ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

アラブ人とペルシャ人

 「自分に対してアラブ人といった者がいたら、気分が悪いどころか、怒りが湧いてくる」
 ペルシャ人であるイラン外交官はこういう。そこで「アラブ人とイラン人の大きな相違は何か」と聞いてみた。
 外交官曰く、「中国人と日本人間に相違があるように、両民族にはさまざまな違いがある」とし、まず言語の相違を挙げた。
 ペルシャ語は32文字からなるが、アラブ語は28文字で構成されている。ペルシャ語は詩的であり、アラブ語は少々喧騒的だという。
 外交官によると、4文字の相違は「イラン人をアラブ人より感情の表現でより繊細にさせ、表現力で豊かにしている」という。
 イランの歴史をみると、ペルシャは7世紀、アラブ民族に支配された。この時に同地にイスラム教が伝播された。
 「ペルシャ民族はアラブ民族が伝えたイスラム教を独自に発展させてきた」という。アラブでは主にスン二派だが、イランではシーア派が多数派だ。
 一方、アラブの友人にも聞いてみた。「ペルシャ人のイラン人とアラブ人の違いは何か」と。
 彼曰く、「両者の違いは大きい。ペルシャ人の家庭では女性が実権を握っているが、アラブ世界では男性が全てに支配的だ」と実生活レベルでの相違を強調した。イランの家庭では最終的な意思決定権は男性ではなく女性が握っている。すなわち、女性が財布の紐を握っているというわけだ。ちなみに、イランでは女性の大学進学率は男性をはるかに上回っている。
 ところで、アラブの友人は昔、ペルシャ女性と結婚していたことがある。しかし離婚した。その理由は「彼女は自負心が強く、自分をいつも支配しようとしてきた。だから、耐えられなくなったので別れたのさ」とのこと。友人曰く「ペルシャの女性には気をつけろ」。

旧ソ連邦時代の次官と国連記者室

 存在感のある人はいる。逆に言えば、存在感のある人は少なく、多くは「あら、いたのね」と言われかねない。
 ニューヨーク、ジュネーブに次ぐ第3の“国連都市”であるウィーンの記者室には「あら、いたのね」といわれる記者が多い中で、非常に存在感のある記者がいる。一つの記者デスクを占領している老紳士がそれだ。
 彼がどうして記者室にいるのかは誰も知らない。ただ、この老紳士は「プロフェッサー」(教授)と呼ばれている。それだけではない。老紳士は「旧ソ連邦時代(ゴルバチョフ時代)に国家科学技術委員会副議長(次官)であった」というではないか。
 次官まで上り詰めたロシア紳士がどうして記者たちの溜まり場的な国連報道室にたどり着いたのかは分からない。
 老紳士は「次官時代、私のオフィスはこのプレス室以上に大きく、その内装は素晴らしかった」と説明する一方、「しかし、今の自分のデスクの方が次官時代の(大きな)デスクより気に入っている」という。
 次官時代、共産党政権下でその言動がいつも監視されてきたのだろうか。老紳士は「自分のデスクは小さくなったが、ここには自由がある」と笑う。
 国連内で開かれる記者会見では、この老教授は普通の記者とは違った観点から質問する。端的に云えば、時事的な観点ではなく、高次元的、哲学的な立場から聞く。質問された方も「何であんなことを聞くのか」と思ってしまうことがあるが、当の老教授にはまったく他の声など耳に入らないといった風情がある。
 記者会見での質問を除くと、多くの国連記者たちはロシア出身の老紳士、旧ソ連邦時代の次官に一定の敬意を払っている。

タリバン政権と金正日政権

 国連薬物犯罪事務所(UNODC)の最新報告によれば、アフガニスタンで今年に入ってアヘン栽培が急増、昨年同期比で40%増という。栽培地面積も昨年度約10万へクターから今年に入り15万へクターに増えている。
 UNODCによれば、同国は昨年度4500トンのアヘンを生産したが、同量で約450トンのヘロインが製造できる。世界のヘロイン供給の約90%に当たる量だ。
 ところで、アフガニスタンでイスラム根本主義勢力のタリバンが政権にあった時、同国は国家の総力を挙げてアヘン駆逐に乗り出した。その結果、タリバン政権崩壊直前にはアヘン生産量は400トンに急減し、ほぼ駆逐される勢いを示したほどだ。同独裁政権下では、アヘン栽培者は処罰され、麻薬乱用者には極刑が科せられた。
 もちろん、世界の民主政権が麻薬対策でタリバン前政権のような強圧政策を取るわけにはいかないことは言うまでもない。
 一方、タリバン政権とは逆に、独裁政権が麻薬生産に乗り出すならば、その国は麻薬の製造拠点となり、世界に不法麻薬をばらまくことになる。実際、それを実行している国が北朝鮮の金正日政権だ。
 金労働党総書記の意向を受けて軍部の一部が麻薬を生産、それを世界で密輸していることは周知の事実だ。独裁政権が「麻薬対策」ではなく、「麻薬生産」に乗り出した場合、世界は大きな脅威に直面せざるを得なくなる。同じ独裁政権でも、タリバン前政権と金正日政権とでは、麻薬政策で天と地の差があるわけだ。
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Recent Comments
Archives
記事検索
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