ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2008年06月

国連内のパワー・ハラスメント

 東京の国連広報センター所長だった幸田シャーミンさんが在職中に上司からパワー・ハラスメント(地位と権力を悪用して下位の者に不法な要求をすること)を受けた、というニュースが届いた。国連の記者室に屯している記者の1人として無視できない内容だ。同時に「何をいま更」といった感がしないわけではない。
 パワー・ハラスメントは国連機関だけではなく、会社、大学、研究機関など人間が営む機関には程度の差こそあれ「ある」。だからとって、「当たり前」では済ませられないことは言うまでもない。
 ウィーンの国連機関でもパワー・ハラスメントはよく聞く。国連薬物犯罪事務所(UNODC)のコスタ事務局長に嫌われたら最後、左遷を覚悟しなければならない。だから、「誰一人として事務局長の機嫌を損なうようなことは言わなくなった」(UNODC職員)という。その結果、イタリア出身の同事務局長の周辺は「イエスマン」しかいない。
 コスタ事務局長だけを悪者扱いするのは公平さに欠けるだろう。国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長も同様だ。同事務局長周辺には通称“エジプト・マフィア”と呼ばれる同じ出身国職員が事務局長を取り巻いている。彼等が事務局長の機嫌を取り、メディア機関を管理している。特筆すべき実績がなかった事務局長が2005年度のノーベル平和賞を受賞できた主因は、「メディア操作のおかげ」ということはもはや誰もが知っている事実だ。当時、事務局長は毎週、CNN、ロイターなどの世界のメディアのインタビューに応じ、その顔と名前を世界に売ったわけだ(金大中元韓国大統領が5億ドルの貢物を北朝鮮・金正日労働党総書記に渡して南北首脳会談を実現。そしてノーベル平和賞を受賞したのと比べれば、エルバラダイ事務局長の場合、経費も時間も少なくて済んだわけだ)。
 ところで、北朝鮮の核実験後、エルバラダイ事務局長は世界の耳目が集まる平壌を訪問したが、平壌当局からは冷たい待遇しか受ける事ができずに、成果なくウィーンに帰国したことがある。北朝鮮外交官は当時、「エルバラダイ事務局長では問題は解決できない」と冷静に知っていった。ノーベル平和賞受賞者をあのように冷遇できるところが、国際社会から孤立している独裁国家・北朝鮮の強み(?)かもしれない。
 少し、話が逸れてきた。いずれにしても、パワー・ハラスメントは幸田さんが勤務していた国連機関だけではない、ということを身近な例を挙げて説明した次第だ。ついでに、ウィーン国連内で昨年、2件のセクシャル・ハラスメント(性的嫌がらせ)が発生していることを付け加えておく。

国連免税店の危うい存在理由

 ウィーンの国連には、ニューヨークの国連本部や欧州国連本部にないものがある。国連機関が運営する販売店(免税店)が存在するのだ。といっても、国連を訪問する観光客や国連駐在記者たちにはまったく関係がないお店だ。お土産店のように、自由には買えない、というより、国連Fビル地下一階に密かに経営されている免税店には、国連職員、その家族と外交官しか行けない。国連職員・外交官の“特権”だ。
 ウィーン国連の免税店は国連原子力機関(IAEA)が運営する。ウィーン市がIAEAを誘致する際に免税店の開業を認めた、という経緯があるからだ。ただし、免税店を利用できるのはIAEA職員だけでない。国連工業開発機関(UNIDO)、包括的核実験禁止機関(CTBTO)など、ウィーン国連内の他の国連機関職員もできる。その他、外交官、石油輸出国機関(OPEC)の関係者も同様だ。
 同店は毎日12時から18時半までオープンしている。金曜日にもなれば、2日間の週末用に日常品から酒類、タバコまでかなりの量を購入する職員、外交官の姿が見られる。
 ところで、ここにきて「国連内でどうして免税店を運営するのか。ニューヨークの国連本部と同様に閉鎖すべきだ」といった批判の声が高まってきた。その声の中には、免税店を利用できない外部の人間のジェラシーが含まれているかもしれない。しかし、「免税店ではタバコ類が売られているが、世界保健機関(WHO)はタバコが健康を害するとして禁煙を奨励している。それなのに、同じ国連機関の中でタバコ類が堂々と売られている、というのは可笑しい」といった相手(国連)の痛いところを突いた批判もある。
 それだけではない。免税を悪用するケースも少なくない。例えば、オーストリアではタバコの場合、税57%、それに消費税20%を含めた価格で売られているが、国連内ではそれらの税抜き価格でタバコが購入できる。愛煙家ならば、「俺も国連職員になりたい」といった溜息が飛び出すかもしれない。タバコだけではない。他の化粧品や宝石類も税抜き価格となれば、市場価格の半分以下で買える。
 ビジネス・マインドのある国連職員や外交官ならば、免税店でタバコ類や高級品を購入し、それを外部の人間に密かに売れば儲かると直ぐ考えつくはずだ。ただし、例えば、タバコの場合、1人当たり購入制限があるから、大量購入で巨額な利益を、といった夢は難しいが、小遣い稼ぎにはなる。国連内では以前、免税店で購入したばかりの商品を店の外で待っていた友人にその場で売っていた職員がいたが、最近は取締りも厳しくなったため、国連内の取引きは余り見られなくなった。
 最後に、IAEA報道部に「免税店を近い将来、閉鎖する予定はないか」と問い合わせたところ、「その質問にはノーコメントだ」が戻ってきた。小さな特権でも一旦手にしたら、それを直ぐに手放す人間はどこにもいないものだ。国連機関も例外ではない。

