ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2008年11月

政治的モメンタムを生かせ

 包括的核実験禁止条約(CTBT)機関の準備委員会暫定技術局のトット事務局長は19日、記者会見で何度も「政治的モメンタム(勢い)」という言葉を使用した。ハンガリー出身の事務局長が意味する「モメンタム」とはCTBT条約の発効への政治的意志が高まってきたということだ。
 具体的には、米大統領選でCTBT条約の早期発効を支持する民主党候補者オバマ上院議員が勝利し、上院選挙でも民主党が過半数を獲得したという米国の政情と密接に関係するらしい。ゲーツ国防長官も批准を支持しているという。
 「米国が批准すれば、中国は即批准するだろう。そうなれば、核保有国5カ国が全て批准を完了することになる。そうなれば、ドミノ現象が生じてCTBT条約の発効は時間の問題となる」という。
 事務局長は「1998年、批准国数は30カ国だった。10年後の現在、その数は146カ国に増加した」と指摘し、米大統領選挙後の今日、CTBT条約早期発効の政治意志は世界到る所で高まり、「政治的モメンタム」を迎えているというわけだ。
 1996年9月の国連総会で署名開始されたCTBT条約は今日まで発効していない。「条約14条」があるからだ。すなわち、研究用、発電用の原子炉を保有する国44カ国の署名・批准の完了を条約発効の条件としているからだ。そして44カ国中、9カ国が依然、批准を完了していない。北朝鮮、インド、パキスタンの3国は未署名国、5カ国の核保有国では米国と中国が未批准国に留まり、イラン、エジプト、インドネシアの3カ国が未批准国だ。
 ジャカルタで今月開催された会議に出席した事務局長は「インドネシアでは外相ら高官と意見を交換してきた。44カ国に属する同国は今、批准の準備をしている」と報告し、「とにかく今の政治的モメンタムを生かさなければならない」と強調した。
 なお、CTBT機関準備委員会は18日、トット事務局長の再選を全会一致で決定した。次期任期は来年夏から開始され、2013年までだ。

マネーロンダリング報告

 オーストリア内務省連邦犯罪局は先日、「2007年度マネーロンダリング(不法資金の洗浄)報告書」を公表した。それによると、同国で昨年度、1599件の通達がマネーロンダリング連絡所(Austrian Financial Intelligence Unit=FIU)に届いた。その内、1085件はマネーロンダリングの容疑だ。通達件数1553件のうち、クレジット、金融機関から1039件で最も多く、匿名預金口座関係から514件、そして財務省21件、保険会社6件、営業関係者4件、公証人3件、管財人2件、そして労働組合簿記係、弁護士、不動産業者、カジノ、税関所から各1件の通達があった。
 不法資金の洗浄容疑件数1085件は前年度比で394件急増している。増加の原因について、FIU責任者ジョセフ・マール氏は「通達義務のある職種関係者のマネーロンダリングに対する意識が高まった結果」(同国内務省発行「公安」9、10月号)と分析している。
 同国では1994年1月1日、現銀行法に基づき不法資金の洗浄への監視強化と関係省への通達が義務付けられた。2003年には同義務適応職種が拡大され、骨董店、宝石店なども1万5000ユーロ以上の買物顧客に身分証明書の提示を要求する義務が明記された。
 マネーロンダリング対策が急がれる背景には、国際組織犯罪グループ、テロ組織が麻薬密売などで稼いだ不法な資金をマネーロンダリングを通じて合法的な企業活動に利用するケースが増えているからだ。その意味で、テロ・組織犯罪対策の一環であるわけだ。
 FIUは政府間会合FATF(金融活動作業部会)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、欧州刑事警察機構(Europol)、国際刑事警察機構(Interpol)などと連携を取りながら、マネーロンダリングを監視している。
 ところで、欧州で活躍してきた北朝鮮の要人、権栄緑氏(前労働党資金担当副部長)はウィーンではカジノ通いで有名で、一時期、西側情報機関から「カジノで不法資金の洗浄している」という疑いが持たれたことがある。

