍵を握った国であることを、首を傾げながらも理解しなければなならなくなる」と書いた。
 ここでは「どうして朝鮮半島に渦が巻くか」について、当方の所感を述べたい。
 2000年前、イエスは人類のメシア(救い主)としてナザレで生まれたが、聖書で記述されているように、イエスは迫害され、「ナザレから何の良き者が出ようか」と罵倒された。
 当時、イエスの家族を含め誰一人としてイエスが誰かを理解していなかったが、33歳のイエスの生涯とその言動は世界を動かし、世界に通じるといわれたローマでイエスの教えは国教化していく。イエスはユダヤ社会ばかりか、世界に渦を巻き起こしたのだ。
 イエスは当時、「地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平和ではなく、剣を投げ込む為にきたのである」(マタイによる福音書第10章34節)と述べている。聖書の中では誤解されやすい個所だが、イエスは新しい秩序を構築するため、古い秩序と対峙し、渦巻きを撒き散らせざるを得なかったわけだ。そのように考えると、渦巻きは古い秩序から新しい秩序を構築する際に生じる不可欠の現象といえる。
 賢明な韓国国民ならば、ここから冷静な結論を引き出すべきだろう。世界で現在、最も激しい渦巻きが巻き上がっている処が朝鮮半島とすれば、そこは同時に、新しい秩序建設の中心地ということになる。
 韓国国民がこの新しい秩序建設に関与するためには、古い葡萄袋を捨て、新しい袋を用意しなければならない(ルカによる福音書第5章38節)。朝鮮半島は今、その産みの苦しみに対峙しているわけだ。
 最後に、楊相勲記者のコラムから引用させて頂くが、「神は韓国をお作りになったが、韓国人もお作りになったのだ」。

コマーシャルよ、こんにちは

 ローマ・カトリック教会の総本山バチカン法王庁のスピーカー、バチカン放送が7月からコマーシャルを流すことになったという。
 日本の読者に分りやすくいえば、今回の決定は、「NHK放送がコカ・コーラー、マクドナルドのハンバーガー、トヨタ自動車などのコマーシャルを流すと決定した」という内容に等しい。
 バチカン放送は1931年、その宣教活動を伝え、福音伝道の一環として始まり、世界40カ国語以上で放送されてきたが、これまでコマーシャルはなかった。
 バチカン放送の総局長、フェデリコ・ロンバルディ神父は「革命的なニュースだ」と述べる一方、バチカン放送がCMを許可した背景には、経費増大にくる経営困難を解決するためという。同神父によると、バチカン放送の経費は年間約2000万ユーロ。これまではバチカン法王庁が全額出費してきたが、経費は年々増加傾向にあった。
 同神父は「コマーシャルが悪というのではなく、バチカン放送が報じる内容と合致しなかったからこれまでCMを流さなかっただけだ」という。
 7月6日から初のコマーシャルが流れるが、コマーシャル1号の名誉を勝ち取ったのは、地元イタリアのエネルギー大手「エネル」社(Enel)だ。
 ローマ・カトリック教会は世界に約11億人の信者を抱える世界最大宗派だ。その広報手段の1つ、バチカン放送で宣伝を流せば、その経済的効果は計り知れない。それだけに、バチカン放送にコマーシャルを希望する企業は少なくないはずだ。
 バチカン放送側は「コマーシャルの内容は厳密にチェックする。もちろん、キリスト教の教えに反するものは流さない」という。
 近い将来、「バチカン放送でも流れています」というキャッチフレーズが企業側のステータスとなるかもしれない。

北の核実験へのコメント集

 北朝鮮が25日、実施した核実験について米韓日だけではなく、ロシア、中国からも「絶対、容認できない」といった厳しい批判の声が挙がっている。
 そこで当方がかき集めた北の核実験に対するコメントを紹介する。

<ロシアの政治専門誌記者>
 「遺憾なことだ。北はもはやコントロールを失っている。北朝鮮の核問題を近い将来解決することは非常に難しいだろう。考えられる方法は軍事力による解決だが、周辺国家への影響を考えると難しい。唯一、可能な解決策は指導者が変ることだ。すなわち、金正日労働党総書記の死去だ。金総書記はもはや長期的視野で問題を解決できる能力を有していない」

<クロアチアのラジオ・レポーター>
 「国際社会への挑戦だ。核拡散防止条約(NPT)体制への違反行為だ。イランだろうが、北朝鮮だろうが、許されない行為だ、わが国の立場は明確だ」