「休日」を日曜日から火曜日に

 バチカン放送が5日、報じたところによると、インド中部のマディヤプラデシュ州では今後、1週間の休日を従来の「日曜日」から「火曜日」に変更する予定だ。その理由は、ヒンズー教の祝日が火曜日だからだ。もちろん、それに対して、キリスト教会は猛反対をしているという。
 当方は昨年9月、「日曜日を守れ」というタイトルのコラムを書いた。そこで欧州では聖書の天地創造の「神は第7日にその作業を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終って第7日に休まれた。神はその第7日を祝福して、これを聖別された」という聖句に基づいて日曜日を休日として久しいが、21世紀の今日、キリスト教文化圏の欧州で聖なる日曜日が危機に陥っていると紹介した。実際、欧州では数年前までは日曜日に店を開くのはせいぜい食堂か喫茶店だけだったが、消費文化の影響もあって今日、一般の商店も次第に日曜日にオープンし、顧客を集めてきた。休日としての日曜日は既に形骸化が始まっている。そのため、カトリック教会などでは、「日曜日を守れ」運動が展開されているわけだ。
 ところで、休日を「日曜日から火曜日に移動させる」ことを決定したインドのマディヤプラデシュ州は同国28州の中でも貧しい地域に属し、過激なヒンズー教徒が多いところだ。同州知事はインド人民党(BJP)出身者だ。同党はヒンズー至上主義政党で、キリスト教文化に強い抵抗を有している。
 インドでは英国の植民地時代を経験したこともあって、キリスト教カレンダーに従って日曜日が休日だったわけだが、ヒンズー教では1週間で聖なる祝日は「火曜日」に当たる。そこで、休日を日曜日から火曜日に移動する試みが表面化してきたわけだ。ちなみに、インドではヒンズー教が80%以上で、それについてイスラム教13・4%、キリスト教は全体の2・3%と少数宗派に過ぎない。
 民族、文化、宗教が違えば、当然のことだが、国民の休日も変わるが、グロバール時代の今日、国や地域ごとに休日が異なれば、政治、経済活動で支障が生じることも考えられる。ただし「文化の多様性」という観点からいうならば、世界の国民の休日を統合する必要はないのかもしれない。

開会式と決勝戦、どっち?