信仰をもつ中国共産党員たち

 マルクスは「ヘーゲル法哲学批判序論」の中で、「宗教はアヘン」といったが、この有名な文句も現在の中国共産党の党員には「死語」となってきた。最近は、「宗教を信じる共産党員が流行」となってきたからだ。
 欧州の中国語紙「Epoch Times」(大紀元)によると、中国共産党員約6000万人のうち、約2000万人の党員が何らかの信仰をもっているという。3人に1人の割合だ。その内、1200万人が宗教行事に参加し、少なくとも500万人の党員がその信仰を実践しているという。宗教団体の実践会員というわけだ。
 この数字を多いとみるか、少ないと見るかは立場、見解で異なってくるだろうが、少数派に過ぎない、といって無視できる数でないことは確かだろう(党員の中には、党員証より、会社社長の名刺を重視する拝金主義も久しく見受けられる。イデオロギーに凝り固まった共産党員こそ党内ではもはや少数派なのかもしれない)。
 実際、中国共産党は党員の間の宗教熱を抑制するために4年前から「無神論主義の拡大キャンペーン」をラジオやテレビ、大学などを通じて開始している。共産党は2006年、「マルクス主義の活性化」のために約2000万ユーロを投資している。また、北京夏季五輪大会を控えた昨年12月18日、中国共産党は政治局の全体会議を開催したが、そこで宗教問題を初めて公式議題として討議している、といった具合だ。世界最大の党員を誇る中国共産党は宗教の台頭、それも党員の宗教熱に危機感を抱いていることが分る。
 ちなみに、上海の大学教授によると、中国には3億人の国民が宗教をもっている。政府が数年前、その数を1億人と推定していた。宗教者のうち、キリスト者数は約4000万人だ。政府は2005年、キリスト者数を1600万人と見積もっていた。
 北京五輪が終わった今日、中国共産党は再び宗教の挑戦に全力で対応しなければならないのだ。

大学生たちが危ない

 「大学生は呑気なものだ」と昔はよくいわれたものだ。日本では今もそのように揶揄されているかは知らない。当方の限られた記憶でも、学生業は青春時代を謳歌できる期間、という印象がある。
 ところで、そうではないばかりか、「苦悩と憂鬱」な時代だ、ということを最近、知った。話は欧州の大学生たちのことだ。
 オーストリアの日刊紙クリアによると、学生たちは教授たちが要求する論文や課題をクリアするために興奮剤などを摂取しながら取り組んでいるというのだ。学生の中には麻薬類に手を出し、その末、「欝(うつ)に陥る学生たちが少なくない」(同紙)というのだ。欝になった学生が頭を抱えている写真が掲載されていた。その姿からは「気楽な家業」といった印象などまったくない。深刻な状況だ。
 オーストリアだけではない。隣国ドイツでも多くの学生たちが疲れを飛ばすために興奮剤や麻薬に手を出しているというから、大変だ。クリア紙によると、学生たちでも医学部など、課題が多い学部にそのような傾向があるという。
 日本では大学入試に合格すれば、後は卒業までエスカレーターに乗った感じがある。苦難と苦痛は入試まで、後は「青春を楽しむ期間」といった感がある。一方、オーストリアを含む欧州では大学に入学するために先ず高校学校卒業兼大学入学資格試験(マトゥーラ)をパスしなければならない。毎年6月に入ると、オーストリアのギムナジウム(中・高等学校、8年制)では、マトゥーラ(ドイツでは「アビトゥア」と呼ぶ)のシーズンを迎える。それに合格できないと、日本と同じように予備校に通う。ようやく合格すれば、どの学部、どの大学でも一応、入学できる。しかし、4年で卒業するためにはハードなスケジュールを組む必要がある。だから、5年、6年かけて卒業する学生は少なくない。課題をパスするためにはかなりの数の論文書きが待っている。大学図書館には夜遅くまで課題に取り組む学生たちの姿が見られる。
 それが学生の本分だ、といわれればそれまでだが、麻薬に手を出してまで学業に励む学生たちの姿は悲惨をこえ、危なさすら感じる。欧州では、大学に入ったが、卒業せず就職する学生たちが多いのはある意味で当然だろう。
 日本からのニュースを見ると、最近、「麻薬」で摘発される大学生が多いという。学業のプレッシャーがあるわけでもないのに、大麻やクスリに手を出すのだ。別の意味で、日本の学生も「危ない」状況なってきたのか。