<スーダンのHorna通信社記者>
 「遺憾だ、といいたいところだが、わが国のバシル大統領は内心、喜んでいるだろう。国際社会でバシル大統領批判の声が高まっており、大統領は国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)から逮捕状を突きつけられている身分だ。そのような時、北朝鮮が核実験を実施したので、国際社会の関心はスーダンから北朝鮮にチェンジするからだ。大統領は先週、南アフリカを訪問する予定だったが、同国がICC加盟国であることから、逮捕を恐れた大統領は代理を派遣したほどだ」

<北朝鮮出身のビジネスマン>
 「核実験が成功したので嬉しいか、といった質問をしないで欲しい。大使館の外交官に聞くべきだ。自分はビジネス分野だから、そのようなテーマには関っていない。ただし、ビジネス世界では核実験成功が即、いい結果をもたらわけではない」

<レバノン出身の国連記者>
 「北朝鮮の核問題を協議してきた6カ国協議の失敗を意味する。北側は米国へ明確なメーセージを送り、2カ国協議をスタートしたいのだろう。オバマ政権は北問題でコメントをするが、行動を起こしていない。そこで北側は大きなカードを切ったところだろう」

 以上だ。

 通常の報道機関では掲載されない人物たちのコメントを集めた。

北の核実験を予測していた人物

 北朝鮮が25日、2006年10月に続いて2回目の核実験を実施した。予測されていたことだが、その衝撃はやはり大きい。北朝鮮の核兵器の射程距離内に入る韓国や日本にとって、深刻な軍事脅威だ。
 そこで先ず、誰よりも早く、先月19日段階で北朝鮮の核実験準備中を予測した国際原子力機関(IAEA)の査察専門家(ここでは「博士」と呼ぶ)に電話し、その所感を聞くことにした。
 博士は当時、「北は1回目の核実験が中途半端で終わったことを知っている。だから、核兵器保有国を宣言するためにはどうしても2回目の核実験が必要だ。北当局者は多大な犠牲を払っても実行するだろう。今回も地下核実験だ」と予測していた。
 「博士が予測されたように、北は核実験を実施した」というと、博士は「君も覚えているだろう。1カ月半前に北が核実験の準備に入っているといっただろう。北が核実験をしたとしても何も驚かないよ」という。
 博士は一呼吸を置いて、「韓国と日本は北朝鮮の核の脅威に一層さらされることになるだろう。北は核実験を実施した同じ日に短距離ミサイルを発射している。これは核兵器を日本や韓国に向かっていつでも発射できる、という警告が含まれているはずだ」と説明した。
 博士は過去、査察活動のため通算17回の訪朝、総日数では約1年間、北朝鮮に滞在した経験がある。「IAEAの中で北朝鮮の核問題に最も精通した人物」といわれてきた。
 ちなみに、寧辺の核施設の査察活動中、放射能を浴びるというアクシデントに見まわれたことがある。その後、年に1度は定期検査を受けているが、幸い、後遺症は出ていない。
 博士は「北朝鮮の核問題は自分の査察官人生で中心的部分を占めてきた。良い悪いは別として、北朝鮮は忘れる事ができない国だ」という。
 来月上旬、IAEAを退職する博士は、その直前の北朝鮮の核実験を誰よりも冷静に受け止めている。

駐ウィーン日本大使館の失策だ

 知人のウィーン大学日本学科学生から聞いた時、ビックリした。ウィーン市をご訪問された秋篠宮殿下・紀子妃殿下が12日、ウィーン大学日本学科研を訪れられたというのだ。そして、学生たちに声をかけられたという。
 当方は当コラム欄で「ウィーンと日本赤軍と北朝鮮」(2007年6月7日)というタイトルでウィーン大日本学科研を紹介し、そこで1980年代のウィーン大日本学研と日本赤軍との関係を明らかにした。
 ウィーン大で日本学研究所が開設されたのは1938年だ。同研究所は敗戦後、一時閉鎖されたが、65年に再開された。80年代に入ると、同研究所では急速にイデオロギーに基づく講義が行われていった。同研究所には当時、リンハルト教授、パンツァー助教授、李相景助教授、マーチン金子助手、ベス助手の5人の教育スタッフがいた。
 同研究所では社会学的テーマが主流となり、三里塚闘争や同和問題が論文テーマとして取り上げられ、研究所の掲示板には「安保反対」「米原潜佐世保寄港反対」などの政治ポスターがデカデカと張ってあった。
 北朝鮮から帰国し、旅券法違反容疑で逮捕された赤木邦弥容疑者は1982年から87年の期間、オーストリアのウィーンを拠点にしていたが、その1つがウィーン大日本学研だったことが判明している。
 そのような歴史を有するウィーン大日本学科研に秋篠宮ご夫妻をご案内したのだ。駐オーストリアの日本大使館側(田中映男・日本国特命全権大使)は何を考えていたのだろうか。
 もちろん、ここで再度断っておくが、上記で言及しているウィーン大日本学科研は1980年代のそれであり、現在とは異なるが、主任教授は依然、リンハルト教授(65歳)だ。皇室への尊敬や皇室関係者への敬称は、同研究所では学ぶことができない、という点で大きな変化はないだろう。
 当方は後日、秋篠宮ご夫妻と話した学生たちから聞いたが、ご夫妻の質問にぶっきらぼうに答える学生たちが多かったという。