 いよいよ今日(現地時間7日午後6時)、欧州サッカー選手権(ユーロ2008)がスタートする。開会式はホスト国スイスのバーゼルで開かれ、開幕試合スイス対チェコ戦を皮切りに、今月29日の決勝戦まで文字通り、世界最高水準のサッカー試合が見られる。サッカー・ファンならば落ち着かない日々が始まる一方、サッカーに関心のない少数派の国民はこの期間、試合会場から出来るだけ距離を置くか、夏期休暇を早めて開催国のオーストリアとスイスから逃げ出す以外に生きていく道がない。
 ユーロ2008開催中は、共催国オーストリアのウィーンの場合、交通規制が行われるために、車の運転もままならないだろうし、60万人を越えるサッカー・ファンが殺到するために、ショッピング街は混乱し、それに呼応して治安(例えば、スリの多発など)の悪化も甘受せざるを得なくなる。
 ところで、今回のユーロ2008はアルプスの小国スイスとオーストリア両国の共催だ。そのため、「どちらで開会式を、そして決勝戦を開催するか」で、舞台裏でかなり激しいやり取りがあったと聞く。
 駐オーストリアのスイス大使館で1カ月前、記者会見が開催されたが、その席で1人のスイス人記者が「わが国(スイス)はユーロ2008のハイライトというべき決勝戦をオーストリア側に取られた立場だ。国民は正直に言ってガッカリしている」とスイス代表に質すと、代表は「君のいいたいことは私も良く分かる。できれば、わが国で決勝戦を開きたかったが、共催である以上、一方が開会式を、他方が決勝戦を開催するという以外に選択はない。わが国としては、最高の開会式を提供するだけだ。パートナーのオーストリアが素晴らしい決勝戦を開催し、ユーロ2008の有終の美を飾っていただくことを願うだけだ」と答えた。その「出来ればわが国で決勝戦を……」といった時の代表の顔には、無念の思いが読みとれたほどだった。
 そういえば、日韓共催のワールド・カップ(W杯)の時も、決勝戦が日本で開催されたので、韓国国民の中には不満の声も聞かれた。共催でイベントを開く場合、いつも話題となる点だろう。ちなみに、世界の3大スポーツ・イベントとは、オリンピック、サッカーのW杯、そして欧州サッカー選手権だ。
 ユーロ2008の参加国は16カ国。スイスの4カ所、オーストリアの4カ所で合計31試合が行われる。サッカーの母国・英国が予選落ちし、本戦出場できなかったことは残念だが、それ以外の強豪国は全て参加している。さあ、始まり、始まりだ。のんびりとコラムを書いている時ではない。

独教会、聖職者の性犯罪が急増

 当方はどうやら事実を誤認していたらしい。このコラム欄で先月、「教会経営不振のさまざまな理由」というタイトルで、「米教会が経営不振、破産に追い込まれる主要理由は聖職者の性犯罪とその賠償金の支払いだが、ドイツ教会の場合、聖職者の性犯罪問題はそれほど(深刻)ではない」と書いたが、それは“とんでもない”間違いだったことが分かったのだ。
 独カトリック教会の37歳の神父がこのほどポルノグラフィの拡大や最年少者との性問題で停職処分されていたことが明らかになった、と思っていたら、パーダーボルン大司教区でこれまた児童ポルノを所持していたとして、神父が休職に追いやられている。それだけではない。ヴェルト・オンラインの検索によると、2000年以降でも10件前後の聖職者の性犯罪がリスト・アップされている。例えば、ハンブルク市でも今年4月、1人の神父がミサの侍者(多くは少年)に対し同性愛行為を強いていたことは分かり、これまた停職処分を受けている。正直言って、ビックリした。
 バチカン放送が3日、報じたところによると、ポルノ所持などで停職された神父はロットヴァイル出身で、2000年に神父となった。その後、ペルーで聖職に従事していたが、「精神的問題」があって03年、療養のためにドイツに帰国した。しかし、病は回復せず、04年6月から休職し、その翌月停職処分を受けたという。検事当局によると、同神父はインターネットで知り合った11歳の少女に会合を強要していたという。
 弁明に聞こえるかもしれないが、当方が事実誤認した背景には、独教会はローマ法王ベネディクト16世の出身国だ、といういい意味で偏見があったのかもしれない。前法王ヨハネ・パウロ2世の場合、法王時代、その出身国ポーランド教会でそのような不祥事が起きたとは聞いた事がなかったからだ(ひょっとしたら、同国でも聖職者の性犯罪が生じていたが、メディアに伝えられなかっただけかもしれない)。
 訪米したベネディクト16世は今年4月、ニューヨークの聖パトリック大寺院で米教会指導者を前に聖職者の性犯罪に言及、「米教会の清掃」を要求したばかりだが、法王が出身国の独教会聖職者に同様の警告を発したとは聞いたことがなかったこともある。
 聖職者の性犯罪に対応するため、バチカン法王庁は目下、教会法(カノン)の改正を検討している。バチカン教理省長官ウィリアム・ジョセフ・レヴェイダ枢機卿は「考えられるシナリオとして、性犯罪を犯した聖職者を迅速に停職処分できるようにすることだ」という。
 確かに、迅速な停職処分は第2、第3の犠牲者を出さないうえで重要かもしれないが、神に仕える聖職者がどうして性問題に陥るのかを再度考える必要があるだろう。当方はズバリ、聖職者の独身制廃止が必要だと考える。聖職者も結婚するべきだ。

