ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

海外イラン人社会、2世時代に突入

 イラン革命後、多くのイラン人が海外に亡命していった。その数は500万人から600万人にもなるという。世界最大の海外イラン人社会は米国にある。その数は100万人を超えるものと推定されている。故パーレビ・イラン国王の長男レザ・パーレビ氏も米国内に拠点を置いている一人だ。米在中のイラン人はブッシュ米政権に対して強いロビー活動をしている。時には、在米ユダヤ人ロビーと連携してテヘランの核問題でブッシュ政権に圧力を行使している、といった具合だ。
 一方、欧州でもイラン人社会は存在する。ドイツでは約12万人、フランスで4万人、英国で18万人のイラン出身者が居住している。今、注目されている海外イラン社会は北欧だ。特に、スウェーデンでは約14万人のイラン人社会が存在する。英国につぐ大きなイラン人社会だ。彼らはストックホルムの政界にも進出している。社会民主党青年リーダーのシカラビシ氏やペーション首相第一秘書のナバプ氏は両親が革命後亡命してきたイラン人の子弟だ。ちなみに、デンマークでは4万人、ノルウェーで2万人のイラン人社会が存在する。
 欧米で居住するイラン人が政界、経済界に積極的に進出するのは、彼らの多くが国王時代、知識人、政治家、実業家、大学教授といった社会の指導層出身者だったからだ。
 イラン政府は海外居住のイラン国民が稼ぐ年間60億ドルを上回る外貨に目を付けているが、海外居住のイラン人からテヘランへ資金流入の兆候はまだ見られないという。
 いずれにしても、イラン革命から28年が過ぎた今日、海外イラン人社会もバーレビ国王時代を知らない2世が主導する時代に突入してきた。

 以上は、海外居住イラン人(反体制派)の動向をマークしているイラン外交官から匿名を条件で教えてもらった内容だ。

世界最大核実験場の悲劇

 ウィーン国連で現在、カザフスタンの核実験場セミパラチンスク市の悲劇を紹介した写真展示会が開催されている。旧ソ連当局は冷戦時代、カザフスタンのセミパラチンスク核実験場で456回の核実験を実施した。具体的には、大気圏実験86回、地上実験30回、地下実験340回となっている。最初の実験は1949年8月29日。最後の実験は1989年10月19日だ。
 セミパラチンスク実験場の広さは18500平方キロメートルだ。核実験の結果、同市周辺ではがん患者の発生率が非常に高い上、異常児出産が多発、約160万人が核実験の放射能の影響を受けたと推定されている。歪んだ顔のままで生まれた1人のカザフ人の写真は核実験の影響の恐ろしさを端的に物語っていた。
 ハーバード大学のグラハム・アリソン教授は「核時代について書くならば、カザフに関する一章を設けなければならないだろう」と述べているが、セミパラチンスク核実験場はその主要舞台だったわけだ。
 同実験場は1996年から2001年にかけて取り壊された。181の地下トンネルや13の未使用のトンネルが破壊された。
 カザフは旧ソ連連邦から独立した後、世界第4の核兵器保有国の汚名を返還するために核不拡散に努力を払ってきた。包括的核実験禁止禁止条約(CTBT)にも早期加盟してきた。
 原爆被爆地の広島市と長崎市、それに核実験場のセミパラチンスク市の3都市は、核兵器の恐ろしさを実体験した哀しい地だ。

オーストリアで「月の砂漠」気分を満喫?

 音楽の都ウィーンには伝統的なスペイン乗馬学校があることは知っていたが、中欧のオーストリアでラクダ乗りを教える学校があるとは、つい最近まで知らなかった。20年間以上、アラブ諸国で働いてきたゲルダ・ガスナーさんが最近、下オーストリア州の森林地でラクダ学校を開いている、という雑誌記事を読んだ。同学校には14頭のフタコブラクダ(Camel)とヒトコブラクダ(Dromedary)がいる。
 ラクダは通常、暑い砂漠で人が乗ったり、物を運ぶために利用される動物だ。日本の北海道と同じ緯度に位置するオーストリアでラクダは生きていけるのだろうか。早速、ガスナーさんに電話で聞いてみた。
 ガスナーさん曰く、「冬季以外は学校を営業している。オーストリアの気候もラクダには問題ない。30年間、1度も病気をしたことがない」という。ラクダは人間以上に適応力があるわけだ。
 ラクダ乗り学校のホームページ(www.kamel-reiten.com)を開くと、子供向けのラクダ乗りワークショップから商業用のラクダ出張まで、さまざまなオファーが紹介されている。ちなみに、ガスナーさんは乗馬技術をウィーナー・ノイシュタット軍事アカデミーで修了したプロだ。ラクダ学校を経営するのが長年の夢だったという。
 日本人にとって、ラクダといえば童謡「月の砂漠」を思い出す人が多いのではないか。ラクダに乗ってロマンチックな気分に浸るのも悪くない。ただし、そこまで“砂漠の船”と呼ばれるラクダを乗りこなすには何度かの落ラクダ(馬)を覚悟しなければならないかも。
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