ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

UNIDOの腐敗と「日本の責任」

 国連工業開発機関(UNIDO)の内部で汚職と腐敗が支配している。UNIDO内部と外部の監査団が昨年9月以来、UNIDOの会計監査などを実施してきたが、今年3月に入って、ギ二ア・プロジェクト(GCLME)担当職員がプロジェクト資金の不正融資などの疑いで解雇されていたことが明らかになった。
 ギニア・プロジェクトは沿岸の水質環境保全を目標に約6年前からスタートし、第1段階はほぼ完了したばかりだ。ちなみに、UNIDOのマネージメント局長・ピスコフノフ氏は「同プロジェクトは2010年には完了する予定だ。運営に問題があったが、計画は予定通り継続する」と強調した。UNIDOによると、同16カ国が関与した同プロジェクトの総額資金は約2000万ドルで、地域プロジェクトとしては大きい。
 ギニア・プロジェクトだけではない。UNIDOが進めている対北朝鮮プロジェクトの資金運営でも問題がないわけではない。例えば、UNIDO職員が対北支援プロジェクト資金を在北京の北朝鮮大使館に手渡し、その資金を北朝鮮外交官が平壌まで運ぶ。職員の1人が匿名を条件で語ったとことによると、「UNIDOは資金がどのように利用されるかの追跡調査をまったく行っていない」という。国連開発計画(UNDP)で北朝鮮不正資金流出疑惑が大きな問題となったが、UNIDOでも同じようなことが生じているという。極端にいえば、環境対策支援金が核開発に利用されていることも十分考えられるわけだ。皮肉なことだが、対北プロジェクト資金は主に韓国政府が拠出している。
 そこで最大分担金拠出国の在ウィーン国連機関日本政府代表部(天野之弥大使)のUNIDO担当外交官に電話で聞いてみた。日本は本年度約26億円をUNIDOに拠出している(分担率22%)。それだけに、分担金の使用に厳しい監視の目を注いでいると期待していたが、「ギニア問題を含むUNIDOのプロジェクトで問題が生じたと聞いたことがない」「900以上あるプロジェクトの全てを把握することなどはできない」という。
 米国は1996年、UNIDOの腐敗を理由に脱退したが、1人の国連職員は「米国の国連軽視を容認できないが、UNIDOから脱退したことは正しい判断だったといわざるを得ない」という。米国に代わり、日本政府は「アフリカの開発を支援する」という名目でUNIDOの活動を積極的に援助してきたが、その資金が正しく利用されているかどうかの監視は大変だが、重要な義務だろう。

誰も金総書記の現状は聞けない

 オーストリア・北朝鮮友好協会の顧問、エリヒ・ツァヴァディルさんが訪朝から帰国したので、早速、その訪朝談を聞いてみた。
 顧問は今月3日から13日まで訪朝した。北朝鮮建国60周年記念祭に招待されたからだ。訪朝は今回が3度目という。
 開口一番、「連日、祝宴で胃袋は大変だった」という。外国友好団担当官主催の晩餐会後、「下痢に苦しんだよ。食卓の食材が問題というよりも、気候の変化などで胃袋がやられていたこともある」という。いずれにしても、旅行プログラムは全て変更なく、実施されたという。
 次に、核心問題を聞いた。「金総書記の健康問題について、北朝鮮側の関係者はどのように言っていたか」。
 すると、顧問は申し訳なさそうに、「訪朝団の誰一人としてそのような質問を北朝鮮側に突きつけることができる人間はいなかったよ。ゲストとしては招待側のホストにそのような無礼な質問は発せられないからね」という。予想されたことだが、残念だ。
 「9日の祝賀会ではわれわれは金総書記が舞台に登場するのを今か今かと待っていた。しかし、総書記は顔を見せなかったので、非常に失望したが、総書記がどうして姿を見せなかったのか誰も北朝鮮関係者に聞けなかったよ」と説明、祝賀祭会場の雰囲気を少し伝えてくれた。
 そこでもう1人の訪朝者に電話した。オーストリアの大手旅行会社「フェアケアスビューロ」の支店長、ヨハネス・スティヒ氏だ。18人を引き連れて訪朝し、今月13日にウィーンに帰国したばかりだ。金総書記の健康悪化情報については、「北朝鮮滞在中は全く聞かなかった。正直に言って、帰国してその情報を知った次第だ」という。北朝鮮社会に大きな変化は感じなかったという。旅行プランにも変更はなかったと証言した。
 ツァヴァディル氏とスティヒ氏両氏からは北朝鮮の不穏な動きは最後まで聞くことができなかった。両氏が目撃したように、北朝鮮社会は本当に落ち着き、安定しているのだろうか。

金正男氏から呼び出された男

 北朝鮮最高指導者・金正日労働党総書記の長男、金正男氏(37)が最近、平壌から北京に戻ったという。日本のフジテレビ放送が17日、北京のホテルから出てきた金正男氏を撮影したという。ところで、正男氏は北京に戻った直後、欧州居住の知人の男に電話を入れ、北京に呼び出したはずだ。
 なぜならば、金正男氏が北京に戻ったという情報が流れた直後、欧州に拠点を置くこの男は勤務する会社に急遽、休暇を申請し、姿を消しているからだ。過去の実例から、この男が突然休暇を取る時は正男氏の呼び出しがあった時に限る。
 この男とは、当方が今年4月、このブログ欄で紹介した人物だ。本来、「ワン」という姓だったが、故金主席から「新しい名前を与える」といわれ、「ユン」と命名されている。「この男」の妻は金正日労働党総書記の最初の夫人だった故成恵琳夫人の親族に当たる。だから、この男は正男氏の「義兄」に当たる。
 正男氏は過去、訪欧した際、必ず「この男」に電話を入れて会っている。正男氏が2004年11月、訪欧した際もウィーンで再会している。もう一つ、興味ある点は、「この男」の父母は在日朝鮮人であった、という事実だ。
 さて、正男氏はこの男と再会した際、この男が欧州から持ち運んできたものを受け取る一方、新たに何らかの物品の調達を依頼するはずだ。この男が持ち込んだものが、金総書記の病気と関連があるのか、また、新たに依頼するものが、総書記の治療と関連するかは分らない。明らかな点は、正男氏はこの男を平壌と欧州間を繋ぐキーパースンとして重視していることだ。だから、この男の動向を詳細に掌握できれば、正男氏の言動の謎も解明できるかもしれない。
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