カフカを凌ぐ手紙を書いた作家

 当方はこのコラム欄でフランツ・カフカの事を2度ほど書いた。今年がカフカ生誕125周年(1883年〜1924年)に当たること、カフカ研究家の知人が出来たことにもよる。
 最近のコラム欄で「カフカが恋人に900通の手紙を書いた」と、驚きをもって紹介したが、世の中には上には上があるものだ。生涯、8000通の手紙を300人の知人、友人、恋人などに書きまくった作家がいたことを最近、知った。その名はアウグスト・ストリンドベルク(August Strindberg)だ。スウェーデンの作家(1849〜1912年)だ。この人物はとにかく生きていくために多くの作品を書きまくった作家だ。小説、戯曲だけではない。絵も描き、絵を売って生きてきた時期もあった。ウィーンで現在、ストリンドベルク絵画展が開かれているほどだ。非常に多才の作家だった。ただし、生活苦のためその才能を安売りしなければならない自分の運命を激しく恨んでいた側面もあったという。
 その点、カフカは生活のために小説を書く必要はなかった。毎日、仕事から帰ると夜中から早朝まで本を書いた。書くのが生甲斐だったカフカは41歳の若さで亡くなるまで、経済的には恵まれた環境で小説を書くことが出来た。
 カフカは最初の恋人フェリーツェ・バウアー女史宛てに300通以上のラブレターを書き、2度、結婚を約束しながら、最終的には結婚せず、生涯独り者であった。一方、ストリンドベルクは現実の世界で葛藤しながら小説や絵を書いた。現在のベストセラー作家の先駆け、といった印象がある。カフカとは違い、3度結婚している。
 ところで、20世紀の代表的作家カフカは北欧の作家ストリンドベルクに影響を受けていたのだ。カフカ自身、手紙の中でそのことを吐露している。生い立ち、生活環境には相違はあったが、両作家の共通点は生きた時代が重なる他、異常なほど熱心に手紙を書いたということだろうか。ただし、ストリンドベルクの手紙はラブレターより、お金を請う手紙や出版社宛ての現実的な内容の手紙が多かったという。

「年齢は聞かないでね」

 ウィーンのホテル内でモンテネグロのラゾビッチ副首相とインタビューを終え、いつものように、「簡単な略歴を聞かしてください」と尋ねた。
 大学教授歴の長かった副首相は「僕のHPを開けてくれれば全て書いてあるよ」と生徒を諭すようにいってから、「でも、簡単にいうよ」といって、「僕は2度、国会議員にも選出され、大学では情報経済学の教鞭をとってきた。あ、そうそう、生まれは1963年だ」と説明してくれた。
 失礼なことをしたが、当方は「1963年?」と2度、聞き直したのだ。副首相の顔を見ていると、どうみても、50歳台だ。頭の髪具合を見るならば、ひょっとしたら、60歳台かもしれない。63年生まれとすれば、45歳ではないか。そんなに若くは絶対ない。副首相は大学卒業年と勘違いしたのだろう、と勝手に思い込んでいた。だから、「1963年?」と数回、聞き直したわけだ。
 こちらの事情が掴めない副首相に代わって、側にいた秘書が「副首相は今年45歳です」といった。もちろん、63年生まれならば、今年45歳だ。
 会見を終えて事務所に向かいながら、当方は「副首相は多くの苦労をされたのだろう。大学時代ばかりか、政治家になってからも、いいことばかりあったはずがない。だから、少し年老いてみえるのかもしれない」と考え直しながら、「副首相には少々無礼なことをした」と反省した次第だ。
 インタビュー相手の年齢で苦労した思い出は少なくない。相手が女性政治家の場合、予め秘書に聞いておく事が多い。もちろん、公式の略歴が入手できる場合は聞かない。スロベニアの女性社会相とインタビューした時だ。彼女は当方に本当の年齢より5歳若く答えたのだ。後で政府発行の閣僚略歴をみて、その「嘘」が発覚した。いずれにしても、年齢は人によっては非常にコンフィデンシャルな情報となりえるわけだ。女性政治家には年齢を聞かないことが無難だろう。