シュテファン寺院と「アイダ」

 オーストリアのローマ・カトリック教会の精神的支柱、ウィーン市1区のど真ん中にあるシュテファン寺院(Stephansdom)が同市の2009年度観光賞に受賞した。
 ウィーン子には親しまれ、若いカップルの待ち合わせ場所として誰もが知っている。年間、約300万人の旅行客が寺院を訪ねるというから、観光の都市・ウィーン市にとって、シェーンブルン宮殿(Schloss Schoenbrunn)と共に名所の双璧だろう。
 寺院はゴシック様式の大聖堂で世界で有数の高さ(107メートル)を誇る塔がある。13世紀から300年余りの月日をかけて建てられた。
 エレベーターで約70メートルのテラスまで上れる。そこからはウィーンの森から大観覧車のプラーター(Prater)まで見える。
 音楽好きな人にとっては、天才モーツァルトとコンスタンツェ夫妻が結婚式を挙げ、葬儀が行われた寺院で知られている。ケルン大聖堂のように威圧的な雰囲気はなく、女性的な温もりが感じられる寺院だ。
 寺院から約10メートル離れた処にオーストリアの伝統的な喫茶店「アイダ」(Aida)がある。寺院前で待ち合わせない人はここで待つ。少々、苦いアイダのコーヒーを飲みながら、来る人を待つ。雨降りの日にはアイダは待つ人で一杯だ。
 アイダの主人は数年前、出張先で飛行機事故に遭って急死された。主人は根っからの日本食贔屓で若い奥さんと子供を連れてケルントナー通りから少し入った処にある日本レストラン「天満屋」に頻繁に食べに来られていたという。

Don't care

 北朝鮮が4月打ち上げた試験通信衛星「光明星2号」は現在も正常な軌道を運行中という。これまでどの国もキャッチできなかった「光明星2号」の信号を母国・北朝鮮だけが受信に成功しているわけだ。
 米誌ニューズウィークは「北朝鮮内部では人工衛星打ち上げは明らかに失敗だったとして、関係者が厳しく処罰された」という内容の記事を掲載したが、北朝鮮国営朝鮮中央通信社(KCNA)は今月18日、「衛星は現在も稼動している」と続報を流したのだ。
 人工衛星から発信される信号をキャッチできない場合、その人工衛星は墜落したか、軌道に乗らなかった、すなわち「失敗した」と判断できる。人工衛星が軌道に乗らず、地球上を勝手に周回している、なんてことは通常、考えられない。くどいようだが、これまで、北朝鮮以外ではどの国も「光明星2号」が発信する信号をキャッチしていないのだ。
 当方は先月、知人の北朝鮮外交官に「人工衛星打ち上げは成功したのか、失敗したのか」と意地悪な質問をした。そのやり取りは先月10日の当コラム欄「海外駐在北外交官の『苦衷』」で紹介したが、念の為、別の北外交官に聞いてみたくなったのだ。
 今回の相手は駐オーストリアの北朝鮮大使館李イルチュル参事官だ。参事官はどうして今更そんなことを聞くのかといった表情を見せ、「Don't care」(そんなことに拘るなよ)」と一蹴したのだ。参事官にとって、人工衛星が運行中か、海底に沈んだかはどうでもいいのだ。重要な点は、「光明星2号が運行中」という国営通信社のニュースだ。その真偽はくどいようだが、どうでもいいのだ。
 去って行く李参事官の後姿を見ていると、「Don't care」という声が当方の頭の中で何度もこだました。
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