金平一・北大使、休暇で帰国

 6月が始まった。7日からはスイスとオーストリアで待望の欧州サッカー選手権がスタートする。ギムナジウムの学生たちにとって同月末には長い夏期休暇が始まる。翌月になれば、欧州全土が一斉にバケーション・シーズンに突入する。「休暇はいつから」とか「今年はどこに」といった会話が路上や会社で挨拶側に交わされるシーズンの到来だ。
 ところで、欧州の一般国民に先駆け、夏期休暇に入った欧州駐在の北朝鮮外交官がいる。駐ポーランドの金平一大使だ。北朝鮮消息筋が明らかにしたところによると、金平一大使は今月初め平壌に帰国した。ただし、「夏期休暇に過ぎない。解任とかいった政治的な性質のものではない」(北朝鮮消息筋)という。
 同大使は故金日成主席と金聖愛夫人間の長男に当たる。故金主席と正妻・金正淑夫人(故人)との長男、金正日労働党総書記とは異母兄弟の関係となる。そのため、日韓メディアは久しく「金総書記は国内の軍部に寵愛を受ける金大使を好ましく思っていない。だから大使の帰国を許さない」と報じてきたが、実際は「金平一大使はほぼ毎年、平壌に帰国している」(北朝鮮消息筋)。
 もちろん、夏期休暇の特権を享受しているのは金平一大使だけではない。駐オーストリアの金光燮大使も今月末には帰国予定だ。同大使の休暇は通常、慢性の心臓病を療養するために3カ月余りと長期休暇だ(ウィーンには毎年、9月末から10月上旬頃に戻る)。ちなみに、金光燮大使の夫人は金平一大使の実姉、金敬淑女史だ。だから、金光燮大使も金総書記とは親戚関係となる。
 ところで、金総書記の異母兄弟・金平一大使や義弟の金光燮大使が平壌に帰国して問題が生じないか、といった疑問の声もある。同消息筋は「総書記にとって、両大使は親族だ。帰国を歓迎しないとしても、阻止したり、拘束することは考えられない」という。
 確かに、金光燮大使の敬淑夫人はオーストリアからの訪朝団を金総書記に紹介するなど橋渡しを演じていることが知られている。異母兄弟内の“流血の権力闘争”といった報道は「滑稽な作り話」(同消息筋)ということになるのかもしれない。
 いずれにしても、金平一大使、そして金光燮大使の両大使が夏期休暇を終えて“無事”任地に戻ってくることを期待する。

「呪い」と「解放」

 「呪い」という言葉は無気味だ。「呪い」が成立するためには、「呪う人」と「呪われる人」が必要となる。誰かが自分を呪っていると感じると、眠ることもできない。それだけ「呪い」は凄い破壊的なエネルギーを発するからだ。一度でもそのエネルギーに接すれば、理解できるはずだ。
 当方はメディアで報じられてきた「呪い」に関する情報を集めてきたので、ここで読者に3例の「呪い」を紹介する。
 「呪い」で世界的に有名なのは、「ファラオの呪い」だ。古代エジプト王ファラオの墓を発掘した関係者が次々に不慮の死に見舞われたことから、このようによばれ、恐れられてきた。最近では、同墓の遺品を黙って持ち帰ったドイツ人がその後、高熱などで死亡するという出来事が伝えられている。そのため、その遺族が盗んだ品を戻したいと申し出たという(時事通信)。
 同じように、世界遺産にも登録されているオーストラリア大陸のある世界で第2番目に大きい岩「エアーズロック」の一部を持ち帰った観光客の中で、「病気や事故などの不運に遭遇するケースが頻繁に発生している」という(英紙デーリー・テレグラフ)。
 第3の実例は少々、趣が異なる。英国の劇作家ウィリアム・シェイクスピアは生前、自身の墓碑に「わが遺骨を動かす者に呪いあれ」と書き残した。それ以後、シェイクスピアの「呪い」を受けたくない英国民は劇作家の墓を移動することを回避してきたが、墓が老朽化したため改修作業が行われることになった。そこで劇作家の「呪い」を受けないために、墓を動かすことなく、改修際業が実施されることになったという(AFP通信)。
 「ファラオ」と「エアーズブロック」の場合、既に多くの犠牲者が出るなど、その「呪い」の威力は実証されてきたが、シェイクスピアの場合、幸いまだ発揮されていない。ただし、3例の「呪い」の共通項は、時代を超えて不特定の対象にその「呪い」のエネルギーを放射できるということだ。
 ところで、そのエネルギーはどこから起因するのだろうか。「呪い」が解消されることはあるのだろうか。昨年、インド南部タミルナド州の農夫が、殺した犬の呪いから逃れるために、犬と結婚した男がいたと報じられたことがあった。また、「本当の愛」を受けることで呪いから解放されたお姫様の話は、童話の世界ではよくあることだ。
 聖書学に見ると、われわれ人間は「悪魔の呪い」を受けた存在ということになる。イエス自身も「ヘビよ、まむしの子らよ。どうして地獄の刑罰を逃れることができようか」(マタイによる福音書23章33節)と言って、人間が悪魔の子であると述べている。すなわち、われわれは「呪われた存在」ということになる。キリスト教のメシア(救い主)とは、この悪魔の呪いからわれわれを解放してくれる存在、といっても言いわけだろう。