北の報道でフジとTBSの違い

 「君、フジは金正男氏を撮影し、話し掛けているが、TBSは在韓の米情報機関筋の話を垂れ流しただけだ」
 北朝鮮の知人は開口一番、フジテレビとTBS放送の情報の質的違いをこのように指摘した。
 何の話かというと、TBSが今月に入り、在韓の米情報機関筋で「金正日労働党総書記が先月下旬、2度目の脳卒中に倒れ、言語障害の影響も見られる」と報じたことだ。知人は「TBSの情報は信頼できない」と言う。その理由を聞くと、「彼らは米国側から情報を受け取っただけで、情報の裏付けはまったくない。その上、TBSの金総書記の健康再悪化報道は事実ではない」と強調した。
 そこで当方は10月、フジテレビがパリを訪問中の金正男氏(金総書記の長男)の言動を報道したが、あれも誤報ですか」と聞いた。知人は「フジは金正男氏を撮影している。TBSの情報とは次元が違う」と主張する。
 「すると、正男氏の訪仏、そして父親・金総書記の治療の為に脳外科医者を招いた、等の報道内容は事実と受け取っていいのですね」と知人の顔を見ながら聞くと、「まあ、ね。フジはどうして正男氏の訪仏の情報をキャッチし、撮影したか知らないがね……」という。すなわち、TBSの報道とは違い、フジはその現場を目撃したというわけだ。昔から、「聞き情報」は事実ではないというが、知人はその点を言いたかったのだろう。
 北朝鮮の知人は「それにしても、フジテレビはパリにいい情報源を持ているね」と感心する。そこで当方はフジテレビの情報源を推測した。正男氏がビザを入手し、パリ入りする。その連絡を受けたフランス情報機関筋は在仏の日本外交官に電話を入れる。そこからフジテレビ関係者に連絡がいく、という仕組みではないだろうか。
 ところで、「なぜ、フランス側は韓国外交官ではなく、日本外交官に第一報を連絡するか」という問題だ。それは説明可能だ。日本側が正男氏の指紋など身元確認情報をフランス側に提供した実績があるからだ。
 正男氏が日本に不法入国し、拘束された出来事を思い出して欲しい。韓国側は当時、日本側に即、正男氏の指紋など身元情報の提供を要求したが、日本側はその時、申し出を拒否している。韓国側が過去、北朝鮮問題で日本側の度重なる情報要求を拒否した経緯があったからだ。情報機関の世界も他の世界と同様、「ギブ・アンド・テイク」が基本なのだ。

北朝鮮の「宗教の自由」報告

 冷戦時代、旧ソ連・東欧諸国で迫害を受けるキリスト者を支援してきたカトリック教会系組織「困窮下の教会」がこのほど「世界の宗教の自由、2008年度報告書」を公表した。そのドイツ語訳の発表記者会見が12日、ウィーンで開かれたので参加してきた。
 「困窮下の教会」は1948年に創設され、140カ国以上で「宗教の自由」のために戦ってきた。その活動報告を今回、600ページに及ぶ報告書にまとめたわけだ。同報告書によると、14カ国で「宗教の自由」が武力によって弾圧され、約70カ国で依然、宗教の自由が完全には保証されていないという。
 報告書のメインは国別報告だ。北朝鮮の「宗教の自由」についても6ページに渡って紹介されている。その一部をここで紹介する。

 「北朝鮮では過去、『宗教の自由』分野では大きな変化はなかったが、カトリック教会系、プロテスタント系の人道支援活動者への旅券発行は少し改善された。ただし、公の宗教活動は厳格に禁止されている。故金日成主席が1953年、実権を掌握して以来、同国にいた30万人のキリスト者が消えた。当時、北に宣教していた大多数の聖職者、修道女たちは迫害され、殺害された。同国政府は『宗教の自由は憲法で保証されている』と主張する。公式統計によると、同国には約一万人の仏教徒、一万人の新教徒、そして4000人のカトリック信者が存在する。これらの数字は政府が管理している組織に所属する信者だけだ。首都、平壌には4つの教会があり、2新教会、カトリック教会と正教会が各1教会ある。新教教会は金正日労働党総書記を称賛している。カトリック教会では北朝鮮聖職者はいないが、1週間に1度、礼拝が行われる。韓国ソウル司教区の支援などを受けて『民族和解センター』の建設が進められる一方、2005年には韓国カトリック教会の努力で『ラゾン国際カトリック病院』が開業されるなど、韓国カトリック教会の支援活動は北朝鮮当局に歓迎されている。2006年8月には正教会寺院が建設された。05年10月から12月にかけ、4人の北朝鮮正教徒がウラジオストクで教育を受けるなど、一部で宗教活動が行われた」