北情報の「需要」と「供給」

 北朝鮮の独裁者、金正日労働党総書記の死亡説がインターネットサイトに流れ、韓国政府がその数時間後、「根拠がない」と否定したばかりだ。その数日前には、韓国国防研究院(KIDA)が金総書記の死後、「集団指導体制に変わる可能性が高い」という研究論文を発表している。
 金総書記の死亡説はこれまでもあった。金総書記は本当に死ぬまで、あと何度、自身の「死亡説」を聞かなければならないだろうか。それだけ、独裁者は自分の死を願う多数の政敵や国民に囲まれているわけだ。早期「死亡説」は独裁者の宿命かもしれない。
 さて、韓国連合ニュースは今月1日、消息筋として、金総書記の後継者問題を報じ、総書記の秘書・金玉さんが3男の正雲氏(25)を後押ししていると伝えている。興味を引く点は、金総書記の死亡説を前後に、「集団指導体制」とか「正雲氏の後継者」に関するニュースが次々と流れてきたことだ。
 真偽は別として、それらのニュースは一応、相互関連がある。すなわち、金総書記の死亡、ないしは「死亡が近い」ことを受け、その後継者問題のシナリオとして、「集団指導制」と「正雲氏の浮上説」が流れてきたと解釈できるからだ。
 情報の相互関連性について、もう一つの例を挙げてみよう。北朝鮮の核申告書の提出が近づいてきた。それに呼応して、日本の拉致問題に関する情報がさまざまなソースから流れ出した。なぜならば、北の核申告書が提出されれば、米国は北朝鮮をテロ支援国リストから削除する予定だが、日本の拉致問題を無視してはできない。そこで、平壌に居住する元日本赤軍メンバーの送還や横田めぐみさん問題が再浮上してくるわけだ。
 最近、横田めぐみさんが欧州に潜伏中、ないしは居住していた、という情報が流れている。同情報には、横田めぐみさんがテニスをしているとことを撮影した写真すら存在する、というオマケまで付く。
 「金総書記の死亡と後継者問題」や「日本拉致問題に関する情報」の流れを見てくると、資本主義の市場経済システムを思い出す。すなわち、「需要と供給」の原則だ。需要あるところに供給が出てくるわけだ。特に、北朝鮮問題では先の需要を見越した情報ブローカー(供給側)の“投機情報”も少なくない。彼等は需要があれば、根拠の薄い情報でも流す。それだけに、北朝鮮に関する情報市場は玉石混淆といった状況を呈している。情報の真偽を識別することが一層難しくなる理由でもある。