フランク教授の北朝鮮予測

 ウィーン大学東アジア研究所の部屋でルーディガー・フランク教授は、「北朝鮮の動向を研究すると、故金日成主席の生誕100年目を迎える2012年が変革の年と予感する」という。具体的には、12年に労働党党大会が開催され、金正日総書記の後継者が選出されるとみているのだ。
 フランク教授は日韓米の北朝鮮専門家に先駆け、ポスト金総書記は「集団主導体制となる」と指摘し、関係者を驚かせた。その後、教授の予測は多くの同調者を生み出している。
 「金総書記は1980年の第6回党大会で後継者として選出されている。北では重要な議題は党大会で議論される。党、軍、政府、そして金ファミリーのメンバーから構成された統一委員会が設置され、後継者が選出されるだろう」という。もちろん、このシナリオは「金総書記の健康状態如何で、前倒しで行われる可能性も考えられる」という。
 教授の強みは朝鮮語を自由に操ることができ、平壌から送られてくる労働新聞を読み、東アジアの経済専門家であるということだ。
 ウィーンの北朝鮮大使館は金総書記の誕生日や建国記念日には必ず教授を招く。韓国側も負けていない。教授をソウルに招き、講演などを依頼する、といった具合で、南北両国から声がかかる。それだけではない。欧州連合(EU)も朝鮮半島問題では必ず教授を招き、意見を聞いている。ブリュッセルで北朝鮮人権問題会議が開催された時、教授は基調演説者の1人として名を連ねていた。
 教授は「北では急激な改革は難しい。外から、改革と分らないテンポで進めなければならない。自分は太陽政策を支持する。北側が激怒したり、批判しても、笑顔を浮かべ、更に多くの支援を提供すれば、北側はどうすることも出来なくなる。これが体内の腫瘍を抵抗を受けずに撤去できる唯一の道だ」という。
 教授は来春、東アジアの共存の道を模索する経済シンポジウムを主催する予定だ。

北欧キリスト教会の戦略的統合

 企業は激しい競走に生き残るために合併・統合を模索するケースが増えている。例えば、銀行の統合は急速に進行している。紀陽銀行(本店和歌山市)と和歌山銀行が2年前、合併し、新「紀陽銀行」が発足した、といった具合だ。ところで、異なるキリスト教会が最近、合併計画を公表して注目されている。
 9日のバチカン放送によると、スウェーデンのメソジスト教会、ミッション教会、そしてバプテスト教会の新教3派は共同声明を発表し、統合して新しい教会を創設することを明らかにしたのだ。
 企業の合併の場合、競争力の強化、市場、組織の拡大などがその理由となるが、キリスト教会の場合はどうなのか。スウェーデンの3新教教会が統合を目指し、新しい教会組織を創設するという以上、共通の狙いがなければならない。ズバリ、同国最大のキリスト教宗派「福音ルーテル教会}(国教)への対抗だろう。その意味で、「戦略的合併」といって間違いないはずだ。勝算は別として、生き残り作戦ともいえるだろう。
 同3教会は1969年から71年の間、統合に向けて話し合いが行われたが、「神学的相違」で実現しなかった経緯がある。最大の障害は「洗礼」に対する理解の違いだ。例えば、バプテスト教会は「洗礼」を「全身礼」と呼称し、基本的には幼児洗礼を認めていない、といった特長がある(洗礼の問題を今回、どのようにクリアしたかは不明だ)。
 バチカン放送によると、新教会は早ければ2012年には創設される。各教会の勢力は、ミッション教会が13万6000人の信者を抱え、最大勢力を誇り、バプテスト教会は約1万7000人、メソジスト教会は4600人だ。これらの3教会の合併が実現すれば、約16万人余りの信者を有する新教会が誕生するわけだ。
 北欧教会の統合の動きを、聖書の解釈、神観の相違などで数百のグループに分かれてしまったキリスト教会の再統一への一歩、と好意的に受け取るならば、今回の合併発表は「歴史的な出来事」というべきかもしれない。
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