「夢のお告げ」

 人間は夢を見る。犬も見るというから、夢は人間の特権ではないかもしれないが、夢が重要な通信手段となり得る、という話をしたい。
 小説「ドリアン・グレイの肖像」、戯曲「サロメ」、そして童話「幸福な王子」などで有名なアイルランド出身の作家オスカー・ワイルド(1854〜1900年)の息子、ヴィヴィアン(次男)は1954年、「オスカー・ワイルドの息子」という題の著書を発表した。ヴィヴィアンはその著書の中で「母親が夢に現れて、ワイルドの息子としてどれだけ苦労したかを本に書きなさい」と言われ、自身の伝記を書き始めたと述べている。
 少し、説明が必要だろう。ワイルドは生前から著名な小説家だったが、ワイルドが同性愛者であることが判明して刑務所に拘束される一方、残されたコンスタンス夫人とシリル、ヴィヴィアンの2人の息子たちは社会から迫害され、親族からも「ワイルド」という名前を捨てなさいと言われたほどだ(夫人の家系がオランダ系だったこともあって、「ホーランド」という姓を名乗るようになった)。ちなみに、ワイルドは故郷から追放され、最後はフランスのパリで客死する。
 ダブリン出身のワイルドが生きていた時代は「同性愛」はタブーであり、一種の犯罪とみなされていた。そのため、ワイルドが刑務所に収容された後、家族は社会の冷たい目を避けるように生きていかなければならなかった。そのような中で、コンスタンス夫人は亡くなった後、息子に現れ、ワイルド家の実情を伝えてほしいと依頼したわけだ(ヴィヴィアンの著書の中で「父は毎晩、自分が創作した童話『わがままな巨人』を子供たちに読み聞かせながら、涙を流していました」と述べ、父親ワイルドの優しい心を紹介している箇所は非常に感動的だ)。
 ところで、当方は昔、夢をよく見た。その中には非常に啓示的な内容もあったし、昨日の内容が反映したような夢もあった。ワイルドの息子のように、親族や他者が現れ、何らかのメッセージを伝える夢もある。旧約聖書を読むと、ヤコブの子、ヨセフは未来を予言する夢を頻繁に見ている(フロイト流「夢解釈」が席巻していった結果、メッセンジャーとしての夢の役割が無視されてきた感がある)。「親族の死を夢で教えられた」といった体験をした人も少なくないはずだ。俗に言う「夢のお告げ」だ。
 新約聖書の使徒行伝2章17節を読むと、「終わりの時には、私の霊を全ての人に注ごう。そして、あなたがたのむすこ娘は預言をし、若者たちは幻を見、老人たちは夢を見るであろう」と書かれている。神は自身のメッセージの伝達手段として「夢」を利用しているのだ。

バチカンの「当惑」

 イランのアハマディネジャド大統領は来月3日からローマで開催される国連食糧農業機関(FOA)主催の「食糧サミット」に参加する予定だが、ローマ滞在中に、出来ればバチカン法王庁(ローマ・カトリック教会総本山)を訪れ、ローマ法王ベネディクト16世を謁見訪問したいという。イラン政府は既に、外交チャンネルを通じてバチカン側に同要望を伝えている。
 それに対し、バチカン側は「当惑」気味だ(バチカン放送)。イランがシーア派のイスラム国家であり、国内のカトリック信者が少ないからではない。同大統領の過去の反イスラエル発言が障害となっているらしい。「イスラエルを地図上から抹殺すべきだ」と発言した同大統領の言動を振り返れば、バチカン側の反応は当然かもしれない。
 その一方、バチカン法王庁は3月4日から2日間、イスラム教指導者を招いてローマで会合を開き、カトリック教会とイスラム教間の対話を継続するために「カトリック・イスラム教徒フォーラム」を創設し、今年11月4日に第1回会合を開催することで合意したばかりだ。それだけに、バチカンがイラン大統領の訪問に消極的な姿勢を示せば、「イスラム教徒との対話に意欲がないことを明らかにしている」といったブーイングが飛び出すかもしれない。
 欧米諸国から核開発疑惑をもたれているイランのアハマディネジャド大統領の訪問を受けることは、西側政治家にとって政治的危険を犯すことにもなりかねない。しかし、バチカンの場合、イランの核開発疑惑問題がネックではない。バチカンの本音をいうならば、イスラエルを怒らしたくないという理由があるからだ。
 バチカンとイスラエル両国は1993年、外交関係を樹立したが、エルサレムのカトリック教会の所有権と税優遇問題に関して、両国は15年間余り交渉を続けてきているが、イスラエル側の抵抗があって、依然、合意に達していない状況だ。そのような時に反イスラエルの盟主、アハマディネジャド大統領の訪問を受ければ、イスラエル側の反発は必至だからだ。
 ローマの日刊紙「レププリカ」は「バチカンのナンバー2、タルチジオ・ベルトーネ枢機卿(国務省長官)がイラン大統領と会談するには問題がないが、法王がイラン大統領を歓迎することは難しいだろう」と予想している。
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